著者
伊藤 正哉 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.74-85, 2005-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
39
被引用文献数
37 31

本研究では, 自分自身に感じる本当らしさの感覚である本来感を実証的に取り上げ, 自尊感情と共に本来感がwell-beingに与える影響を検討した。自由記述調査から尺度項目が作成され, 大学生男女335名を対象とした因子分析により7項目からなる本来感尺度が構成され, その信頼性と一部の妥当性が確認された。そして, 重回帰モデルの共分散構造分析により, 本来感と自尊感情の両方が主観的幸福感と心理的well-beingというwell-beingの高次因子に対し, それぞれ同程度の促進的な影響を与えていることが示された。また, well-beingの下位因子に与える影響を検討したところ, 抑うつと人生における目的には本来感と自尊感情の両方が, 不安・人格的成長・積極的な他者関係に対しては本来感のみが, 人生に対する満足には自尊感情のみがそのwell-beingを促進させる方向で有意な影響を与えていた。さらに, 自律性に対しては本来感が正の影響を与え, 自尊感情は負の影響を与えていた。以上の結果から, 本来感と自尊感情のそれぞれが有する適応的性質が考察された。
著者
竹澤 みどり 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.310-319, 2004-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

本研究では, 不適応的・病的な現象として問題視されやすい依存を, 一般的な対人関係においてより積極的で適応的なものとして捉え, そのような依存を測定するための, 情緒的依存・道具的依存からなる対人依存欲求尺度を作成し, その信頼性と妥当性を検討することを第1の目的とした。さらに, 対人依存欲求尺度と, 肯定的特徴として他者への信頼感がどのように関連するか, これまで依存的であることの特徴として考えられてきた自分への自信のなさや意思決定に対する自己評価の低さとの関連も含めて検討することによって, 依存のより肯定的, 適応的特徴を示すことを第2の目的とした。447名の大学生を対象とし, 調査を実施した。因子分析の結果, 情緒的依存・道具的依存の2つの下位尺度からなる20項目の尺度が開発された。この尺度の信頼性と妥当性の検討を行ったところ, 両下位尺度において十分な信頼性と妥当性が確認された。さらに, 概ね対人依存欲求尺度と自己信頼感との間に有意な関連がみられなかったが, 女性においてはむしろ情緒的依存欲求が高いほど自己信頼感が高く, 依存欲求が高い人は他者信頼感が高いという依存の肯定的・適応的特徴が見出された。意思決定に関する自己評価においては, 情緒的・道具的依存欲求どちらにおいても高い人は, 自己評価が低かった。
著者
川崎 直樹 小玉 正博
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.209-215, 2011 (Released:2016-03-12)
参考文献数
31
被引用文献数
2

自己愛傾向の高い者は,他者との競争の中で自己の優越性を示すことを強く求める一方で,他者との親和的な関係を維持することを相対的に軽視しがちであるといわれる。そして,実際に自己の優越性が示されていたとしても,本人にとってはそれが満足として感じられることはないといわれている。そこで,本研究では,競争・親和欲求の強さと,その欲求の充足度を区別して測定し,自己愛傾向との関連を検討することとした。なお,自己愛傾向との比較のため,自尊心との関連も検討を行った。大学生259名に質問紙調査を行い,自己愛傾向・自尊心とともに,競争欲求・親和欲求の強さおよびそれぞれの充足度が測定された。その結果,自己愛傾向は,競争欲求およびその充足度の影響によっては説明されないものであった。対照的に,自尊心は競争と親和での充足度とおもに関連を示し,欲求の強さとはあまり関連を示さなかった。これらのことから,自己愛傾向が高い者ほど,親和的な関係より競争的な関係を強く求めており,その欲求が満足を得ない貪欲さを帯びうることが示唆された。
著者
渡辺 俊太郎 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.32-39, 2001-12-25 (Released:2015-01-07)
参考文献数
20
被引用文献数
5 6

