著者
後藤 正幸 石田 崇 鈴木 誠 平澤 茂一
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.97-106, 2010-08-15

近年,インターネットの普及により膨大なテキストデータからの知識発見を扱うテキストマイニングの技法が注目されている.本研究では,テキストマイニングが取り扱う問題の中でも,特に文書分類の問題を取り上げ,形態素解析後の単語の出現分布としてある確率モデルのクラスを仮定し,文書分類の性能,並びに分類に用いられる距離について漸近的な分析を行う.一般に,文書分類に不必要な単語の混入を完全に排除することは難しく,様々な重要単語の重み付け法などが提案されている.本論文で扱う最初の問題は,このような分類に不必要な単語が混入することが,文書分類に与える性能劣化の程度を把握することである.さらには,単語の出現頻度に基づく文書分類においては,個々の単語の生起頻度は少なく,多くの単語の頻度がゼロとなってしまうというスパースネスの問題がある.すなわち,このベクトル空間上で一つの文書を表す点は,ゼロを多くの要素に持つベクトルで表現される.しかし,「このような状況で,文書同士の距離による分類がある程度の分類性能を示すのは何故か」という疑問については依然として経験的な解釈が与えられているのみである.その理論的根拠を与えるため,本稿では,各要素の出現頻度を有限に保ったまま,次元数を無限大とする新たな漸近論の概念を導入することにより,スパースな文書ベクトル間の距離について解析的な性能を示す.
著者
平澤 茂一 笠原 正雄
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.183-191, 2011-01-01 (Released:2011-01-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

誤り訂正符号の代数的復号法の一つであるユークリッド復号法について解説する.ユークリッド復号法はBCH符号やRS 符号の強力な復号法として知られ,数多くの適用例がある.まず,1950 年代に始まった誤り訂正符号の構成法の研究と,1960 年代から1970 年代にかけての復号法の研究の歴史をたどり,ユークリッド復号法の位置付けを行う.次に,ユークリッド復号法の概要を紹介する.最後に,この復号法発見に至る筆者らの当時の環境や様子を,研究者の立場から経験談に私見を交えながら述べる.
著者
鈴木 誠 松嶋 敏泰 平澤 茂一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-11, 2000-01-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

人工知能(AI)における不確実性を含む推論の分野では,1980年代にBelief Network(BN)がPearlによって提案され,不確実性を含む推論の基礎理論として脚光を浴びるようになった.BNは人間にとって直感的に理解しやすい知識表現機能を備えており,不確実性を含む推論に携わるAI研究者の間で現在も活発に研究がなされている.しかし,BNをはじめとする従来手法は「なぜ不確実性が生じるのか」,「どのような不確実性を扱っているのか」などの不確実性の発生メカニズムやその種類が明確にされないまま推論方法が論じられているため,求められた推論結果の意味が明確でなかった.そこで本稿では,不確実性を含む推論の問題を多変量データ解析や情報理論的な視点から考察し,従来の手法を一般化した数理モデルと推論法を提案する.さらに,従来から多くの診断・予測型ESが扱ってきた不確実性を含む推論の問題が,一種の制約条件付き最適化問題としての性質を備えていることを明らかにする.
著者
園田 道夫 松田 健 小泉 大城 平澤 茂一
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.49, pp.1-7, 2011-03-03

従来の研究においては,SQL インジェクション攻撃の検出は構文解析や過去の攻撃手法をブラックリスト化したものが広く使われている.しかし,これらのアプローチでは,多様化する攻撃の偽装工作への対応が困難になってきている.そこで本研究では,入力文字列のサンプルとして攻撃と正常の二種類用意した.そして,攻撃を特徴づける文字が入力された文字列の中に占める割合をもとに両方の誤検出率を小さくし, かつ高速なアルゴリズムを提案し,評価を行った.In the conventional study, the parsing and the blacklist of the past attack methods are widely used in the detection of the SQL injection attack. However, the diversified camouflage technique makes detecting attacks difficult in such approaches. Then, in our study, we prepared the attack strings group and the normality strings group as samples of the input string, and we proposed high-speed algorithm, based on the ratio that occupied it to the character string where the character that characterize the attack was input, to reduce both misdetection rates, and we evaluated it.
著者
石田崇 小林学 梅澤克之 平澤茂一
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.471-472, 2013-03-06

本稿では情報数理教育を対象として,インタラクティブなコンテンツに対する電子教材の試作を検討する.具体的にはRSA暗号に対するインタラクティブな教育コンテンツを作成し,評価を行う.このとき,マルチプラットフォーム化を念頭におき,コンテンツはHTML,CSS,JavaScriptのみを使用して構築する.数式の表示はMathJaxにより行う.さらにPhoneGapを用いてマルチプラットフォームに対応可能なアプリ化を検討する.
著者
小林 学 平澤 茂一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.116, pp.117-122, 2013-07-01

