著者
笠原 順三 佐藤 利典
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.557-566, 1997-08-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
17
被引用文献数
2

The 1995 Amami-Oshima-Kinkai Earthquake occurred near the Nansei-Shoto Trench where the upheaval area of the Philippines Sea plate subducts beneath the Nansei-Shoto islands. The main shock was MJMA 6.6 and its largest aftershock was MJMA 6.5. The aftershock distribution for these two events by Yamada et al. (1996) corresponds to two distinct and nearly vertical fault zones. The focal mechanisms obtained by Kikuchi (1996) are consistent to the aftershock distribution.The authors propose that the seamount found beneath the trench-continental-slope indirectly triggered this earthquake activity. If a subducting oceanic plate is normal oceanic denser than an overriding island arc, the oceanic plate should be faulted near vertically priori to the plate subduction by horizontally tensional force due to plat bending. On the other hand, an oceanic plate with seamounts or an oceanic plateau lighter than a normal oceanic plate, might resist to plate subduction due to its small density and delaying normal faultings might occur in the subducting oceanic plate. The delaying normal faultings between a subducting seamount and a preceding normal portion of the oceanic plate can compensate the subduction process. The compressional convergence margin such as the Nankai Trough, however, may not generate such normal faultings due to the nature of stress field.The low seismicity area existing across the trench axis is also seen both in this aftershock activity and ISC hypocenters. This is the same result as those in other regions. This might imply low earthquake potential for this portion of plate interface due to the existence of low density sediments and water contained in the sediments.
著者
中村 雅基 金沢 敏彦 佐藤 利典 塩原 肇 島村 英紀 仲西 理子 吉田 康宏 趙 大鵬 吉川 一光 高山 博之 青木 元 黒木 英州 山崎 貴之 笠原 順三
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-28, 2002
被引用文献数
5

中部日本におけるP波およびS波の3次元速度構造を地震波走時トモグラフィーを用いて求めた。その際、定常観測点で得られる自然地震を対象とした観測値だけでなく、人工地震や海域における臨時観測点等を用いた観測値を積極的に利用した。得られた成果は以下の通りである。沈み込むフィリピン海プレートと思われる高速度域が検出された。フィリピン海プレートは、少し高角度で沈み込み始め、その後なだらかになり、最後は高角に沈み込んでいる。35°N、136.5°E付近では、フィリピン海プレートが分かれている。将来発生が懸念されている東海地震の固着域の北西隣は、プレート間カップリングが弱い。35.6°Nから35.8°N、137.5°E、深さ100kmから200km付近で、非地震性のフィリピン海プレートが検出された。
著者
野田 朱美 宮内 崇裕 佐藤 利典 松浦 充宏
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