The present study was conducted to develop an Anger Arousal and Lengthiness Scale (AALS), and to investigate its validity and reliability. The AALS was designed to measure individual differences in proneness to anger arousal and the tendency towards maintaining anger over a long period. These tendencies are considered to be risk factors for ischemic heart disease. Two hundred and sixty two college students participated in the study. A factor analysis of 13 items included in the AALS yielded two factors, proneness to anger arousal and tendency toward anger lengthiness. Both Cronbach's alpha coefficient and test-retest correlation were high enough to support the reliability of the AALS. The validity of the scale was established by significant correlations of this scale with both the Japanese version of the Buss-Perry Aggression Questionnaire and the anger scale of the Cornell Medical Index. The utility of the AALS was discussed in the context of the relationships between emotion and health.
著者
伊藤 正哉 川崎 直樹 小玉 正博
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.560-568, 2011 (Released:2011-08-10)
参考文献数
26
被引用文献数
7 5

Previous research and theory (Crocker & Wolfe, 2001; Kernis, 2003) suggests that adaptive self-esteem stems from just being oneself, and is characterized by a sense of authenticity (SOA). Maladaptive self-esteem is derived from meeting external standards and social comparisons, and is characterized by a sense of superiority (SOS). Thus, the qualitative difference between SOA and SOS depends on the sources of self-esteem. We hypothesized that SOA is related to internal sources of self-esteem, while SOS is related to external sources. In order to control for covariance, global self-esteem was also examined in a questionnaire survey of self-esteem that was administered to 273 university students. The results of a partial correlation analysis showed that SOA was positively correlated with internal sources of self-esteem such as committed activities and efforts for self-development. In contrast, SOS was positively correlated with external sources of self-esteem such as approval from others and appearance. These results mainly support our hypotheses.
著者
川崎 直樹 小玉 正博
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.59-61, 2010-08-31 (Released:2010-08-18)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

Researchers have hypothesized that narcissists mask their implicit sense of self-dislike by constructing a grandiose self-representation. Several studies have tested this “mask model” using measures of implicit self-esteem, but no study has been done with a Japanese sample. In this study, the Implicit Association Test (Study 1; n=62) and a name letter task (Study 2; n=102) were administrated to measure the implicit self-esteem of Japanese undergraduates. The relationship between implicit self-esteem and narcissism was examined, and the results did not support the mask model. This result is similar to recent findings from a meta-analysis of the mask model of narcissism.
著者
川崎 直樹 小玉 正博
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.149-160, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

本研究では,自己愛傾向と対人恐怖傾向の2つのパーソナリティ特性が,いずれも乖離のある不安定な自己概念を背景要因としていると仮定して検討を行った。大学生341名に,自己概念の肯定性と乖離性を測る尺度,自己概念の不安定性を測る尺度,自己愛傾向,対人恐怖傾向を測る尺度からなる質問紙調査を行った。自己概念の肯定性は日常的に知覚される自己像の測定により指標化され,乖離性は自己肯定的及び自己否定的場面を想定したときに知覚される自己像の評定差によって指標化された。その結果,自己概念の肯定性は対人恐怖傾向と負の相関,自己愛傾向と正の相関を示した。一方で,自己概念の乖離性と不安定性については,対人恐怖傾向及び自己愛傾向の下位側面との間に正の相関を一部示した。以上の結果から,この両パーソナリティ特性がともに,乖離のある不安定な自己概念を維持・構築するプロセスとして理解される可能性について議論された。
著者
伊藤 正哉 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.222-232, 2006-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
48
被引用文献数
14 6

