著者
上村 彩 笠原 順三 日野 亮太 篠原 雅尚 塩原 肇 金沢 敏彦
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.506-516, 2000-08-25 (Released:2010-11-18)
参考文献数
40
被引用文献数
4 4 3

To predict earthquakes, huge efforts have been devoted to monitoring earthquakes, crustal deformations and water level during past decades, however, has been found to be extremely difficult. A new approach in marine seismic studies on earthquake prediction proposes focusing on the nature of the subducting plate boundary. Some Ocean Drilling Program (ODP) drillings and seismic reflection studies show fluid flows and the existence of hydrous minerals in the decollement zone. Considering that the subducting plate might contain much water, a number of hydrous minerals might be stable down to 150-300 km, in particular, serpentines and lawsonite.In 1998, the authors carried out a seismic experiment at the Izu-Bonin trench using Ocean Bottom Seismometers (OBSs) and controlled sources. The 130 km long E-W line crosses the Torishima forearc seamount, one of the serpentine diapirs at the eastern terminus. The velocity structure obtained along the line shows a relatively high velocity at the top and alow velocity at the bottom of the serpentine diapir. The velocity of the mantle wedge is slower than that of normal mantle. The dip of the subducting slab is initially quite gentle and abruptly becomes steep around 100 km from the trench axis. Hydration of peridotite in the mantle wedge might occur close to the Izu-Bonin trench axis and serpe ntines seem to be raised upward to the ocean bottom.
著者
末次 大輔 塩原 肇
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.37-63, 2020-06-05 (Released:2020-07-31)
参考文献数
137

Broadband ocean bottom seismometers (BBOBSs) have been developed since 1990s and put into practice to explore the structure of the Earth’s interior beneath oceanic regions, e.g., mid-oceanic ridges, subduction zones, hotspots, and oceanic lithosphere-asthenosphere boundary. The BBOBSs have been used to investigate earthquake source process including slow earthquakes and oceanographical phenomena. The best way for the broadband seismic observation in the oceanic region seems that the borehole seismic observatory connected with the ocean floor cable, which is realized in several networks deployed close to the coast but it is rare even now. For scientific targets far away from the coast, we still need to develop and operate the autonomous system of BBOBS with better S/N for a temporary observation for focused scientific targets. In this review article, focusing mainly on achievements made in Japan, we describe a history of the development of BBOBS and some related instruments, scientific results based on observations with the BBOBSs, and future direction of broadband ocean bottom seismology.
