- 著者
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中西 重忠
西田 栄介
西川 伸一
本庶 佑
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- COE形成基礎研究費
- 巻号頁・発行日
- 1995
中西のグループは、生体工学的手法(ノックアウト、トランスジェニック)を駆使し、1)基底核神経回路の中でコリン作動性神経細胞を特異的に除去する方法を開発し、基底核のドーパミンとアセチルコリンが拮抗的かつ協調的に運動のバランスを制御していることを明らかにした。2)ヒト傍腫瘍性小脳失調症がヒトmGluR1の自己抗体によって発症すること、又本抗体はマウスに強い小脳失調症を引き起こすことを明らかにした。3)mGluR2が扁桃体を介した恐怖反応と逃避行動に必須であることを示した。本庶のグループは、1)in vitroで抗体遺伝子クラススイッチを高頻度に起こす細胞へ人工ミニ染色体を導入する方法を用い、クラススイッチ組換えの分子機構として、S領域の転写の方向性によって組換えの様式が欠失か逆位かが決定されるということを明らかにした。2)クラススイッチ誘導に際して新たに発現されるRNA editing enzyme AIDを単離し、その発現様式がクラススイッチを起こすgerminal centerに限局していることを明らかにした。3)Bリンパ球のB1細胞とB2細胞の分化増殖決定機構について、B1細胞が細胞表面からのシグナルの強さによって増殖、細胞死、B2への分化を決定していることを明らかにした。4)免疫抑制に関わる分子として単離したPD-1遺伝子の欠失マウスを作成し、このマウスでは腎炎、関節炎などの典型的なSLE様症状を示すことを明らかにした。西川のグループは、1)パイエル板のinducerの形質を明らかにし、本細胞が間質系の細胞であること、又血液幹細胞から本細胞がコミットしてくる各段階を明らかにした。又この細胞によって誘導されるorganizer細胞の同定に成功し、末梢リンパ組織の形成原理が炎症をプロトタイプするという仮説を提唱した。2)GATA1プロモーター/GFP遺伝子を導入したES細胞を用いて胎児型赤血球、血管内皮それぞれに分化決定した細胞と、両方に分化能を有する細胞を分離することに成功し、血液分化のプロセスの新しいモデルを提示した。3)色素系幹細胞が、毛根のバルジ領域に存在し、G0段階で維持されていること、又一旦G1から増殖へと活性化されたstem cellがmicroenvironmentによりG0へと再導入されることを明らかにし、幹細胞を支持するニッチの存在を初めて示した。西田のグループは、1)MAPキナーゼカスケード反応における特異性と効率を規定するドッキング相互作用(触媒部位以外での酵素分子と基質の結合)を解析し、ERK(古典的MAPキナーゼ)、P38およびJNK/SAPKの全てのMAPキナーゼファミリーメンバーが保存されたドッキング部位をC端領域に持つことを明らかにした。2)ERK MAPキナーゼの核内移行が、ERKのチロシンリン酸化によるMEK(MAPKK)からの解離とその後の能動輸送と受動拡散の2経路で行われていることを明らかにした。3)ERK MAPキナーゼの活性化が哺乳動物体内時計のリセット機構に関与することを明らかにした。4)体細胞分裂周期における中心体複製の機構において、中心体複製もDNA複製の開始に不可欠なCdk2により規定されることを明らかにした。