著者
土平 博
出版者
北海道地理学会
雑誌
地理学論集 (ISSN:18822118)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.38-44, 2014-03-12 (Released:2014-09-30)
参考文献数
17

江戸時代後期から幕末にかけて,幕府による蝦夷地警備と経営のため奥羽諸藩に割り当てられた領地は,本領に対して飛地領に相当する。諸藩はこの飛地領の要所に陣屋を構築したが,その場所については領域内の諸条件を考慮に入れつつ選定していた。本稿では,盛岡藩と仙台藩が構築した陣屋をとりあげて,その形態や構造について検討した。両藩が蝦夷地領内に構築した元陣屋と出張陣屋・屯の間には規模の違いがみられた。しかし,盛岡藩の場合,元陣屋と出張陣屋・屯所は規模の違いがみられるものの,その設計にあたって統一的なプランのもとで構築されていたと考えられる。一方,仙台藩の元陣屋は盛岡藩の場合と大きく異なる形態をとっており,仙台領内の「要害」・「所」・「在所」をふまえたプランが編み出されたようにも考えられる。
著者
土平 博
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 = Memoirs of Nara University (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.47, pp.55-63, 2019-02

本報告は、桑山氏によって築かれた陣屋ならびに陣屋町の形態をみたうえで、桑山氏改易後の史料を検討しながら、永井氏の新庄について検討し、新庄陣屋と「町」の形態について明らかにしていくことが目的である。桑山氏新庄藩の陣屋および侍屋敷の配置を絵図、地籍図、空中写真等を用いて地図上で復原する作業を行い、同氏改易後の陣屋および侍屋敷の扱いについて、史料分析を通じて考察した。桑山氏は陣屋・侍屋敷・町屋敷を計画的に配置して一体化させた陣屋町をプランとして考えていたことが理解できる。しかし、桑山氏改易後に入封した永井氏は、新庄に陣屋を構えておらず、それに付帯していた侍屋敷も取り壊されていたと考えられる。その跡地は農地へと転換された。その結果、桑山氏による計画的な町屋敷のみが残り、周辺地域の在郷の町として存続していったことが明らかとなった。
著者
戸祭 由美夫 平井 松午 平川 一臣 木村 圭司 増井 正哉 土平 博 澤柿 教伸 小野寺 淳 財城 真寿美 澤柿 教伸 宮崎 良美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

幕末の蝦夷地には、ロシア帝国をはじめとする列強の進出に備えるため、幕府の箱館奉行所をはじめ、東北諸藩による陣屋・囲郭が軍事施設として沿岸各地に建設された。本研究は、そのような軍事施設を研究対象として、歴史地理学・地図学・地形学・気候学・建築学の研究者が共同研究チームを組んで、古地図・空中写真・数値地図・気象観測資料といった多様な資料や現地調査によって、とりわけ蝦夷地南西部に主たる焦点を当てて、それら軍事施設と周辺部の景観を3次元画像の形で復原した。
著者
平井 松午 鳴海 邦匡 藤田 裕嗣 礒永 和貴 渡邊 秀一 田中 耕市 出田 和久 山村 亜希 小田 匡保 土平 博 天野 太郎 上杉 和央 南出 眞助 川口 洋 堀 健彦 小野寺 淳 塚本 章宏 渡辺 理絵 阿部 俊夫 角屋 由美子 永井 博 渡部 浩二 野積 正吉 額田 雅裕 宮崎 良美 来見田 博基 大矢 幸雄 根津 寿夫 平井 義人 岡村 一幸 富田 紘次 安里 進 崎原 恭子 長谷川 奨悟
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

本研究では、城下町絵図や居住者である侍・町人の歴史資料をもとに、近世城下町のGIS図を作成し、城下町の土地利用や居住者の変化を分析した。研究対象としたのは米沢、水戸、新発田、徳島、松江、佐賀など日本の約10ヵ所の城下町である。その結果、侍屋敷や町屋地区の居住者を個別に確定し地図化することで、居住者の異動や土地利用の変化を把握することが可能となった。その点で、GISを用いた本研究は城下町研究に新たな研究手法を提示することができた。
著者
野間 晴雄 香川 貴志 土平 博 河角 龍典 小原 丈明
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2011年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.48, 2011 (Released:2012-03-23)