著者
三反畑 修 綿田 辰吾 佐竹 健治 深尾 良夫 杉岡 裕子 伊藤 亜妃 塩原 肇
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1. はじめに 鳥島近海地震(M5.6-5.7)は伊豆・小笠原島弧上の鳥島近海に位置する海底火山体の地下浅部で、ほぼ10年に一度観測されている、火山性の津波地震である。最新のイベントは2015年5月2日(JST)に発生した。本発表では、この地震により発生した津波の観測データに基づく、津波解析の詳細を報告する。なお、火山性津波地震の観測からメカニズム提唱までを含む本プロジェクトの概要は、深尾らによる別途発表に譲る。2. 津波観測 2015年の鳥島地震に伴って発生した津波は、伊豆小笠原諸島沿いの島嶼部を中心に、潮位計等で数十cm程度の津波が観測され、特に八丈島八重根港では約60cmの最大振幅を記録した(JMA, 2015)。一方で、我々が震央距離約100kmの深海底に展開した計10点の水圧計アレーでも、高精度の津波記録の観測に成功した。アレーで観測された津波波形は、数mmの負の信号から始まり、2.0 cm程度の正の信号が続き、同程度の振幅の後続波を伴っていた。そこで我々は、アレーで記録された津波波形を用いて解析を行い、鳥島地震に伴う地殻変動に伴う海水面擾乱、すなわち津波波源のモデル化を行った。3. 津波の分散性を考慮した津波波線追跡 まず津波の分散性を考慮して、アレーの津波波形から低周波数成分から順に高周波数成分の位相走時を読み取り、平面波近似によってアレーへの入射方向を調べると、低周波位相ほど、震央と観測点位置を結ぶ大円方向から、入射方向が大きく外れることがわかった。我々は、分散性を含む線形重力波の位相速度式を用いて局所的津波位相速度場を再帰的に計算し、周波数ごとに津波波線追跡を行うことで、特に海溝沿いの深海部で位相速度が周波数によって大きく異なることが、これらの周波数特性の原因であることを明らかにした(Sandanbata et al., 2018, PAGEOPH)。 さらに、走時および入射方向の周波数依存性をもっともよく説明する点波源位置をグリッドサーチによって調べると、点波源は直径8km程度の円形をしたスミスカルデラのリム内に精度良く求まった。仮に点震源をカルデラ外にずらすと、走時と入射方向を同時に説明することはできなかった。一方、津波初動の入射方向も同様に調べ、それを初期値としてアレーから波線を射出し、初動の走時分だけ逆伝播させると、カルデラリム北端近傍に達した。これらの結果は、鳥島地震に伴う隆起現象はスミスカルデラの内部で主要な隆起が発生し、その広がりはリムと同程度の広がりがあったことを示唆する。4. 津波波形差分計算による津波波源モデリング 次に、津波伝播差分計算を行い、鳥島地震に伴う津波波源をより詳細に調べた(Fukao et al., 2018, Sci. Adv.)。上記の結果を踏まえて、スミスカルデラの中心を中心軸とする軸対象の津波波源とし、アレーでの波形記録を考慮して、ガウシアン型の中心隆起とそれを囲む微小な環状の海水面沈降から成る軸対象波源モデルを仮定した。この中心隆起の振幅Aおよび隆起域の半径Rのパラメタを変化させ、差分計算コードJAGURS(Baba et al., 2015, PAGEOPH)を用いて分散性を含む線形ブシネスク方程式を解いた。 様々なパラメタを仮定した時のアレーでの計算波形と観測波形の規格化最小二乗和を計算し類似度を定量化すると、R=4.1kmおよびA=1.5mの時に最小値をとり、計算波形はアレーでの観測波形を非常によく再現した。この隆起域半径R=4.1kmはカルデラ半径とよく一致し、鳥島地震に伴って、スミスカルデラ内で1mを超える大きな隆起現象が発生したことが明らかになった。5. 八丈島八重根港での津波波形 続いて、アレー記録を用いて推定した波源モデルを与えた時に、約60cmの最大波高が記録された八丈島の八重根港での津波波形を説明できるかを調べた。この際、国土地理院の数値標高モデル(DEM)と、日本水路協会の海図を組み合わせて作成した複雑な湾口の地形データを用い、非線形効果も含めJAGURS(Baba et al., 2015)を用いて津波伝播計算を行った。その結果、計算波形は振幅・位相を含めて後続波まで、観測波形をよく再現した。6. 津波解析のまとめ 以上の結果は、2015年鳥島地震に伴う地殻変動について重要な情報を与える。第一に、この地震伴い1mを超える隆起現象がカルデラ内に集中していることが明らかになり、鳥島近海地震はカルデラ地形に関係する火山活動が発生したことを示唆する。第二に、少なくともカルデラ周囲の北東側には、無視できない規模の沈降が含むことが明らかになった。これはCLVD型の震源メカニズムとも調和的な結果である。深尾らの発表で、以上を踏まえ、火山性津波地震のメカニズム提唱を行う。
著者
