著者
小泉 修
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.116-125, 2016-09-29 (Released:2016-10-17)
参考文献数
59
被引用文献数
1

私は,動物界で最も単純な刺胞動物の散在神経系の構造・機能・発生を分子レベルから個体レベルにわたり総合的に研究してきた。そしてその知見を他の集中神経系(哺乳類に至る背側神経系と昆虫や軟体動物頭足類に至る腹側神経系)と比較して,神経系進化の一番底から,2つのルートを眺めて,神経系の起源と進化を考えてきた。その結果,現在,「発達程度は低いとしても,刺胞動物の散在神経系は,神経系の要素の全てを持ち合わせている」と考えている。この点は,中枢神経系に関しても同様ではないかと予想している。この総説では,散在神経系の研究より見えてきた神経系の起源と進化について議論する。
著者
小泉 修
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.278-287, 1999-12-31 (Released:2011-03-14)
参考文献数
33
被引用文献数
3
著者
小泉 修平
出版者
甲子園大学
雑誌
甲子園大学紀要 (ISSN:18815731)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.55-61, 2007-03-31

研究者の道を歩む予定であった佐治敬三は、実兄の急死により洋酒の寿屋(後のサントリー)の後継者となった。後継者に就任すると学究肌の性格も一変させ、社名を「サントリー」に変更し、苦難の事業であるビール事業を手がけるのである。これは、当初道楽事業と揶揄されたが、実は自らが描いた新しいタイプの財閥を形成するための序章であった。また、同族大企業のトップであった佐治の戦略をみると、同族企業が長期的に繁栄する条件が浮かび上がってきた。それは、一族の経営トップ間の分担方法、健全なる赤字事業の推進姿勢、人々の生活文化への貢献などである。
著者
小泉 修平
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学経営論集 (ISSN:13451456)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.91-116, 2015-06

Daniel Kahneman established a new discipline called behavioral economics and was awarded the Nobel Prize in economics in 2002. It was "Prospect theory" and "Heuristics" that he proposed with Amos Tversky, a coworker, and they attempted a proof using the "only one question method", a psychological experimental technique. This report analyzes the results of the confirmatory study that I carried out for students of the Osaka Sangyo University business administration department on May 27, 2014 (158 subjects), June 3(121 subjects), and September 30(168 subjects), using the same experimental technique as Kahneman and others. There were 26 questions, 11genres, and a total of 447 students. Regarding this confirmatory study of Prospect theory, which applies also to the field of Finance, the results conformed to the theory for the most part, but they were not as remarkable as those of Kahneman's experiment, probably because students' senses of values regarding money were not uniform. On the other hand, regarding Heuristics theory, which applies also to the field of marketing, as for me, there was concern that a difference in economic knowledge, such as Bayesian estimate and statistical cause and effect rates, might appear, but those were ground less fears. At the point of intuition, results showed that differences in knowledge and academic ability were irrelevant. Furthermore, regarding the issue of concern over influence from difference in ethnic culture I compared Chinese foreign students with Japanese students, and the results were as follows: regarding the basic problems. both Japanese and Chinese students showed roughly the same tendency as European and American students, but regarding the correction problems, improvement in correct answer rate for the Chinese foreign students was more remarkable than the rise in correct answer rate of European and American students.Daniel Kahneman established a new discipline called behavioral economics and was awarded the Nobel Prize in economics in 2002. It was "Prospect theory" and "Heuristics" that he proposed with Amos Tversky, a coworker, and they attempted a proof using the "only one question method", a psychological experimental technique. This report analyzes the results of the confirmatory study that I carried out for students of the Osaka Sangyo University business administration department on May 27, 2014 (158 subjects), June 3(121 subjects), and September 30(168 subjects), using the same experimental technique as Kahneman and others. There were 26 questions, 11genres, and a total of 447 students. Regarding this confirmatory study of Prospect theory, which applies also to the field of Finance, the results conformed to the theory for the most part, but they were not as remarkable as those of Kahneman's experiment, probably because students' senses of values regarding money were not uniform. On the other hand, regarding Heuristics theory, which applies also to the field of marketing, as for me, there was concern that a difference in economic knowledge, such as Bayesian estimate and statistical cause and effect rates, might appear, but those were ground less fears. At the point of intuition, results showed that differences in knowledge and academic ability were irrelevant. Furthermore, regarding the issue of concern over influence from difference in ethnic culture I compared Chinese foreign students with Japanese students, and the results were as follows: regarding the basic problems. both Japanese and Chinese students showed roughly the same tendency as European and American students, but regarding the correction problems, improvement in correct answer rate for the Chinese foreign students was more remarkable than the rise in correct answer rate of European and American students.
著者
小泉 修一 佐野 史和
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.152, no.6, pp.268-274, 2018 (Released:2018-12-08)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

