著者
寺澤 孝文 吉田 哲也 太田 信夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.510-522, 2008-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
2

本研究は, 一般の学習内容の習得プロセスに潜在記憶が関わっている可能性に着目した。特に, 潜在記憶研究で報告されている, わずかな学習の繰り返しの効果が長期に保持される事実から, 一般的な学習の効果が長期にわたって積み重なっていくことを予測し, その予測の検証を目指した。具体的には, 習得に時間がかかり, 何度勉強してもなかなか憶えられないと感じる英単語学習について, 高校生を対象に8ヵ月にわたる長期学習実験を実施した。実験では, 1000を超える英単語の一つ一つについて, 学習とテストがいつ生起するのか, また, 学習とテストのインターバルがほぼ等しくなるよう学習スケジュールをあらかじめ制御する新しい方法論が導入された。学習者はコンピュータを使った単語カード的な学習を自宅で継続した。膨大な反応データを集計, 分析した結果, 自覚できないレベルで, 学習の効果が積み重なっていく様子が明確に描き出された。考察では, この事実と潜在記憶の関係性が指摘され, 新たに導入されたスケジューリング原理の有効性が確認された他, 本研究の教育的意義が示された。
著者
吉澤 隆志 太田 信夫 藤沢 しげ子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.249-253, 2008 (Released:2008-06-11)
参考文献数
12
被引用文献数
8 6

本研究の目的は,学習意欲が定期試験成績に及ぼす効果を調べるものである。対象は,当学院理学療法学科2年生,昼間コース学生41名および夜間コース学生40名とする。ここで,学習意欲要因としては,外発的動機づけ・内発的動機づけ・健康度(特に精神的健康度)・対人関係・学院への適応度の5つを挙げた。次に,これらの学習意欲が定期試験成績に及ぼす効果について調べた。結果としては,夜間コース学生において学院への適応度と定期試験成績との間に正の関係が見られた。よって,今後の学生指導としては,担任を中心として学生がクラスや学院に馴染めるような配慮を積極的に行っていく必要があると考える。加えて,授業方法の工夫も考慮していきたいと考える。
著者
太田 信夫 加藤 正 向後 博 布田 由之 望月 一男 永田 善郎 河路 渡
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.183-188, 1976

日常診療において, 腰痛患者に接することは多く, 腰椎レントゲン上, 移行椎を見る事もまた多い。古くより両者の因果関係が多く論じられて来ているが, 今回少数ではあるが, 腰痛者, 非腰痛者の腰椎レントゲン写真を比較検討し, 腰痛と移行椎がはたして, かかわりあいを持つものかどうか改めて統計的考察を試てみたいと思う。
著者
太田 信夫
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.3_3-3_11, 1995-08-31 (Released:2008-10-03)
参考文献数
21

The paper explains implicit memory research to those not knowledgeable about implicit memory. First, I define implicit and explicit memory. Second, I describe phenomena of implicit memory known as priming. Different kinds of priming are discussed in the context of a multiple memory systems account of implicit memory. Third, I compare the strengths and the weaknesses of the memory systems approach and the processing approach to explain implicit memory. The need for a comprehensive theory of memory is discussed. Last, I discuss three important issues for future research: the role of consciousness in implicit and explicit retrieval, comparisons among memory systems and cognitive processing approaches, and procedual memory as a point of contact of body and mind.
著者
石橋 明 西山 芳夫 遠藤 幹男 河路 渡 加藤 正 布田 由之 望月 一男 太田 信夫
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.113-117, 1977 (Released:2017-02-13)

掌蹠膿疱症132例中14例に, 胸骨部の有痛性の整形外科的症状(胸骨体部柄部間関節症5例, 胸鎖関節炎4例, Tietze症候群4例)を見出した。整形外科的症状を伴う掌蹠膿疱症の症例は, 概して掌蹠以外の指趾, 手足背, 四肢, 体幹にも撒布診を認め, AndrewsのGeneralized pustular bacteridに一致する皮膚症状を示した。またしばしば慢性扁桃炎などの巣感染の急性増悪後に増悪し, 扁剔や抗生物質投与に反応した。従って皮膚症状のみならず, 整形外科的症状も巣感染(アレルギー)と関連性を有することが推察された。
著者
綿貫 理明 萩尾 重樹 太田 信夫 恩田 彰 綿貫 理明
出版者
日本超心理学会
雑誌
超心理学研究 (ISSN:1343926X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.108-117, 1997-11-25 (Released:2017-08-09)

The symposium of the 29th annual conference was hels on the topic of "Memory and Parapsychology". S.Hagio presented his experiments of investigating parapsychological effects in associative memory process, referring to the three important results by previous researchers. N.Ohta, who is the Japanese authority of episodic memory, introduced his experiments of the word-completion test he made to see a priming effect. His results show that the reproduction of the once-learned word is better when together with a low-associated concomitant word than a high-associated one. A.Onda discussed the omnipresent and transcendent field of transmitting information from his background of creativity psychology. O.Watanuki discussed the memory hierarchy and ultra-high density recording technology of computers and its relation to parapsychology. Active discussions were developed on the topics of episidic memory, the memory process and creativity, the subliminal effect, and so forth.
著者
小松 伸一 太田 信夫
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.155-168, 1999-03-30

記憶研究において近年話題になっているトピックとして, 作業記憶, 潜在記憶, 展望記憶, 記憶の歪み, 自伝的記憶を取り上げ, それぞれのトピックにおける研究動向を展望した。作業記憶研究においては, 中枢実行系の機能を解明していくことがこれからの研究の焦点となっていた。潜在記憶研究では, 無意識的記憶過程との対比によって意識的記憶過程の解明が試みられ, 意図的な想起, 検索結果のモニタリング, 主観的意識経験, という3つの特徴が明示された。これら3つの特徴は, 生態学的妥当性を指向した研究の中で, より詳細な分析が積み重ねられてきた。まず展望記憶は, 回想記憶と比較した場合, 自己始動型検索に依存している点が特徴となっていたが, この特徴は実行機能の反映とみなされた。次に, 検索過程のモニタリングも実行機能の反映と考えられ, その失敗は記憶の歪みや誤りを引き起こすことが指摘された。さらに, 自伝的記憶の想起には, 自己概念が密接に関わり合っていることが示された。実行機能の解明は, 今後の記憶研究にとって重要な課題であることを示唆した。