八木原 寛 角田 寿喜 宮町 宏樹 後藤 和彦 平野 舟一郎 日野 亮太 金澤 敏彦 海宝 由佳 塩原 肇 渡邊 智毅 望月 将志 根本 泰雄 島村 英紀
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.227-239, 1996-08-23 (Released:2010-03-11)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

We investigated seismic activity around Tokara Channel north off Amami Oshima, Nansei Syoto (Ryukyu) Islands of western Japan, using 12 ocean-bottom seismographs (OBS), as well as two temporal stations at Yaku Shima and Amami Oshima islands, operated from April 16 to May 10, 1992. One-dimensional velocity structure and station corrections were inverted from P and S times of 51 events provisionally well-located in the OBS network. We then relocated precisely 239 events in the studied region, using the inverted velocity structure and station corrections.Seismicity was highest in an area of about 10km×10km near the trench axis northeast off the OBS network: the largest event of MJMA 5.6 and other 40 events (probably aftershocks) were located at shallow depths. A mechanism solution of normal fault type with a T-axis of NW direction for the largest event was concordant with bending process of the Philippine sea plate. On the other hand, 18 events at depths of about 30km in a small area north of the OBS network were presumably due to interplate thrusting, because a composite mechanism solution for three events was of reverse fault type with a P-axis of ESE direction. A cluster of 17 events at depths from 10km to 25km was found in a southwest area of the network. These shallow events were probably crustal earthquakes within the Eurasian plate.We found an area of very low seismicity in the southeast of the network during the period studied. It is also identified at the nearly same location in the epicenter distribution from 1984 through 1991 obtained by Japanese Meteorological Agency (JMA) and possibly corresponds to the aftershock area of the 1911 Kikaijima Earthquake (M 8.0).Although we could not confirm any discernible alignments of shallow earthquakes along the Tokara Channel which is a notable tectonic line, the dipping angle of the intermediate-deep seismic zone changes discontinuously from about 65° on the north of the channel to about 40° on the south.
著者
中村 雅基 金沢 敏彦 佐藤 利典 塩原 肇 島村 英紀 仲西 理子 吉田 康宏 趙 大鵬 吉川 一光 高山 博之 青木 元 黒木 英州 山崎 貴之 笠原 順三
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-28, 2002
被引用文献数
5

