著者
櫻井 綾子 大河内 昌弘 山本 陽一 加地 謙太 田村 泰弘 浅田 馨 服部 孝平 後藤 章友 神谷 泰隆 大野 恒夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.65, 2010 (Released:2010-12-01)

症例は、70才男性。20年前より、糖尿病(2型)、高血圧、胃潰瘍を指摘され、内服治療を継続され、glimepiride 2mg、pioglitazone 15mg, Voglibose0.9mg最近1年のHbA1cは、6.1~6.8%で推移していた。H21年6/14に、急に、複視を認めるようになり、救急外来を受診された。来院時、意識清明で、瞳孔・対光反射に異常なく、右方視による複視(右眼内転障害)を認めた(pupillary sparing)。眼瞼下垂、舌偏位、顔面神経麻痺、四肢の麻痺は全て認めず、Barre sig、Finger-nose testに異常を認めなかった。頭部CT&MRI&MRAでは、lacunar infarctionを認めるのみで、内頸動脈・後交通動脈分岐郡脳動脈瘤や海綿静脈洞血栓症は認めなかった。加えて、両下肢の感覚神経障害を認め、アキレス腱、膝蓋腱反射の低下を認めた。眼科的にも眼球運動異常を認めるのみで、眼底異常、視野異常は認めなかった。以上より、脳の器質的な疾患による動眼神経麻痺は考えにくく、糖尿病性動眼神経麻痺と診断した。治療としては、リハビリ治療に加え、血糖コントロールの強化、血小板凝集抑制薬、血管拡張薬、アルドース還元酵素阻害薬、ビタミンB12製剤を併用したところ、1ヶ月程度で右眼内転障害および、複視は消失し、以後症状の再発は認めなかった。糖尿病性合併症としての動眼神経、外転神経麻痺は比較的まれな疾患であるため、脳梗塞の一症状と間違われやすいと考えられる。しかし、急性発症し、高齢者に多く、糖尿病の罹病期間・コントロール状態・眼底所見とは無関係に発症すること、一側の動眼神経、外転神経麻痺が多く、 瞳孔機能は保たれる(pupillary sparing)特徴的な所見から、比較的鑑別は容易であること、加えて、多くは数か月以内に回復する予後の良さから、その疾患を知ることは、疾患の迅速な鑑別・治療および患者指導に役立つと考えられ、典型的な自験例をここに報告する。
著者
大河内 昌子 向井 美惠
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.224-231, 2003 (Released:2013-01-18)
参考文献数
18

乳児を対象にした乳児用食品の固さの基準値についての客観的な検証は行われていない現状である.そこで,乳児に適正な物性基準の資料を得る目的で,離乳期の乳児を対象に摂食時の口腔領域の動きを観察評価して,その発達状態によって4群に分類し,以下の検討を行った.被験食品は,予め調整した固さの異なる4種類の基準食品とし,それらの食品の摂食時の処理方法の適否および顎の運動回数を指標として4群間で比較検討を行い以下の結論を得た.1.被験食品の固さが増加するに伴い,適正処理可能な乳児の割合は減少した.2.乳児は,食品の固さに応じて,顎の運動回数を変化させ食品を処理していることが認められた.3.食品の固さの変化による顎の運動回数は,離乳の時期によって異なることが示唆された.離乳初期~後期の乳児が処理できる固さの目安は得られたが,今後これらの固さの食品に対して適切な顎運動回数の検討などがさらに必要と考えられた.
著者
安田 康紀 大河内 昌弘 本田 浩一 馬場 卓也 近藤 好博 加藤 幸正 後藤 章友 神谷 泰隆 大野 恒夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.332, 2008 (Released:2009-02-04)

