- 著者
-
木津 純子
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.122, no.11, pp.1405-1410, 2019-11-20 (Released:2019-12-06)
- 参考文献数
- 12
花粉症を含むアレルギー性鼻炎の患者は増加の一途をたどり, 今や国民病の一つとされている. アレルギー性鼻炎は, 発作性反復性のくしゃみ, (水様性) 鼻漏, 鼻閉を主徴とし, 自動車運転を含めた日常生活に多大な影響を及ぼす. 薬物治療の基本は第二世代抗ヒスタミン薬であり, 病型を問わずすべての重症度で推奨されている. 脳内に移行しにくい非鎮静性第二世代抗ヒスタミン薬は, 眠気の発現が少なく, 抗コリン作用やインペアード・パフォーマンスなども軽減されている. 特に, 2010年以降, 新薬が相次いで販売され, 治療選択肢の幅が広がっている. しかしながら, 眠気が軽減されてはいるものの, 服用患者を対象とした実態調査においては, いずれの第二世代抗ヒスタミン薬を服用しても我慢できないほどの強い眠気を訴える患者が存在し, 眠気の発現には個人差が大きいことが確認されている. 第二世代抗ヒスタミン薬を処方する際には, 服用後にアレルギー症状について効果を確認するとともに, 眠気や作業効率の低下などの発現についても確認することが重要である. さらに, 第二世代抗ヒスタミン薬は, 薬物相互作用, 薬物動態に及ぼす食事の影響などにも違いが認められ, 1日の服用回数や服用時期も異なっている. アレルギー性鼻炎の症状を抑え, 自動車運転を含めた QOL を向上させるには, 個々の患者の生活スタイルや嗜好などについても把握した上で, 患者のアドヒアランスを考慮し, 患者に最も適した薬剤を選択することが重要となる.