中部日本におけるP波およびS波の3次元速度構造を地震波走時トモグラフィーを用いて求めた。その際、定常観測点で得られる自然地震を対象とした観測値だけでなく、人工地震や海域における臨時観測点等を用いた観測値を積極的に利用した。得られた成果は以下の通りである。沈み込むフィリピン海プレートと思われる高速度域が検出された。フィリピン海プレートは、少し高角度で沈み込み始め、その後なだらかになり、最後は高角に沈み込んでいる。35°N、136.5°E付近では、フィリピン海プレートが分かれている。将来発生が懸念されている東海地震の固着域の北西隣は、プレート間カップリングが弱い。35.6°Nから35.8°N、137.5°E、深さ100kmから200km付近で、非地震性のフィリピン海プレートが検出された。
著者
深尾 良夫 三反畑 修 杉岡 裕子 伊藤 亜紀 塩原 肇 綿田 辰吾 佐竹 健治
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1: 津波地震は地震の規模と比較して異常に津波の規模が大きな地震(Kanamori, PEPI, 1972)で、典型的には海溝すぐ内側に起こる低角逆断層地震が津波地震になりやすい。一方、ほぼ10年に一度繰り返して起こる鳥島近海地震(Mw=5.6-5.7)は、海底カルデラ下で発生する全く別種の津波地震である。最新のイベント(2015年5月2日)であるが、その地震波と津波を震央距離約100km(北北東)の海底に展開した10点の水圧計アレーが記録した。本発表では、津波地震の観測からメカニズム提唱までの概要を報告する。津波解析の詳細は、三反畑らによる別途発表に譲る。2: 10点の絶対圧力計(7000mの水深に相当する圧力を9桁の分解能で測定可能)を最小辺長10km、最大辺長30kmの正三角形を構成するよう配置する。今回は、このアレーを青ヶ島東方沖水深1470-2240mの海底に2014年5月に設置し翌年5月に回収した。このアレーは、周期半日の内部潮汐波(Fukao et al., JpGU, 2017)、周期50-200秒の長周期海洋重力波(Tonegawa et al., JGR, 2018)、周期100-300秒の津波(Sandanbata et al., PAGEOPH, 2018; Fukao et al., Sci. Adv., 2018)など、多様な海洋現象の観測に有効である。3: アレーの観測点配置は、卓越周期200秒の津波がアレーを伝播する間に位相がほぼ1周期ずれ、そのズレを10点で測定することに相当し、高精度な位相解析が可能である。得られた位相速度は周期に依存し理論的な分散曲線と良く一致する。点波源をスミスカルデラ内に仮定し、周期に依存する局所位相速度分布図を用いて破線追跡を行うと、観測された走時と入射方向の周波数依存性をよく説明できる。仮に波源がリムにあるとすると、測定された到達時刻あるいは入射方向との一致は有意に悪くなる。一方、津波の初動は、波形の立ち上がり寸前のゼロ線を切る瞬間として読み取ることができるが、そのアレー通過速度は理論的な長波速度に一致する。この立ち上がりを地震発震時刻まで逆伝播させると、波源域の縁がカルデラリムにあることがわかる。津波波源はカルデラ全体にわたり、それを超えることなかったと推測される。一方、USGS、JMA、GCMTの求めた地震の震央はカルデラサイズを超えて散らばり、津波波源のほうが高精度で求められていることがわかる。4: 津波波源をモデリングするためにt=0の瞬間に海面擾乱を与え、その擾乱の伝播をブジネスク方程式の解として求めた。初期擾乱を軸対称とし、観測波形を最も良く説明する波源域の半径Rと中心隆起の振幅Aをグリッドサーチにより求めた。最適半径A=4kmはスミスカルデラのサイズとよく一致する。最適波高はA=1.5mと求められた。最適モデルに基づいて計算された波形と観測波形との一致は驚くほど良い。アレーで観測された最大振幅は約2cmであるが、八丈島(八重根港)の験潮儀には約60cmの最大振幅が観測されている。八重根港における津波波形を、湾の複雑な地形と津波の非線形効果を考慮して計算すると、計算波形は観測波形と驚くほどの良い一致を示した。5: この地震のメカニズムはT軸がほぼ鉛直のCLVD(Compensated Linear Vector Dipole)であり、Mwは5.7相当である(JMA, GCMT)。しかしこのメカニズムでは、直径8kmの波源域、1.5mの津波波高に相当する海底変位を生ずることはできない。震源を如何に浅くしようとも海底変位は津波の初期波高のたかだか1/20程度しかならない。両者のこの大きな差異は、実際のメカニズムがCLVDではなくHorizontal Tensile Fault(HTF)が鉛直に開口したためであったことを示唆する。このメカニズムが海底下の極浅部に働く場合、(1)遠方長周期地震波の励起効率はゼロに近く、一方で津波の励起効率は最大、(2)励起された地震波は殆ど上側(海側)に放出されるので、断層面上の変位は上側に集中し、水中音波の励起効率も大きく増幅される、(3)震源で体積変化なしと仮定して遠方変位場からメカニズムを求めるとモーメントの不当に小さなVertical-T CLVDが得られる。これら3つの極浅部HTFの特徴は鳥島近海津波地震の特徴と整合する。
著者
三反畑 修 綿田 辰吾 佐竹 健治 深尾 良夫 杉岡 裕子 伊藤 亜妃 塩原 肇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

