著者
岩崎 貴哉 佐藤 比呂志
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.61, no.Supplement, pp.165-176, 2009-07-31 (Released:2013-11-21)
参考文献数
81
被引用文献数
2 5

Recent seismic expeditions with controlled sources in Japan provided important constraints on the deformation styles and physical properties of the island arc crust and uppermantle. The crustal structure in the Japanese Islands is characterized by an upper part with a large velocity variation (5.5-6.1 km/s), a middle part with a velocity of 6.2-6.5 km/s overlying a lower part whose velocity is 6.6-7.0 km/s. In many cases, most shallow microearthquakes are concentrated in the upper crust and upper half of middle crust while the lower half of middle crust and lower crust are reflective with very low seismicity. The uppermost mantle is characterized by a low Pn velocity of 7.5-7.9 km/s. Several observations on PmP phase indicate that the Moho is not a sharp boundary with a distinct velocity jump, but forms a transition zone from the upper mantle to the lower crustal materials. A detailed structural section across the NE Japan Arc from intensive onshore-offshore profiling in 1997-1998 revealed crustal deformation associated with the Miocene backarc spreading of the Sea of Japan. The backbone range of this arc shows a pop-up structure formed by inversion tectonics due to the present compressive stress regime. Crustal thinning associated with the backarc spreading is very clear west of this pop-up structure where the crust deduces in thickness from 30 to 25 km. A section across the SW Japan arc elucidated the detailed subduction geometry of the Philippine Sea Plate and inland crustal evolution associated with processes of accretion and magmatic intrusion. The Outer Zone south of the Median Tectonic Line is characterized by northward dipping structures of accretionary complexes, while the lower part of the crust in the Inner Zone is quite reflective, probably modified and homogenized due to the magmatic intrusion at Cretaceous time. Clear structural images obtained for arc-arc collision zones in central Hokkaido and easternmost part of the SW Japan arc provides direct evidence of crustal delamination. The structure in Hokkaido strongly indicates that the delamination of the Kuril forearc occurs at its brittle-ductile transition zone.
著者
伊藤 谷生 岩崎 貴哉
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.87-96, 2002-12-27

In Japanese islands, there exist two ongoing arc-arc collision zones (Hidaka region in Hokkaido and Izu region in Honshu). This paper presents an overview for recent geophysical and geological researches on the arc-arc collisions. In the Hidaka collision zone, the Kuril forearc has been collided onto the Northeast Japan arc since Miocene. A series of intensive seismic reflection and refraction since 1994 provided clear images on the collision style including the crustal delamination of the Kuril forearc in this region. These results constrain an important process for the formation of continental crust. Namely, delaminated lower (more mafic) crust of the Kuril forearc is descending down, and being transferred into the mantle by the plate subduction. The resultant crust becomes more felsic, which probably will be a core of the continental crust. The deep structure and deformation style of the Izu collision zone, where the Izu-Bonin arc is colliding to Honshu Island, has not been clarified as yet. In this paper, some of the recent geological and geophysical studies in these regions are introduced.
著者
村井 芳夫 東 龍介 篠原 雅直 町田 祐弥 山田 知朗 中東 和夫 真保 敬 望月 公廣 日野 亮太 伊藤 喜宏 佐藤 利典 塩原 肇 植平 賢司 八木原 寛 尾鼻 浩一郎 高橋 成実 小平 秀一 平田 賢治 対馬 弘晃 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.147-158, 2013-03-19

2011年3月11日に,太平洋プレートと日本列島を乗せた陸側のプレートとの境界で2011年東北地方太平洋沖地震が発生した.この地震は,日本周辺では観測史上最大のマグニチュード9という巨大地震だった.本震発生後には多数の余震が発生するが,大地震発生のメカニズムを解明するためには,正確な余震分布を調べることが重要である.全国の6つの大学と海洋研究開発機構,気象庁気象研究所は,本震発生直後から共同で100台以上の海底地震計を用いて余震観測を行った.2011年6月中旬までのデータから,震源域全体で約3か月間の精度の良い震源分布が得られた.余震の震源の深さは,全体的に陸に近づくにつれて深くなっていた.震源分布からは,本震時に大きくすべったプレート境界では余震活動が低いことがわかった.上盤の陸側プレート内では余震活動が活発で,正断層型と横ずれ型が卓越していた.太平洋プレート内の余震も多くが正断層型か横ずれ型だった.このことから,日本海溝付近の太平洋プレート内の深部と上盤の陸側プレート内では,本震の発生によって応力場が圧縮場から伸張場に変化したことが示唆される.
著者
村井 芳夫 東 龍介 篠原 雅尚 町田 祐弥 山田 知朗 中東 和夫 真保 敬 望月 公廣 日野 亮太 伊藤 喜宏 佐藤 利典 塩原 肇 植平 賢司 八木原 寛 尾鼻 浩一郎 高橋 成実 小平 秀一 平田 賢治 対馬 弘晃 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
no.76, pp.147-158, 2013-03

