- 著者
-
後藤 理絵
竹林 正樹
関根 千佳
福田 洋
- 出版者
- 日本健康教育学会
- 雑誌
- 日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.4, pp.294-301, 2022-11-30 (Released:2022-12-26)
- 参考文献数
- 24
目的:20~40歳代の労働者向け口腔健康行動促進冊子作成のプロセス評価を行うこと.事業内容:20~40歳代労働者を対象に,ナッジを設計した口腔健康行動促進の漫画冊子を作成した.プロセス評価として作成担当者の意識の変化と作成コスト,読者の満足度等を調べた.作成担当者の意識はインタビュー,作成コストは実績から把握し,満足度等はナッジ群(ナッジ型漫画冊子を配布)と対照群(情報提供型冊子を配布)に無作為に割り付けた上でウェブ調査を行った.事業評価:作成後に担当者の意識向上が見られ,作成コストは約88万円だった.読者による冊子の印象(解析対象:ナッジ群119人,対照群120人)は,表紙は「面白そう」(ナッジ群,対照群の順に48.7%, 25.8%),「読みやすそう」(79.0%, 48.3%),「イラストが良い」(57.1%, 28.3%),「情報量が多い」(26.9%, 59.2%),「読むのが不快」(7.6%, 18.3%)で,いずれもナッジ群は有意に評価が高かった.表紙と本編の印象が一致する傾向の項目も見られた.歯周病の知識は,ナッジ群のみ有意に増加した.以上から,ナッジ型漫画冊子は読者の評価が高く,知識向上に役立ち,特に表紙のナッジが重要と示唆された.結論:ナッジ型冊子は,総じて好印象であり,有意な知識向上につながった.ただし,回答に応じて付与された経済的インセンティブが結果に影響した可能性がある.今後は経済的インセンティブのない条件で調査を行う必要がある.