著者
植田 恵 高山 豊
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.330-338, 2013

原発性進行性失語(primary progressive aphasia;PPA)の評価は,既存の言語機能検査を使用して行われているが,その適切な組合せ・実施手順の明確化,あるいは新たな評価法の開発が望まれる。近年,新たな PPA の国際臨床診断基準とともにタイプ診断のための発話/言語機能の課題が示された。そこで,我々はこの課題と本邦で使用されている検査との対応について,また過去の自験例に実施した検査について検討することを通じて,PPA の評価における課題を整理することを試みた。タイプ分類は既存の検査を組み合わせることで対応が可能であると考えられたが,この検査の組み合わせの妥当性については今後さらなる検討が必要である。他方,長期経過をみていく際に必要となる ADL(activities of daily living)等生活面の評価についても PPA 特有の問題が反映される評価法が開発されることが期待される。
著者
植田 恵理子
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.97-109, 2013-03

本稿は、筆者が主催する参加体験型音楽劇「音の絵本」コンサート時に見られた、「協同して、何かを成し遂げる観客の姿勢」から、協同して表現活動に参加するための要因を導き出し、保育現場の活動に生かす方法を示唆するものである。ここでは、音の絵本「西遊記」というコンサートを取り上げ、観客が協力して、生き生きと積極的な表現活動を行った場面を抽出し、その要因となった事項を導き出す。得られた結果を踏まえて構成した、音の絵本「ねえ、おはなししてよ」を、S 幼稚園にて実施したところ、コンサート時と同じように園児たちが協力し、積極的に表現を工夫し合う姿が見られた。以上から、協同的な学びを引き出す音楽活動の一つとして、参加体験型の音楽劇が有効であることがわかった。
著者
藤田 郁代 物井 寿子 奥平 奈保子 植田 恵 小野 久里子 下垣 由美子 藤原 由子 古谷 二三代 笹沼 澄子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.179-202, 2000-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
35
被引用文献数
5 13

本委員会は, 1993年から「失語症語彙検査」の開発に着手し, 現在までに中核部分の諸検査: 語彙判断検査, 名詞・動詞検査, 類義語判断検査, 意味カテゴリー別名詞検査を作成した.本検査の目的は, 脳損傷患者の単語の表出・理解機能を多面的に評価し, 言語病理学的診断, 治療方針の決定, 治療効果の測定等に役立てることにある.今回は, 本検査を健常者に実施し, データを分析した.健常者の成績は, すべての検査において満点に近く, 本検査の課題は健常者にとって容易であることが明らかとなった.年齢および性による成績の差は大部分の検査において有意ではなかった.語の頻度効果を語彙判断検査, 名詞表出検査, 名詞理解検査において, 心像性効果を語彙判断検査, 名詞理解検査, 類義語判断検査において認めた.以上および先行研究の結果から, 本検査は脳損傷患者の単語の理解, 表出機能を評価する上での手段になりうると考えられた.
著者
梅垣 佑介 梅垣 佑介 尾崎 奈央 黄 馨卉 植田 恵未 岩垣 千早 松岡 祐里
出版者
奈良女子大学臨床心理相談センター
雑誌
奈良女子大学心理臨床研究
巻号頁・発行日
no.6, pp.25-29, 2019-03-31

奈良女子大学心理臨床研究 第6号 第1部 研究論文認知行動療法における「心理療法の共通要因」の重要性と役割について理解するため、Beck, A (1979)によるマニュアルの翻訳書を購読し、共通要因について書かれた内容を検討した。共通要因についての記述は多く、特に作業同盟の重要性といった内容が認知的な変容技法に先立って記述されていることや、精神力動的アプローチやクライエント中心療法からも学ぶべき旨が記述されていることがわかった。認知行動療法の変容のメカニズムの解明や、共通要因と技術要因のバランスといった課題を実証的に明らかにしていくことが重要と考えられた。
著者
古本 恭子 高原 真理子 荒木 耕生 植田 恵介 井手 義顕 山本 敬一 米丸 亮 高畑 武司
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.40, 2011 (Released:2012-02-13)