糖尿病患者の究極の治療目標は、糖尿病細小血管合併症・大血管合併症の発症・進展を阻止し、健常人と変わらない日常生活の質の維持・寿命の確保であるが、その目標を達成するためには、薬物・運動療法に加えて、食事療法が重要であることは言うまでもない。最近、糖尿病患者の食後高血糖が、糖尿病性心血管合併症と密接に関連し、食後血糖が高いほど、糖尿病性心血管合併症を発症しやすいことが示されてきている。食後血糖値の上昇幅を表す指標として、Glycemic Index(GI)が知られており、GI値が高い食品ほど食後高血糖が上昇しやすい。多くの日本人が主食としている白米は、GI値が高いのに対し、玄米や発芽玄米はGI値が低く、食後の血糖上昇が低いことが知られている。また、発芽玄米の更なる利点は、発芽玄米が、白米、玄米に比べて、糖尿病ラットの神経伝導速度および尿蛋白漏出量を著明に改善するとの最近の報告から、糖尿病患者の神経症・腎症を予防できる可能性が示されてきていることにある。発芽玄米は、玄米を水に浸してほんの少し発芽させたお米であり、発芽によって眠っていた酵素が活性化し、新芽の成長に必要な栄養素が増加する特徴があり、-アミノ酪酸や抗酸化成分などが、白米、玄米に比べて豊富に含まれる。 そこで、我々は、発芽玄米食に注目し、入院中の糖尿病患者の食事療法に発芽玄米食を取り入れた処、糖尿病コントロールが劇的に改善し、著明なインスリン注射単位数の節減効果をもたらすことが出来た症例を経験したので報告する。症例は、54歳女性、身長157cm、体重58kg、BMI 21.6kg/m2。うつ病で、当院精神科にH19年4/19に入院となった。糖尿病は、10年程前から指摘されており、入院前は、ノボラピッド朝10, 昼10, 夕8単位+ペンフィルN眠前12単位 の4回注(計40単位)でHbA1c8.6%と糖尿病コントロール不良であった。尿中C-peptide3.6μg/dayと内因性インスリン分泌は低値であった。糖尿病性網膜症・腎症・神経症は認めず、肝臓にも異常を認めなかった。糖尿病コントロール不良のため、入院時H19年4/19より、ヒューマログ朝14, 昼14, 夕14単位+ペンフィルN朝16, 眠前16単位 の5回注(計74単位)に変更したところ、毎食前血糖値100-130mg/dl, HbA1c5.6%と安定し、その後3ヶ月間血糖コントロールは安定して経過した。その後、注射回数が少ない方がよいとの患者の希望があり、H19年7/4より、ヒューマログ50mix朝16, 昼16, 夕14単位の3回注(計46単位)に変更したが、食前血糖値100-130mg/dl, HbA1c5.3%と、半年間、安定して経過した。その後も本人の血糖コントロールに対する意欲が高かったため、H20年1/11より、食事療法として、白米から発芽玄米食に変更したが、食事カロリー(1520kcal)はそのままとした。また、その他の治療方法は、精神科薬も含めて、全く変更しなかった。そうした処、発芽玄米食に変更以降、毎食前血糖値が急激に下がり始め、インスリンの減量を頻回に必要とするようになり、H20年2/5には、ヒューマログ50mix朝12, 昼6, 夕8単位の3回注(計26単位)で、食前血糖値70-110mg/dl, HbA1c4.9%、4/23には、ヒューマログ50mix朝10, 昼2, 夕6単位の3回注(計18単位)で、食前血糖値80-110mg/dl, HbA1c4.7%と、インスリンの必要単位数の激減に加えて、血糖コントロールの更なる改善が得られた。インスリン抗体等の低血糖を起こす要因は認めず、発芽玄米食摂取が、血糖コンロールの著明な改善を促し、インスリン注射単位数の劇的な節減効果をもたらした貴重な一例と考えられた。
著者
大河内 昌
出版者
阿部宏慈
巻号頁・発行日
2008-01-01

視覚表象における「リアル」の研究 : 平成16年度~平成18年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書 ; 研究課題番号: 16602001 ; 研究代表者: 阿部宏慈 ; p21-38
著者
早川 富博 鈴木 祥子 小林 真哉 福富 達也 井出 正芳 大野 恒夫 大河内 昌弘 多気 みつ子 宮本 忠壽 丹村 敏則 岡田 美智子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.438-446, 2009-11-30 (Released:2010-04-12)
参考文献数
12
被引用文献数
3 5

