著者
本間 正明 井堀 利宏 跡田 直登 斎藤 慎 山内 直人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、これまで日本でほとんど行われてこなかったフィランソロピーについての経済学からの理論的及び実証的研究を行うことである。営利を目的としないフィランソロピー活動の重要性は日本においても着実に増しており、フィランソロピー活動の実態を把握し、その活動原理を定式化することは今後ますます重要になると思われる。本研究ではまず第1に、フィランソロピーの分析の基礎となる理論を整理、発展させるとともに、民間非営利セクターの活動と制度について、国際比較を含めて包括的に整理した。ついで、資金供給の観点から重要な寄付に関して、理論的、実証的に分析を行うとともに、日本の現状を踏まえた税制等の実証分析を行った。これらの研究により、日本の非営利活動の国際的にみた特徴が明らかになった。また、個人や企業フィランソロピー活動の動機付け、特に利他的動機と利己的動機の違いが理論的に整理された。フィランソロピーへの資金供給として重要な公益目的の寄付に関しては、税制が一定のインセンティヴ効果を持つことが明らかにされた。さらに、最適課税論の枠組みを用いて、全体としての社会的厚生を高めるような寄付税制のデザインはどのようなものかについて、理論モデルによる分析を行い、最適な寄付控除率などを導出した。第3に、阪神大震災の義損金支出や災害ボランティアの活動も踏まえつつ、民間非営利活動に関する税制やボランティア組織の法人化などの政策志向も強い問題を検討した。最後に、これらの議論を踏まえて、税制・法政など望ましいNPO制度のあり方について政策的論点を整理した。
著者
田中 弥生 武田 晴人 山内 直人 三好 皓一 高橋 淑郎 西出 優子
出版者
独立行政法人大学評価・学位授与機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

非営利組織には、営利組織の利潤に匹敵するような業績判断基準が不在であること、それゆえに非営利組織の経営が困難であることを最初に指摘したのはP.F.ドラッカーであった。たしかに、評価の不在が、非効率な行動を招き、成長の機会を逃している。そこで、ドラッカーの非営利組織論の原点に立ち返りながら「社会変革性」「市民性」「組織安定性」の3つの基本条件を軸に、非営利組織の評価基準を作成した。まず、NPOセクターの現状分析を行なうべく、定量・定性的な分析を行なった。財務データベースをつくり、財政的な持続性にかかる財源の種類など要因分析を行なった。その結果、非営利組織の場合には、収益事業収入に加え、寄付や会費などを組み合わせたほうが財務的な持続性が高いことがわかった。またアンケート調査を実施した。その結果、社会変革の担い手になりたいという願望を持ちながらも組織体制や技術面で不十分なこと、さらには、社会的な信頼性が低く、市民との関係性がより希薄になっていることがわかった。次に、研究者および実践者によるチームを編成し、先の現状分析結果を踏まえ、社会的なイノベーション力を備えた望ましい非営利組織像に到達するためには、どのような条件を満たすことが求められるのか議論した。そして、評価基準策定工程をデザインし、先の議論からエッセンスを抽出し、33の評価基準にまとめた。また、33基準を満たしていることを確認するための105の自己チェック項目もデザインした。これらの研究成果は、6本の研究論文、4冊の図書にまとめられ、5回の学会発表、8回の講演で発表された。なお、研究成果を非営利組織が活用できるよう、これらの基準とチェック項目を「エクセレントNPO基準」と名付け、2冊のブックレットにまとめた。さらに、フォーラム、講演などで説明を行ったが、5大紙、雑誌などで取り上げられた。また、2011年1月には本評価基準を普及すべく、推進母体として「エクセレントNPOをめざそう市民会議」を発足させた。
著者
山内 直人 赤井 伸郎 石田 祐 稲葉 陽二 大野 ゆう子 金谷 信子 田中 敬文 樽見 弘紀 辻 正次 西出 優子 松永 佳甫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」の定量的把握および統計的分析からその経済社会的効果を分析し、政策的意義について検討・評価することを目的としたものである。 研究の成果を通じて、抽象的概念であるソーシャル・キャピタルの定量的把握に関する手法を開発、新しいソーシャル・キャピタル指標を提示し、それを用いた実証分析を行うことが可能となった。また、これまで十分に解明されてこなかったソーシャル・キャピタルの日本的特徴を把握し、多様な政策対象とソーシャル・キャピタルとの関係性に関する理論的、実証的示唆を得るとともに、ソーシャル・キャピタルの社会的意義や政策的インプリケーションに関する検討課題や論点を整理した。
著者
田村 昌大 廣瀬 伸良 中村 充 齊藤 仁 山内 直人 田中 力 鈴木 桂治 菅波 盛雄
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.143-149, 2012

本研究では、2009年1月に改正されたIJF試合審判規定が柔道競技に及ぼした影響を分析・検証を行なった。その上で、試合審判規定改正の世界柔道の戦術内容に関する最新の動向を探ることを目的とした。<BR>研究方法は、収録された映像を基に2008年フランス国際柔道大会及び2009年グランドスラム・パリ国際柔道大会の競技内容を比較した。試合数は両年合わせて476試合であった。競技分析を行う上で、項目を作成した。作成した項目については、「競技分析シート2009」に競技内容を入力するものとした。<BR>組み手については、釣り手・引き手ともに持った状態で施技を行う「充分」が0.1%水準で有意な増加が認められた。また、「ズボンを直接握る」ことへの反則適用から、施技者及び相手も施技時に「脚」を持つという戦術は有意な減少が認められた。さらに、施技する際の姿勢も前傾姿勢状態からの施技は5%水準で有意な減少が認められた。<BR>ポイント取得の技術内容や組み手戦術において改正前と比較した結果では、「脚」を持つ戦術に依存しないことで「襟」「袖」を持った状態で施技可能な技術に移行するという望ましい傾向となった。<BR>今回の改正によって懸案事項となっていた点が改善される傾向にあり、IJF試合審判規定改正が影響のあるものであったと考えられたが、「肩車」にみられるような「脚」を持つ技に対する依存は未だ存在している。そのため、2010年にさらなる試合審判規定の改正につながったものと推察する。
著者
山内 直人
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.294-299, 2014-08-01

日本の寄付市場は米英には比較してまだ小さいが,今後拡大することが期待される。NPOが寄付収入を増加させるためには,目標設定,潜在的寄付者のリストアップ,寄付の依頼,スチュワードシップといつたファンドレイジング・プロセスに従って,効果的に行う必要がある。マッチングギフト,コーズ・リレーテッド・マーケティング,クラウドファンディングなど新しい手法もファンドレイジングに取り入れていく必要がある。ファンドレイジングの効率性,費用対効果にも留意する必要がある。専門的知識を持ったファンドレイザーの養成も必要で,大学など高等教育機関の役割も大きい。
著者
山内 直人 松永 佳甫 西出 優子 金谷 信子 石田 祐 田中 敬文 奥山 尚子
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

社会のダイバーシティ(多様性)が、ソーシャル・エクスクルージョン(社会的排除)をもたらすメカニズムを解明するとともに、ダイバーシティをポジティヴに評価・活用して、社会の活力維持につなげるための公共政策のあり方について研究を進めた。各国社会のダイバーシティおよびソーシャル・エクスクルージョンの状況と、各国の経済成長、起業、犯罪など、様々な社会経済パフォーマンスとの関係を定量的に分析した。