著者
品川 高廣 河野 健二 益田 隆司 Takahiro Shinagawa Kenji Kono Takashi Masuda 東京農工大学工学部情報コミュニケーション工学科 電気通信大学情報工学科:科学技術振興事業団さきがけ21 電気通信大学情報工学科 Department of Computer Information and Communication Sciences Faculty of Engineering Tokyo University of Agriculture & Technology Department of Computer Science University of Electro-Communications:PRESTO Japan Science and Technology Corporation Department of Computer Science University of Electro-Communications
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.107-113, 2004-03-25
参考文献数
11
被引用文献数
1

本論文では,UNIXシステムにおけるsetuidプログラムのバグを利用したroot権限の不正取得に対処するために,setuidプログラム中のroot権限で動作するコードを最小化する手法について述べる.この手法では,我々が提案している細粒度保護ドメインを利用することでsetuidプログラム中の最小限必要なコードのみをroot権限で動作させ,root権限が不要なコードに含まれるバグによるroot権限の不正取得を防止することができる.
著者
青田 直大 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2018-OS-142, no.3, pp.1-7, 2018-02-20

ファイルシステムにおけるテール ・ レイテンシ (tail latency) は,サービス品質を保証する上での障壁となることが知られている.現在のファイルシステムにおける最適化は,アクセス性能を平均的に向上させることを主目的としているため,アクセス状況によってはすべての最適化が無効となり,テール ・ レイテンシが増大する傾向にある.テール ・ レイテンシが増大する状況は,メタデータの管理手法,最適化の手法,アクセスパターンによって異なってくる.本研究では,btrfs,ext4,XFS,F2FS という 4 つのファイルシステムを対象に,テール ・ レイテンシが増大する要因を定量的に分析した結果を示す.
著者
古河 隆二 佐藤 彬 川原 健次郎 楠本 征夫 棟久 龍夫 長瀧 重信 石井 伸子 小路 敏彦 土屋 凉一 大津留 晶 松尾 彰 後藤 誠 原田 良策 田島 平一郎 中田 恵輔 河野 健次 室 豊吉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.753-758, 1985

3回の摘出術と2回の肝動脈塞栓術(TAE)により10年8カ月生存している肝細胞癌の1例を報告した.症例は62歳の女性,1971年肝生検で肝硬変と診断.1973年10月血中AFP上昇のため当科入院.HBs抗原,HBe抗原ともに陽性.血管造影で腫瘍膿染像をみとめ,摘出術施行,右葉後上区域の3.5cm大の肝癌を摘出した.非癌部は乙型肝硬変であった.6年10カ月後に肝癌の再発がみられ,やはり右葉後上区域にて2.0cm大の肝癌を摘出.さらに10カ月後に肝癌が出現,右葉後下区域より1.0cm大の肝癌を摘出した.組織学的には,3回ともtrabeculartypeであった.さらに1年8カ月後肝癌が出現,TAEを2回施行し外来通院中である.本例の肝癌発生様式は,多中心性と思われるが,血中AFPの厳重なfollowにより3回もの肝癌摘出術に成功し,10年以上の生存をみているため報告した.
著者
菊地 隆文 名取 廣 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2020-OS-150, no.15, pp.1-8, 2020-07-23

現代の情報サービスは,分散システムが基盤となっている.分散システムにおいて,大規模な障害が発生すると,サービスの停止につながる.したがって,分散システムの信頼性を向上させることは重要な課題である.分散システムにおける障害の発生要因の 1 つに,パケット処理のテイル・レイテンシがある.例えば,ハートビートの遅延は,リソースモニタリングの遅延や障害の誤検知を引き起こす.このようなパケットの遅延は,ソフトウェアが要因となり発生することが報告されている.高速なパケット処理を可能とする技術として,DPDK や XDP が挙げられるが,他の割込みによる遅延や既存のシステムへの統合などの課題が残る.本論文では,オペレーティングシステム内において,パケット処理のテイル・レイテンシを削減するシステムを提案する.ハードウェア割込みハンドラ内に,安全にユーザーコードをロードし,パケット処理を可能とすることで,テイル・レイテンシを引き起こす要因を回避する.本システムの有効性を示すため,I/O 負荷がある状態において,パケットのエコープログラムを用いてラウンドトリップタイムを測定した.その結果,DPDK や XDP といった既存の技術と比較して,パケット処理のテイル・レイテンシを削減できることを確認した.
著者
堀江光 浅原理人 山田浩史 河野健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014-OS-128, no.11, pp.1-10, 2014-02-27

