著者
赤林 伸一 有波 裕貴
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 令和2年度大会(オンライン)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.13-16, 2020 (Released:2021-10-28)

本報では、CFD 解析(RANS) を用いて、市街地屋外での喫煙時に生じる汚染質濃度分布及び屋内の喫煙所において喫煙者が退出する際のタバコ煙の拡散状況を解析し、建築・都市空間において受動喫煙が発生するリスクを明らかとする。今後の受動喫煙防止政策の策定や適切な分煙手法などに関する基礎的な資料を得ることを目的とする。
著者
小林 朋子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.155-174, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
121

いじめや災害など様々な学校危機が起こるようになってきている中で,学校危機の予防から回復までのあらゆる段階においてレジリエンスは支援のキーワードとなっている。本研究では,(1)学校危機やレジリエンスの概念を説明した後,(2)日本の子どもを対象としたレジリエンス研究についての知見をまとめ,その上で縦断的な研究の必要性を述べた。その後,(3)学校危機を危機発生の前後の「予防段階」と「回復段階」に分け,さらにレジリエンス育成を目的としたプログラムと,学校教育活動で行われている取り組みをそれぞれ俯瞰し,日本の学校現場でのレジリエンスの育成に関する諸課題の整理を行った。そしてその上で,(4)海外の取り組みもふまえ,カリキュラムや学級経営,教師の関わりなどを考察し,(5)学校でのレジリエンス育成を行っていくには,学校が行っている教育活動を活かした,プログラムと学校教育活動の「相互作用」が重要であり,その相互作用によるアプローチを提案した。
著者
上林 憲雄
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第89集 日本的経営の現在─日本的経営の何を残し,何を変えるか─ (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.38-46, 2019 (Released:2019-09-26)
被引用文献数
1

日本的経営はグローバル市場主義によって著しく侵食され,もはや風前の灯火の状態にある。日本的経営の要素として今日まだ辛うじて残っている特徴は「人材の育成志向」くらいである。また,日本的経営として取り上げられる要素では必ずしもないものの,評価基準を自国や自企業(己自身)にではなく諸外国や他企業という「外」に置く点も変わらぬ日本的特徴である。今後,ますますグローバリゼーションが進展する中,日本企業が世界に伍していくためには,外部に基準を求めそれに合わせようとするのではなく,自らで納得する基準を作り,それに沿ってユニークな人材を育成していくことである。加えて,グローバル市場主義が日本企業や社会に対しもたらす負の側面にも十分配慮する必要がある。
著者
小林 博志
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.57, 2018-08-30 (Released:2019-11-08)
参考文献数
5

本稿では,農協婦人部の機関誌的存在である雑誌『家の光』を通して,農村女性におけるモータリゼーションの展開を考察する.この展開は,1950年代後半から普及が進むテーラーの導入を契機に,稲作の機械化を背景として1970年代中頃から普及が進む軽トラックの導入により促進される.結果として生じる生活圏の広域化が家庭内に交通格差をもたらし,その相対的優位者となった嫁は,減反を背景とする家庭内分業の再編において姑からの干渉を減少させていく.農機具として導入されたテーラーは,生活の移動手段となり,軽トラックは移動手段の枠を超えて,私的空間の形成装置となることで,都市と農村が共有しうる近代家族的価値観を具現化する装置として機能する.これは,人と「モノ」との相互作用による「人並み」という生活水準意識の形成を意味するものである.
著者
林 雄亮
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.189-209, 2007-07-20 (Released:2013-10-23)
参考文献数
24

本稿の目的は,人々の格差に対する意識の実態を調査分析によって明らかにすることである.用いるデータセットは「2006年格差と不平等に関する仙台市民意識調査」である. 本調査研究で扱った社会格差は,大学進学機会,就職機会,職業上の成功機会,所得,資産,医療サービス受給機会,年金の格差である.これらの格差に対する意識は格差認知(どのくらいの格差があると認知されているか)と格差許容度(認知された格差が許容できるかどうか)に区別される.それぞれの分布は格差の種類によって異なり,全体的には機会の格差は小さく,結果の格差は大きく認知され,福祉の格差についての許容度が低く,所得や資産の格差についての許容度が高いことがわかる.そしてこれらの格差意識は,因子分析の結果,従来の伝統的な階層意識とは別の次元に存在している.さらに,格差意識と社会的属性との関連では,比較的低地位者の格差認知が高く,格差許容度が低い.しかしながら,多変量解析の結果,社会的属性の影響は決して強くはない.