著者
岡島 義
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.616-621, 2018 (Released:2018-10-01)
参考文献数
28

慢性不眠障害には睡眠薬による治療が一般的であり, 心理療法はほとんど実施されていない. 不眠症に対する認知行動療法 (CBT-I) は, 不眠症状の軽減効果が高く, 現在では慢性不眠障害に対する標準治療および第一選択と位置づけられている. 最近では, うつ病やPTSDなどの精神疾患やがんや慢性疼痛などの身体疾患に伴う併存不眠に対しても有効性が明らかにされている. 本稿では, CBT-Iの治療要素, ならびに原発性不眠症, 併存不眠に対する有効性について論じた.
著者
岡島 義 金井 嘉宏 陳 峻雲 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-12, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、社会不安障害(SAD)を対象として、安全確保行動のひとつである「恐怖場面内での回避行動」を測定する尺度(Avoidance Behavior In-Situation Scale:ABIS)を作成することであった。健常大学生121名とSAD患者10名を対象に、不安喚起場面とその場面内で用いる「恐怖場面内での回避行動」について自由記述による回答を求め、項目を作成した。次に、健常大学生470名とSAD患者46名を対象に自己記入式によるABI尺度を実施した。探索的因子分析を行った結果、2因子28項目が抽出され、十分な信頼性を有していた(α=.90)。妥当性は、内容妥当性と基準関連妥当性の観点から確認された。以上の結果から、ABISは高い信頼1生と妥当性を有することが明らかにされた。
著者
岡島 義 秋冨 穣 村上 紘士 谷沢 典子 梶山 征央
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-025, (Released:2021-06-11)
参考文献数
24

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍では、睡眠の悪化が報告されている。しかしながら、海外と国内では感染対策が異なり(ロックダウンvs.外出自粛要請)、また、COVID-19流行後の調査しか行われておらず、流行前後の睡眠状態の比較を行った研究は報告されていない。本研究では、睡眠記録アプリ利用者6,963名のデータを用いて、2020年1~6月の睡眠状態について、2018年および2019年の同時期の睡眠データと比較し、COVID-19禍における睡眠変化について検討することを目的とした。対数線型モデルを用いて検討した結果、2020年4月、5月、6月時の睡眠時間が6時間未満の者の割合が、ほかの年と比べて少ないことが明らかとなった。そのほかの睡眠指標に関しては関連が認められなかった。以上のことから、COVID-19禍の活動自粛期間は、睡眠時間の延長をもたらすことが明らかとなった。
著者
田中 佑樹 嶋田 洋徳 岡島 義 石井 美穂 野村 和孝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-021, (Released:2021-06-17)
参考文献数
33

本研究においては、ユーザーからの入力データに基づく自動化された個別フィードバックによって、ストレッサーに応じたコーピングの実行と睡眠の質の改善を促すストレスマネジメントのためのスマートフォンアプリケーションを開発し、労働者を対象としてその有効性を検討することを目的とした。効果検証は、コーピングレパートリー、睡眠の質、心理的ストレス反応を指標として、アプリケーション群、ワークシート群、個別面接群の3群における介入前後の比較が行われた。計63名分のデータを分析した結果、コーピングレパートリーおよび心理的ストレス反応には、アプリケーション群とほかの2群の間に有意な効果の差異は見られなかったものの、睡眠の質は、むしろ個別面接群のみにおいて有意な改善が認められた。したがって、開発されたスマートフォンアプリケーションのコンテンツには改良の余地が残されていることが示唆され、今後の展望に関して考察された。
著者
高橋 高人 岡島 義 シールズ 久美 大藪 由利枝 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.189-200, 2014-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、小学生児童(5、6年生)を対象とした抑うつ低減のための認知行動的プログラムの効果を検討することであった。217名(10、11歳)の児童がスクールベイスドの介入群と統制群に割り当てられた。プログラムの内容は、多様性のあるコーピング、リラクゼーションを習得することを目的とした。対象児は、プログラムの実施前後に自記式質問紙を用いて抑うつとコーピングについて評価された。その結果、抑うつ症状について時期と群に有意差がみられ、もともと抑うつの高い児童において、プログラム前に比べ、プログラム後に抑うつの有意な低減がみられた。コーピング得点は、プログラム前に比べて、プログラム後のほうが有意に高かった。このことから、多様性のあるコーピングとリラクゼーションに焦点を当てたプログラムが、児童の抑うつの低減に対して効果的な技法であることを示された。最後に、本研究は児童の抑うつに対するスクールベイスドのプログラムとして、有効性が示唆された。
著者
岡島 義 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.43-54, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本稿の目的は、社会不安障害(SAD)の維持要因である安全確保行動の役割と安全確保行動を治療ターゲットにすることの重要1生について概観し、SADの安全確保行動に対する治療技法を確立するための展望を行うことであった。本稿において、安全確保行動は、(1)認知理論の枠組みから否定的な信念の維持要因としての役割が強いこと、(2)機能的側面から適切な対処行動と区別する必要があること、(3)安全確保行動を治療ターゲットとした場合、従来のエクスポージャーよりも治療効果が高いことが述べられた。また、今後の課題と展望として、(1)安全確保行動に関する心理教育が重要であること、(2)SAD患者に安全確保行動を止めさせるとともに、他者から適切な評価を受けるためのスキルを身につけさせる必要があること、(3)安全確保行動に関する治療効果研究の実践が必要であること、が議論された。
著者
岡島 義
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-11, 2014-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