自動分類問題や回帰問題に対して,2001年にL. Breimanにより提案されたランダムフォレストは,CARTによって生成した複数の木を用いることにより,大変良い性能を発揮することが知られている.本稿では単一あるいは複数の回帰木を用いて,2次元データである画像の無歪み圧縮を行う手法について検討する.このとき画像圧縮の特性に着目し,すでに圧縮した箇所を説明変数とし,次に圧縮する色要素を目的変数として扱う.圧縮対象の画像についてCART及びランダムフォレストで学習を行い,学習結果である回帰木をまず符号化する.次にこれらの回帰木を用いて圧縮対象の各画素値の推定を行い,推定値と画素値との差分のみを圧縮する.結果的に,いくつかの画像に適用したときにPNG 形式よりも圧縮可能であることを示す.
著者
梅澤 克之 石田 崇 中澤 真 平澤 茂一
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 PACIS2018主催記念特別全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.35-38, 2018 (Released:2018-08-31)

近年,授業と宿題の役割を「反転」させ,授業時間に先立って知識習得(自習)を済ませ,教室では知識確認や問題解決学習を行う授業形態をとる反転授業が注目され始めた.我々は,学生が自宅で自習を行うときに学習ログを取得し,学習時間と理解度の関係から学生を複数のグループに分類した上で教場での授業を行うグループ分け反転授業を提案し,提案方式と反転授業ではない従来の講義形式,および反転授業ではあるがグループ分けを行わない授業との比較評価を行ってきた.本論文では,いままで提案してきたグループ分け反転授業を16週間の実授業へ適用し、有効性を評価する.
著者
梅澤 克之 笈川 光浩 洲崎 誠一 手塚 悟 平澤 茂一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.625-634, 2007-02-15
参考文献数
18
被引用文献数
5

近年,インターネット環境においては,電子入札,電子納税,商業登記申請等の公共サービスや,社外から社内へのリモートアクセス等,不正行為を防止するためにPKI 技術に基づく認証機能を有するサービスが増加しており,そこで使われる証明書の厳密な検証を行うようになってきている.一方,モバイル環境においては,携帯通信事業者網内に閉じたサービスにとどまらず,インターネットを利用して一般のサービス提供者からサービスを享受する機会が急増している.このような状況から,インターネットの脅威がそのままモバイル環境においても成り立つ状況になってきており,モバイル環境においても証明書の利用によるPKI 技術を用いた認証方式の確立は必須であると考えられる.すでにモバイル環境でも証明書の利用が始まっているが,携帯電話端末側でサーバ証明書が失効されていないかを確認する有効性確認は行われていない.モバイル環境においても不正が許されないクリティカルなサービスが今後ますます増加することが予想でき,そのようなサービスでは有効性確認を含む厳密な証明書の検証を行うことが必要である.本論文では,有効性確認を第三者に依頼するCVS 方式に基づいて開発した携帯電話端末の処理時間や通信速度等のモバイル環境特有の制約を考慮したモバイル向け証明書検証システムを提案し,性能,安全性,利便性の観点で評価を行う.In the Internet environment in recent years, services having an authentication function based on PKI technology have been increasing in order to prevent unauthorized activities. Some examples are remote accessing, electronic bidding, electronic payment of taxes and so on. In such services, strict verification of the certificate has become more and more important. On the other hand, in a mobile environment, mobile service using not only service in the mobile carrier net but also the Internet has increased. It is thought that PKI technology is important in a mobile environment in such a situation. Two or more mobile carriers already support PKI technology. But strict verification that confirms whether the certificate was revoked or not is not done. In a mobile environment, it is necessary to carry out the verification of the certificate strictly. In this paper, we propose a certificate validation system for mobility. The system is based on the CVS method. And it corresponds to the peculiar restrictions of mobility and the environments of the processing speed and the transmission rate, etc. of the cellular phone terminal. Furthermore, we evaluate the performance, safety and the convenience of the system.
著者
桑田 修平 前田 康成 松嶋 敏泰 平澤 茂一
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.20-30, 2013-03-12

推薦問題を扱うためのより一般化されたマルコフ決定過程モデルに対して,ベイズ基準のもとで最適な推薦ルールを履歴データから求める方法を提案する.推薦問題に関する研究において,これまで,ある商品を推薦した結果どの商品が買われたのか(推薦結果)や,さらには,一定期間内に行った複数の推薦結果が考慮されることはほとんどなかった.これに対して,マルコフ決定過程モデルを用いることで上記2点を初めて考慮した手法が提案されている.提案法は,その従来研究のモデルを一般化した点に新規性がある.また,もう1つの新規性として,推薦ルールを求めるためのプロセスを統計的決定問題として厳密に定式化した点がある.従来のモデルを一般化することで,マルコフ決定過程モデルを用いた推薦手法の適用領域が拡大され,かつ,推薦する目的に対して最適な推薦が行えるようになった.人工データを用いた評価実験により,提案する推薦手法の有効性を確認した.
著者
須子 統太 松嶋 敏泰 平澤 茂一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.17-26, 2008-09-26

