著者
若林 明子 菊地 幹夫 井上 亙 川原 浩 古井戸 良雄
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.119-124, 1975-12-25 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

界面活性剤の水棲生物に対する影響をヒメダカに対する半数致死濃度測定で調べた。界面活性剤はn-ラウリル硫酸ナトリウム (C12-AS), n-ミリスチル硫酸ナトリウム (C14-AS), n-セチル酸ナトリウム (C16-AS), 直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム (LAS) および脂肪酸ナトリウム塩 (セッケン) を用いた。ASは蒸留水中でLASとセッケンについては蒸留水および人工軟水中で試験を行なった。これらの界面活性剤の蒸留水中の毒性はC16-AS>セッケン=C14-AS>LAS>C12-ASの順であり, ASはアルキル基の長短により毒性が大きく異なった。LASは人工軟水中で共存塩の影響を強く受けて毒性が増大するが, セッケンは反対に毒性が急激に減少し, LASに比較して毒性はずっと小さくなる。したがって実際の河川水中の毒性はC16-AS>C14-AS>LAS>C12-AS>セッケンの順となる。
著者
若林 明雄 東條 吉邦 Simon Baron-Cohen Sally Wheelwright
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.78-84, 2004-04-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
16
被引用文献数
127 194

Baron-Cohen, Wheelwright, Skinner, Martin, and Clubley (2001) constructed brief, self-administered instruments named the Autism-Spectrum Quotient (AQ), for measuring the degree to which an adult with normal intelligence has the traits associated with the autistic spectrum. In this paper, we report on a Japanese version of this new instrument. Three groups of Japanese subjects were assessed. Group 1 (n=57) consisted of adults with Asperger Syndrome (AS) or high-functioning autism (HFA). The other two groups were control groups. Subjects of Group 2 (n=194) were normal adults and those of Group 3 (n=1050) were students selected from five Universities in Tokyo and Chiba. The adults with AS/HFA had a mean AQ score of 37.9 (SD=5.31), which was significantly higher than the two control groups (Group 2: X=18.5, SD=6.21, and Group 3: X=20.7, SD=6.388). While eighty-eight percent of the adults with AS/HFA scored more than 33 points, only 3% of subjects in the two control groups indicated those points. Among the controls, males scored slightly but significantly higher than females. The reliability of the AQ in both test-retest and inter-rater measures were significantly high.
著者
若林 明雄
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.122-137, 1998-03-31 (Released:2017-07-24)

本論は, 1980年以降アメリカを中心に社会現象にまでなった`多重人格(現在は解離性同一性障害)'という現象について, その基底症状である解離という現象と併せて精神病理学的ならびに認知心理学的に再検討し, その症状の発現メカニズムについて考察することを目的とする.まず, 多重人格の基底症状である解離性障害(従来のヒステリー)について精神分析学的視点から病因論的に考察し, Freud以降心因論的に説明されていた解離症状が外傷性障害として再認識される傾向があることを指摘した.次に, パーソナリティ傾向と多重人格との関係について, 被催眠性-ヒステリー傾向の観点から両者の親和性を明らかにした.さらに, 多重人格を含む解離性障害の基本症状である健忘(記憶障害)について認知心理学的に検討し, 解離は心因性の記憶機能障害であり, 脳神経レベルの機能障害を伴うこと, そして多重人格は特殊な場合における記憶障害である可能性があることを示唆した.さらに, 解離および多重人格と記憶に関する神経生理学的研究から, 障害の基底に大脳辺縁系が関与していることを示した.以上の諸点を整理した結果, 多重人格症状は, 生得的な被催眠性の高さを準備状態とし, そこに自我形成期の前後にわたる重大な外傷的体験を被ることによって形成される個人内同一性間健忘という特殊な解離症状として説明できることを明らかにした.
著者
若林 明彦
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.703-725, 2003-12-30 (Released:2017-07-14)

