著者
上林 憲司 田戸岡 好香 石井 国雄 村田 光二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.130-138, 2016 (Released:2016-09-07)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

社会における善悪判断を左右する道徳性が,外的要因により意識されないまま変化することが知られている。本研究は道徳性に変化を及ぼす要因の一つとして,着衣に注目した。特に,道徳性が白色および黒色と結びついていることに基づき,白色または黒色の着衣が,着用者の道徳性に関する自己認知に及ぼす影響を検討した。参加者は白色または黒色の衣服を着用した状態で,自己と道徳性の潜在的な結びつきを測る潜在連合テスト(IAT)に取り組んだ。その後,道徳性について顕在的な自己評定を行った。その結果,潜在認知と顕在認知のどちらにおいても,白服着用者の方が黒服着用者より,自己を道徳的に捉えていた。これらの結果を踏まえ,着衣が認知や行動に影響を及ぼす過程や,道徳性を変化させる要因について議論した。
著者
小林 直弘 小山 元道 小林 憲司 北條 智彦 秋山 英二
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.49-58, 2021-02-01 (Released:2021-01-25)
参考文献数
35
被引用文献数
6 5

The grain size effects on the hydrogen embrittlement susceptibility of pure Ni and Ni-20Cr alloy were investigated. The hydrogen embrittlement susceptibility was evaluated by tensile testing under electrochemical hydrogen charging. Relative elongation, defined as the elongation under hydrogen charging divided by elongation in air, increased with increasing grain size in pure Ni (the grain size was in the range of 11-22 µm). In contrast, the relative elongation of Ni-20Cr alloy increased with decreasing grain size from 13 to 1.8 µm. Correspondingly, intergranular fracture was suppressed by grain coarsening in pure Ni and grain refinement in the Ni-20Cr alloy. In addition, the intergranular fracture surface in pure Ni showed curved slip lines, and in the Ni-20Cr alloy showed straight line marks. These fractographic features imply that the mechanisms of the hydrogen-assisted intergranular crack growth were different in pure Ni and Ni-20Cr alloy and this can be attributed to the difference in stacking fault energy.
著者
大村 朋彦 小林 憲司
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.190-195, 2011-04-15 (Released:2011-10-08)
参考文献数
63
被引用文献数
1 4

高強度低合金油井管ならびにラインパイプの水素脆化現象および近年の開発状況を概説した.油井環境では硫化物応力割れ(Sulfide Stress Cracking, SSC)が硫化水素含有(サワー)環境からの水素吸収と引張負荷応力の元で発生し,このSSCが高強度油井管にとっては主要な問題となる.高強度油井管の耐SSC性の改善のため,様々な冶金的改善が取り組まれてきた.1990年代には110 ksi(降伏強さ758 MPa) 級の耐サワー油井管が結晶粒微細化とP, S, Mnなどの偏析元素の低減により開発されている.2000年代には,介在物の微細化,転位密度の低減,炭化物の形態制御により125 ksi(降伏強さ862 MPa)級の高強度耐サワー油井管も開発されている.水素誘起割れ(Hydrogen Induced Cracking, HIC)は低強度鋼と高強度鋼いずれにも負荷応力無しで起こり,ラインパイプにとって主要な問題となる.HICは伸延されたMnSなどの硫化物や板厚中央部の偏析硬化帯に沿って発生・進展する.65 ksi(降伏強さ448 MPa) 級の耐サワーラインパイプが介在物球状化ならびに加工熱処理(Thermo-Mechanical Controlled Process, TMCP)により広く商用化されている.さらに近年ではこれらの技術の進展により70 ksi(降伏強さ483 MPa)級の耐サワーラインパイプが開発されている.
著者
村田 光二 道家 瑠見子 樋口 収 桑山 恵真 田戸岡 好香 渡邊 さおり 谷本 奈穂 上林 憲司
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、社会的場面における効果的な自己制御過程に影響を及ぼす要因を、実証的に解明することを目的としている。特に、目標葛藤の解決方略、制御資源の枯渇に対抗する方略、意識的抑制に基づくリバウンド効果を低減する方略を中心に実証研究を積み重ねた。その成果として、課題達成目標と誘惑とが葛藤する場面では、対抗的自己制御が働き、課題達成に役立つ人物の評価が高まることを見出した。また、制御資源の枯渇に対して、自己肯定化と解釈レベルを高次にすることの組み合わせが有効であることを再確認した。さらに、嫉妬的ステレオタイプの抑制に伴って生じるリバウンド効果を低減する方策の1つを見出した。
著者
矢神 真奈美 加藤 大也 林 安津美 脇阪 涼子 小林 憲司 鷲野 香織 山本 絢子 立石 早祐美 澤井 喜邦 稲垣 一道 金山 均 片田 直幸 伊藤 光泰
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.430-435, 2011 (Released:2011-07-15)
参考文献数
18

2型糖尿病患者(60名)に対して食品交換表にて指導を24週間介入後,さらにカーボカウント基礎編を上乗せする指導(カーボカウント上乗せ群;30名:男性/女性=14/16)と,食品交換表による指導(食品交換表継続群;30名:男性/女性=16/14)に無作為に振り分け24週間介入し,各群介入前後で糖代謝,脂質代謝,BMI及びメンタル面の比較検討を行った.介入後両群共にHbA1c及びLDL-Cは有意な改善が認められた,さらにカーボカウント上乗せ群では,HDL-C,BMIの有意な改善が認められた.両群間の変化率の比較では,カーボカウント上乗せ群は食品交換表継続群に比べてHbA1c(-13.0±12.8vs-3.8±15.5%;p=0.014)及びHDL-C(12.7±19.5vs 3.0±15.1%;p=0.038)の有意な改善が認められた.メンタル面の評価では,カーボカウント上乗せ群では有意に食事の満足度が高く,食事療法継続の苦痛感が少ないことが認められた.故にカーボカウント上乗せ群では食品交換表継続群に比べてより糖代謝を改善し,さらに患者QOLを高める可能性が示唆された.
著者
若松 宣一 後藤 隆泰 足立 正徳 井村 清一 林 憲司 亀水 秀男 飯島 まゆみ 行徳 智義 柴田 俊一 堀口 敬司 金 昇考 土井 豊 森脇 豊
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.165-177, 1990-03-25
被引用文献数
2

金属表面にコーティングする場合と同様な方法で作製したハイドロキシアパタイト(HAP)セラミックスの破壊応力に与える水の効果を評価するために, 四点曲げ試験を0.5mm/minの条件で空気中(20℃, 相対湿度73%)と蒸留水中(37℃)で行った。そして得られた強度データを2-パラメータワイブル統計を用いて解析した。各条件において, 曲げ強さのデータは単一モードのワイブル分布に従った.このデータの表面欠陥モデルを仮定したワイブル解析は, 空気中でワイブルパラメータm=7.8, σ_0=26.2MPaと蒸留水中でm=8.1, σ_0=18.5MPaを与えた.曲げ強さの平均値は空気中で27.3MPaと蒸留水中で18.2MPaであった.この結果より, 水のような腐食性環境が定応力速度で測定される破壊応力に影響を与えることは明らかである.この影響は試料が破壊するよりも低い応力レベルで起こるサブクリィティカルなクラックの成長が原因であると考えられる.また, 本研究で推定したワイブル分布関数を用いて, 試料の寸法と試料中の応力分布が破壊応力の平均値に与える影響を予測した.