- 著者
-
稲垣 千果夫
沖田 容一
折田 洋造
- 出版者
- The Society of Practical Otolaryngology
- 雑誌
- 耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.6, pp.1603-1610, 1983
新生仔ゴールデンハムスターにおける蓋膜辺縁のコルチ器表面との接続形態について, 特に marginal pillar (MP) をスチレン樹脂割断法を併用してSEMで観察し, 次のような結果を得た.<br>1) MPは生後4-6日目の下方回転より出現し, 生後10-14日目にも顕著となり, 生後16日目には消失していた.<br>2) MPの出現部位は Deiters 細胞第三列目の細胞表面であり, 蓋膜下面への付着部位は辺縁よりもやや内側 (蝸牛軸側) であった.<br>3) 生後5-10日目頃では, Deiters 細胞第一列目, 二列目の細胞表面にもMPと同様の構造物を認めた.<br>ハムスターでは, MPの消失するのは聴毛の形態が完成した直後であり, 他の動物による諸家の報告を考え合わせれば, MPはコルチ器が完成するまでの間, 蓋膜を固定, 保持する作用を持つことは間違いないものと思われ, MPの消失がコルチ器の発達完了を示す指標になるものと考えられた.