著者
巻口 誉宗 高田 英明 坂本 大介 小野 哲雄
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-10, 2020-02-26

遠隔地のスポーツのライブビューイングやステージイベントなどのエンターティンメント分野において,半透過スクリーンやハーフミラーを用いて被写体を空中像で表示する演出手法が活用されている.これまでこうした演出手法では,空中像を表示させたい領域に大がかりな装置を設置する必要があり,被写体の移動範囲が制限されていた.そこで我々は,空中像をステージ外や観客席に移動させる演出の実現を目的とし,可搬型のサイズ・構成で臨場感の高い空中像を表示できる両面透過型多層空中像表示技術を提案する.本手法は4台のディスプレイと4枚のハーフミラーを組み合わせたシンプルな光学系で構成される.観察者は装置の正面と背面の2方向から被写体の両面を空中像として観察でき,両面それぞれから近景と遠景の2層の背景空中像を観察できる.提案手法では表示面は4面しか持たないものの,ハーフミラーによる透過と反射によって背景の2層を正面・背面の観察方向で共有することで,両面それぞれから3層,合計6層の空中像を視聴できる.さらに,近景と遠景は正面・背面の観察方向にかかわらずに光学的な奥行きの順序関係が保たれることから,複数人が同時に装置両面から,多層化された臨場感の高い空中像を視聴できる.本稿では提案手法の光学構成の詳細から,実用性評価のために行ったプロトタイプ実装とイベントでの活用事例まで広く報告する.
著者
秋葉 翔太 崔 明根 坂本 大介 小野 哲雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.689-700, 2021-02-15

本研究ではスマートフォンの片手操作時においてグループ化された複数のターゲットをユーザがタッチした際に,グループ内のターゲットを半円状に再配置した場合のターゲット選択手法を3つ提案する.提案手法では選択ターゲットを明示的に示すために,タッチされた点を中心として,選択候補となるターゲットすべてが指に被らないように指の周りに半円状に再配置する.本研究では,再配置した目標ターゲットを選択する手法として,目標ターゲットの方向へ直接指を傾けて選択するOne Half-Pie,2段に配置されたターゲットを押し込み動作によって切り替えながら選択するTwo Half-Pie,タッチした地点からドラッグした量に応じてターゲットの選択が行われるRailDraggerの3つの選択方法を実装し評価する.実験では3つの選択手法を用いてそれぞれポインティングタスクを行い,選択終了までの時間と選択精度の観点から選択手法の評価を行った.その結果,提案する3手法において選択時間に関してはRailDraggerが,選択精度に関してはTwo Half-Pieが最も優れていることが分かった.
著者
小野 哲雄 佐藤 理史
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.3_48-3_65, 1995 (Released:2008-10-03)
参考文献数
15

We propose a computational model of emotion using the mechanism of the immune system. This model is inspired by the observation that emotion is similar to the immune system, in that each is a result of a self-defense system that is capable of adapting to the environment.The main component of this model is a body, in which many cells undergo Brownian Motion. Each cell has energy and characteristics that correspond to one of the five ego states in transactional analysis(Berne, 1964). The cells' state as a whole is its emotional state. Some cells are activated when antigens invade the body, and they work to sweep away those antigens. This process changes the emotional state.We implemented this model, and the results of experiments indicate that the model has the following two characteristics, which other models have not been able to achieve:(1) Emotional states change continuously.(2) Emotional states change in response to stimuli (antigens) according to the state at that moment and its past changes.We implemented a dialogue system using this model and found that the system can imitate human dialogues.
著者
小野 哲雄
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.3J1OS9a01, 2020 (Released:2020-06-19)

本研究では,行動経済学で提唱されている“ナッジ”を「心のナビゲーション」として捉え,その認知的なメカニズムの解明・モデル化を行うとともに,我々がこれまで研究を行ってきたエージェント基盤技術を用いて“ナッジ”エージェントとして実装することにより,人間とAIシステムを融和させ,人々をウェルビーイング(人間的に豊かな生活)へと導く意思決定を促す環境知能システムの実現を目指す. 本研究で提案する“ナッジ”エージェントの新規性・独自性は、(a) 行動経済学の「理論」とAIシステムの「学習」により少ないデータから人間の意思決定を予測可能,(b) エージェントが環境にあるIoTデバイスへ「移動」(agent migration)することにより文脈に適した意思決定の支援が可能,(c) ナッジを構成するプロセスを可視化することにより人間の意思決定力を「育てる」ことが可能なことである.本研究ではさらに,実験室実験により本システムの機能の有効性を検証した後,フィールド実験を行い社会実装へとつなげていく予定である.
著者
小野 哲雄 馬 雷
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.1G1OS21a1, 2017 (Released:2018-07-30)