マイコプラズマ肺炎は学童期に多い肺炎の一つで, マクロライド系抗生物質が第一選択とされてきた. しかし, 近年, マクロライド耐性肺炎の報告が増加している. その一方で, マクロライド感受性肺炎の流行期であるにも拘わらず, 治療に難渋する症例を経験することがある. 今回, 我々は, 臨床的に判断したクラリスロマイシン(CAM), ミノサイクリン(MINO)感受性マイコプラズマ肺炎患者において, CAM, MINO投与にも関わらず, 発熱が遷延した4例を報告する. 症例は, 平成22年12月から1月において当院に入院した6歳から11歳の肺炎4例である. 聴診所見, 胸部単純X線, 入院時のイムノカードおよび, ペア血清でのMp抗体価の上昇からMp肺炎と診断した. 4例中3例は入院前からCAM, MINO, アジスロマイシン(AZM)を内服していた. 発熱期間は, 入院前の内服期間を含めて, 7~8日間と遷延していた. これらの症例では, AST・LDH・フェリチンの高値から, 遷延する発熱の要因の一つに高サイトカイン血症の関与を考えて, メチルプレドニゾロン(mPSL)投与を3日間行なった. 全例でmPSL投与の12~24時間後より解熱傾向を認めた. 1例ではmPSL中止後に再発熱を認めたため, 再投与を行なったところ, 12時間後に解熱した. 発熱の遷延は, IL-2, 4, 12, 13, 18, IFN-γなどの炎症性サイトカインの臨床上の指標となる. マイコプラズマ肺炎において, 抗菌薬投与後も3~4日間解熱しない場合, 耐性マイコプラズマだけでなく, 高サイトカイン血症の関与を疑い早期のステロイド投与が望ましい.
著者
本岡 寛子 植田 恵未 大対 香奈子 堀田 美保 直井 愛里
出版者
近畿大学総合社会学部
雑誌
近畿大学総合社会学部紀要 = Applied Sociology Research Review KINDAI UNIVERSITY (ISSN:21866260)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-11, 2019-09-30

[Abstract]In recent years, while the number of students entering to universities has continuously increased, 20 to 30% of those have dropped out before graduation (Japanese Ministry of Education, Culture, Sports, Science, 2014). Unwilling admission tends to cause maladaptation to university life. Nevertheless, some of those with unwillingness seem to improve their expectations and images about their own universities, leading to complete their courses and feeling high satisfaction. The purpose of this study was to examine the changes in the students, concerning their images and expectations about their universities, their group identity, and their adaptation levels to university life, and to clarify the relationships among these factors. We conducted a series of survey for the first-year students at three times during their first semester. Results shows that the students with high willingness to enter the university were likely to have positive images and high expectations about their university, and to show high group identity and good adaptation to university life. By the end of the semester, their enlarged social network had strong influences on their adaptations to university life through their attachment to the other university members.
著者
植田 恵理子
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.37-47, 2012-03

従来から、幼稚園における音楽活動は、協同的な学びが重視されてきた。筆者は、「協同的な学び」を引き出す実践や、子どもたちが、その環境作りに対して積極的に取り組むための条件などに対し、これまでも事例研究を行い、考察と提案を行ってきた。本研究では、大阪府S 市S 幼稚園をフィールドに、音楽活動の事例の中で見られた園児の様子を「協同的な学び」と子どもの「音への気づき」の関連性において考察した。共に音を聞きあう活動や、音を工夫することによって得られる「気づき」を確認する活動などを繰り返すことにより、子どもたちは、音楽を共有するコミュニティを大切にし、音楽活動を楽しく行える環境を作り、整える力を発揮していった。筆者は、子どもの「音への気づき」を大切にした音楽活動が、「協同的な学び」を引き出し、共感しながら学んでいくために必要な環境を、子どもたちが意欲的に作りだすきっかけになることを明らかにした。