著者
岩田一輝 武井圭一 森本貴之 山本満
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.50, 2016 (Released:2021-03-12)

【目的】歩数を用いた身体活動(PA)量を継続する自信(SECPA)の評価法を開発し、その信頼性と妥当性を明らかにすることである。【方法】当院教育入院に参加した糖尿病患者30 名を対象に、退院前日にSECPA と岡らが作成したPA セルフ・エフィカシー尺度(SEPA)を評価した。SECPA は、8 日間の歩数の平均を軸に平均±2000 歩・±1000 歩の5 つの階級を設定し、「週3 日以上の頻度でその歩数を継続できる自信」を0-100%で他記式にて評価した。SEPA は、歩行や階段などのPA について時間や階数で5 つの階級を設定し、各階級を遂行できる自信を0-100%で表す評価法である。分析は、SECPA とSEPA 歩行・階段の5 階級の平均値を求め、2 群を比較した。SECPA とSEPA の5 階級平均、およびSECPA の平均歩数以上の階級とSEPA の5 階級平均について相関分析を行った。あらかじめ、健常者20 名に対してSECPA を2 週間の間隔をおいて2 回評価し、α係数と検査・再検査間の級内相関係数を求めた。本研究は、当院倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】SECPA のα係数は0.93、級内相関係数は0.63 であった。SECPA 各階級の平均は、-2000 歩から順に95%、92%、84%、77%、68%であった。5 階級平均は、SECPA が83±16%、SEPA 歩行が59±30%、階段が69±21%であり、SECPA の方が有意に高かった。SECPA の5 階級平均および平均歩数とSEPA の間に有意な相関はなかった。SECPA の+1000 歩・+2000 歩とSEPA 歩行の間に有意な相関(r=0.37・r=0.47)を認めた。【考察】SECPA の信頼性は概ね確保されたと考えた。SECPA は、過去に達成した平均歩数を軸に対象者個々に階級設定するためSEPA より高くなったと考えた。SECPA の高階級とSEPA 歩行に関連を認めたことから、SECPA が歩行というPA を遂行する自信度を反映した評価法であると考えた。また、SECPA が実際に達成できた平均歩数に対して84%程度であったことは、今後の継続性を反映していることが示唆された。
著者
岩田 一明 森脇 俊道 川野 常夫
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.239-247, 1981
被引用文献数
1 1

椅子から起立し再び着席する動作について動力学的観点から解析を行い, 動作に及ぼす加齢の影響について検討を加えた. 動作の撮影には16ミリシネカメラを用い, グラフィック・タブレットにより運動情報をミニコンピュータ内に取り込み, 人体の2次元数学モデルに基づいて身体各関節に作用する力やトルクを計算した.<br>実験は22歳から80歳までの男性被験者19名について行い, 解析の結果, 加齢と共に身体各関節運動における協調性の欠如から動作に滑らかさがなくなることが定量的に求められた. 動作中腰に作用するトルクの最大値は加齢と共に若干減少するが, 特に目前のテーブルに手をつくことにより平均20%低下することなどが得られた.
著者
岩田 一正
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.417-426, 1997