薬物療法によって抑うつ症状が改善した患者の多くに、不眠が残遺することが明らかにされている。本報告では、うつ病の改善後も数種類の睡眠薬を服用しているにもかかわらず不眠症状が改善しない69歳の男性に対して、機能的アセスメントに基づく介入を実施した。機能的アセスメントによって、現在の行動は、眠れないことによる不快感を下げるための回避行動として機能しており、その回避行動は、言語行動を含むいくつかの弁別刺激によって生じていると考えられた。アセスメントに基づいて、5回の介入セッションと11回のブースターセッション(1回50分)を実施した結果、第2セッション後に入眠潜時は60分から10分に、中途覚醒時間は180分から33分に短縮し、服薬中止後に不眠重症度質問票の得点は24点(重症)から7点(寛解)に減少していた。このことから、機能的アセスメントに基づく本介入は、うつ病の残遺不眠を有する本症例に対して有効であったと考えられる。
著者
岡島 義 井上 雄一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.195-203, 2010-09-30 (Released:2019-04-06)

睡眠薬を長期服用中の1曼性不眠症患者12名に対して、認知行動療法(CBT-1)と、これに並行して睡眠薬の漸減を実施し、その不眠症状改善効果について検討した。1回50分のセッションを6〜8回実施し、治療前後および治療終了1カ月後のフォローアップ時に主観的な睡眠指標と自記式尺度に記載させた。その結果、睡眠指標では、入眠潜時、中途覚醒時間、総覚醒時間、睡眠効率の項目で改善が認められ、自記式尺度では、不眠症状測定尺度だけでなく、抑うつ症状尺度にも大きな治療効果が認められた。また、その効果は1カ月後も維持されていた。対象者全員が治療期間中に漸減を開始したが、服薬中止に至った者は4名(33%)であった。9名(75%)に臨床的な改善が認められ、その効果は終了1カ月後も維持していた。このことから、CBT-1は、睡眠薬を長期服用中の慢性不眠症患者に対しても有効と考えられた。
著者
岡島 義 金井 嘉宏 笹川 智子 金澤 潤一郎 秋田 久美 陳 峻要 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.297-309, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、社会不安を測定するSocialPhobiaandAnxietyInventory(SPAI)の翻訳版を開発することであった。大学生431名を対象に自己記入式の調査を行い、探索的因子分析を行った。その結果、SPAI日本語版は原版と同様の2因子45項目で構成され、各因子を「社会恐怖」「広場恐怖」と命名した。各因子の内的整合性(α=.88〜.96)、および再検査法による信頼性(r=.67〜.72)は高かった。既存の社会不安測定尺度と相関は中程度であったため、高い併存的妥当性が認められた。また、「社会恐怖」下位尺度において、確認的因子分析を行ったところ、原版と同様の5因子構造であることが確認された。以上の結果から、SPAI日本語版は高い信頼性と妥当性を有することが明らかにされた。
著者
岡島 義昭 福井 寛 戸所 秀男 鉾谷 義雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.351-356, 1980
被引用文献数
1

