著者
高畑 幸
出版者
Japan Association for Urban Sociology
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.32, pp.133-148, 2014-09-05 (Released:2015-12-03)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

Japan's declining population is severely impacting rural areas and cities and causing shortages of care workers. In recent years, Indonesian and Filipino candidates are coming to Japan under the economic partnership agreement (EPA) program to take the country's certified care worker license (kaigo-fukushishi) exam after completing three years of on-the-job training at care facilities nationwide. However, Japan's initial attempt to import foreign care workers was far from completely successful; even though the government subsidized the costs for learning Japanese and taking the national exams, many candidates returned to their home countries. For the first batch of Filipino kaigo-fukushishi candidates who came in 2009, only around 30% passed the exam in January 2013. Based on follow-up research of 49 from the first batch of Filipino candidates, this paper answers the following two questions: What attributes of candidates ease settlement at rural care facilities? What attributes and working experiences are necessary for successful examinees? Our findings suggest that (1) Internet access at care facilities is crucial to ease the settling of candidates, and (2) candidates who are already qualified nurses in their home country but decided to become care workers in Japan have an advantage in taking the national exam because of their basic medical knowledge. On the other hand, since the international labor market demand for Filipino nurses is high, the possibility always exists that they might move to another country.
著者
高畑 幸
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.504-520, 2012-03-31 (Released:2013-11-22)
参考文献数
24
被引用文献数
4 5

本稿は, グローバリゼーションに伴い新たに創出された地域性としての異種混交化 (町村2006) が進む地域において, そこで生まれる新しい社会問題や社会的緊張の緩和に移民女性たちが果たしてきた役割を明らかにすることを目的とする.名古屋市中区の繁華街・栄東地区は, 1980年代初頭からフィリピン人女性の就労が多かった場所である. ここでは, 1997年からフィリピン人の組織化が進み, 2000年には複数の組織が合同で事務所を借りて「フィリピン人移住者センター (Filipino Migrants Center: FMC)」を開設した.ここは, 繁華街における外国人コミュニティの中で, 日本社会の一番近くにある「窓」として機能する. そして彼女らはインナーシティの地域活性化への人的資源ともなってきた. その背景には, 移民女性に特徴的な「弱者性」が定住を促進したこと, また日本の政策・施策も「外国人の定住と多文化共生の地域づくり」の担い手を必要としてきたことがある.すなわち, 栄東地区においては, 剥奪的状況に置かれた移民女性と地元住民・行政との結合的関係がまず作られ, 彼らの「共生事業=窓」を通じて関係が保たれた. そして, 地域で移民男性が関わる問題が発生すると, その窓を利用して彼らと地域住民との対話が図られ, 地域が抱える新たな社会問題や社会的緊張への解決が試みられてきたと言えよう.
著者
稲月 正 谷 富夫 西村 雄郎 近藤 敏夫 西田 芳正 山本 かほり 野入 直美 二階堂 裕子 高畑 幸 山ノ内 裕子 内田 龍史 妻木 進吾 堤 圭史郎 中西 尋子
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

在日韓国・朝鮮人と日系ブラジル人との生活史の比較分析からは(1)「移民」第1 世代の多くは周辺部労働市場に組み込まれたこと、(2)しかし、移住システム、資本主義の形態などの違いが社会関係資本の形成に差をもたらし、それらが職業的地位達成過程や民族関係(統合)の形成過程に影響を与えた可能性があること、などが示されつつある。また、在日韓国・朝鮮人の生活史パネル調査からは、(1)1990 年代後半時点でも見られた祖先祭祀の簡素化やエスニシティの変化が進んでいること、(2)その一方で 「継承」されたエスニシティの持続性自体は強いこと、などが示された。
著者
奥島 美夏 池田 光穂 石川 陽子 鈴木 伸枝 永井 史男 高畑 幸 服部 美奈
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究は保健医療人材の国際移動に関する学際共同研究であり、日本・東南アジア間で2008年より開始した経済連携協定(EPA)による外国人看護師・介護福祉士候補の送り出し・受け入れを軸として、送出諸国(インドネシア・ベトナムなど)の保健医療・教育・移住労働を先進モデル国であるフィリピンと比較つつ課題を分析した。送出諸国は、1990年代の中東・英米での受け入れ開放政策や2015年末のASEAN経済統合をうけて人材育成・学歴引き上げを急ぐが、受け入れ諸国との疾病構造や医療・教育制度の相違などから必ずしも即戦力にはならず、ポストコロニアル的紐帯が薄い日本では職場適応・定住化にも困難があるとわかった。
著者
蘭 信三 外村 大 野入 直美 松浦 雄介 上田 貴子 坂部 晶子 高野 和良 高畑 幸 飯島 真里子 花井 みわ 竹野 学 福本 拓 大久保 明男 倉石 一郎 山本 かほり 田村 将人 田村 将人
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の成果は以下のようである。まず、(1)第二次世界大戦後の東アジアにおけるひとの移動は日本帝国崩壊によって策定された新たな国境線によって引揚げ、送還、残留、定着という大規模な人口移動と社会統合がなされたことを明らかにした。しかし、(2)例えば日韓間の「密航」や中国朝鮮族居住地域と北部朝鮮間の移動のように、冷戦体制が整うまでは依然として残る個々人の戦前期の生活戦略による移動というミクロな側面も継続されていたことを明らかにした。そして、(3)帝国崩壊後も中国に残留した日本人の帰国のように、それは単純に「遅れた帰国」という戦後処理(コロニアリズム)の文脈だけではなく、日中双方における冷戦体制崩壊後のグローバル化の進行という文脈、という二つのモメントに規定されていたことを明らかにした。
著者
石川 義孝 宮澤 仁 竹ノ下 弘久 中谷 友樹 西原 純 千葉 立也 神谷 浩夫 杜 国慶 山本 健兒 高畑 幸 竹下 修子 片岡 博美 花岡 和聖 是川 夕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

わが国在住の外国人による人口減少国日本への具体的貢献の方法や程度は、彼らの国籍、在留資格などに応じて多様であるうえ、国内での地域差も大きい。しかも、外国人は多岐にわたる職業に従事しており、現代日本に対する彼らの貢献は必ずしも顕著とは言えない。また、外国人女性や国際結婚カップル女性による出生率は、日本人女性の出生率と同程度か、より低い水準にある。一部の地方自治体による地道な支援施策が注目される一方、国による社会統合策は不十分であり前進が望まれる。