房総半島南端部には沼Ⅰ~Ⅳ面と呼ばれる完新世海成段丘が発達している.このうち最低位の沼Ⅳ面は1703年元禄地震の際に離水した浅海底地形(波食棚から海食台付近)であることが知られており,元禄段丘面とも呼ばれる(松田ほか, 1974).この元禄段丘面と高位の沼Ⅰ~Ⅲ面の高度分布パターンが良く似ていることから,従来,沼Ⅰ~Ⅲ面も昔の元禄型地震によって離水したと考えられてきた(Matsuda et al., 1978; Shimazaki & Nakata, 1980; 宍倉, 2003).しかし,プレート境界地震の場合,地震時にすべった領域(震源域)はやがて再固着するが,それ以外のプレート境界では地震間を通じて非地震性すべりが進行するため,地震時の隆起・沈降パターンは時間と共に徐々に失われていき,最終的に残るのはプレートの定常沈み込みによる変動だけである(Matsu'ura & Sato, 1989).従って,沼Ⅰ~Ⅲ面の形成は元禄型地震の発生とは関係なく,その成因は太平洋プレートとフィリピン海プレートの沈み込みによる房総半島南端部の定常的な隆起運動と完新世の海水準変動に帰すべきものである(松浦・野田,日本地震学会2014年度秋季大会講演予稿集,D11-03).こうした考えの妥当性を検証するため,本研究では,波浪による浸食と堆積,地盤隆起,及び海水準変動を考慮した海岸地形形成モデルを構築し,房総半島南部の完新世海成段丘発達の数値シミュレーションを行った.海岸地形の形成過程は概念的に次のような式で記述される:標高変化=-浸食+堆積+地盤隆起-海面上昇.海岸での海-陸相互作用のモデル化に際しては,浸食レートは波浪エネルギーの散逸レートに比例し(Anderson et al., 1999),浸食によって生産された浮遊物質の堆積レートは岸から遠ざかるにつれて指数関数的に減少していくとした.また,房総半島完新世海成段丘の発達シミュレーションでは,地震性の間欠的な隆起運動は考慮せず,プレートの沈み込みに起因する定常的な隆起運動(Hashimoto et al., 2004)のみを考慮し,酸素同位体比記録に基づく平均海面高度の時系列データ(Siddall et al., 2003)を3次スプライン関数の重ね合わせでフィッティングした海水準変動曲線を用いた.海食崖と海食台は海水準変動曲線の変曲点(山と谷)付近で発達する.1万年前から現在までの海水準変動曲線には7つの変曲点(4つの山と3つの谷)があるため,7つの海成段丘が形成される.しかし,隆起速度が遅いと,形成された段丘の殆どは現海面下に沈んでしまい観測されない.隆起速度が早い場合でも,古い段丘と新しい段丘の重なり合いや逆転が生じ,段丘面の形成年代と現在の高度の対応関係は単純ではない.このことは,房総半島南部の完新世離水海岸地形の詳細な調査に基づいて,既に指摘されている(遠藤・宮内,日本活断層学会2011年度秋季大会講演予稿集,P-06).今回のシミュレーションでは,隆起速度を3~4mm/yrとすると沼Ⅰ~Ⅳ面に相当する明瞭な段丘面が発達することが分かった.但し,その場合でも,古い段丘と新しい段丘の重なり合いや逆転が生じているため,最高位の段丘面の形成年代が最も古いわけではないことに注意する必要がある.
著者
篠原 雅尚 村井 芳夫 藤本 博己 日野 亮太 佐藤 利典 平田 直 小原 一成 塩原 肇 飯尾 能久 植平 賢司 宮町 宏樹 金田 義行 小平 秀一 松澤 暢 岡田 知己 八木 勇治 纐纈 一起 山中 佳子 平原 和朗 谷岡 勇市郎 今村 文彦 佐竹 健治 田中 淳 高橋 智幸 岡村 眞 安田 進 壁谷澤 寿海 堀 宗朗 平田 賢治 都司 嘉宣 高橋 良和 後藤 浩之 盛川 仁
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2010

2011年3月11日、東北地方太平洋沖でM9.0の巨大地震が発生し、地震動・津波被害をもたらした。この地震の詳細を明らかにするために、各種観測研究を行った。海底地震観測と陸域地震観測により、余震活動の時空間変化を明らかにした。海底地殻変動観測及び地震波反射法構造調査から、震源断層の位置・形状を求めた。さらに、各種データを用いて、断層面滑り分布を明らかにした。現地調査により、津波の実態を明らかにし、津波発生様式を解明した。構造物被害や地盤災害の状況を明らかにするとともに、防災対策に資するデータを収集した。
著者
村井 芳夫 東 龍介 篠原 雅直 町田 祐弥 山田 知朗 中東 和夫 真保 敬 望月 公廣 日野 亮太 伊藤 喜宏 佐藤 利典 塩原 肇 植平 賢司 八木原 寛 尾鼻 浩一郎 高橋 成実 小平 秀一 平田 賢治 対馬 弘晃 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.147-158, 2013-03-19

