著者
小室 隆 山室 真澄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

日本全国のの平野部の湖沼では戦後の1950年代からの高度経済成長期を通じて、周辺田畑での除草剤使用や(山室ほか 2014)、人口増加や産業の近代化に伴いう、富栄養化がの進行しにより、湖沼水質や植生が劇的に変化をした。2003年には「自然再生推進法」が制定され、日本全国の湖沼においてもNPOや地方自治体によって自然再生活動が実施されている。しかしながら、それらの活動の多くは再生目標の時代設定や対象種の選定が、必ずしも科学的根拠に基づいて行われておらず、人々の主観的な考えに基づき実施されている例が散見されるいるとは言えない状況にある。即ち、本来ならば、湖沼環境が激変する高度経済成長期以前の状況を定量的に把握した上で、産・官・学の協働で再生目標などを設定すべきであるが、。しかし当時の状況が容易に再現できないことから、本来その水域に無かったり、環境悪化後に一時的に繁茂した植物が再生の名の下に植栽される例が散見される。必ずしもそのような状況ではない。 本研究では関東平野で最も水域面積が広く、自然再生アサザの保全・再生活動が行われている霞ヶ浦(西浦)を対象とした。霞ヶ浦は水域面積200km<sup>2</sup>、平均水深4mと浅く、富栄養化の進行した平野部湖沼である。霞ヶ浦も他の平野部湖沼と同様に戦後から高度経済成長期を通じて水生植物が激減した湖沼である(山室・淺枝 2007)。 浮葉植物(Floating-leaved plant)に分類されるのアサザ(<i>Nymphoides peltata</i>)の霞ヶ浦での植栽・保全活動による影響について加茂川・山室(2016)によりは、アサザ植栽を行った消波施設陸側では、底質の細粒化と有機物濃度と全粒化物硫化物の濃度の増加がを確認されておりし、環境への影響環境が悪化していると指摘しているが懸念される。本研究ではこのアサザの生育状況について、霞ヶ浦湖岸全域を対象に調査することで、植栽・保全事業による効果を検討することを目的とした。<br> 本研究では2010年と2015年の2度に渡り、霞ヶ浦湖岸全周を対象に踏査を行い、アサザが生育している地点を地図に落とし、写真撮影を行った。その際、生育している地点の座標、アサザの状態も同時に記録した。2度の調査でアサザの生育地点の変化傾向、そしてと繁茂面積を求めた。面積の計算にはArcGISを用い、踏査の際に撮影した写真から基準長(生育場所で距離がわかる対象物を同じ画角内に収まるように撮影し、Google Earthや地形図から長さを求めた求めた長さ)を求め算出し、アサザの繁茂面積を求める際にスケールとして用いた。この手法によりアサザ植栽による湖岸環境の変化を検討した。また、2009年に国土交通省関東地方整備局霞ヶ浦河川事務所が行ったアサザ分布調査結果を用い比較検討を行った。<br> 2015年にでは155地点でアサザの繁茂が確認された。植栽事業は右岸の鳩崎、古渡、中岸の石田、根田、左岸の永山の計5地点で行われた。これら植栽地のうちアサザを確認できたのは根田と永山の2地点分布は右岸2地点、中岸2地点、左岸11地点で左岸側に集中していた。2のみで、残りの13地点の大部分は自然に進入したと判断された。2015年に2009年から2015年にかけて4地点で生育は確認できず、それらはいずれも右岸側の鳩崎に集中していた。生息繁茂が確認された地点のはは舟溜りや波消堤消波堤の内側のなど、波や風の影響を受けない地点に集中していた。 &nbsp;<br> 霞ヶ浦では2000年に緊急対策として消波工が設置され、アサザの植栽・保護を行った。このことからも分かるように、アサザは本来、波が高い霞ヶ浦で広く分布できる植物ではなく、高度経済成長期以前に生息が確認された地点は全て入り江や湾の最奥部に限定されていた(西廣ほか 2001)。現在アサザが繁茂している場所が人工的に消波された場所や水路であることからも、アサザは霞ヶ浦本来の自然環境に適応した植物ではないと言える。緊急対策が行われた理由として、アサザは霞ヶ浦でしか種子生産できないとの主張があった。これは霞ヶ浦ではサンプル数が多く他では少なかったことが原因で、霞ヶ浦以外でも種子生産されていることが報告されていることからも(藤井ほか 2015)、霞ヶ浦で事業を行う科学的根拠は無かったと考えられる。 &nbsp; &nbsp;&nbsp;
著者
赤松 良久 後藤 益滋 乾 隆帝 山中 裕樹 小室 隆 河野 誉仁
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-8, 2018-07-28 (Released:2018-09-10)
参考文献数
17
被引用文献数
2

