著者
松井 利仁 平松 幸三 宮川 雅充
出版者
公益社団法人 日本騒音制御工学会
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.367-374, 2012-10-01 (Released:2020-01-16)
参考文献数
20

航空機騒音が空港周辺住民のメンタルヘルスに及ぼす影響を明らかにすることを目的として,成田国際空港暫定平行滑走路(B滑走路)周辺において,精神健康調査票(GHQ-28)を利用した質問紙調査を行った。GHQ-28で神経症と判別された者の比率と騒音曝露量および騒音感受性との関連を分析した結果,騒音感受性が高い群において,住民のメンタルヘルスに影響が生じていると考えられた。さらに,騒音曝露群について,神経症と判別された者の比率と生活妨害との関係を分析した結果,夕方から夜間の時間帯(18∼23時)における生活妨害とメンタルヘルスとの間に,有意な関連が認められた。
著者
高木 興一 松井 利仁 青野 正二 酒井 雅子
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.957-964, 1995-12-01
被引用文献数
12

本研究では、パチンコ、音楽鑑賞などの娯楽に伴い暴露されるような音の危険性をTTS(騒音性一過性域値変化)の観点から、暴露実験により評価することを試みた。暴露実験の結果、パチンコ店、ディスコ、ライブハウスの音を2時間暴露すると20dB程度のTTSが生じ、その聴力への危険性が大きいことが示された。一方、ヘッドホンステレオでの聴取を想定した、洋楽、邦楽のCDの音の暴露では、3〜5dBのTTSが生じるのにとどまった。また、既存の2種類の予測式によりTTSを計算したところ、どちらの予測値も実測値に比較的よく追随し、レベル変動の大きな変動騒音によるTTSの予測に対し、両予測式を適用できることが分かった。
著者
田鎖 順太 松井 利仁
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.19014, 2021 (Released:2021-02-25)
参考文献数
35
被引用文献数
5 5

Objectives: Traffic noise exposure is associated with adverse health effects such as environmental sleep disorder, ischaemic heart disease (IHD), stroke and diabetes. The health risks posed by traffic noise were estimated to be quite high in European countries. However, in Japan, no estimation has ever been conducted. In the present study, we estimated the health risk posed by road traffic noise in Japan.Methods: We estimated the risks of environmental sleep disorder (high sleep disturbance) and IHD caused by road traffic noise in Japan as of 2015 on the basis of existing noise-exposure estimates, vital statistics of deaths, and patient survey with exposure–response relationships proposed by the Environmental Noise Guidelines for the European Region issued in 2018. We employed old information on noise exposure in 1994 because it is the only information currently available in Japan. We also estimated the health risks of noise exposure levels that were equivalent to the Japanese environmental quality standards.Results: The estimated numbers of patients with environmental sleep disorder and IHD caused by road traffic noise were approximately 1,200,000 and 9,000, respectively. The estimated number of mortalities from IHD was approximately 1,700. The noise exposure level equivalent to the Japanese noise standards caused a lifetime mortality rate of more than 10−2, which was extremely high as an environmental health risk.Conclusions: As in European countries, road traffic noise was one of the most important environmental risk factors in Japan. However, the current Japanese noise standards are insufficient for the protection of public health.
著者
松井 利仁 平松 幸三 長田 泰公 山本 剛夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.80-85, 2003-02-01
被引用文献数
3

沖縄県は1997年に県内の飛行場周辺に航空機騒音のモニタリングシステムを設置した。本報告では,モニタリングシステムによって集積された測定資料を用い,嘉手納,普天間飛行場周辺の騒音曝露の現状を示している。両飛行場周辺では,昼夜を分かたず広範囲で高レベルの騒音が観測されており,特に嘉手納飛行場近傍では,夜間においても110dBを超える騒音レベルが記録されていた。また,防衛施設庁の定める騒音に基づく地域区分との関連を検討したところ,嘉手納飛行場周辺では,離着陸コース直下を除いて,今回算出したWECPNLが防衛施設庁の地域区分より低い値となったが,普天間飛行場周辺では両者がほぼ一致した。
著者
松井 利仁
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

