著者
神橋 彩乃 大久保 豪人 永田 靖
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-10, 2019 (Released:2019-11-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

In this study, we analyzed factors affecting children’s academic achievement with the data of PISA2012 and PISA2015. We set up four hypotheses and verified them. Hy- pothesis 1 is “children’s attributes influence their motivation.” Hypothesis 2 is “children’s attributes and their motivation influence their academic achievement.” Hypothesis 3 is “maternal employment has a negative effect on children’s motivation.” Hypothesis 4 is “children’s attributes influence the parent-child relationship, and the parent-child rela- tionship has a positive effect on children’s motivation and their academic achievement.” We clarified hypothesis 1 and hypothesis 2 using graphical modeling. We verified hy- pothesis 3 utilizing a stratified analysis using a propensity score and clarified it in terms of Japanese girls. However, in sub-groups where in mothers tend to work more, mater- nal employment brings about a positive effect on their children’s motivation. Results show that relieving the gap in the children’s academic achievement may be possible by improving parent-child relationships and children’s motivation.
著者
大久保 豪
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.45-59, 2021-07-08 (Released:2021-07-13)
参考文献数
44
被引用文献数
1

本稿の目的は,国際比較によって日本の患者自己負担を相対化させ,その特徴を明らかにすることである。比較の対象国として,日本と同様に社会保険方式を採っているドイツ及びフランス,税方式を採っている代表的な国であるイギリスの3ヵ国を選択した。本稿ではまず各国の医療制度(医療提供制度及び医療財政制度)の仕組みと特徴を記述し,その後に患者自己負担について,4ヵ国共通の視点(a.年齢,b.所得,c.疾患・障害,d.高額医療費,e.医薬品,f.入院・外来,g.受診経路)で整理した。4ヵ国を通観した結果,特徴的だったのは第1に患者自己負担の医療政策における重要性の相違である。イギリスは原則無料で,ドイツも患者自己負担に重きを置いてはいない。一方で,日本とフランスは患者自己負担の割合が大きく,その仕組みも複雑である。第2は,高齢者に対する負担の特例の有無である。日本では,高齢であることを理由とした患者自己負担の減免が行われているが,ドイツ及びフランスでは行われていない。イギリスでは高齢者の患者自己負担が免除されるが,そもそもイギリスは患者自己負担の割合自体が小さい。第3は,患者自己負担とゲートキーパー機能との関係である。ゲートキーパー機能が最も強いのはイギリスであり,病院受診にはGP診療所の紹介が必要である。ドイツやフランスではイギリスほど強くはないが,日本のように病院を直接受診することが一般的なわけではない。患者自己負担は医療制度というシステムの構成要素の一つであり,その国の医療提供体制及び医療財政の仕組み,そしてその背景にある歴史的経緯や経済状況などの様々な要因によって形作られてきた仕組みであるという点に留意する必要がある。
著者
宮田 裕章 大久保 豪 吉江 悟 甲斐 一郎
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.83-94, 2011 (Released:2011-02-25)
参考文献数
69
被引用文献数
1 3

Debate about the relationship between quantitative and qualitative paradigms is often muddled and confusing and the clutter of terms and arguments has resulted in the concepts becoming obscure and unrecognizable. In this study we conducted content analysis regarding evaluation methods of qualitative healthcare research. We extracted descriptions on four types of evaluation paradigm (validity/credibility, reliability/credibility, objectivity/confirmability, and generalizability/transferability), and classified them into subcategories. In quantitative research, there has been many evaluation methods based on qualitative paradigms, and vice versa. Thus, it might not be useful to consider evaluation methods of qualitative paradigm are isolated from those of quantitative methods. Choosing practical evaluation methods based on the situation and prior conditions of each study is an important approach for researchers.
著者
谷山 牧 荒木田 美香子 山下 留理子 橋本(小市) 理恵子 大久保 豪 甲斐 一郎
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.263-273, 2018 (Released:2019-02-16)
参考文献数
25
被引用文献数
1

【目的】就労支援を受ける生活保護受給者,生活困窮者自立支援法対象者(以下,生活困窮者)31名への面接調査を通じ,就労意欲に影響を与える健康特性を明確化すること.【結果】質的分析の結果,【他者から理解されがたい持続的な苦痛】,【ストレスへの脆弱さ】,【社会的適応の困難さ】,【自己流の健康管理】の4カテゴリーを抽出した.また,就労意欲への影響要因として,【就労することへの期待】,【生活保護廃止への不安と葛藤】,【社会から排除されているという感覚】の3カテゴリーを抽出した.これらが関連し〖健康課題を抱えながらの就労と,生活保護受給継続との間での就労意欲のゆらぎ〗を引き起こしていた.【結論】今回抽出した健康特性からみると,生活困窮者の就労支援に医療や心理の専門職が参加することにより,効果的な就労支援につながる可能性が示唆された.
著者
大久保 豪 宮田 裕章 友滝 愛 岩中 督
出版者
The Health Care Science Institute
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.435-450, 2012