近年,複数のデータセンタ間を跨いで提供されるクラウド環境が登場している.これは各データセンタで稼働する計算資源を集約することで,クラウド環境の特徴である伸縮性や可用性の向上を図っている.スケーラビリティの観点から,このような多数のサーバを用いた環境での利用に適したストレージのひとつとして分散型キーバリューストアがあるが,データセンタ間を結ぶ狭帯域・高遅延なネットワークにより性能が著しく低下する問題がある.この問題を解決するために,本研究では Local-first Data Rebuilding (LDR), Multi-Layered Distributed Hash Table (ML-DHT) という 2 つの手法を用いてキーバリューストアを構築する方法を提案する.LDR は保存データに冗長性を与えた上で分割することで,ストレージ使用量の増加を抑えつつデータセンタ間通信の量を軽減する.ML-DHT はデータセンタ間通信を最小限に抑えたルーティングにより,通信遅延を抑えたデータ探索を実現する.実験により提案手法が,代表的な DHT である Chord を用いた手法を用いた場合と比較し,データ探索のための通信遅延を約 74%軽減し,ストレージ使用量とデータセンタ間通信量のバランスを柔軟に設定できることを示した.
著者
迫田 賀章 青田 直大 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.17, pp.1-7, 2016-08-01

多量のデータを効率的に保持・管理・運用できるストレージシステムとして,キーバリューストア (KVS) が広く一般的に用いられている.本論文では,不揮発性 DIMM(NVDIMM) を用いた KVS のスループット向上手法を提案する.NVDIMM は,通常の DIMM に NAND Flash による待避領域を設けたものであり,不意の電源遮断等に対してもメモリの永続性を提供する.NVDIMM は DIMM と同等のレイテンシでアクセス可能である反面,その容量は DIMM のそれを超えることはできない.KVS は SNS などに用いられることが多く,読出し・書込みの比率が 1:1 となっており,書込みに対しても高いスループットが求められている.本論文では,書込みに対しても高いスループットを達成できる Log-Structured Merge-Tree(LSM-tree) に着目し,NVDIMM を用いて LSM-tree の性能向上を実現する.LSM-tree では,二次記憶上のデータ構造を再構成するコンパクションという処理が頻繁に行われるため,コンパクション時のアクセス遅延が増大する.LSM-tree の管理情報のみを NVDIMM 上に保存することで,コンパクション時の二次記憶へのアクセスを削減し,アクセス遅延の増大を抑える手法を示す.
著者
鈴木 正彦 荒井 千春 手塚 春樹 中澤 美科 田中 睦子 河野 健治 花輪 剛久 中島 新一郎
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.623-629, 2002-12-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
7

Regarding the management of blood preparations, since September 1995 the Ministry of Heath, Labour and Welfare has had to make and/or to keep documentary records such as the product name, date of dispensing, the patient's name and lot number and so on. At Yamanashi Medical University Hospital, to cope with deleterious accidents caused by blood preparations, we developed a new system for the management of blood preparations. This system consists of a printing system for confirmation labels for blood prescriptions and a computerized management system concerning the medication. In this study, the effect of this new management system on the rational use of blood preparations was evaluated. Compared with the former system, the time required to dispense blood preparations decreased from about 500 to 170 seconds per case. Furthermore, based on a questionnaire to medical doctors and/or nurses, it appeared that this system could reduce the time required to manage blood preparations and improve the rational use of injectable drugs.
著者
田中 睦子 河野 健治 花輪 剛久 鈴木 正彦 中島 新一郎
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.152-156, 2002-04-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
12

