著者
伊藤 桜子 小口 江美子 市村 菜奈 稲垣 貴惠 村山 舞
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.11-27, 2019

超高齢社会のわが国では,高齢者の筋力の維持・増進を図るため,多くの運動教室が開かれており,運動は継続してこそ介護予防効果が高まるとされている.小口が考案した音楽運動療法プログラム(以下GEMTOM(小口メソッド)とする)は,心身の状態を改善し,良好に維持するリハビリトレーニングや介護予防運動として活用され,音楽療法理論に基づく,主に椅子座位での体操を活用した運動療法により,機能改善効果を高めることが示唆されている.そこで今回は,小口メソッドを使用する地域の介護予防教室に参加する高齢者が,介護予防のための運動を継続するには,「楽しい」と思える運動を行うことが,1つの大切な要因であると考え,「運動する際に楽しいと感じる要因は何か」,「楽しみの度合いはどの程度か」「運動や音楽に対する意識はどうであるのか」等について調査し,運動継続との関連性について検討した.O区介護予防教室の音楽運動療法プログラムに,終了時まで継続参加した65歳〜90歳(平均年齢78.2±6.1歳)の男女12人を対象とし,3か月経過時(初心時)と9か月後の終了時点(継続時)にアンケート調査を実施し,その結果を比較検討した.運動の楽しさ得点と継続希望得点の2者間には,初心時(r=0.814,p=0.007),継続時(r=0.640,p=0.034)の両方において有意な相関があり,楽しさが増せば,継続希望も増すことが明らかとなった.また同参加者への別項目のアンケート調査から,初心時には仲間や音楽など精神的な要素を楽しいと感じ,一方,継続時には運動による身体的変化の自覚を楽しいと感じる傾向があり,楽しさの要因が初心時と継続時では異なる傾向を示した.さらにまた,同参加者への別項目のアンケート調査から,参加者は初心時より継続時において運動時の音楽の必要性をより強く感じる傾向を示し,運動に慣れていない初心時には,音楽は運動のリズムを取るのに必要だと感じ,運動に慣れた継続時には,音楽のリズムが運動をしやすくすると感じる傾向があった.これらの結果から,運動の苦手な高齢者に運動を継続させるためには,初心時から継続時まで参加者が「楽しい」と感じる要因が運動プログラムの中に存在することが必要であり,かつ運動指導者は,参加者の経時的に変化する楽しさの要因に合わせた「楽しさ」を提供する工夫が必要であることが示唆された.運動に音楽が加わることにより,参加者の楽しさが増すだけでなく,初心時に,音楽は参加者が運動のリズムを取るのを助け運動に慣れやすくし,継続時に,音楽のリズムは参加者に体を動かしやすいと感じさせる傾向があった.音楽と運動を同時に起用し,仲間と共に無理なく体を動かすGEMTOM(小口メソッド)は,楽しさや覚えやすさが継続性に繋がることから,参加者の心身の機能維持や機能改善に効果的である.加えて,音楽のメロディーやリズムは参加者の脳に働きかけて運動のリズムを取りやすくし運動になじませ,そしてまた,体を動かす刺激は脳にフィードバックされて音楽と呼応し体を動かしやすいと感じさせている可能性があることから,GEMTOM(小口メソッド)は,認知機能の衰えがみられる参加者や高齢者の介護予防には,より適した運動であることが示唆された.本研究の結論は以下である.①運動の楽しさと継続性には初心時,継続時ともに有意な相関が認められ,継続時に参加者の楽しさは増加していた.②運動継続には,参加者が「楽しい」と感じられる要因が必要であり,その要因は運動に慣れていく時間経過と共に変化する傾向があった.③高齢者の運動継続および介護予防効果の向上には,参加者の楽しさの要因となるものをプログラムに段階的に取り入れて提供することが重要であると考えられる.
著者
柳井 晴夫 亀井 智子 中山 和弘 松谷 美和子 岩本 幹子 佐伯 圭一郎 副島 和彦 中野 正孝 中山 洋子 西田 みゆき 藤本 栄子 安ヶ平 伸枝 井上 智子 麻原 きよみ 井部 俊子 及川 郁子 大久保 暢子 小口 江美子 片岡 弥恵子 萱間 真美 鶴若 麻理 林 直子 廣瀬 清人 森 明子 奥 裕美 外崎 明子 伊藤 圭 荘島 宏二郎 植田 喜久子 太田 喜久子 中村 洋一 菅田 勝也 島津 明人 金城 芳秀 小林 康江 小山 眞理子 鶴田 恵子 佐藤 千史 志自岐 康子 鈴木 美和 高木 廣文 西川 浩昭 西山 悦子 野嶋 佐由美 水野 敏子 山本 武志 大熊 恵子 留目 宏美 石井 秀宗 大久保 智也 加納 尚美 工藤 真由美 佐々木 幾美 本田 彰子 隆 朋也 中村 知靖 吉田 千史 西出 りつ子 宮武 陽子 西崎 祐史 山野 泰彦 牛山 杏子 小泉 麗 大西 淳子 松本 文奈 鶴見 紘子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

近年、看護系大学の急増と医療の高度化に伴い、卒業までに取得すべき看護実践能力の評価の重要性が増加している。その一環として、臨地実習に入る直前の段階までに看護学生が取得すべき知識・能力を正しく評価しておくことは看護実習の適正化のための急務の課題である。このような状況に鑑み、申請者は、2008~2010年に科学研究費補助金を受け、看護系大学の学生が臨地実習以前に必要とされる知識・能力の有無を検証することを目的として、看護学18領域から約1500の多肢選択式形式の設問を作成し、730名の学生に紙筆形式のモニター試験、および、220名の学生に対するコンピュータ試験(CBT:Computer Based Testing)を実施し、その結果を比較し、全国看護系大学共用のコンピュータ試験の有用性を確認した。