てんかんは最も頻度が高い中枢神経疾患の一つである.複数の作用メカニズムの異なる抗てんかん薬が既に存在するおかげで,てんかんの多くはコントロール可能である.しかし,てんかんの約30%は既存薬が奏功しないいわゆる難治性てんかんである.抗てんかん薬は大きく分けると,神経細胞の興奮性を抑制するもの,及び抑制性を亢進するものに分類できる.興奮性神経の抑制は,Na+等各種イオンチャネル阻害薬,グルタミン酸放出阻害及びグルタミン酸AMPA受容体をする薬剤,一方抑制性神経の亢進はGABAA受容体を亢進させる薬剤である.いずれも,神経細胞を標的としたものである.最近の脳科学の進歩により,グリア細胞が脳機能,神経細胞の興奮性に果たす役割の重要性が明らかにされつつある.グリア細胞は,自身は電気的に非興奮性細胞であるが,細胞外の神経伝達物質,グリア伝達物質,イオン濃度の調節,エネルギー代謝調節,さらにシナプス新生及び除去により,神経細胞の興奮性を積極的に調節している.従って,グリア細胞の機能が変化すると,これらの調節機能も変化し,ひいては神経細胞の興奮性も大きく変化する.てんかん原性とは,脳が自発的なてんかん発作を起こし易い状態になることであり,上述したグリア細胞の機能が変調することが,このてんかん原性獲得と大きく関係していることが示唆されている.本稿は,グリア細胞の中でも特にアストロサイトに注目し,てんかん発作により反応性アストロサイトの表現型に変化した際の機能変調とてんかん原性との関連性を述べ,グリア細胞を標的とした抗てんかん薬開発の可能性について述べる.
著者
小泉 修一 篠崎 陽一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S8-3, 2016 (Released:2016-08-08)

グリア細胞は、多彩な脳機能を制御している。従って、その破綻は脳機能に大きな影響を与える。種々の脳疾患、外傷、精神疾患、さらに各種神経変性疾患等では、先ずグリア細胞の性質が変化し、これがこれら疾患の直接の病因になり得ること、さらに疾患の慢性化、難治化に関与していることが報告され、注目を集めている。このように、脳の生理・病態生理機能と密接に関係するグリア細胞であるが、中枢に移行する種々の医薬品、化学物質、環境汚染物質等がグリア細胞に与える影響についてはほとんど知られていない。本研究では、ミクログリアが、メチル水銀(MeHg)誘発神経毒性を二方向性に制御していることを報告する。ミクログリアは、脳内環境の高感度センサーとして機能しており、低濃度MeHg(~0.1 µM)に曝露された際に、先ずミクログリアが感知・応答して様々なシグナルカスケードを活性化した。大脳皮質スライス培養標本にMeHgを添加すると、曝露初期にはミクログリアは神経保護作用を呈するが、慢性期にはむしろ神経障害作用を呈した。曝露初期の応答は(1)VNUT依存的なATP開講放出、(2)ATP/P2Y1受容体を介したMeHg情報のアストロサイトへの伝達、(3)アストロサイト性神経保護分子(IL-6、adenosine等)産生、による神経保護作用であった。慢性期は、(4)ミクログリアの炎症型フェノタイプへの変化、(5)ミクログリアのROCK活性化、(6) 炎症性サイトカイン産生・放出、による神経障害作用であった。慢性期の神経障害はこのミクログリアの応答依存的であった。最近、水俣病の慢性期の神経症状緩和に、ROCK阻害薬が有効である可能性が示唆され注目を集めている。ROCKを含むミクログリアの持続的活性化が、MeHg誘発性神経障害の分子病態と強くリンクしていること、またその制御が治療に有効である可能性についても考察する。
著者
小泉 修一 木下 真直
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.6-12, 2021 (Released:2021-03-25)
参考文献数
47