Di-2-ethylhexyl Phthalate (DEHP) was reported to dissolve from a polyvinyl chloride (PVC) administration tube during the infusion of an injection fluid containing a solvilizing agent, soybean oil or lecithin, etc. This paper describes the behavior of DEHP dissolution from PVC tubes during enteral tube feeding. The DEHP concentration was determined using HPLC. After the passage the ENSURE LIQUID® (EL) solution through the PVC tube, DEHP was dissolved in the EL solution. The EL solution is one type of enteral nutrition. This dissolution pattern was similar to that of injection fluid containing a solvilizing agent, in which the DEHP concentration in the EL solution increased linearly over time at first and thereafter reached a plateau. 170 μg of the DEHP was dissolved after 200mL of the EL solution had passed through the PVC administration set (the drip conditions were 25°C, 100mL/hr, tube length 115cm and inner diameter 0.3cm). The amount of DEHP which dissolved into the solution depended on the temperature (25-40°C), and no clear difference was observed between the PVC tubes (administration tube, feeding tube). In addition, the amount of DEHP that dissolved into the solution varied depending on the type of enteral nutrition.
著者
安野 直樹 石黒 健太 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2019-OS-145, no.15, pp.1-6, 2019-02-21

仮想化環境では物理 CPU の個数よりも多くの仮想 CPU を利用することが一般的になっている.ゲスト環境は仮想 CPU がプリエンプトされることは想定せずに実装されているため,仮想 CPU のプリエンプトにより仮想時間の不連続性が発生する.スピンロック中などに仮想時間がとぎれると Pause Loop Exit (PLE) というイベントが発生し,仮想マシンモニタに通知が行われる.現状の仮想化環境では PLE が多発することがあることが知られており,本研究では KVM を対象にその要因を定量的に分析する.その結果,1) プロセッサ間割込み (IPI) 処理におけるバリア同期,2) スピンロックの獲得待ち,3) タイムスタンプベースの待機処理.という 3 つのケースで PLE が多発していることを示す.さらに,KVM では PLE の多発を避けるように仮想 CPU スケジューリングを行っているものの,現状では十分に機能していないことを示す.
著者
窪田 貴文 鈴木 勇介 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2018-OS-143, no.9, pp.1-7, 2018-05-14

大規模なソフトウェアプロジェクトでは多くの開発者が修正 ・ 機能追加を行っており,膨大なファイルをコンパイルする機会が頻繁に生じている.例えば,オープンソースのブラウザエンジンである WebKit のビルドボットでは 31 日間のうち 26 日で 2000 秒超えるビルドが実行されており,その時のコンパイルしているファイル数は平均 1000 を超える.本研究では,まず,webkit を含むオープンソースの C/C++ プロジェクトのコンパイル時間を分析した結果を示す.その結果,コンパイラのフロントエンドにおいて冗長な処理が多く含まれていることがわかった.そこで本研究では,コンパイル結果を再利用することでコンパイラのフロントエンドの実行を高速化する手法を提案する.
著者
杉本 学 窪田 貴文 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2018-OS-143, no.14, pp.1-8, 2018-05-14

コンピュータシステムの信頼性を損なう要因の一つに,オペレーティングシステムのカーネルフェイラがある.実際,Linux には 700 以上のフォールトが存在し,半年間に 187,000 件以上の障害レポートが報告されている.カーネルにおけるフェイラでは,エラーがカーネル全体に伝播する場合は少なく,多くはカーネル内のプロセスコンテキストに閉じたプロセスローカルエラーとなっている.そして,フェイラの約 73 % はこのプロセスローカルエラーによるものである.本論文では,プロセスローカルエラーによるカーネルフェイラを検知しエラー状態を取り除くことで,カーネルの実行を継続する手法を提案する.プロセスローカルエラーでは,エラー状態がプロセスコンテキストに閉じているため,フェイラの発生したプロセスを強制終了することでカーネル内のエラー状態を回復させることができる.これにより,従来のカーネルではフェイラとなっていた場合でも,カーネルを停止させずに他のプロセスの実行を継続することができる.
著者
河野健二著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1959
著者
山崎 修平 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.12, pp.1-7, 2016-08-01