交通騒音によって睡眠妨害以外の健康影響が生じることは必ずしも知られていない。しかし,近年の大規模な疫学調査などにより,虚血性心疾患や脳卒中の罹患率・死亡率の上昇が明らかにされてきた。欧州WHOはそれらの知見に基づいて,交通騒音による健康損失を障害調整生存年(DALY)で評価する方法を示している。本研究では,我が国にこれを適用する際の様々な課題について検討を行ない,DALY算定のための方法を確立した。
著者
土田 義郎 松井 利仁 永幡 幸司 塩川 博義 川井 敬二 森原 崇 船場 ひさお
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

音環境の評価には、量だけでなく意味が関与する。良好な音環境の実現には、文化的視点も必要であり、マネジメント思考も求められている。本研究で得た成果は次の3点である。(1)主観の影響や、居住地・世代による音源の聞き取り頻度の差といった点から、音環境全体の評価に関する成果を得た。(2)ガムラン音楽や商店街の音環境の他、海外(アジア地域)における鉄道騒音や道路騒音のように幅広い音環境に対して、質的な情報と量的な情報の相互作用についてテキスト・マイニングやPAC分析を用いて成果を得た。(3)個人の認識を可視化し、深層面接を行うツールを用い、認知構造の同定手法に関する成果を得た。
著者
平松 幸三 箕浦 一哉 松井 利仁 宮北 隆志 長田 泰公 山本 剛夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.556-564, 2000-08-01
参考文献数
24
被引用文献数
1

特殊空港周辺で実施されている家屋防音工事が生活実態上どの程度生活環境の改善に寄与しているのかを検討するため, 嘉手納基地周辺において質問紙調査を行い, 家屋防音工事の実施状況, それに対する満足度と効果の有無並びにうるささ, 生活妨害, 環境質に関する回答を分析した。その結果によると, 騒音曝露地区では, 家屋防音工事への満足度が高く, その効果を評価する回答が多かったが, 高度曝露地区ではそれらの回答率が著しく低かった。多重ロジスティック分析を行って生活妨害の反応に関するオッズ比を家屋防音工事実施群と非実施群とで比較したところ, 両群において反応に差が認められなかった。このことから家屋防音工事が生活環境を改善することにはなっていない, と結論された。
著者
松井 利仁 平松 幸三 長田 泰公 山本 剛夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.20-24, 2001-12-25
参考文献数
9
被引用文献数
2

沖縄県には在日米軍専用施設面積の約75%に及ぶ基地が存在し, 沖縄本島の約20%を米軍基地が占めている。嘉手納・普天間飛行場は人口の稠密な地域に位置しており, 約48万人(県人口の38%)が環境基準を超える航空機騒音に曝露されていると推定されている。このような状況に鑑み沖縄県は航空機騒音曝露による住民影響に関する疫学調査を行った。本報告では, 航空機騒音の健康影響調査の基礎的資料として, 過去の騒音曝露量の推定を行っている。ベトナム戦争以降の現存する騒音測定資料を分析し, それに基づいて各種騒音評価量を推定している。また, 防衛施設庁が定めている騒音区分の妥当性についても検討を加えている。
著者
渡久山 朝裕 松井 利仁 平松 幸三 宮北 隆志 伊藤 昭好 山本 剛夫
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.14-25, 2009 (Released:2009-02-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Objectives: To investigate the association between aircraft noise exposure as expressed by Weighted Equivalent Continuous Perceived Noise Level (WECPNL) and preschool children’s misbehaviours around the Kadena and Futenma airfields in Okinawa. Methods: A questionnaire survey on children’s misbehaviour was conducted in nursery schools and kindergartens around the Kadena and Futenma airfields. The children living around the Kadena airfield were divided into four groups according to WECPNL at their residences and those around the Futenma airfield into three groups according to WECPNL. The subjects were 1,888 male and female preschool children, 3 to 6 years of age, whose parents, caregivers, and teachers answered the questions. The answers used for the analysis were limited to those of respondents fulfilling the following conditions: parents living with their children, fathers with a daytime job, and mothers with a daytime job or no job. Thus, the number of valid answers was 1,213. The responses were analysed using logistic regression models taking the number of misbehaviours related to the items of Biological Function, Social Standard, Physical Constitution, Movement Habit, or Character as the dependent variables, and WECPNL, age, sex, size of family, birth order, mother’s age at birth, mother’s job, caregiver’s career, and category of subject as the independent variables. Results: A significant dose-response relationship was found between the odds ratio and WECPNL for the outcomes of Physical Constitution around the Kadena and Futenma airfields. Conclusions: It would be reasonable to conclude that the aircraft noise exposure is a factor that increases the number of preschool children’s misbehaviours.