著者
此枝 史恵 鈴木 重明 西本 祥仁 星野 晴彦 高木 誠
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.373-377, 2017 (Released:2017-07-29)
参考文献数
17
被引用文献数
23

症例は74歳女性.2014年に進行直腸癌を指摘され直腸離断術を受けたが,残存病変に対する化学療法が副作用のため継続困難となり放射線療法のみで経過観察となっていた.2016年4月に他院で通常より低用量のニボルマブが開始された.ニボルマブの最終投与から約2週間の経過で近位筋優位の筋力低下・筋痛,眼瞼下垂,嚥下障害,呼吸苦が出現した.ニボルマブによる筋炎合併重症筋無力症と考え各種免疫療法を行い症状の改善がみられた.ニボルマブ投与開始から短期間のうちに発症し,従来知られているものとは違い急速に呼吸筋障害をきたすなど重症化する傾向があり,コンサルテーションをうける神経内科医には迅速な対応が求められる.
著者
國枝 洋太 三木 啓嗣 今井 智也 新田 收 星野 晴彦
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11036, (Released:2015-12-03)
参考文献数
36

【目的】急性期脳梗塞患者の転帰先をより早期かつ正確に予測するために,自宅退院可否に関連する因子を抽出しその影響度を検討した。【方法】急性期脳梗塞患者58名を自宅退院群と転院群に割りつけた。検討因子は診療録より後方視的に調査し,2群間にて比較検討した。また2群間比較にて有意差を認めた項目で多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】自宅退院可否と関連を認めたのは,性別,入院時血清アルブミン(以下,Alb)値,入院時血清総蛋白(TP)値,入院時NIHSS,入院から1週後の藤島式嚥下グレード(嚥下Gr),高次脳機能障害であり,多重ロジスティック回帰分析では,高次脳機能障害とAlb値が選択された。ROC曲線の結果から,転帰を判別する入院時Alb値のカットオフ値は3.95 g/dl であった。【結論】急性期病院搬送直後の高次脳機能障害の有無とAlb値は,転帰予測因子としての可能性が示唆された。
著者
星野 晴彦
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 = Bulletin of Human Science (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
no.40, pp.77-87, 2019-03-01

This paper discusses ethics as prerequisite for hospitality in order to consider the particular nature of hospitality in social work. And this paper compares the descriptions of self-determination in code of ethics of social workers in several countries.Results indicated that the ethics of justice(the Kantian school and utilitarianism), the ethics of care, and the ethics of virtue interact in the code of ethics of social work. The interaction of these factors presumably accounts for the particular nature of ethics in social work.本稿では、ソーシャルワークにおけるホスピタリティの特殊性を考えるために、その前提となる倫理について検討した。そしてソーシャルワークにおけるホスピタリティの特殊性を探ることを試みた。具体的には、自己決定に関する倫理綱領の記述を比較検討した。その結果、ソーシャルワークの倫理綱領には、正義の倫理(カント派、功利主義)、ケアの倫理、徳の倫理が相互に作用していることが示された。これらの相互作用がソーシャルワークの倫理の特殊性を構築しているものと考えられた。
著者
星野 晴彦
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10602, (Released:2018-02-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1

動脈解離は我が国の脳卒中の0.7%を占め,その71.9%は虚血性発症であり,特に若年性脳 卒中の原因として重要な疾患である.我が国の動脈解離は後方循環,しかも頭蓋内椎骨動脈が多 く,破裂によるくも膜下出血の危険性を伴うことから,内科的治療選択が難しい問題がある.経静 脈血栓溶解療法については,動脈解離でも問題がなかったという報告が多いが,ほとんどは頭蓋外 動脈解離であり,頭蓋内動脈解離については慎重に症例を選択する必要がある.頭蓋外動脈解離を 対象とした無作為比較試験であるCervical Artery Dissection in Stroke Study(CADISS)では抗血小板療法 と抗凝固療法では転帰に差が認められなかったが,イベント数が少なく,動脈解離における抗血栓 療法についての臨床試験の難しさが明らかとなった.わが国で多い頭蓋内動脈解離については,出 血のリスクを考慮して,繰り返す画像診断で瘤形成がないことを確認しながら抗血栓療法の適応の 有無を慎重に検討する必要がある.
著者
星野 晴彦
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.115-122, 2010-03-01