「プロジェクション・サイエンス」とは,人間の認知機構を解明するためのまったく新しい方法論であるとともに,そのモデル論的理解をとおして工学的応用までも射程に収めた野心的な構想である.本稿では,特に「サードマン現象」に注目し,VRおよびエージェント技術を用いた身体投射システムを提案する.さらに,本研究をとおして「虚投射」および一人称と三人称の視点変換のメカニズムの解明が重要であることを示す.
著者
駒込 大輔 小野 哲雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.P23, 2007

本研究では,人間に対して模倣と創造を促すコミュニケーションロボットのインタラクションデザインについて考える.ロボットは物理的な身体を持ち,ネットワークやアーカイブ機構を持っているため,人間の創造活動を支援する為に適したメディアであると考えられる.しかし,ロボットが実世界の文脈情報を的確に読み,能動的に情報支援・創造支援することは非常に困難である.そこで,我々は人間の模倣能力に注目する.模倣は単なるコピーではなく,過去の優れた事例を組み合わせて,新たな創造へと導く行為である.そのため,我々はロボットを社会的なメディアととらえ,人間がロボット独自の行動を模倣するかどうかを検証する予備実験を行った.その結果,人間は非生物であるロボットを無意識的に模倣する能力を持っていることが分かった.
著者
春日 遥 坂本 大介 棟方 渚 小野 哲雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.1520-1531, 2018-08-15

ペット動物は人類の最も古い友人である.人々は彼らと生活を営み,今日では家庭において家族としてのペットと人の関係が研究されてきた.近年になってコミュニケーション・ロボットの登場により,家庭における人とペット動物に加え社会的ロボットを考慮した3者関係に注目した研究分野が生まれつつある.本研究では,社会的ロボットが家庭における人とペット動物の関係に対してどのような影響を与えるのかを調査するために実験的なフィールド調査を行った.調査には10家庭22人と12頭のペット動物(犬が4頭,猫が8頭)が参加した.調査においては社会的ロボットとして小型人型ロボットNAOを使用し,各家庭において小型人型ロボットと人,ペット動物が対話する様子の観察を行った.対話ではペット動物に対してポジティブに話しかける正条件と,相対的にネガティブに話しかける負条件の2つのシナリオで調査を実施した.両条件では約2分間の対話シナリオのうち,約30秒間のロボットからペット動物への発話内容が異なった.結果として,ロボットのペット動物に対する発話内容と態度の違いが,参加者からロボットへの印象に影響を与えていた.
著者
坂本 大介 小野 哲雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.109, pp.15-20, 2005-11-08
参考文献数
7

ロボット技術の発展に伴い,今後実際に社会に出て人と共に暮らすことのできるロボットが登場することが予想される.ロボットが実際に人とともに社会生活を行うためにはいまだ様々な問題が残されている.特に,ロボットが既存の人間関係や社会関係にどのような影響を与えるのかという問題に関する研究は多く行われていない.本稿では社会的なロボットが人間関係,社会関係にどのような影響を与えるかを扱う学問であるロボット社会心理学を提案し,この有効性を確かめるための実験を行った.これによりロボットが実際に人間関係に良い影響も悪い影響も与える可能性があることを確認した.つまり,ロボットは人間関係を壊すことが可能性であり,同時に人間と共に良い関係を築くことも可能であることを確認した.これについて報告する.With the developments in Robotics, Robots that live with us will appear on the daily life in near future. However, there are many problems on social robots. In particular, the effects of robots behaviors influence the human relations and societies have not clarified. In this paper, we conducted an experiment to verify the effect of robots behaviors influence the human relations using the 'Balance theory'. The result shows that a robot can affect a good or bad influence on the human relations. A Human's impression of another human, had undergone a change by a robot. In other words, robots can construct or collapse the human relations.
著者
石塚樹 小野 哲雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.26, pp.23-29, 2007-03-14
参考文献数
5

昨今,情報処理技術の発達にともない,パーソナルコンピュータや携帯電話端末をはじめとした,高度な情報処理を実行することのできる機器が社会に広く普及し,人と機器との間に,従来の「使う」に加えて「対話する」という新たな関係が生まれはじめている.本研究では,集団における人の振る舞いを取り扱う領域において共通して重要な概念であるミクロマクロループと,そのループ構造を持つ例である拍手という行為に注目する.また,実際の人との間に同ループ構造を形成するように拍手を協創するシステムを実装し,それを用いた実験から,人と社会的相互行為を図るシステムにとって同ループ構造が重要であることを示す.Recently, the equipment that can execute advanced information processing including the personal computer and the cellular phone widely spreads to the society as information processing technology develops, and a new relation "Dialogue" in addition to "Use" arises between the person and the equipment. In this research, we focus on the concept "micro-macro loop" that is important to discuss about group interaction and the act of applause that is the example with micro-macro loop. We implement the system that collaborate applause with actual human as building micro-macro loop structure, and sustain that this structure is important for the system aims social interaction with human.
著者
御手洗 彰 棟方 渚 小野 哲雄
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.41-50, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
13