2011年3月11日に,太平洋プレートと日本列島を乗せた陸側のプレートとの境界で2011年東北地方太平洋沖地震が発生した.この地震は,日本周辺では観測史上最大のマグニチュード9という巨大地震だった.本震発生後には多数の余震が発生するが,大地震発生のメカニズムを解明するためには,正確な余震分布を調べることが重要である.全国の6つの大学と海洋研究開発機構,気象庁気象研究所は,本震発生直後から共同で100台以上の海底地震計を用いて余震観測を行った.2011年6月中旬までのデータから,震源域全体で約3か月間の精度の良い震源分布が得られた.余震の震源の深さは,全体的に陸に近づくにつれて深くなっていた.震源分布からは,本震時に大きくすべったプレート境界では余震活動が低いことがわかった.上盤の陸側プレート内では余震活動が活発で,正断層型と横ずれ型が卓越していた.太平洋プレート内の余震も多くが正断層型か横ずれ型だった.このことから,日本海溝付近の太平洋プレート内の深部と上盤の陸側プレート内では,本震の発生によって応力場が圧縮場から伸張場に変化したことが示唆される.
著者
村井 芳夫 東 龍介 篠原 雅尚 町田 祐弥 山田 知朗 中東 和夫 真保 敬 望月 公廣 日野 亮太 伊藤 喜宏 佐藤 利典 塩原 肇 植平 賢司 八木原 寛 尾鼻 浩一郎 高橋 成実 小平 秀一 平田 賢治 対馬 弘晃 岩崎 貴哉
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
no.76, pp.147-158, 2013-03

2011年3月11日に,太平洋プレートと日本列島を乗せた陸側のプレートとの境界で2011年東北地方太平洋沖地震が発生した.この地震は,日本周辺では観測史上最大のマグニチュード9という巨大地震だった.本震発生後には多数の余震が発生するが,大地震発生のメカニズムを解明するためには,正確な余震分布を調べることが重要である.全国の6つの大学と海洋研究開発機構,気象庁気象研究所は,本震発生直後から共同で100台以上の海底地震計を用いて余震観測を行った.2011年6月中旬までのデータから,震源域全体で約3か月間の精度の良い震源分布が得られた.余震の震源の深さは,全体的に陸に近づくにつれて深くなっていた.震源分布からは,本震時に大きくすべったプレート境界では余震活動が低いことがわかった.上盤の陸側プレート内では余震活動が活発で,正断層型と横ずれ型が卓越していた.太平洋プレート内の余震も多くが正断層型か横ずれ型だった.このことから,日本海溝付近の太平洋プレート内の深部と上盤の陸側プレート内では,本震の発生によって応力場が圧縮場から伸張場に変化したことが示唆される.
著者
伊藤 谷生 宮内 崇裕 金川 久一 伊勢崎 修弘 佐藤 比呂志 岩崎 貴哉 佐藤 利典
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

今年度は本研究の最終年度であるため、2000年9月に行われた日高超深部地震探査結果の解析を行い、日高衝突帯の超深部構造を明らかにする糸口を見つけだすことが中心的課題であった。このため、年度の前半は、探査結果解析のための前処理を千葉大学所有の反射法処理システムを用いて行い、後半は、新たに導入した汎用地震探査処理システムSuper XCを用いて解析作業を進めた。また、この作業と平行して、測線周辺の地質調査を行った。これらを通じて明らかになったことは以下の点に要約される。1)日高主衝上断層(HMT)は低角であり、しかも地下2km程度でほとんど水平になる。これは、変成岩類主帯の構造から推定されてきたことと調和的である。2)TWT14秒付近に顕著な反射面群として把握されているものは、自然地震の震源分布との対応関係から太平洋プレート上面と推定される。3)デラミネートした千島下部地殻下半分のイメージは現在までの処理過程では把握されていない。その理由としては、高角なためイメージングできない、破砕されているため地震波が散乱し反射面を形成できない、エクロジャイト化して上部マントルと区別できない、の3つが考えられるが、1つを特定できない。4)東北日本側のウェッジにも顕著な反射面が認められ、当初考えられていた単純なデラミネーションーウェッジモデルよりも複雑な"刺しちがえ"構造の存在が碓定される。5)イドンナッブ帯中の冬島変成岩類の西縁断層は衝上断層である。6)日高超深部地震探査と平行して行われた遠地自然地震のレシーバ関数解析についての予察的研究によれば、4)に対応するインターフェースの存在が確認される。これまでの解析は最もベーシックな段階であるにもかかわらず、日高衝突帯超深部構造解明の糸口を与えるものである。今後の木格的な処理作業によって、解明へ大きく前進するであろう。