2015年5月2日に鳥島の近海で発生したM5.7の地震は,震央から約100km北方の八丈島では60cmの津波が観測されるなど,地震の規模から想定されたよりも大きな津波を引き起こした「津波地震」であったと言える.Global CMT解の震源は,伊豆・小笠原海溝に沿った火山体である須美寿カルデラ付近の地下浅部に定まっている.この地域では規模・震源メカニズムの類した地震が,1984年,1996年,2006年に観測され,同様に津波を発生させている(Satake and Gusman, 2015, SSJ).1984年の地震に関して,Satake and Kanamori (1991, JGR) は長波近似を用いた津波伝播シミュレーションにより,円形の隆起の津波波源モデルを提案した.震源メカニズムは地下浅部でマグマ貫入に伴う水圧破砕(Kanamori et al., 1993)や,カルデラの環状断層(Ekström, 1994, EPSL)の火山活動に伴うCLVD型の地震モデルが推定されている.2015年の鳥島地震による津波は,海洋研究開発機構が設置した10の海底水圧計から成る観測点アレーによって観測された.水圧計アレーでの観測波形は,波束の到達時間が長周期ほど遅くなる分散波としての特徴を示しており,特に位相波面の到来方向が観測点と震源を結ぶ方向から,低周波の位相波面ほど大きく外れるという特異な傾向が確認された(深尾ほか,本大会).本研究では,津波を分散性の線形重力波として扱い,周波数ごとの位相波面およびエネルギー波束の波線追跡をおこなった.まず,線形重力波の理論式と平滑化した水深データを用いて,各周波数での二次元位相速度場・群速度場を反復計算により帰納的に計算した.位相速度・群速度の両速度場を用いることで,周波数ごとの位相波面およびエネルギー波束の伝播時間の測定が可能になる.そして,球面上の地震波表面波の波線方程式(Sobel and Seggern, 1978, BSSA; Jobert and Jobert, 1983, GRLなど)と同様な方程式について数値積分を行い,須美寿カルデラを波源とする各周波数の波線を追跡した.周波数に依存する波線追跡の結果,低周波の波ほど水深の影響を受けて波線が大きく曲がる様子が確認された.特に,波源から北東へ射出した波線が北側に大きく曲がり,周波数が低いほど波面の進行方向が変化する傾向が見られた.この結果は,水圧計アレーに入射する位相波面の到来方向が周波数に依存して変化するという観測結果と調和的である.また,波線追跡に基づくエネルギー波束(群速度)の到達時間は,水圧計アレーの各周波数帯における波束の最大振幅の到達時間によく一致した.さらに,周波数帯によらず波源の北方向で波線が集中する様子が確認された.この結果は,北側の広い方向に放射された波が地形変化による速度勾配によりエネルギーが集中することで,八丈島での振幅が大きくなった可能性を示唆している.本手法による周波数に依存する波線追跡により,長波近似がよく成り立つ長周期の波動だけでなく,分散効果により後続波として到達する高周波の波についても同様に波線を追跡し,津波伝播の特徴をより詳細まで捉えることができる.例えば,周波数帯ごとの津波の伝播経路上の特徴的な地形が波形に与える影響を考察することや,高周波の後続波を含むエネルギー波束の到達時間を,少ない計算量で推定することが可能になる.
著者
篠原 雅尚 村井 芳夫 藤本 博己 日野 亮太 佐藤 利典 平田 直 小原 一成 塩原 肇 飯尾 能久 植平 賢司 宮町 宏樹 金田 義行 小平 秀一 松澤 暢 岡田 知己 八木 勇治 纐纈 一起 山中 佳子 平原 和朗 谷岡 勇市郎 今村 文彦 佐竹 健治 田中 淳 高橋 智幸 岡村 眞 安田 進 壁谷澤 寿海 堀 宗朗 平田 賢治 都司 嘉宣 高橋 良和 後藤 浩之 盛川 仁
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2010

2011年3月11日、東北地方太平洋沖でM9.0の巨大地震が発生し、地震動・津波被害をもたらした。この地震の詳細を明らかにするために、各種観測研究を行った。海底地震観測と陸域地震観測により、余震活動の時空間変化を明らかにした。海底地殻変動観測及び地震波反射法構造調査から、震源断層の位置・形状を求めた。さらに、各種データを用いて、断層面滑り分布を明らかにした。現地調査により、津波の実態を明らかにし、津波発生様式を解明した。構造物被害や地盤災害の状況を明らかにするとともに、防災対策に資するデータを収集した。
著者
村井 芳夫 東 龍介 篠原 雅直 町田 祐弥 山田 知朗 中東 和夫 真保 敬 望月 公廣 日野 亮太 伊藤 喜宏 佐藤 利典 塩原 肇 植平 賢司 八木原 寛 尾鼻 浩一郎 高橋 成実 小平 秀一 平田 賢治 対馬 弘晃 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.147-158, 2013-03-19

2011年3月11日に,太平洋プレートと日本列島を乗せた陸側のプレートとの境界で2011年東北地方太平洋沖地震が発生した.この地震は,日本周辺では観測史上最大のマグニチュード9という巨大地震だった.本震発生後には多数の余震が発生するが,大地震発生のメカニズムを解明するためには,正確な余震分布を調べることが重要である.全国の6つの大学と海洋研究開発機構,気象庁気象研究所は,本震発生直後から共同で100台以上の海底地震計を用いて余震観測を行った.2011年6月中旬までのデータから,震源域全体で約3か月間の精度の良い震源分布が得られた.余震の震源の深さは,全体的に陸に近づくにつれて深くなっていた.震源分布からは,本震時に大きくすべったプレート境界では余震活動が低いことがわかった.上盤の陸側プレート内では余震活動が活発で,正断層型と横ずれ型が卓越していた.太平洋プレート内の余震も多くが正断層型か横ずれ型だった.このことから,日本海溝付近の太平洋プレート内の深部と上盤の陸側プレート内では,本震の発生によって応力場が圧縮場から伸張場に変化したことが示唆される.