近年,仮想化環境は広く使用されるようになっている.複数のマシンを動かすためにはハードウェア等の物理資源を仮想化して使用する必要があり,ハイパーバイザ型の仮想化ではハイパーバイザが物理資源を管理する.この様な環境ではスピンロックを獲得することができない仮想 CPU (仮想 CPU) が長期間ビジーウェイトしたままになってしまう Lock-Holder Preemption (LHP) という問題が発生することが知られている.この様な問題に対して,いくつかのハードウェアでは一定時間以上のビジーウェイトした場合にはハイパーバイザに制御を移すような機能が追加されている.Intel ではこれを Pause Loop Exiting (PLE) という.しかし,PLE を利用するだけでは LHP の完全な対策になっておらず,PLE が頻発することによってオーバーヘッドが掛かることがある.本論文では PLE の発生状況と,それに対するスピンロックの獲得状況を分析し,より効率よく PLE を使用するための新しい仮想 CPU スケジューリングの方法について提案する.
著者
岩田 聡 河野 健二
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.221-234, 2010-09-17

ウェブアプリケーションの性能異常が重要な問題となりつつあり,性能異常の発生をいち早く検出し,被害が致命的になるのを防ぐことが求められている.しかし,性能指標の1つとして用いられるリクエストの処理時間は,正常時でも揺らぎが大きいため,その微妙な変化から性能異常の兆候を検出することは難しい.そこで,本論文では管理図という統計的手法を利用して,リクエストの処理時間に表れる微妙な変化から性能異常兆候の検出を試みる.その際,検出の精度向上や検出後の原因究明に有益な情報を得るために2つの工夫を行っている.1つは,監視対象の値として個々のリクエストの処理時間ではなく,一定時間ごとのリクエストの処理時間に関する4種類の統計値を用いている点である.もう1つはウェブアプリケーション全体ではなく,リクエストの種類ごとに管理図を作成する点である.実際にRUBiSというウェブアプリケーションに管理図を適用した結果,性能異常の兆候をつかむことができた.管理図によって検出されたいくつかの性能異常の兆候を詳細に調査した結果,(1)データベースへのインデックスの追加および,(2)性能パラメータの調整などを行うことによって,検出された性能異常が解決できることを確認した.Performance anomaly is becoming a serious problem in web applications. To prevent performance anomaly, it is useful to detect a symptom of performance anomaly to proactively take action against it. Unfortunately, a symptom of performance anomaly is a slight change in processing time in a web application. Thus it is difficult to detect the symptoms without being confused by natural fluctuations in processing time. In this paper, we apply control charts, a statistical method to detect deviations from the standard quality of products, to detecting symptoms of performance anomaly. In applying control charts, we devise some means to improve detection accuracy and gain useful information for debugging performance anomaly. To demonstrate the usefulness of control charts, we conducted case studies with RUBiS, an auction site modeled after ebay.com. Control charts detected some symptoms of performance anomaly: (1) the increase in processing time due to inappropriate design of database index, and (2) the increase in processing time due to improper setting of performance parameters. We confirmed that the detected anomalies can be fixed by modifying database design and performance parameters.
著者
佐久間 亮 吉村 剛 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2015-OS-135, no.16, pp.1-8, 2015-11-17

オペレーティングシステムカーネルには多くのバグが存在している.Windows や Linux にも多くのバグが存在しており,Microsoft では Windows Error Reporting (WER) と呼ばれるシステムを用いてクライアントからバグによって障害が起きた際の情報を集めている.集めたクラッシュログを WER システムを用いてバグごとに分類し,多くのユーザで発現するバグからデバッグを行っている.バグの分類にはコールスタックに注目して類似度を計算する事によって分類を行う ReBucket が知られている.しかし,Linux では ReBucket のようなバグの分類をおこなっていないため,適用できれば,開発者がクラッシュレポートを分類する負担を軽減することができる.しかし,Linux ではフレームポインタの最適化によりコールスタックが正確ではない場合があり,同じバグでも異なる情報を出力することがある.本研究は事前調査として ReBucket を Linux に適用した場合の効果について,定量的に評価をおこなった.調査の結果,f-measure が 0.75 と Microsoft 製品に比べ,低いことが分かった.そのため,我々は分類精度を向上するため,Linux カーネルのコールグラフを生成し,正確なコールトレースを取得した.正確なコールトレースを用いて分類した場合,f-measure が 0.75 と以前と変わらないことがわかった.そのため,我々はその結果を分析しリアルバグのコールトレースの性質についての考察をおこなった.
著者
落合 淳 嶋村 誠 河野 健二
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.8, pp.1-8, 2009-07-29