本研究では, 大学生の主体的な自己形成として自律性, 可能性追求意識, 現状改善意識を取り上げ, これらに影響する内的要因として本来感, 自己価値の随伴性, 自尊感情を検討した。以上の変数を測定する尺度を含んだ質問紙が大学生男女220名に実施された。邦訳された自己価値の随伴性尺度についての尺度分析の結果, その信頼性と妥当性が確認された。多変量重回帰モデルを検討した結果, 本来感は自律性, 可能性追求意識, 現状改善意識に正の影響を与えており, 自己価値の随伴性は自律性には負の影響を与えている一方で, 現状改善意識には正の影響を与えていた。また, 自尊感情は自己形成に影響を与えてはいなかった。以上の結果から, 大学生の主体的な自己形成の理解において, 単なる自尊感情の高低に注目する視点を精緻化させ, 本来感と自己価値の随伴性を考慮する有用性が考察された。
著者
川崎 直樹 小玉 正博
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.527-532, 2010 (Released:2012-03-20)
参考文献数
26
被引用文献数
5 3

This study examined the common and different factors of self-esteem, narcissism, and social phobia from the perspective of self-acceptance. Japanese undergraduates (N=267) completed a questionnaire that assessed narcissism, social phobic tendency, self-esteem, and self-acceptance. Three aspects of self-acceptance were measured: definite evaluation of self-features, self-acceptance for each features of the self, and subjective estimation of their own self-acceptance evaluations by others. The results showed that definite evaluation and self-acceptance evaluations were related positively to narcissism and self-esteem. However, the relation between narcissism and self-acceptance evaluations was not significant when controlled for the effect of definite evaluation of self-features. In addition, social phobic tendency was negatively related to definite evaluation and self-acceptance evaluations. These results implied that self-acceptance evaluation was an important factor that explains the common and different factors of self-esteem, narcissism, and social phobia.
著者
寺島 瞳 小玉 正博
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.313-322, 2007 (Released:2007-07-07)
参考文献数
30
被引用文献数
4 1

本研究では,他者を操作することに影響する個人内要因に関する臨床的指摘の実証を第一の目的とした。実証する臨床的指摘は(1)誇大化した自己評価を確証するために他者からほめられたいという欲求が高まって自己の優越性をアピールする操作を行う,(2)自尊心を保てないために他者からのケアを求める欲求が高まって自己の劣位性をアピールする操作を行う,の2つであった。また,操作と社会的スキルとの背景要因の比較を第二の目的とした。347名の大学生を対象にして調査を行った結果,臨床的指摘は両者ともに支持された。さらにそれらの臨床的指摘とは関連しない影響も見られ,操作の背景には強い自己肯定感と低い自尊心といった両方の要因があった。また,社会的スキルとの比較の結果,強い自己肯定感とともに高い自尊心をもつ場合は適応的な対人行動をとることができるが,同じ強い自己肯定感があってもそれが揺らいで不安定になった場合に,操作という対人行動に至ることが示唆された。
著者
吉田 富二雄 小玉 正博
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.35-41, 1987

The effects of approach by an unaquainted male to high- or low-neurotic (on the MPI scale) female subjects on physiological responses (heart rates and eye blinks) and self-rated affective/cognitive responses (tension, anxiety and apparent size of the male) were examined. (a) In the first trial, non-neurotic subjects showed an abrupt increase of HR near the personal space boundary, however showed a rapid habituation at the second and third trials. In contrast, self-rated affection (tension and anxiety) increased gradually as the male approached, and habituation was slow at the later trials. (b) Neurotic subjects displayed higher tension than non-neurotic subjects, while tension, anxiety and heart rate were less habituating. (c) INDSCAL analysis revealed that these three self-rated indices clustered together, while the physiological ones did not. (d) It was suggested that the eye blink response had a tension reducing function.
著者
堀口 康太 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.101-114, 2014-06-30 (Released:2015-03-27)
参考文献数
50
被引用文献数
5 2