著者
村井 芳夫 東 龍介 篠原 雅尚 町田 祐弥 山田 知朗 中東 和夫 真保 敬 望月 公廣 日野 亮太 伊藤 喜宏 佐藤 利典 塩原 肇 植平 賢司 八木原 寛 尾鼻 浩一郎 高橋 成実 小平 秀一 平田 賢治 対馬 弘晃 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
no.76, pp.147-158, 2013-03

2011年3月11日に,太平洋プレートと日本列島を乗せた陸側のプレートとの境界で2011年東北地方太平洋沖地震が発生した.この地震は,日本周辺では観測史上最大のマグニチュード9という巨大地震だった.本震発生後には多数の余震が発生するが,大地震発生のメカニズムを解明するためには,正確な余震分布を調べることが重要である.全国の6つの大学と海洋研究開発機構,気象庁気象研究所は,本震発生直後から共同で100台以上の海底地震計を用いて余震観測を行った.2011年6月中旬までのデータから,震源域全体で約3か月間の精度の良い震源分布が得られた.余震の震源の深さは,全体的に陸に近づくにつれて深くなっていた.震源分布からは,本震時に大きくすべったプレート境界では余震活動が低いことがわかった.上盤の陸側プレート内では余震活動が活発で,正断層型と横ずれ型が卓越していた.太平洋プレート内の余震も多くが正断層型か横ずれ型だった.このことから,日本海溝付近の太平洋プレート内の深部と上盤の陸側プレート内では,本震の発生によって応力場が圧縮場から伸張場に変化したことが示唆される.
著者
酒井 慎一 山田 知朗 井出 哲 望月 将志 塩原 肇 卜部 卓 平田 直 篠原 雅尚 金沢 敏彦 西澤 あずさ 藤江 剛 三ヶ田 均
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.145-155, 2001-04-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
6
被引用文献数
38 54

From June 26, 2000, an intensive earthquake swarm started under Miyake-jima Island, 180 km south off Japan. This swarm was closely related to the eruption of Miyake-jima Island, probably dominated by underground magmatic activity. The swarm spread toward the northwestern ocean region from Miyake-jima Island, in which a huge number of earthquakes (over 100, 000) including five large events of M>6.0 were detected over about two months. This earthquake swarm was the most active since we started seismic observations in the 1970's.Although there are some telemetered observation stations on the Izu volcanic islands, no offshore instruments were operated in the area of this earthquake swarm. To understand both the spatial and temporal changes of this activity, we conducted a series of ocean bottom seismometer observations. According to the variation in the seismic activity with time, we changed the array configuration of OBSs six times. Furthermore, real-time seismic observations were undertaken using a buoy-telemetering OBS system.Combining the OBS data with those of the island stations, very precise earthquake locations were determined. The epicenter distribution obtained strongly indicates a northwest-southeastern lineament. The vertical cross-section of the events shows two characteristic trends. Deeper (7- 13km) events are forming a very thin (2-km thick) plane, while shallower ones (< 7 km) show a much thicker distribution. These distribution patterns will provide important constraints on the physical mechanism for understaning magma migration.