環境問題を根本的に解決するための思想や哲学の構築において、日本は七〇年代に「水俣病」をその象徴とする悲惨な公害被害体験をしたにもかかわらず、欧米に比べて遅れていると言わざるを得ない。近年になってやっと、欧米の「環境倫理学」が注目され、その研究が盛んになったが、そのー方で、そうした「環境倫理学」に対抗するかのように、その倫理学的アプローチを皮相的なものとし、古代日本に見られる自然共生的エトス(心的傾向)を再生することこそが根本的な解決に繋がるとする梅原猛・安田喜憲らの「森の思想」や岩田慶治の「ネオ・アニミズム」論も注目されている。本論文では、まず欧米の環境思想の主要な理論を概観し、それらが共通して倫理学的アプローチをとっていることを指摘し、次にそれと対比的にエトスからのアプローチをとる「森の思想」や「ネオ・アニミズム」論の問題点を指摘する。最後に、両アプローチの相補的関係について述べる。
著者
若林 明雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.296-312, 1993-10-30 (Released:2010-07-16)
参考文献数
166
被引用文献数
3 3

The purpose is to review the trend in “person-situation controversy”, and to comment on recent literature and their implications. “Person-situation controversy” is related to whether people do or do not have consistent personality traits. Although the topic is not at all new, it aroused a great deal of interest since the publication of Mischel's (1968) “personality and assessment”. Here, we began with Mischel's criticism against the trait approach, then, we discussed two opposite viewpoints of situationism and interactionism. Situationism is the idea that situational variables influence more on the behavior of people than personality traits, while interactionism is the idea that personality traits and situations interact with each other to influence behavior. Furthermore, this article focussed on three conceptual issues, such as consistency, prediction, and meaning of traits. Finally, the reconsideration and evaluation of the two viewpoints were presented from a viewpoint of personality psychology.
著者
若林 明雄
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.122-137, 1998

本論は, 1980年以降アメリカを中心に社会現象にまでなった`多重人格(現在は解離性同一性障害)'という現象について, その基底症状である解離という現象と併せて精神病理学的ならびに認知心理学的に再検討し, その症状の発現メカニズムについて考察することを目的とする.まず, 多重人格の基底症状である解離性障害(従来のヒステリー)について精神分析学的視点から病因論的に考察し, Freud以降心因論的に説明されていた解離症状が外傷性障害として再認識される傾向があることを指摘した.次に, パーソナリティ傾向と多重人格との関係について, 被催眠性-ヒステリー傾向の観点から両者の親和性を明らかにした.さらに, 多重人格を含む解離性障害の基本症状である健忘(記憶障害)について認知心理学的に検討し, 解離は心因性の記憶機能障害であり, 脳神経レベルの機能障害を伴うこと, そして多重人格は特殊な場合における記憶障害である可能性があることを示唆した.さらに, 解離および多重人格と記憶に関する神経生理学的研究から, 障害の基底に大脳辺縁系が関与していることを示した.以上の諸点を整理した結果, 多重人格症状は, 生得的な被催眠性の高さを準備状態とし, そこに自我形成期の前後にわたる重大な外傷的体験を被ることによって形成される個人内同一性間健忘という特殊な解離症状として説明できることを明らかにした.
著者
若林 明雄 東條 吉邦 Baron-Cohen Simon Wheelwright Sally
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.78-84, 2004
被引用文献数
9 194 42

Baron-Cohen, Wheelwright, Skinner, Martin, and Clubley (2001) constructed brief, self-administered instruments named the Autism-Spectrum Quotient (AQ), for measuring the degree to which an adult with normal intelligence has the traits associated with the autistic spectrum. In this paper, we report on a Japanese version of this new instrument. Three groups of Japanese subjects were assessed. Group 1 (<i>n</i>=57) consisted of adults with Asperger Syndrome (AS) or high-functioning autism (HFA). The other two groups were control groups. Subjects of Group 2 (<i>n</i>=194) were normal adults and those of Group 3 (<i>n</i>=1050) were students selected from five Universities in Tokyo and Chiba. The adults with AS/HFA had a mean AQ score of 37.9 (<i>SD</i>=5.31), which was significantly higher than the two control groups (Group 2: <i>X</i>=18.5, <i>SD</i>=6.21, and Group 3: <i>X</i>=20.7, <i>SD</i>=6.388). While eighty-eight percent of the adults with AS/HFA scored more than 33 points, only 3% of subjects in the two control groups indicated those points. Among the controls, males scored slightly but significantly higher than females. The reliability of the AQ in both test-retest and inter-rater measures were significantly high.
著者
若林 明彦 ワカバヤシ アキヒコ Akihiko WAKABAYASHI
雑誌
千葉商大紀要
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.335-352, 2004-12-31