本研究は, 自己決定理論の枠組を参考にし, 老年期の発達課題を考慮した社会的活動参加動機づけ尺度を作成することを目的として実施された。都市部において社会的活動に参加する60歳から89歳まで424名を対象とした質問紙調査を実施し, 男女278名(男性72名, 女性195名, 不明11名 ; M=72.0歳, SD=5.9)を有効回答として分析を実施した。予備調査によって抽出された暫定版37項目を用いて因子分析を実施し, 最終的に「自己成長の追求」, 「自己の発揮志向」, 「喪失の制御」, 「他者への同調」, 「周囲への貢献希求」の5因子22項目によって構成される社会的活動参加動機づけ尺度が作成された。その後, 作成された尺度を構成している下位尺度について理論上想定された動機づけとの対応・相違が検討され, 尺度の妥当性・信頼性が確認された。本研究で作成された尺度によって, 老年期特有の動機づけを測定することが可能となり, 老年期における社会的活動への参加に関する研究が発展する可能性が示唆された。
著者
片山 富美代 小玉 正博 長田 久雄
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.28-39, 2009-12-31 (Released:2014-03-28)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

In the present study, we developed the Japanese version of the Illness Perception Questionnaire (J-IPQ) and evaluated its reliability and validity. New items for three emotional representation dimensions (i. e., positive affect about illness, positive/negative affect about treatment) were added to the original scales of Moss-Morris et al. (2002). We administered the J-IPQ to 169 hemodialysis (HD) patients, and another 24 HD patients completed it in 4weeks interval for test-retest reliability. We also administered the J-IPQ to 30 patients with chronic respiratory disease for testing cross-validation. Factor analysis revealed that the J-IPQ generally produced the same structure as the original scales, though the “acute/chronic timeline” was divided into “acute timeline” and “chronic timeline”. The coefficients of the J-IPQ items on the test-retest showed good enough reliability (r = .42 to .86). The respiratory sample showed the overall validity of the scales (α= .68 to .97), except for the dimensions of “acute timeline” (α= .38) and “illness coherence” (α= .58). We concluded that the J-IPQ is reliable and valid for assessing Japanese patients’ illness perception in research.
著者
家接 哲次 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.37-46, 1999-12-25 (Released:2015-03-04)
参考文献数
35
被引用文献数
3 4

Depressogenic Schemata Scale (DSS) was developed, and its validity and reliability was assessed in this study.Twenty-four items designed to assess individual difference in depressogenic schemata were constructed. The factor analysis of the items identified 3 factors (“Intention of High Achievement”, “Dependence of Evaluation on Others”, “Fear of Failure”). There was a significant correlation between the DSS and Self-rating Depression Scale (p<.01). The three weeks test-retest reliability coefficient interval was .82. The concurrent validity with the Automatic Thoughts Questionnaire and the Japanese Irrational Belief Test were both significant (p<.01).Furthermore, there is evidence that DSS is clinically valid.
著者
清水 貴裕 小玉 正博 Shimizu Takahiro Kodama Masahiro
出版者
筑波大学心理学系
雑誌
筑波大学心理学研究 (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
no.23, pp.219-227, 2001-03-01

The purpose of this study is to investigate people's 'notions of hypnotic states,' and to examine the relation between these and attitude toward hyposis. A notions-of-hypnotic-states questionnaire of fifty-one items and ...
著者
松井 めぐみ 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.38-46, 2004-06-25 (Released:2015-01-07)
参考文献数
22

This study examined how fantasy affects mental health. College students (N=438) completed (1) the Multiphasic Fantasy Inventory that measures: the content of fantasies, the recognition of own fantasies, the roles and the influence of fantasies, the conditions for fantasizing and fantasizing tendency; and (2) the Subjective Well-being Inventory. A series of t-tests revealed that participants scoring high on mental health scored low on “fantasies of encountering misfortunes, ” “doing fantasy at the unpleasant conditions” and “fantasy can't be controlled.” There were significant differences between high and low scorers on mental health with regard to “vividness” and “absorption” items in the seven-item fantasizing tendency scale. These results suggest that characteristics of fantasy are related to mental health.
著者
寺島 瞳 小玉 正博 Terashima Hitomi Kodama Masahiro
出版者
筑波大学心理学系
雑誌
筑波大学心理学研究 (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
no.28, pp.89-95, 2004

This study develops a scale to evaluate strategies for manipulating other and to examine its reliability and validity. The results of a pilot study, with a questionnaire completed by 203 undergraduates, indicted that ...