著者
島村 英紀 SELLEVOLL Ma EINARSSON Pa STEFANSSON R 末広 潔 金沢 敏彦 塩原 肇 RAGNAR Stefansson MARKVARD Sellevoll PALL Einarsson MARKVARD Sel PALL Einarss RAGNAR Stefa 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

大西洋中央海嶺は、いまプレ-トが生まれている場所である。アイスランドは、その海底山脈がたまたま島になったところである。海嶺については、いままで精密に地下構造が調べられたり、地震活動が詳しく調べられたことはなかった。たとえば地震活動については、何千キロメ-トルも離れた陸から中央海嶺に起きる地震を研究するのが唯一の手段だった。一方、日本の海底地震計は小型軽量で高感度に作られており、数十台という多数の海底地震計を投入する結果得られる、従来よりもはるかに精密な微小地震活動の研究と、精密な三次元地下構造の透視など、地下構造の研究についても、他国をリ-ドしている。このように中央海嶺付近は、その地球科学的な重要性にもかかわらず、いまだ、精密な観測のメスがはいっていなかった。今回の研究は中央海嶺上にあるアイスランドという希有な場を足がかりにして、世界でも初めて成功裏に行われた海底地震研究である。大量のデ-タが得られたために現在まだ解析が続いているが、画期的な成果が得られつつある。具体的には1990、1991の両年とも日本から約20台という大量の海底地震計を運び、アイスランド近海で高感度の海底地震群列観測を行った。同時にアイスランド陸上には臨時に十数点の高感度地震観測点を設置して海と陸、双方から地震を追った。1990年夏には、アイスランドから南西に伸びるレイキャヌス海嶺で長さ150キロ、幅40キロにわたる海域に18台の海底地震計を展開した。観測にはアイスランド気象庁とレイキャビック大学の全面的な協力が得られ、また海底地震計の設置と回収にはアイスランド側の全面的な協力を得て、同国の海上保安庁の船が借りられた。また設置した海底地震計の近くでは、同国のトロ-ル漁業を一カ月の観測期間中、遠慮してもらった。このため海底地震計すべてを順調に回収出来た。この観測の結果、微小地震は海嶺軸に沿ってだけ分布しており、その幅はわずか5キロメ-トル以下であることが分かった。海嶺の両側では全く地震は発生していないことも分かった。そして微小地震は海嶺軸に沿って一様に分布しているのではなく、地震活動の高いところと低いところが発見され、しかも過去の海底火山地震活動との関連が明らかになった。一方、微小地震の震源の深さは、海嶺軸から鉛直下方に伸びているのが分かり、しかもその深さは地下12キロメ-トルまで伸びていることが分かった。従行、海嶺軸下でプレ-トを生むマグマ活動がどのくらいの「根」の深さを持っているかはナゾであり、漠然と2、3キロメ-トルに違いないと考えられていたが、今回の研究によって、海嶺の「根」はずっと深いことが初めて明らかにされたことになる。また一カ月の地震観測期間中、二度にわたって群発地震が捉えられ、そのいずれもがごく細い煙突状の筒の中を震源が移動したことも確かめられた。このような海嶺の群発地震の詳細が捉えられたのも世界で初めてである。1991年にはアイスランドの反対側、北側で海底地震観測を行った。この海域は新しいプレ-トを生んでいる大西洋中央海嶺が、複雑で百キロメ-トル以上もの幅にひろがったトランスフォ-ム断層をなしているところで、世界的にも地球科学の大きなナゾを残している場所である。このアイスランド北側から北大西洋にかけての大西洋中央海嶺で21台の海底地震計と約15台の陸上地震観測点が連携した微小地震観測に成功した。全ての地震計は無事に回収された。また、地下構造を研究するための人工地震実験も行って、従来ナゾだった地下構造を調査した。デ-タは現在、解析中である。この両年度の研究で、従来の地震観測では把握することのできなかったアイスランド周辺の大西洋中央海嶺で何百個という微小地震を捉えることが出来て、地震活動がはじめて精密に分かり、また未解明だった地下構造が知られた。捉えた地震のマグニチュ-ドは1とか2とかの微小地震である。また、アイスランドの南北で明瞭に違う大西洋中央海嶺のそれぞれの活動について、世界でも初めての詳細な知見を得ることが出来た。