社会福祉の先人たちの足跡や、青年海外協力隊のソーシャルワーク部門に志願する人々の熱意を見ていると、苦難の状況にあって、支援を必要とする人々のために献身し、自分たちを高めていくパワーを感じさせられる。このパワーはソーシャルワークの地道な実践の継続を支えてきたと言えよう。筆者はこのパワーは、ミッション意識を中核とする次のようなプロセスにあるのではないかと考えている。 「ソーシャルワーク実践に専心し、ソーシャルワーカー自身の中に、ミッション意識(自分たちがやりたいことでなく、社会から何を求められているのかを考え、自ら意味付けする)を抱くことで、自分へのこだわりを超越し、そして自分自身の生きる意味へと再統合していくプロセスである。」 本稿は上記のプロセスに関して、文献研究により検討した。特に、このミッション意識の意義について、そして実践現場においてこのミッション意識がいかに形成されるのかについて論じていく。筆者はあえてこの「超越」と「再統合」の重要性を強調したい。
著者
大塚 明子 森 恭子 秋山 美栄子 星野 晴彦
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.41-52, 2015-03-01

本稿では「価値観 ・ 労働観 ・ ライフスタイル等に関する日本と北欧の比較調査研究」の第一次量的調査で取り上げた設問のうち、自尊感情 ・ 対人信頼感 ・ 文化的自己観の3つの心理尺度に焦点を当て、第二次質的調査のインタビューによってその解釈を深めることを試みた。共通して伺えたのは、スウェーデン人が自己及び周囲との相互作用というミクロな焦点化をおこなうのに対し、日本人は一般的な社会というマクロな視点から俯瞰する、という傾向であった。第一次量的調査ではスェーデン人の相互独立性と評価懸念の両立という、文化的自己観に関する先行研究と異なる結果が得られたが、それを整合的に解釈することができたのが最大の成果の1つと考える。なぜ社会人と比べて大学生の方がより「日本人らしさ」、つまり低い自尊感情 ・ 対人信頼感 ・ 相互独立性+高い相互協調性を示すのかについても、社会的に不利な立場が大きな要因であることが示唆された。
著者
星野 晴彦
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
no.35, pp.27-34, 2013

This paper attempts to introduce the concept of hospitality into social welfare services. First, the essential meaning of hospitality must be understood. This paper describes Derrida's thinking, which includes "the aporia of the impossible" that originated from Derrida's deconstructionism. This paper also describes the results of research into the hospitality mindset of individuals involved in the provision of social welfare services.Aporia means "impassable" or an "insoluble contradiction," which is why the term has come to represent "the impossible."There are practical limits to the extent that we can devote ourselves to social services. The needs of clients of social services exceed our limits, and we must consider the extent to which we will register this fact. The statements of Derrida may facilitate the introduction of the concept of hospitality into social welfare services. Rather than being limited to a superficial understanding, the statements of Derrida may help to provide a deeper understanding of hospitality in welfare services. 本稿では福祉サービスにおいてホスピタリティ概念を導入することを試みた。そこには、ホスピタリティを単なる「思いやり」だけではなく、本質的理解をしていくことが求められる。 そこで本稿では、本質的理解につながるものとして、デリダの脱構築的思想から導き出された「不可能性のアポリア」を紹介し、また筆者が行った調査の結果も示し、ホスピタリティの本質的構造に迫っていきたいと考えるものである。アポリアとは、「道がない」「通行できない」という意味で、ここには「不可能なもの」が見られる。しかも、進むことのできない道を横断しなければならないという「アポリアの経験」をデリダは主張する。筆者は本稿で、デリダの言説に着目し、福祉サービスは、自分たちが想定している以上の人々が求めており、それに対して対応できることには現実的に限界があるが、それにどのような責任を認識していくのかを考える必要があるのではないか、ということを述べる。ホスピタリティを福祉サービスに導入することが、皮相的な理解にとどまらないようにするため、デリダの言説はホスピタリティの本質的理解に一助となるのではないか。
著者
星野 晴彦
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 = Bulletin of Human Science (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.115-122, 2010-03-01