1960年代後半から1970年代にかけて環境問題に取り組む思想は人間中心主義から人間非中心主義,つまり環境主義へと転換した。後者には様々な思想が含まれるがその中でもアルネ・ネスが提唱したディープ・エコロジー運動は思想だけでなく実際の環境保護運動にも大きな影響を与えた。本稿は,ネスのディープ・エコロジーの概念及びそれを基礎づける彼の環境哲学を概観するものである。彼は,人間中心主義的なシャロー・エコロジーに対して生命圏中心主義,生態系中心主義としてのディープ・エコロジーの原則を,それがどのような思想を持つ者でも同意できる八項目のプラット.ホームとして提起する。そしてそのプラット・ホームがどのように究極的規範から合理的に導出され,どのように環境保護のための実践的規則へと合理的に展開されるかを示す「エプロン・ダイアグラム」という図を呈示することによって,ディープ・エコロジー運動がいかに根源的かを示す。また,プラット・ホームを導出する究極的規範は,同一のものである必要はなく,各自がそれを宗教や哲学に求めてもかまわないとされる。そこでネスは,「自己実現!」を究極的規範とする彼固有の環境哲学「エコソフィT」を展開する。それは,利己主義的な自己(self)の枠組みを突破して行き,最終的には生命圏全体を包括する自己(Self)にまで自己を拡大することを意味している。
著者
河村 康佑 若林 明雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.13-19, 2017-08-31 (Released:2017-12-16)
参考文献数
16

われわれは日常生活において,痛みを感じている他者を観察すると,痛みの理解や不快感の喚起が生じる.こうした「痛みの共感」に関する先行研究では,他者の痛み場面を示す表象として痛み事象と痛み表情の両方が用いられてきた.本研究の目的は,痛み事象と痛み表情が,他者の痛み場面において,他者の痛み理解と自身の不快感喚起にそれぞれどの程度影響を与えているのか明らかにすることであった.本研究では,痛み場面とは痛み事象と痛み表情から構成されるものとした.実験参加者は,痛み事象と表情が同画面内に映るように撮影した動画刺激に対し,推定されるターゲットの痛みと自分自身の不快感を0~10で評定した.実験の結果,不快評定においては,痛み事象の影響が痛み表情の影響よりも大きいことが示唆された.一方で,ターゲットの痛み推定では,痛み事象と痛み表情の影響に違いはなかった.このことから,他者の痛み場面における不快感喚起には,痛み事象が主として寄与していることが示唆された.
著者
若林 明雄 バロン-コーエン サイモン ウィールライト サリー
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.271-277, 2006-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
28
被引用文献数
15 27

Empathizing is a drive to identify another person's emotions and thoughts and respond to them appropriately. Systemizing is a drive to analyze systems or construct systems. The Empathizing-Systemizing (E-S) model suggests that these are major dimensions in which individuals differ from each other, and women being superior in empathizing and men in systemizing. In this study, we examined new questionnaires, the Empathy Quotient (EQ) and the Systemizing Quotient (SQ). Participants were 1 250 students, 616 men and 634 women, from eight universities, who completed both the EQ and SQ. Results showed that women scored higher than men on the EQ, and the result was reversed on the SQ. Results also showed that humanities majors scored higher than sciences majors on the EQ, and again the result was reversed on the SQ. The results were discussed in relation to the E-S theory of gender differences.
著者
若林 明雄
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.128-137, 2000-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
3 2