2011年3月11日に,太平洋プレートと日本列島を乗せた陸側のプレートとの境界で2011年東北地方太平洋沖地震が発生した.この地震は,日本周辺では観測史上最大のマグニチュード9という巨大地震だった.本震発生後には多数の余震が発生するが,大地震発生のメカニズムを解明するためには,正確な余震分布を調べることが重要である.全国の6つの大学と海洋研究開発機構,気象庁気象研究所は,本震発生直後から共同で100台以上の海底地震計を用いて余震観測を行った.2011年6月中旬までのデータから,震源域全体で約3か月間の精度の良い震源分布が得られた.余震の震源の深さは,全体的に陸に近づくにつれて深くなっていた.震源分布からは,本震時に大きくすべったプレート境界では余震活動が低いことがわかった.上盤の陸側プレート内では余震活動が活発で,正断層型と横ずれ型が卓越していた.太平洋プレート内の余震も多くが正断層型か横ずれ型だった.このことから,日本海溝付近の太平洋プレート内の深部と上盤の陸側プレート内では,本震の発生によって応力場が圧縮場から伸張場に変化したことが示唆される.
著者
伊藤 谷生 宮内 崇裕 金川 久一 伊勢崎 修弘 佐藤 比呂志 岩崎 貴哉 佐藤 利典
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

今年度は本研究の最終年度であるため、2000年9月に行われた日高超深部地震探査結果の解析を行い、日高衝突帯の超深部構造を明らかにする糸口を見つけだすことが中心的課題であった。このため、年度の前半は、探査結果解析のための前処理を千葉大学所有の反射法処理システムを用いて行い、後半は、新たに導入した汎用地震探査処理システムSuper XCを用いて解析作業を進めた。また、この作業と平行して、測線周辺の地質調査を行った。これらを通じて明らかになったことは以下の点に要約される。1)日高主衝上断層(HMT)は低角であり、しかも地下2km程度でほとんど水平になる。これは、変成岩類主帯の構造から推定されてきたことと調和的である。2)TWT14秒付近に顕著な反射面群として把握されているものは、自然地震の震源分布との対応関係から太平洋プレート上面と推定される。3)デラミネートした千島下部地殻下半分のイメージは現在までの処理過程では把握されていない。その理由としては、高角なためイメージングできない、破砕されているため地震波が散乱し反射面を形成できない、エクロジャイト化して上部マントルと区別できない、の3つが考えられるが、1つを特定できない。4)東北日本側のウェッジにも顕著な反射面が認められ、当初考えられていた単純なデラミネーションーウェッジモデルよりも複雑な"刺しちがえ"構造の存在が碓定される。5)イドンナッブ帯中の冬島変成岩類の西縁断層は衝上断層である。6)日高超深部地震探査と平行して行われた遠地自然地震のレシーバ関数解析についての予察的研究によれば、4)に対応するインターフェースの存在が確認される。これまでの解析は最もベーシックな段階であるにもかかわらず、日高衝突帯超深部構造解明の糸口を与えるものである。今後の木格的な処理作業によって、解明へ大きく前進するであろう。
著者
島村 英紀 MARKVARD Sel 末広 潔 金沢 敏彦 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