When we look at the history of earlier social workers and the zeal of people who apply to the social work section of Japan Overseas Cooperation Volunteers, we can feel the power with which they have improved themselves through devotion to people in difficult situations who need support. I believe this power derives from the following process centered on mission awareness. "Social workers devote themselves to their practice. When they have mission-awareness (i.e., when they consider not what they want to do, but what society needs them to do, and give it their own significance) they transcend thinking about themselves and reintegrate with the meaning of their own lives."In this paper, I examine the above process by surveying the literature. In particular, I discuss the significance of this mission-awareness and how it is formed in a social work practice. I put special emphasis on the significance of transcendence and reintegration.社会福祉の先人たちの足跡や、青年海外協力隊のソーシャルワーク部門に志願する人々の熱意を見ていると、苦難の状況にあって、支援を必要とする人々のために献身し、自分たちを高めていくパワーを感じさせられる。このパワーはソーシャルワークの地道な実践の継続を支えてきたと言えよう。筆者はこのパワーは、ミッション意識を中核とする次のようなプロセスにあるのではないかと考えている。「ソーシャルワーク実践に専心し、ソーシャルワーカー自身の中に、ミッション意識(自分たちがやりたいことでなく、社会から何を求められているのかを考え、自ら意味付けする)を抱くことで、自分へのこだわりを超越し、そして自分自身の生きる意味へと再統合していくプロセスである。」本稿は上記のプロセスに関して、文献研究により検討した。特に、このミッション意識の意義について、そして実践現場においてこのミッション意識がいかに形成されるのかについて論じていく。筆者はあえてこの「超越」と「再統合」の重要性を強調したい。
著者
森 恭子 大塚 明子 秋山 美栄子 星野 晴彦
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 = Bulletin of Human Science (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.141-158, 2013-03-01

There are significant differences in social protection and policies towards immigrants, including refugees, in different countries. The acceptance of foreign migrant workers and refugees is severely limited in Japan, and asylum seekers in particular face great difficulties because of their exclusion from the Japanese social security system. Compared to Japan, The Swedish government is readily accepting of refugees/asylums seekers and has provided them with sufficient social protection and services, although Sweden's population is less than one -tenth of Japan's . Where do the differences come from? This study explores the differences in opinions about tolerance of immigrants in Japan and Sweden. Respondents were asked about social protection and the social security system's stance towards people from other countries. This study adopted five psychological scales focused on views on immigrants and multiculturalism as independent questions. Individuals in three groups (undergraduates, teachers, and welfare personnel) in Japan and Sweden were surveyed by questionnaire. Responses were obtained from a total of about 640 people. The study found that Swedes answered positively to all of the independent questions. Among the groups, welfare personnel and teachers in Japan were mostly negative. Therefore, a higher level of education has not encouraged tolerance of immigrants and support of multiculturalism in Japan. The results of multiple regression analysis suggested that 'a normative attitude toward helping ' was associated with tolerance in both countries. Results also indicated that gender was a determinant of tolerance in Japan while education and self-esteem were determinants of tolerance in Sweden.
著者
星野 晴彦
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
no.35, pp.23-35, 2013-03-01

現在人間性が強調されながらも、他方で非人間化、人間の束縛が増大している。人間性を生かすはずのものが、制度や組織や集団化によって非人間化、非情化が行われつつある。その中でホスピタリティが現在多く取り上げられるようになった。本稿では、福祉サービスにおいてどのようにホスピタリティの理念が活用されうるかを探るため、新約聖書の中に現れる「ホスピタリティ」を検討した。結果、「見知らぬ人のため」「無償で自分を投げ出す」「行動化」「自発性」「徹底的に一人の人間と向き合う」の5つのキーワードが抽出された。現在の福祉サービスはともすると、効率性を追求して、マニュアル化して人間をかけがえのないものとして認識するという本質を見失う危険性がある。上記のホスピタリティの原点に目を向けることが、それを戒める契機となれば幸いである。
著者
星野 晴彦 高木 誠 土谷 治久 高木 康行
出版者
The Japan Stroke Society
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.480-488, 1998-10-25
被引用文献数
2 1

1年間に入院した急性期のアテローム血栓性脳梗塞28例,ラクナ梗塞57例,心原性脳塞栓25例,分類不能の脳梗塞11例,脳出血31例を対象に,初期治療までに要した時間を検討した.睡眠中発症例は25例(16.4%)あり,アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞で多かった.発症からCT撮影までの平均時間は,心原性脳塞栓症が2.06時間,脳出血が6.84時間,アテローム血栓性脳梗塞が20.78時間,ラクナ梗塞が38.69時間であった.CT撮影までに要した時間は,救急車で来院,救急外来を受診,他院受診せずに直接来院,臨床病型で心原性脳塞栓症と脳出血が有意に早かった.発症3時間以内にCT撮影が終了しているものは36例(23.7%)あり,心原性脳塞栓症が15例(60.0%),脳出血が15例(48.4%),ラクナ梗塞5例(9.1%)であった.しかし,抗血栓療法が開始されたのは発症3時間以内は1例もなく,6時間以内でもラクナ梗塞の2例と心原性脳塞栓症1例にすぎなかった.早期初期治療のためには,脳血管障害が疑われたならば救急車を呼ぶことの啓蒙と,来院後の早期治療開始の院内のシステム作りが必要と考えられた.