本論文は, 義務教育制度がその内実をほぼ完備し, 地域共同体が再編成されつつあった明治後期に, 少年たちが, 書字文化を媒介とした固有名の個人が集う公共圏をどのように構築していたのかを検討することを目的としている. 少年たちが雑誌への投稿者として共同性を構成する過程は, 自らを言葉を綴る主体として保つ近代に特有な方法を, 我々に開示してくれるだろう. 本論文が史料とするのは, 当時最も読まれていた少年雑誌であり, 明治後期の「出版王国」博文館によって発行されていた『少年世界』である. 『少年世界』に掲載された投稿文の分析を通して, 三つの観点が示されることになる. 第一に,1903年頃に『少年世界』の主筆である巌谷小波によって提示された言文一致体は, 天真爛漫な「少年」という概念を創出した. さらに, 『少年世界』編集部は投稿作文欄の規定を改正し, 少年たちは言文一致体で投稿するように要請された. その結果, 煩悶する「青年」と天真欄漫な「少年」が差異化され, 『少年世界』は後者のための雑誌となった. 第二に, 『少年世界』は, 少年に固有名をともなった他者とのコミュニケーションの場を提供した. しかし, その場は, 抽象的で均質な時空によって構成されていた. それゆえ, 少年たちは地域共同体からの切断に由来する, いまだかつて経験したことのない孤独を感じることになった. しかしながら, 投稿欄を利用することによって, その孤独を補償し, 他者との交歓=交感を享受するために, 少年たちは誰かに向かって何かを書こうとする欲望を生み出し, ある場合には, 同好のコミュニケーション・ネットワークを形成したのである. そして, この文脈において, 言文一致体は適合的な文体であった. なぜなら, 言文一致体は, 少年に見えざる他者の声を想像させることができるからである. また, 当時は, 国家的な郵便制度が確立したことによって, 文通によるコミュニケーションの制度的な基盤が整備された時期であった. 第三に, 少年たちは, 自らの手で雑誌を出版するようになった. ここで注目に値するのは, 活字で構成される一般の雑誌とは異なり, 少年が制作した雑誌は, 肉筆やこんにゃく版, 謄写版によって作られており, 手作りの感触を残していることである. 少年の雑誌制作は, 大正期以降の同人雑誌文化の基層を形成するものであり, この同人雑誌文化から, 数多くの文学作品が創出されることになる.
著者
岩田 一政
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-18, 2020

<p>現代は「データ駆動型経済」の時代である。本論は、データのもつ特性を踏まえ、日本経済が直面する政策上の課題とその解決策を探ろうとするものである。データは通常の財と異なり、「消費の非競合性」や「外部性」といった特性がある。また、個人データの提供とプラットフォーム企業によるデジタル・サービス提供との交換は、ゼロ価格で行われることが多く、両者の間に情報の非対称性が存在していることもあって、個人データの価値の測定を困難にしている。またデータは、社会財、共有財、公共財としての性格を備えており、社会的課題の解決には、データを共有財、公共財として扱い、活用することが求められる。</p><p>データは、企業による最適技術の選択に対して有用な情報を提供するばかりでなく、生産性向上に寄与するアイデアや知識の投入物として用いられている。データを可能な限り広く流通させることは、経済の効率性を改善させるが、その一方で、個人データに関するプライバシー保護や企業の営業秘密を保護することが求められている。</p><p>日本の政策上の課題の第一は、データの自由な流通とプライバシー保護を両立させることである。民主主義社会において個人データの所有権は個人にあることを前提に、プライバシー保護とデジタル・サービス享受に関する選択をプラットフォーム企業ではなく、個人に委ねることが望ましい。個人が自らのデータをコントロールする権利があることを明確にした上で、データの「ポータビリティ」や「インターオペラビリティ」に関するルール作りが求められている。このルール形成によって、情報仲介機関として情報銀行が有効に機能することになろう。また、巨大テック企業によるデータ共有についても政府によるガイダンス作りが求められる。</p><p>第二の課題は、国境を越えた個人データの自由な移動を可能にすることである。欧米間での個人データの自由な流通を可能にする「プライバシー・シールド原則」は、欧州司法裁判所により欧州連合(EU)の「データ保護一般規則(GDPR)」に違反するとの判断がなされた。この問題解決の鍵は、どのようにしてプライバシー保護と国家安全保障維持との両立を図るかにある。欧米間でこの論点に関する合意形成がなされない場合には、世界は、中国(国家中央集権システム)、アメリカ(「告知―合意(選択)」システム)、EU(プライバシー重視システム)の3つの「デジタル経済圏」に分裂するリスクがある。</p>
著者
會田 萌美 武井 圭一 岩田 一輝 山本 満
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.78-81, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
12

【目的】本研究では,がん患者の歩行自立度と下肢筋力の関連を明らかにし,自立歩行を維持するための下肢筋力の目標値を検討することを目的とした。【方法】がん患者48例で繰り返し測定した値を含む延べ 68例を対象とし,Barthel Indexの移動の項目から15点を自立群(49例),10点以下を非自立群(19例)とし2群に分類した。ロコモスキャンにて膝伸展筋力を測定し,2群間を比較した後に,ROC曲線からcut off値を求めた。【結果】膝伸展筋力は,自立群が0.53 ± 0.15 kgf/kg,非自立群が0.35 ± 0.10 kgf/kgであり,2群間に有意差を認めた。ROC曲線からcut off値は0.42 kgf/kgであった。【結論】全病期のがん患者を対象にした場合,自立歩行を維持するための膝伸展筋力として, 0.4 kgf/kgを一つの目安と考えられた。
著者
岩田 一男
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.74-85, 2015-12-18 (Released:2017-08-07)