ヌートリアは,西日本の本州・四国に定着した特定外来生物に指定されている哺乳類であり,生態系保全・河川管理の両面から,効率的に侵入を防止し,防除方法を確立することが望まれている.そのためには,簡易かつ有効的な侵入モニタリング方法の確立,さらには,好適な生息環境を明らかにする必要がある.そこで,本研究では,環境 DNA 分析を用いることにより,山口県広域における分布状況を明らかにし,さらに,GIS を用いてヌートリアの生息適地を明らかにするとともに,分布予測モデルを用いた潜在的生息地の推定をおこなった.その結果,山口県においては,既に県内の広域にヌートリアの分布が拡大していること,そして,流域特性に関係なく,県内の河川の中下流域で侵入・定着のリスクあることが示された.
著者
山室 真澄 管原 庄吾 小室 隆
出版者
東京大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-10-07

大型底生緑藻の異常繁茂が、世界の多くの海岸や淡水域で発生している。日本でもアオサや糸状藻類の異常繁茂が各地で報告されている。原因として栄養塩の増加など、増える要因を検討するものが多い。本研究ではシオグサ属大型底生緑藻の異常繁茂により湖岸が極端に嫌気的になり、水鳥の大量死など生態系が著しく撹乱されている北米の五大湖で現地調査を行い、なぜ減らないかという観点から検討する。具体的にはシオグサの補食者の状況を確認し、捕食者が存在する場合は捕食しない原因を検討する。捕食者が少ないか不在の場合は、流入河川など周辺水域に緑藻を捕食する動物がいないかなどを調査し、補食者の復元・導入方法について共同研究を行う。
著者
小室 隆 赤松 良久 山口 皓平 プトゥ エディ ヤスティカ 清水 則一 二瓶 泰雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.271-287, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
29
被引用文献数
2

平成29年7月5日に発生した九州北部豪雨により,福岡県朝倉市に点在する溜池では決壊や一部決壊が生じた.それらの溜池を対象に災害後に国土地理院によって撮影された空中写真から15箇所の溜池を選び,現地調査を行った.また陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)に搭載されているLバンド合成開口レーダ(PALSAR-2)により観測された災害前後の地表面データを用いて,土砂堆積などにより地表面に変化が生じた溜池の抽出を行った.調査対象とした溜池のうち,5ヶ所の溜池で決壊・一部決壊を確認した.決壊・一部決壊が生じていた溜池以外では,決壊までは到達していないものの,溜池上流部において土砂の流入・堆積を確認した.PALSAR-2によって得られた地表面データを解析したところ,5,000 m2以上の面積の大きい溜池では土砂や流木の堆積による変化を捉えることが出来た.一方,山間地域に築造された小さな溜池では,周囲の斜面勾配による画像の歪みの影響により,必ずしも明確に抽出することができないことが明らかとなった.
著者
青山 幹雄 高機 宏祐 小室 隆志 川尻 信哉
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.163-164, 1992-02-24
被引用文献数
1

通信サービスの多様化,高度化,インテリジェント化に対応するため地域分散した開発拠点において通信サービスの分散並行開発を支援するCASE環境,ICAROS:イカロス(Integrated Computer-Aided enviRonment for cOcperative Software development)を開発している.本稿では,広域分散開発環境上で設計情報管理の共有化を支援する分散設計情報管理システムについて報告する.