本研究では, ストレスへの対処スタイルと対処方略選択の関係について, 現職教員を対象として検討を行った。研究1では, 288名の現職教員に対し, Marlowe-Crowneの社会的望ましさの尺度とMASを実施し, その結果から4つの対処スタイルに該当する被験者, Repressor24名, Sensitizer 24名, Lowanxious 14名, Defensive-anxious 12名を抽出した上で, この74名に対して日常生活でのストレス状況における対処方略選択を調べるTAC-24を実施した。その結果, 対処スタイルによって日常生活でのストレスに対する対処方略選択にはある程度の違いが認められた。特に, Repressorが問題解決に向けて積極的な対処方略を選択する傾向があるのに対して, Sensitizerは責任転嫁や放棄・諦めのような消極的な対処方略を選択する傾向があるというように, 対照的な傾向を示した。研究IIでは, 研究1で抽出された74名の被験者に対して, 学校での職務上のストレス状況を5つ設定し, それぞれの場面での対処方略選択について回答を求めた。その結果, 5つの場面を通じてみると, Repressorが計画, 情報収集, 努力などの積極的対処方略を選択する傾向があるのに対して, Sensitizerは, 思考回避や諦め, 正当化などの消極的対処方略を選択する傾向が認められた。また, 5つの場面ごとの対処方略選択の傾向を調べた結果, 場面によって対処方略選択に4つの対処スタイル間で違いがあることが認められた。
著者
若林 明雄 内山 登起夫 東條 吉邦 吉田 友子 黒田 美保 バロン-コーエン サイモン ウィールライト サリー
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.534-540, 2007-02-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
13
被引用文献数
6 15

The Autism-Spectrum Quotient (AQ) children's version has confirmed reliability and validity in the UK. In the current study, the children's AQ was administered in Japan to investigate whether the UK results are found in a very different culture. Two groups of children from primary and secondary schools were assessed: Group 1 (n=81) children with Autism Spectrum Disorders (ASD, including Asperger Syndrome and high-functioning autism); Group 2 (n=372) randomly selected controls, age-matched with Group 1. The children with ASD had a mean AQ score of 31.9 (SD=6.69), which was significantly higher than controls (mean AQ=11.7, SD=5.94). Males scored significantly higher than females in the control group, but not in the ASD group. The pattern of difference between the Japanese clinical group and the control group was remarkably similar to the findings in the UK.
著者
若林 明彦
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.155-170, 2003-12-31

本稿は現代の正義概念の規範的モデルであるところのアリストテレスの正義原理(「等しきものは等しく扱うべし」)に遡り,それが現代では「経済のグローバル化」に伴いますます形式主義化し矛盾を生んでいるとし(例えば,特許権重視の経済システムが社会的弱者が必要不可欠の財やサービスを入手できなくするという人権無視),それを批判的に検討することによって,現代における真の正義原理の捉え方を提起するものである。その批判は福音書の「ぶどう園の労働者の譬え」の中で,愛という正義原理と対置される形ですでに示されていた。神学研究者はこれを神的愛として捉えるが,それはむしろ基本的人権への配慮として解釈すべきである。実は,アリストテレスも形式主義的正義原理の暴走を抑制するためにエピエイケイアというもう一つの正義原理を提起していた。現代社会に求められる正義の原理は,社会的強者だけにしか通用しない「等しさ」に拘泥する形式主義的正義原理ではなく,社会的弱者をも包括した真の意味で万人が「等しさ」を享受できる原理でなければならない。
著者
若林 明
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
木更津工業高等専門学校紀要 (ISSN:2188921X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.47-53, 1971-03

Francis Bacon, who was by nature a reformer, could not content himself with the traditional philosophies and learnings. He intended to reform them and published Instauratio Magna (The Great Instauration) in 1620. Besides this book, his thoughts are clearly stated in many works between 1603 and 1609. Bacon set a great value on Natural Philosophy which had been degraded to the offices of a servant, and appraised her to be the great mother of learnings. For the control and mastery of nature, he advocated using the true induction. Though his inductive method did not bring any discoveries, Bacon's ideas were able to exert much influence upon other thinkers, especially upon French Encyclopedists, through the image of progress.