This paper examines the actual typing exercises done by students and their results as well as typing performance and tests that may be influenced by these exercises. The study investigates whether there are any implications that can serve as a guide for computer literacy in the future by analyzing the data from various angles. For example, when and how much do students practice of their own volition? Does practice bring a corresponding level of achievement? Furthermore, is there any relationship between Excel skills and students' personalities? It was found that while typing is a simple operation, it relates not only to the role of data input in information processing but also to various other issues. Note that the term "information science" used throughout this paper does not refer to subjects of study but to major courses provided at high schools.
著者
高井良 健一 木村 優 岩田 一正 齋藤 智哉 金子 奨 小島 武文 高石 昂 福泉 志織 吉田 友樹
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究を通して、高等学校の新任教師の専門的成長を支えるものとして、すべての子どもたちの学びを保障する授業づくりに責任をもつ専門的共同体の存在が大きいことが明らかになった。学校における専門的共同体は、授業研究を通して、教師たちの語り合い、聴き合い、語り直しによって、形成される。新任教師たちは、着任当初は、子どもたちの学びに対する一元的な語りが特徴であったが、授業研究会への参加を重ねるごとに、多元的な語りを身につけ、これに伴い、子どもたちとの関係も組み替えられてきた。
著者
岩田 一正
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.417-426, 1997-12-30 (Released:2007-12-27)

本論文は, 義務教育制度がその内実をほぼ完備し, 地域共同体が再編成されつつあった明治後期に, 少年たちが, 書字文化を媒介とした固有名の個人が集う公共圏をどのように構築していたのかを検討することを目的としている. 少年たちが雑誌への投稿者として共同性を構成する過程は, 自らを言葉を綴る主体として保つ近代に特有な方法を, 我々に開示してくれるだろう. 本論文が史料とするのは, 当時最も読まれていた少年雑誌であり, 明治後期の「出版王国」博文館によって発行されていた『少年世界』である. 『少年世界』に掲載された投稿文の分析を通して, 三つの観点が示されることになる. 第一に,1903年頃に『少年世界』の主筆である巌谷小波によって提示された言文一致体は, 天真爛漫な「少年」という概念を創出した. さらに, 『少年世界』編集部は投稿作文欄の規定を改正し, 少年たちは言文一致体で投稿するように要請された. その結果, 煩悶する「青年」と天真欄漫な「少年」が差異化され, 『少年世界』は後者のための雑誌となった. 第二に, 『少年世界』は, 少年に固有名をともなった他者とのコミュニケーションの場を提供した. しかし, その場は, 抽象的で均質な時空によって構成されていた. それゆえ, 少年たちは地域共同体からの切断に由来する, いまだかつて経験したことのない孤独を感じることになった. しかしながら, 投稿欄を利用することによって, その孤独を補償し, 他者との交歓=交感を享受するために, 少年たちは誰かに向かって何かを書こうとする欲望を生み出し, ある場合には, 同好のコミュニケーション・ネットワークを形成したのである. そして, この文脈において, 言文一致体は適合的な文体であった. なぜなら, 言文一致体は, 少年に見えざる他者の声を想像させることができるからである. また, 当時は, 国家的な郵便制度が確立したことによって, 文通によるコミュニケーションの制度的な基盤が整備された時期であった. 第三に, 少年たちは, 自らの手で雑誌を出版するようになった. ここで注目に値するのは, 活字で構成される一般の雑誌とは異なり, 少年が制作した雑誌は, 肉筆やこんにゃく版, 謄写版によって作られており, 手作りの感触を残していることである. 少年の雑誌制作は, 大正期以降の同人雑誌文化の基層を形成するものであり, この同人雑誌文化から, 数多くの文学作品が創出されることになる.