1.目的・視角と本発表の経緯 大学学部専門レベルの地理学研究の知識と技術を網羅した教科書・副読本として1993年刊行の『ジオグラフィック・パル 地理学便利帖』(海青社)1)は,情報アップデート化2)を除いて,2001年に『ジオ・パル21 地理学便利帖』3)以降,大きな改訂をしてこなかった。この間,日本の大学地理学教育をめぐる環境変化,IT技術の急速な変化,高等学校での「地理」の未履修者の増加とその対応,隣接分野への地理学的アプローチの拡がりと地域学・観光などのコース・学科や学部の新設などにより,提供すべき知識・内容を抜本的に改訂・一新する必要が生じてきてきた。 本発表の目的は,2012年春の刊行をめざした全面改訂版である『ジオ・パルNeo 地理学・地域調査便利帖』(仮題)の要諦を,旧版と比較して解説し,現代の大学生が身につけるべき地理学の基礎知識や技術や情報について考察することである。副次的な意図としては,改訂内容への忌憚のない意見・情報を学会参加者から求め,最終稿へ導くことである。 2.大学の地理学教育をめぐる環境変化 この約20年間,アカデミック地理学の動きとしては、環境論が装いを新たにして再浮上してきたこと,計量・モデル志向の方法論の相対的後退,自然地理学の細分化,新しい文化社会地理学・政治地理学の隆盛,場所・地域論の見直し,地理思想の拡がりなどである。技術論としては,GIS,ITの目覚ましい発達,とりわけインターネットを通じた大量かつ広範囲の情報の入手,加工が容易になったことがあげられる。 日本の大学における地理学の立場も大きく変わった。大学「大綱化」による教養課程の廃止と専門科目の低学年次への繰り下げ,大学における組織改組,多様な(一部には意味不明な)専攻・専修・コースの設立や改称,地理学やその隣接分野を学べる専攻の多様化・分散化などがあげられる。高等学校「地理」が必修科目からはずれたことによる学生の基礎知識の低下と格差拡大,ゆとり教育の推進による常識・学力の低下,学生の内向化,フィールドワークや基礎的技術を疎んじるインターネット過信などの状況がある。 3.全面改訂作業の内容 ―旧版との比較を通じて― 旧版『ジオ・パル』の趣旨には,故・浮田典良氏の地理教育・地理学への高い志が凝縮されている。詭弁を排し,徹底して大学生が学ぶべき内容をコンパクトに盛り込む便覧を意図し,2~4年ごとの改訂によって最新情報の提供をめざした。その構成は,地理学史などの本質論から,地理学の諸分野,研究ツール,文献,分析手法,キーワードに及んだ。今回の全面改訂は,旧執筆者の意見を汲み込みながら,現役で学部の実習や演習を担当している若手・中堅4名の十数回にわたる討議・共同作業により,3部構成(イントロ,スタディ,アドバンス)に全体を組み替えた。 「イントロ」は,高校「地理」を履修せずに入学する多様な学生の注意をひき,現在の学生の最大の関心である就職や資格にも配慮した入口~出口解説である。本論が「スタディ」で,さまざまな授業で随時参照でき,かつ4年間あるいは卒業後も使える有用性をめざした。地図の利用と自ら主題図を作成する技術,地域データの入手法,地域調査事例,GISの入門などを充実させるとともに,学生がプレゼンテーションや卒業論文を書く際の注意事項などを追加した。その一方で,地理学史や著名学者,学会など,大学院をめざす人,より高い専門性を追求する学生向きの事項は「アドバンス」にまわした(図1)。 4.今後のよりよき改良と修正に向けて 研究発表時には野間が全体の概要とねらいを,香川が具体的な改訂版の新機軸や内容の一端を紹介する。まだ,全体に盛り込むべき内容が完全には確定していない。情報として盛り込むべき事項(専攻名称や地方学会の雑誌情報)も変化が激しい。会場入口に置いた追加資料に挟み込まれたアンケート(無記名)と情報提供について,ご協力を賜れば幸いである。 注・文献 1)浮田典良編『ジオグラフィック・パル 地理学便利帖』海青社,1993年[白表紙]。2)浮田典良編『ジオグラフィック・パル 地理学便利帖1998-1999年版』海青社,1998年[紫表紙]。3)浮田典良・池田碩・戸所隆・野間晴雄・藤井正『ジオ・パル21 地理学便利帖』海青社,2001年[赤表紙]。