発芽玄米の糖代謝・脂質代謝に対する影響を知ることを目的に,糖尿病患者に試験食 (発芽玄米: 白米を1:1に調整) を3か月間摂食させて,その前後で糖・脂質のパラメーターを比較検討した。3か月間の試験食摂取によって,グリコヘモグロビンは,摂取前の6.40±0.23%から6.23±0.19%へと有意な低下が認められた。空腹時血糖値に有意な変化はなかったが,インスリン値とHOMA-IRは低下傾向を示した。T-CHO値,TG値は試験食の摂取によって変化はみられなかったが,LDL-c値は低下傾向,HDL-c値は増加傾向を示し,LDL/HDL比は摂取前の2.03±0.13から,摂取3か月後には1.83±0.12へと有意に低下した。試験食摂取量を多い群と少ない群に分けて検討すると,試験食の摂取量が多い群で,LDL-c値は有意に低下,HDL-c値は有意に増加した。今回,糖尿病患者において,3か月間の発芽玄米摂取によって糖代謝と脂質代謝がともに改善する結果が得られた。これらは,糖尿病患者の食事療法として発芽玄米が有効であることを示すものであるとともに,高コレステロール血症の治療にも有効である可能性を示すものと考えられた。
著者
阿部 宏慈 中村 三春 大河内 昌 清塚 邦彦 阿部 成樹 中村 唯史
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、日本、英米圏、フランス、ロシア(ソ連)等で蓄積されてきた記号論的分析の成果をもとに、視覚表象が優越する芸術諸ジャンル(絵画、写真、映画、マンガほか)とその周辺領域における「リアル」の意義と機能を明らかにすることを目的として実施された。その目的を達成するため、山形大学人文学部人間文化学科の、特に芸術、表象文化論、視覚表象の理論に関わる研究に携わっている6人の研究者がそれぞれの課題にしたがって分担しつつ、共同で研究をすすめた。その中で、阿部宏慈は主としてドキュメンタリー映画における表象不可能性の問題と「リアル」の概念をめぐる理論的研究と分析をおこなった。中村三春は、映画と文学における「リアル」の表象の問題をむしろフィクション映画を対象として研究した。大河内 昌は、英国十八世紀におけるピクチャレスクの美学とリアルの問題の理論的研究をおこなった。清塚邦彦は、写真における「リアル」の問題を、ウォルトンの哲学的分析を中心に研究した。阿部成樹は、ダヴィッドの「マラーの死」をはじめとする新古典主義絵画における「リアル」の表象を研究した。さらに、中村唯史はマンガにおける「リアル」の問題を、特に最新の理論的成果をもとに研究した。如上の研究を通じて、「リアル」の表象に対する基盤を異にするアプローチを突き合わせることによって、表象をめぐる学際的な研究の可能性が開かれたことが何よりも大きな成果である。表象文化論のアプローチを絶えず純理論的な枠組と芸術史に基づく正確な理解に照らしつつ検証することで、分析の精度を高めることができた。
著者
阿部 宏慈 清塚 邦彦 阿部 成樹 中村 唯史 中村 三春 大河内 昌 大河内 昌
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

視覚表象の分析における<アクチュアル>概念の理論的・実践的射程を、映画、写真、マンガなどの具体的な事例にもとづいてあきらかにした。
著者
小沢 博 有馬 哲夫 大西 洋一 中村 隆 大河内 昌 石幡 直樹 ROBINSON Peter
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、英文学に現れた異人概念の変遷を比較検討することにより、英文学及び英国文化を、広義の異文化交渉史の中で捉え直すことにあった。新大陸や東洋のみならず、文学的尚古主義、階級差、性差といった広い意味での内なる異文化も対象とし、そこに継起する異人概念の変遷を検証することにより、英文学を内と外の複眼的視点で相対化しようとする試みである。こうした観点から、小沢は、英国ルネサンス期に見られる外国人排斥運動の思潮を検討し、これが当時の演劇作品と上演活動にどのような影響を与えているかを考察した。石幡は、英国ロマン派文学に顕著な尚古主義や高尚なる野人の概念を異文化への憧憬の象徴的行為として捉え、ロマン派思潮台頭の背後にある社会文化的要因を当時の異国趣味との関連で検討した。大河内は、19世紀における階層社会の形成を異人としての下層階級の形成として捉え、当時の政治経済理論がこうした内なる異人の生産といかに連動していたかを政治社会史的文脈の中で探った。中村は、19世紀英国小説におけるユダヤ人の表象を検証し、大衆文化の担い手としての小説がいかに通俗的な異人観を形成していったかを考察した。大西は、17・18世紀英国演劇における新大陸と東洋の表象を比較検討し、西欧の西進と東進がもたらした異なる二つの非西欧文化との交渉を演劇の文化史として考察した。有馬は、アメリカ文学におけるインディアンの表象の変遷を俯瞰し、これを英国の植民地政策との関連で比較文化論的に考察した。Robinsonは、英国近代文学の創作活動が異人としての女性の侵入と密接な関係を持ってきたことを、RichardsonのClarissaやT.S.EliotのThe Waste Land改作問題と絡めて検証した。以上のような具体的研究成果を通じ、共同研究者の知見を統合して、英文学における異人概念の変遷の一面を解明できた。