- 著者
-
新城 郁夫
- 出版者
- 琉球大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
まず、2007年11月に出版した『到来する沖縄 沖縄表象批判論』(インパクト出版会、全246頁)において、本研究の全体像を公刊できたことが、当該研究の最大の成果と言える。この著作に明らかな通り、本研究においては、戦後沖縄文学を、主に次の3点において考察し、その考察を通じて、戦後沖縄文学を総合的視野から把握し、その可能性を広範な表現史的かつ思想的パーススペクティヴにおいて開示しえた。まず、1点目に、戦後沖縄の文学表現そして思想史的展開を考察するさい最も重要なテーマとであるところの、一九七〇年前後における反復帰・反国家論について、その文学的意義を明らかにした。次に2点目に、「日本語」の規範の脱中心化あるいは脱構築的可能性を、戦後沖縄文学の具体的テクストへの緻密な読解と分析を通して明快に論証した。そして3点目として、戦後沖縄文学におけるジェンダー的特質および身体の政治性を、具体的なテクスト分析と思想史考察を通じ論証した。そして、この三点目において、戦後沖縄文学に表出された男性の身体性がどのような性政治的特質を内在化させていたかを明証した点と、「従軍慰安婦」という存在の表出が果たす歴史的意義を戦後沖縄文学のなかにおいて明らかにした点は、本研全体においても、特に重要な成果と言い得る。以上の3点をもって本研究成果の柱と言うことができるが、この3点の明証を通じて、ポストコロニアル文学として瞠目すべき独自性と特異性を内在する戦後沖縄文学の総合的内実を本研究において明らかにすることができたことをここに報告する。