本研究では, 1988年に予定されている「本調査」を主な調査として, いまだナゾである大西洋中央海嶺の北部にあるプレート・テクトニクス研究の空白の部分について, すでに多くの研究の実積のある日本の海底地震計を使って, 日本とノルウェーの共同研究として, 精密な地下構造の探査と高感度の自然地震観測を行う. 1987年に行われた「予備調査」では, この研究の一環として, プレートの境界として, 日本のそれとは対照的な「受動的な境界」の精密な地下構造探査を, 世界で初めて, フィヨルドの底に海底地震計を並べて人工地震を行うという研究手法によって行った.この一連の研究によって, 海底から大陸にかけての地殻と上部マントルの『精密な地下構造』が初めて明らかになることと, 微小地震の活動を調べることによって, この付近の『プレートの現在の動きを知る』ことができ, 地球科学上, 大きな貢献をすることが期待される. なお, 海底地震計の設置と人工地震には, ノルウェーの大学の観測船が使われる.実験は海底地震計の場所を変えて二回繰り返され, 合計2万4千本もの地震記録を得ることができた. 解析には約半年を要するが, 記録の質は, もっとも遠い観測点でも良好なので, これらの記録を解析することによって, 同地域でいままでに得られたうちでも, もっとも精密な地殻構造が得られるものと期待されている.また, 次年度以下の本調査の実施についても, 明るい見通しを得ることができた.本調査に使うノルウェーの観測船と, 人工地震のための機材をテストするとともに, 共同研究者であるノルウェーの地球物理学者と共同して, 本調査で行う全体の地殻構造調査のいわば「東の端」である調査を, ノルウェーの大西洋岸で予備調査として行った.具体的には, ノルウェーの大西洋岸から直角に内陸に開けている, 同国最長のフィヨルドであるソグネフィヨルド(長さ200km)の中で, ベルゲン大学の観測船『ホーコンモスビー』(490トン)をつかって, 日本から運んだ海底地震計6台を設置し, ベルゲン大学の所有する大型エアガンで人工地震を行って, ノルウェー大西洋岸の地殻構造を求めるための一連の実験を行った. ノルウェーの大西洋岸は, 「受動的なプレート境界」として地球物理学では重要であるにもかかわらず, フィヨルドが縦横に走るほか, 山岳地帯に阻まれて, 通常の地震探査が行いにくかった. このため, 海底地震計とエアガンをフィヨルドの中で使うというのは, いままでだれも行っていなかった, 地下構造を調べるための効果ある手法なのである.
著者
岩崎 貴哉 金澤 敏彦 松澤 暢 三浦 哲 壁谷澤 寿海 多々納 裕一
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2007

2007年7月16日10時13分, 新潟県上中越沖の深さ約17kmを震源とするマグニチュード(M)6.8の地震が発生した. この地震により, 新潟県と長野県で最大震度6強を観測し, 大きな被害をもたらした. 発震機構は北西-南東方向に圧縮軸を持つ逆断層型で, 地殻内の浅い地震である. 今回の地震は, 未知の伏在断層で発生したもので, 震源断層の実態を明らかにするためは, 海陸を通じた地震観測により余震の精密な空間分布等を求める必要がある. 特に, 今回の地震は堆積層に覆われた地域で発生しており, このような地域で余震の分布から震源断層の実態を明らかにすることは, 今後の同様の地域での地震発生を考える上で重要である. そこで, 平成19年度の本調査研究では, 海底地震計及び陸上臨時観測点を合計79台設置し, 余震の精密な空間分布等を求め, 今回の活動で発生した断層の正確な形状等を把握し, 本震の性質の推定等を行なった. その結果, 余震域の南西側は南東傾斜の余震分布が支配的であり, 北東側では北西及び南等傾斜の分布が混在することがわかった. 北東側と南西側では構造異なり, 両地域の間が構造境界になっているらしい. また, このような地域での地震発生を理解することは, 同様な他の地域における地震発生予測にも不可欠であり, 社会的にも強く要請されることである. 更に, 本調査研究では, 強震観測・建物被害や地震による災害の救援などを調査から被害の特徴と要因を明らかにし, 震源断層に関する理学的研究と連携させて実施した. 強震観測によれば, この断層面は, 震源域南西側の余震分布でみられる南東傾斜である可能性が強いが, 本震の位置はこの北西傾斜の地震群の中にある可能性がある. GPS観測では, 観測点が陸域に限られているために, この地震の断層モデルを特定するには至らなかったが, 予稿変動を捉え, その時定数(decay time)0.35-2.83日と求まった.平成20年度は, その研究成果をとりまとめた.
著者
島村 英紀 SELLEVOLL Ma EINARSSON Pa STEFANSSON R 末広 潔 金沢 敏彦 塩原 肇 RAGNAR Stefansson MARKVARD Sellevoll PALL Einarsson MARKVARD Sel PALL Einarss RAGNAR Stefa 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