チタン0.4%及びニオブ0.3%を添加した25%クロム-20%ニッケル鋳鋼中の微小炭化物をマイクロプローブオージェ電子分光分析装置を用いて定量的に分析した.装置は最近試作したもので,電界放射型電子銃を用いて最高分解能20nmを得ている.米国標準局(NBS)のステンレス鋼標準試料を用いて定量性を検討し,クロム,鉄及びニッケルのピーク強度の和とそれぞれのピーク強度との比を用いて,濃度との間によい直線関係を得た.これらの結果を鋳鋼中の炭化物の分析に適用し,炭化物はチタンとニオブを含むMC型及びクロムと鉄を含むM<SUB>23</SUB>C<SUB>6</SUB>型の2種で,その組成はそれぞれ(Nb<SUB>0.2</SUB>Ti<SUB>0.8</SUB>)C及び(Fe<SUB>0.27</SUB>Cr<SUB>0.73</SUB>)<SUB>23</SUB>C<SUB>6</SUB>であると推定した.
著者
岡島 義 井上 雄一
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.195-203, 2010-09-30

睡眠薬を長期服用中の1曼性不眠症患者12名に対して、認知行動療法(CBT-1)と、これに並行して睡眠薬の漸減を実施し、その不眠症状改善効果について検討した。1回50分のセッションを6〜8回実施し、治療前後および治療終了1カ月後のフォローアップ時に主観的な睡眠指標と自記式尺度に記載させた。その結果、睡眠指標では、入眠潜時、中途覚醒時間、総覚醒時間、睡眠効率の項目で改善が認められ、自記式尺度では、不眠症状測定尺度だけでなく、抑うつ症状尺度にも大きな治療効果が認められた。また、その効果は1カ月後も維持されていた。対象者全員が治療期間中に漸減を開始したが、服薬中止に至った者は4名(33%)であった。9名(75%)に臨床的な改善が認められ、その効果は終了1カ月後も維持していた。このことから、CBT-1は、睡眠薬を長期服用中の慢性不眠症患者に対しても有効と考えられた。
著者
国里 愛彦 高垣 耕企 岡島 義 中島 俊 石川 信一 金井 嘉宏 岡本 泰昌 坂野 雄二 山脇 成人
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-31, 2011

本研究は、環境中の報酬知覚について測定する自己記入式尺度の EnvironmentalReward Observation Scale (EROS) 日本語版を作成し、信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とした。大学生と専門 学校生を対象に調査を行い、414名(男性269名、女性145名;平均年齢18.89±0.93歳)を解析対象 とした。探索的・確認的因子分析の結果、日本語版EROSは1因子構造を示した。信頼性において、 日本語版EROSは十分な内的整合性と再検査信頼性を示した。項目反応理論による検討を行った結果、 広範囲な特性値において測定精度の高いことが示された。日本語版EROSは、抑うつ・不安症状や行 動抑制傾向との負の相関、行動賦活傾向と正の相関を示した。不安症状を統制した場合、日本語版 EROSはアンヘドニア症状との相関が最も強い値を示した。以上より、日本版EROSの構成概念妥当 性が確認された。
著者
岡島 義
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.258-265, 2014-03-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

不眠症はうつ病,不安障害などの精神疾患やがん,慢性疼痛といった身体疾患との関連性が強い睡眠障害の一つである.しかし,その多くは睡眠薬による治療が一般的であり,心理療法はほとんど実施されていない.原発性不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は,不眠症状の軽減効果が高く,現在では原発性不眠症に対する標準治療と位置づけられている.一般的にCBT-Iは1回60分の個人セッションを4〜6回,あるいは1回90分の集団セッションを6〜8回の形式で行われる.最近では,精神疾患や身体疾患に伴う併存不眠症に対しても有効性が明らかにされている.本稿では,CBT-Iの治療要素,ならびに原発性不眠症,併存不眠症に対する有効性について論じた.
著者
白上 房男 岡島 義昭 前小屋 千秋 高田 芳矩
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.413-418, 1989-09-05
被引用文献数
1 3

土壌中の水溶性及び交換性の無機態窒素を迅速に連続測定するFIA法を検討した.亜硝酸及び硝酸態窒素の測定ではジアゾ化-アゾ化合物生成に高温反応(90℃)を適用した.なお,硝酸態窒素の測定では還元カラム(Cu-Cd粒状,φ3×300mm)の活性寿命及び還元効率への流量依存性を評価した.アンモニウム態窒素の測定では多孔質膜分離-インドフェノール法の常温反応における最適条件を検討した.土壌2gを浸出液50mlで振り混ぜ抽出し,その40μlを各成分の測定に供する.本法の繰り返し測定の再現性は相対標準偏差で0.3〜0.5%であり,定量範囲は亜硝酸態窒素:0.1〜7ppm,硝酸態窒素:1〜20ppm,アンモニウム態窒素:1〜150ppmである.なお,3成分連続測定の所要時間は約10分間である.