SSRI型抗うつ薬フロキセチン(FLX)およびケタミンのグリア細胞,特にアストロサイトに対する薬理作用から,うつ病分子病態におけるアストロサイトの役割を検証した。アストロサイトからのATP放出能低下はうつ症状の原因となる。FLX慢性投与はセロトニン取り込み阻害以外に,アストロサイトATP放出を亢進させ,ATP受容体依存的にBDNF産生をさせることで抗うつ作用を呈した。一方ケタミンはNMDA拮抗型全身麻酔薬であるが,麻酔用量よりも低濃度で即時的かつ持続的な抗うつ作用を示す。ケタミン高感受性NMDA受容体はアストロサイト特異的に存在し,ケタミンは本受容体を介してアストロサイトの可塑性を即時的かつ持続的に変化させ抗うつ作用を呈した。まったく異なる抗うつ薬であるが,アストロサイトに作用することで神経‐グリア連関を正常化させる作用が認められ,一部のメカニズムは共通していた。以上アストロサイトがうつ病の治療標的として有望である可能性が示唆された。

1 0 0 0 OA ATPと痛み

著者
津田 誠 小泉 修一 井上 和秀
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.116, no.6, pp.343-350, 2000 (Released:2007-01-30)
参考文献数
50

ATP受容体が痛みの発生と伝達にどのように関与しているかについてその可能性も含めてまとめた.イオンチャネル型ATP受容体のなかでも,P2X3はカプサイシン感受性の小型脊髄後根神経節(DRG)神経細胞に局在し,急速な不活性化を伴う内向電流の発現に寄与し,末梢側ではブラジキニンに匹敵するような痛みを引き起こす.さらに, nocifbnsive behavior および themlal hyperalgesia 発現に関与している事が推測される.脊髄後角ではP2X3はDRG中枢端からのグルタミン酸放出を促進することにより痛み伝達を増強するようである.一方,P2X2とP2X3のヘテロマー受容体は,カプサイシン非感受性のやや中型DRG神経細胞に局在し,比較的緩徐な不活性化を伴う内向電流の発現に寄与する.行動薬理学的にはこのヘテロマー受容体は mechanical allodynia の発現に関与していることが推測されている.なおGタンパク共役型ATP受容体は,痛みとの直接の関与については未だ証明されていないが,それを示唆する状況証拠はかなり蓄積されており,特に病態時の関わりについて今後の研究が待たれる.
著者
小泉 修一 藤下 加代子 柴田 圭輔 大久 保聡子
出版者
山梨大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

ミクログリアは傷害神経細胞から漏出するATPをATPセンサー(P2Y12)で感知し、傷害部位へ遊走する。このとき、傷害部位からeat-me signal "UDP"が放出されると、ミクログリアはこれを貪食センサー(P2Y6)で感知し、傷害細胞や断片を貪食により脳内から除去する。ミクログリアは、遊走性から貪食性へミクログリアのATP センサーの変化を伴ったモーダルシフトすることにより、脳内環境の維持を行っていた。