著者
Manalo Emmanuel 鈴木 雅之 田中 瑛津子 横山 悟 篠ヶ谷 圭太 Sheppard Chris 植阪 友理 子安 増生 市川 伸一 楠見 孝 深谷 達史 瀬尾 美紀子 小山 義徳 溝川 藍
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

3年目である本年は、21世紀型スキルの促進ということに焦点を当てて研究を行った。この結果、様々なワークショップや授業を開発した。具体的には、大学教員の質問スキルの向上を目指すワークショップの開発、小学校教員による効果的な学習法指導の開発、高校生の批判的思考と探究学習を促進する実践の提案などを含む。さらに、教育委員会と連携した実践なども行った。こうした研究の結果、研究代表者であるEmmanuel Manaloと分担研究者である植阪友理を編者に含む、英語の書籍を刊行した。この書籍は、自発的な方略を促進するためのあり方を具体的に提案するものであった。この本の論文はいずれも、査読付きであり、このうち9本は本プロジェクトに関わるメンバーが執筆している。のこり10本は海外の研究者が執筆している。海外の著者にはアメリカのUCLA (University of California Los Angeles) やPurdue University、スイスの ETH Zurich、ドイツの University of Munster (Germany) 、University of Hong Kongなどといった一流大学の研究者が含まれており、国際的な影響力も大きなものとなったと考えられる。さらに、日本心理学会、教育工学会などといった国内学会において発表を行った。さらに、EARLI (European Association for Research in Learning and Instruction) やSARMAC (Society for Applied Research in Memory and Cognition) といった国際学会においても発表した。
著者
植阪 友理 光嶋 昭善
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.398-411, 2013 (Released:2014-05-21)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

説明文に比べると研究は少ないものの, 文学作品の指導が子どもの表象や認識に及ぼす影響を検討することは, 生涯にわたって文学を楽しむ大人を育成するためにも重要である。文学は読み手が体験を踏まえて再構成する自由度が大きく, 説明文よりも多様な状況モデルを許容する。中でも俳句は最も文字数が少なく, この特徴を強く有している。一方, 現在の俳句指導は解釈が定まっている名句の鑑賞が中心であり, 作句活動や相互の鑑賞活動はあまり行われていない。このため俳句本来の面白さに気づくことが難しい状態である。そこで名句の鑑賞のみならず, 作句活動や相互の鑑賞活動を取り入れた新たな単元構成を提案し, 子どもの認知に及ぼす効果を検討した。また, 鑑賞会では, (1)創作者を匿名とし, 創作者も鑑賞者と一体化して鑑賞させる, (2)鑑賞や創作の技法を明示的に教えるなどの工夫を加えた。ある児童の句に着目してやり取りを分析した結果, 異なる状況モデルを共有することで, 個々の児童の想定を超えたより豊かで新しい状況モデルが生み出されうること, 文学に対する興味が喚起されていることなどが示された。最後に, この指導から得られる新たな心理学研究の可能性を論じた。