- 著者
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宇佐美 文理
秋庭 史典
岩城 見一
上村 博
魚住 洋一
碓井 みちこ
加藤 哲弘
篠原 資明
長野 順子
根立 研介
岸 文和
島本 浣
西 欣也
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究は、〈醜〉という〈否定美〉に注目した。それは広い意味でのアートを、社会的、政治的文脈に戻して捉え直すことが、今日の大切な課題だと考えられるからである。〈醜〉の判定と、それを〈排除〉しようとする感情とは、人々の倫理観や宗教観と深く関わっている。また政治イデオロギーや、宗教的信念は、人間の感情の奥底にまで染み込み、美や醜の判断はそれに結びついている。〈醜〉に考察を加えることは、単に非歴史的な美的カテゴリー論にとどまるものではなく、きわめて歴史的社会的、そして政治的な文脈の中で知らないうちに形作られる、私たちの感情の文化的枠組みに光を当て、そこに隠れている力学を批判的に考察する文化研究的作業になる。古今東西の〈醜〉現象(判定)と、〈排除〉の感情の構造を考察し、現在の、私たち自身の経験のあり方に反省を加えること、これが本研究の主な課題となる。特に「醜」が主題にされたのは、このような否定美への感情こそが、人間の美意識の変遷のありようをむしろ鮮明に示すと思われるからであるし、また同時に、美的カテゴリーと政治的感情、人間経験におけるイメージと言語、感情とイデオロギーとの切り離せない関係を灸り出す重要なヒントになると思われるからである。本研究は、平成17、18年度は各年4、5回の公開研究会を開き、ゲストをも迎えて、課題遂行のための議論の場を設けた。最終年度は、これらの成果に基づく報告書作成に当て、分担者から寄せられた諸論考において、多様な切り口で醜の問題が論じられている。この報告書は、「醜の国」が「美の国」以上に豊穣な国であること多様な角度から照らし出すであろう。