大西洋中央海嶺は、いまプレ-トが生まれている場所である。アイスランドは、その海底山脈がたまたま島になったところである。海嶺については、いままで精密に地下構造が調べられたり、地震活動が詳しく調べられたことはなかった。たとえば地震活動については、何千キロメ-トルも離れた陸から中央海嶺に起きる地震を研究するのが唯一の手段だった。一方、日本の海底地震計は小型軽量で高感度に作られており、数十台という多数の海底地震計を投入する結果得られる、従来よりもはるかに精密な微小地震活動の研究と、精密な三次元地下構造の透視など、地下構造の研究についても、他国をリ-ドしている。このように中央海嶺付近は、その地球科学的な重要性にもかかわらず、いまだ、精密な観測のメスがはいっていなかった。今回の研究は中央海嶺上にあるアイスランドという希有な場を足がかりにして、世界でも初めて成功裏に行われた海底地震研究である。大量のデ-タが得られたために現在まだ解析が続いているが、画期的な成果が得られつつある。具体的には1990、1991の両年とも日本から約20台という大量の海底地震計を運び、アイスランド近海で高感度の海底地震群列観測を行った。同時にアイスランド陸上には臨時に十数点の高感度地震観測点を設置して海と陸、双方から地震を追った。1990年夏には、アイスランドから南西に伸びるレイキャヌス海嶺で長さ150キロ、幅40キロにわたる海域に18台の海底地震計を展開した。観測にはアイスランド気象庁とレイキャビック大学の全面的な協力が得られ、また海底地震計の設置と回収にはアイスランド側の全面的な協力を得て、同国の海上保安庁の船が借りられた。また設置した海底地震計の近くでは、同国のトロ-ル漁業を一カ月の観測期間中、遠慮してもらった。このため海底地震計すべてを順調に回収出来た。この観測の結果、微小地震は海嶺軸に沿ってだけ分布しており、その幅はわずか5キロメ-トル以下であることが分かった。海嶺の両側では全く地震は発生していないことも分かった。そして微小地震は海嶺軸に沿って一様に分布しているのではなく、地震活動の高いところと低いところが発見され、しかも過去の海底火山地震活動との関連が明らかになった。一方、微小地震の震源の深さは、海嶺軸から鉛直下方に伸びているのが分かり、しかもその深さは地下12キロメ-トルまで伸びていることが分かった。従行、海嶺軸下でプレ-トを生むマグマ活動がどのくらいの「根」の深さを持っているかはナゾであり、漠然と2、3キロメ-トルに違いないと考えられていたが、今回の研究によって、海嶺の「根」はずっと深いことが初めて明らかにされたことになる。また一カ月の地震観測期間中、二度にわたって群発地震が捉えられ、そのいずれもがごく細い煙突状の筒の中を震源が移動したことも確かめられた。このような海嶺の群発地震の詳細が捉えられたのも世界で初めてである。1991年にはアイスランドの反対側、北側で海底地震観測を行った。この海域は新しいプレ-トを生んでいる大西洋中央海嶺が、複雑で百キロメ-トル以上もの幅にひろがったトランスフォ-ム断層をなしているところで、世界的にも地球科学の大きなナゾを残している場所である。このアイスランド北側から北大西洋にかけての大西洋中央海嶺で21台の海底地震計と約15台の陸上地震観測点が連携した微小地震観測に成功した。全ての地震計は無事に回収された。また、地下構造を研究するための人工地震実験も行って、従来ナゾだった地下構造を調査した。デ-タは現在、解析中である。この両年度の研究で、従来の地震観測では把握することのできなかったアイスランド周辺の大西洋中央海嶺で何百個という微小地震を捉えることが出来て、地震活動がはじめて精密に分かり、また未解明だった地下構造が知られた。捉えた地震のマグニチュ-ドは1とか2とかの微小地震である。また、アイスランドの南北で明瞭に違う大西洋中央海嶺のそれぞれの活動について、世界でも初めての詳細な知見を得ることが出来た。