目的:近年,医療水準の評価を目的として,現実に行われた医療に関するデータを収集し,実証的な分析を行う,大規模臨床データベースが構築されるようになっている。本研究の目的は医療水準の評価を目的とした臨床データベースの正当性を明らかにすることである。<br>方法:BeauchampとChildressの生命倫理の4原則(自律尊重原則,無危害原則,仁恵原則,正義原則)に基づいて,臨床データベースの正当性を分析した。分析にあたっては,既存の資料や現在実施されている臨床データベースに関する資料を参考にした。<br>結果:自律尊重原則に基づく方法として≪データ登録に関する患者意思の尊重≫と≪登録目的,登録情報の開示≫が挙げられた。仁恵原則に基づく方法として≪登録情報の漏洩予防≫と≪登録される情報の匿名化≫が挙げられた。正義原則に基づく方法として,≪参加に係わるコストの削減≫,≪参加条件の設定≫,≪データ利用の受付条件の設定≫,≪データ分析結果の公表内容の吟味≫,≪データ分析の限界に対する配慮≫,≪データ分析結果の公表対象の吟味≫,≪資金提供元の明示≫といった方法が重要であると考えられた。一方で,臨床データベースは現実に行われた医療をそのまま記録するものであり,無危害原則に基づいて正当性を高める必要性は低いと考えられた。<br>結論:臨床データベースの構築,運営にあたっては,正確性,有用性,実現可能性を鑑みながら,本研究で明らかになった方法によって正当性を高めていくことが求められる。正当性の確保に当たっては,継続的な検証が重要である。
著者
大久保 豪 斎藤 民 李 賢情 吉江 悟 和久井 君江 甲斐 一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 = JAPANESE JOURNAL OF PUBLIC HEALTH (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.1050-1058, 2005-12-15
参考文献数
30
被引用文献数
5

<b>目的</b>&emsp;介護予防事業における男性高齢者の参加割合は少ないと言われている。より効果的,効率的な介護予防事業の実施のために,男性の参加を促す必要があるが,その参加に関わる要因を検討した研究はこれまでに行われていない。本研究では,介護予防事業例の検討を通じて男性高齢者の介護予防事業への参加に関わる事業側の要因を探り,男性高齢者の参加を促進するために有益な知見を得ることを目的とした。<br/><b>方法</b>&emsp;平成14年 3 月に厚生労働省老健局計画課がまとめた『介護予防事例集』に掲載されている介護予防事業例を検討した。事例数は32自治体73事例である。事例集に掲載のない男女別参加人数,より詳細な事業特性について把握するために自治体への電話調査を行った。分析項目は内容,目的,対象者,周知方法,企画立案段階における地域高齢者の参画度,活動内容設定に関する参加者の参画度および地域特性である。男女別参加者数を把握できた事例のうち,参加者の少ない 1 事業と参加型の事業ではない 2 事業を除外した29事例を対象に男性参加割合と特性との関連を分析した。<br/><b>結果</b>&emsp;約50%は男性の参加割合が20%未満であった。総人口が 1 万人未満,高齢化率が20%以上,茶話・ふれあいサロン系の内容,当該年齢以上の住民全員対象,民生委員等へのチラシ配布による周知に該当する事業で非該当事業に比べて統計的有意に男性参加割合が低かった(<i>P</i><.10)。統計的有意では無かったものの,第 1 次産業就業人口割合が10%以上,転倒予防目的に該当する事業で男性参加割合が低く,教養,健康情報の講義という事業内容に該当する事業で男性参加割合が高い傾向がみられた。<br/><b>結論</b>&emsp;男性高齢者の介護予防事業への参加割合が低い現状が明らかになるとともに,茶話やふれあいサロンのような内容など事業要因との関連がみられた。今後は,より代表性の高い標本を用いた研究を行うほか,同一自治体における事業間比較や,地域住民調査により参加に関連する個人的要因の把握も通じ,男性高齢者が参加しやすい事業のあり方についてさらに検討を進めるすることが重要と考えられる。
著者
宮田 裕章 大久保 豪 望月 美栄子 蓑輪 裕子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.213-223, 2010

精神障害者グループホームの現状と開設・運営の困難とそれに対する取り組みを明らかにするため,インタビュー調査の結果を踏まえて,全国の運営法人に対する質問紙調査(N=453)を行った。全グループホームの87%が1人部屋である一方,77%が玄関を共有するタイプであった。グループホームの継続運営や新規開設に,大きな影響を与えていたのは,開設・運営資金の確保,入居者の確保,及び地域との友好的な関係作りであった。これらの課題に対して自治体の補助金を活用や,入居者募集の広報,地区の行事への参加など様々な取り組みが行われていた。今後は取り組みの有効性を確認するとともに,ノウハウを広く共有することが有用である。
著者
大久保 豪
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.107-117, 2009 (Released:2010-05-26)
参考文献数
31

目的:成人の先天性ろう者の人工内耳装用が音声言語認識力に与える効果についてこれまでに行われた研究からわかっていることを明らかにすること。方法:MEDLINE(1953年-2008年),PsychINFO(1887年-2008年),CINAHL(1982年-2008年)の検索エンジンを用いた。検索語は「Cochlear implant &(congenital hearing loss or prelingually hearing loss)」である。結果:コホート縦断調査の研究は4件が条件に適合した。比較対照研究については条件に適合する研究論文が存在しなかった。上記のうち3つの研究論文では,集団でみると装用後に音声言語認識力(音声で提示された単語や文章の理解率)が向上することが示されていた。装用者個別の成績でみると,全33名の装用者中,いずれかの項目で認識力が10ポイント以上上昇していた者は15名,いずれかの項目で認識力が10ポイント以上低下していた者は3名,すべての項目でほとんど変化していない者は15名であった。結論:装用前後の音声言語認識力の上昇は個人間のばらつきが大きい。現時点では口話など音声言語を日常の意思疎通に用いるような先天性ろう者に限って,音声言語認識力が向上する可能性があるといえる。しかし,認識力が下がる可能性にも留意しなければならない。これまでの研究では装用効果を高める予測因子については言及できない。