In recent years, gesture recognition using surface-electromyogram (sEMG) has become popular and these approaches can classify gestures at a high recognition rate. In particular, easily-mountable sEMG based gesture recognition devices have been developed. When developing such devices for use in daily lives, it is necessary to consider situations where users will be using the device while gripping objects, such as umbrellas, bags and so on. By using sEMG of the forearm, it is possible to still collect data without intruding on what the user is doing in these situations. However, sEMG based gesture recognition while gripping an object still lacks sufficient investigation. Therefore, in this study, in order to investigate the feasibility of gesture input while gripping an object, we performed an experiment to measure recognition accuracy for four hand gestures of users while they are holding a variety of objects. From the results, we discuss both feasibility and problems of gesture input while gripping objects and propose a new approach to resolve those problems.
著者
エバンズベンジャミンルカ 棟方 渚 小野 哲雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.37, pp.1-4, 2013-08-24

現代の音楽は多種多様に発展しており,特に自動作曲プログラムなどの進展は顕著である.しかしパターンマッチングや確率モデルに基づいたシステムの動作は,作曲家が楽曲を創作する過程や思考とは大きく異なり,ユーザによる作曲過程の調整が難しい.出力だけでなく,作曲過程にも楽譜データを利用するシステムの方が,従来システムに比べ,音楽の知識を持つユーザにはより使いやすいと考える.これまで我々は,楽譜データに基づく自動作曲システムの実現に向けて,バス課題を実行するシステム "Creating Music for You(CMY)" を実装してきた.本研究では CMY に新たに,バス声部の転回系を作曲規則として実装し,入力の制限を緩和した.また,プログラム実行時に任意の規則の利用・非利用が設定できるようにし,出力する楽曲の可能性を増大できる仕組みも実装した.As modern music is evolving in many ways, the advancement of automated music composing software is particularly noticeable. However, these systems, which generally rely heavily on pattern-matching technology and statistical models, operate using a composition mechanism which is totally different from that of the composer, making the system unrealistic for the user to adjust and control. A system which uses sheet-music-type data not only in the output but also in the composing process itself would offer the musically knowledgeable user an easier programme to work with. In previous research, we created an automated music composing system "Creating Music for You" (CMY), which composes four part harmony from bass-part music the user inputs. In this research, we have implemented the theory of chord inversions (i.e. chords with non-tonic bass notes), and have also enabled the user to choose which rules to use in the composition process. Both of these modifications allow for a wider variety of harmonic options in the output music.
著者
小川 浩平 小野 哲雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. ICS, [知能と複雑系] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.150, pp.9-16, 2008-01-22
参考文献数
9

本論文において我々は,インタラクティブシステムの間を移動可能なエージェントを用いたITACOシステムを提案する. ITACOシステムとは,エージェントがインタラクティブシステムの間を移動することにより,人間とインタラクティブシステムとの間に,感情をともなった関係を築くことが可能なシステムである.我々は, 2つの実験を通じてITACOシステムが人間とロボットやテーブルランプなどのインタラクティブシステムとの間に感情をともなった関係を築くことができるかどうかを検証した.実験の結果より,感情をともなった関係が築かれることによって人間の認知能力や行動に対して一定の影響を与えることがわかった.
著者
代蔵 巧 棟方 渚 小野 哲雄 松原 仁
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告 エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.2, pp.1-6, 2011-03-19

本研究では,他者の存在を感じながら動画を鑑賞することが出来る動画鑑賞システムの開発と検証を行った.このシステムでは,他者を模したアバタを,動画とともに表示することで,アバタを通して他者を感じることが出来る.アバタの振る舞いには,過去にその動画を鑑賞したことのある,他のユーザの興奮が反映される.ユーザの興奮は,手掌の皮膚コンダクタンス反応によって評価した.ユーザの趣向と興奮度の関係を調べるための実験を通して,本システムの開発を行った.このシステムにより,これまでの動画サイトでは感じられにくい他者の存在とともに動画を鑑賞することで,新たな動画体験を提案する.In this study, We developed and experiment on video watching system that use presence of others. This system feels others by avatar in displaying avatar as others on the video. The excitement of other users who have appreciated the video in the past is reflected in the behavior of avatar. The user's excitement was evaluated by the skin conductance response of the palm. We propose a new video experience.
著者
坂本 大介 小野 哲雄
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_101-2_107, 2006 (Released:2006-06-30)

本稿では環境に埋め込まれた対話可能な絵画を生成するソフトウェアについて述べる.本ソフトウェアが生成する絵は環境センサの情報をもとに常に変化する.また,絵に直接触ることで絵に対して変化を与えることができる.これらの絵はモチーフというプラグインで管理され,ユーザの意思で変更することが可能である.本ソフトウェアが出力する絵はコンピュータ上のディスプレイではなく,コンピュータという存在を消したディスプレイから出力することを想定している.これにより我々が生活している空間に含まれる情報を,生活の一部として絵画を飾ることと同じように「情報を飾る」という概念を提案する.また,本稿では空間を一枚の絵画が支配し表現する,環境に埋め込まれたソフトウェアの可能性について考察する.