統計解析を行う際,得られたデータの中に外れ値が含まれることが多々ある.外れ値は少量であっても解析結果に大きく影響を与えることがあるため,従来から外れ値を含むデータに対する統計解析手法が数多く研究されている.従来,Boxらにより線形回帰モデルに対し混合分布を用いて外れ値の発生をモデル化する研究が行われている.同様のモデルに対し様々な研究が行われているが,いずれも外れ値の検出やパラメータの推定を目的としている.そこで本研究では,外れ値データの発生を含む回帰モデルに対する予測法について扱う.まず,このモデルに対しベイズ基準のもとで最適な予測法を示す.しかし,この方法はデータ数に対し指数的に計算量が増大してしまう.そこで,EMアルゴリズムを用いて計算量を削減した近似アルゴリズムを提案し,シミュレーションにより有効性を検証する.Outliers are often included in statistical data. A statistical analysis result is influenced from outliers. Therefore, there are many researches for a statistical analysis of data with outliers. Box modeled outliers using mixture distribution. There are many researches that aim parameter estimation or outlier detection about this model. In this paper, we treat prediction problem about this model. First, we present an optimal prediction method with reference to the Bayes criterion in this model. The computational complexity of this method grows exponentially with data size. Next, we propose an approximation algorithm reducing the computational complexity using EM algorithm, and evaluate this algorithm through some simulations.
著者
桑田 修平 前田 康成 松嶋 敏泰 平澤 茂一
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.8, pp.1-6, 2012-05-10

推薦問題を扱うためのより一般化されたマルコフ決定過程モデルに対して,ベイズ基準のもとで最適な推薦ルールを履歴データから求める方法を提案する.提案法の特徴は,ある商品を推薦した後に何が買われたのかを考慮していること,さらに,一回の推薦結果だけでなく一定期間内に行った複数の推薦結果を評価している点にある.ここで,従来の推薦手法と大きく異なる点は,推薦ルールを求めるためのプロセスを統計的決定問題として厳密に定式化したことにある.その結果,推薦する目的に対して最適な推薦が行えるようになった.人工データを用いた評価実験により,提案する推薦手法の有効性を示す.In this paper, we proposed a general markov decision process model for the recommendation system. Furthermore, based on the bayesian decision theory, we derived the optimal recommendation lists from the proposed model using historical data. Our method takes into account not only the purchased items but also the past recommended items within a given period. Here, the unique thing about this paper is that we formulate the process to get the recommendation lists as the statistical decision problem. As a result, we can obtain the most suitable recommendation lists with respect to the purpose of the recommendation. We show the experimental results by using artificial data that our method can obtain more rewards than the conventional method gets.
著者
笠原 正雄 平澤 茂一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.444, pp.419-426, 2010-02-25

一般化された(u,u+v)構成法,g(u,u+v)構成法,に基づいて少数の情報記号数に対する最適2元線形符号の大きなクラスを構成している.そしてこの構成法に基づいて(3(2^m-1,m+1,3・2^m-1)符号,(3(2^m-1),m+1,3・2^m-1)符号,(3(2^m-1),m+1,3・2^m)符号を構成し,これらの符号がBrouwer-Verhoeffのテーブル(BVテーブル)に記載の最小距離にn≦125の範囲で一致し,それ故に最適2元線形符号であること且つn≧126の範囲においても最適2元線形符号であることが予測されることを述べる.さらに情報記号数k=2,符号長n,最小距離dの(n,2,d)線形符号および情報記号数3の(n,3,d)線形符号を与えている.そして(n,2,d)符号がn≦125の任意の符号長に対しBVテーブル記載の最小距離限界に一致すること,即ち理論的限界式を完全に満たすことを示している.同様に(n,3,d)符号もn=8+7μ(μ=1,2,…)を除く任意の符号長において(BVテーブル)理論的限界式を満たすことを示している.これらの符号nη≧126の範囲においても最適性を満たすことが強く予想される.さらに情報記号数k=4,5,6および7に対する最適符号を構成し,具体例を示している.
著者
小幡 洋昭 後藤 正幸 平澤 茂一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論
巻号頁・発行日
vol.96, no.494, pp.79-84, 1997-01-24
被引用文献数
1

Z.Zhang and V.K.Weiの提案したGold Washingアルゴリズムは, ある一定の確率分布で発生させたランダムな系列で辞書を逐次更新することにより, 有限アルファペットの無記憶情報源に対し, 確率分布が未知であっても漸近的にRate-Distortion関数に収束することが証明されている. 一方, Y.Steinberg and M.GutmanはLZ77符号に用いられるString Matchingを有歪み圧縮に応用したアルゴリズムを提案した. このアルゴリズムは, 有限アルファベットの無記憶情報源に対し, 情報源から定まる最適な符号語の分布により発生させたランダムな系列で辞書を更新することにより, 漸近的にRate-Distortion関数に収束することが証明されている. そこで, 本稿ではGold Washingアルゴリズムの考えを用いたString Matchingアルゴリズムに基づくアルゴリズムを提案し, シミュレーションによりそれぞれのアルゴリズムの特性を考察する.
著者
松嶋 敏泰 平澤 茂一 平澤 茂一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では, センサネットワークを含むネットワーク分散処理の問題に対して, 多端子情報理論と統計的決定理論に基づいた基礎モデルを構築し, 構築したモデル上での最適解の導出及び最適解またはその近似解を実現するアルゴリズムを設計した.