現在,ユーザの個人情報を不正に収集するスパイウェアを検出する手法としてTaint Analysis が注目されている.Taint Analysis では,パスワードなどのデータに taint と呼ばれる情報を付加し,taint 情報を持つデータが操作されたときに伝播規則に基づいて taint 情報を伝播する.そして,taint 情報を含むデータが外部に流出した場合にスパイウェアとして検出する.既存のスパイウェアは Taint Analysis を回避していない.そのため,Taint Analysis はスパイウェアが回避手法を用いた場合を考慮していない.本論文では,Taint Analysis の回避手法への耐性を向上させるため,既存の Taint Analysis に対する回避手法を示し,taint 情報の伝播規則の問題点を指摘する.回避手法を検証するため,一般的な伝播規則を用いた Taint Analysis を実装し実験を行った.実験の結果,回避コードを組み込むことで,Taint Analysis による検出ができなくなることを確認した.これにより,taint 情報の伝播規則を改良する必要があることを示した.<i>Taint analysis</i> is a promising approach to detecting malicious behavior of a leaking users' sensitive data. In taint analysis, we label data as <i>tainted</i> such as password. When a program processes tainted data, we propagate taint attribute in the program, based on a given taint propagation rule. If tainted data is output to untrusted sources, we can recognize that the computer system is compromised. Evasion techniques to taint analysis have not been explored adequately. This means that taint propagation rules are not studied as well. To make taint analysis more powerful, we study current tainting rules and point out the weakness of the rules by using our evasion techniques. We implemented a taint tracker with the well-used propagation rule. Our experimental results demonstrate that the well-used taint propagation rule does not detect the data leak of test programs including our evasion techniques.
著者
吉村 剛 山田 浩史 吉田 哲也 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.6, pp.1-8, 2011-04-06

コンピュータには高い信頼性が求められている.信頼性を脅かす要因としてオペレーティングシステムのカーネルフェイラがある.カーネルフェイラが発生すると,カーネル上で動作している全てのアプリケーションの動作異常につながり,サービス提供者やユーザに大きな損害を与えてしまう.カーネルフェイラの原因はソフトウェアやハードウェアにおけるバグであり,こうしたバグを開発段階で除去することは難しい.そのため,カーネルフェイラが運用時に発生したらできるだけ早くフェイラから復旧する方法が求められている.カーネルフェイラから素早く復旧する手法を検討するために,本研究はバグの発生からフェイラに至る過程で発生するエラー伝播を調査する.実用 OS のバグの調査結果に基づいて作成されたフォールトインジェクタを利用して,Linux カーネルに対してフォールトインジェクションを行い,その結果発生するエラー伝播を KDB によって追跡した.調査した結果,フォールトインジェクション 500 回に対してエラーを 150 回,エラー伝播を 18 回確認した.エラー伝播はプロセス間では発生しにくく,バグの挿入された関数内で収束する確率が非常に高いことを確認した.Kernel failures have a considerable impact on the overall availability of software systems. Even if the applications running on the operating system are highly available, a bug inside the kernel may result in a failure of the entire software stack. However, modern operating systems are far from bug-free. Guided by this fact, we need to recover from kernel failures as quickly as possible when they occur in a service operation. To explore the quick recovery mechanism, in this work, we investigate error propagation of kernel bugs in a commodity operating system kernel. In our investigation, we use a fault injector that is implemented based on a survey of commercial operating system bugs. We inject faults into Linux 2.6.18.8 with the injector, and trace error propagation with KDB. Our experimental result shows that 150 of 500 faults make the kernel error, which means that almost all the error is not propagated. Our result also shows that 18 of 150 errors are propagated, and the errors are not propagated from the faulted process to the other.
著者
入井 久 林 宏一 河野 健人 西垣 正勝 浅井 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題
巻号頁・発行日
vol.93, no.533, pp.9-16, 1994-03-25
被引用文献数
22

回路シミュレ-タ開発用支援ツ-ルASSIST2を開発する。ASSIST2では,ヤコビアン導出を回路分割に対応したスタンプ手法により行いコストを削減する.また,回路記述にアナログ素子を加えディジタル, アナログ混在回路への適用を可能にする.本稿では,ASSIST2のツ-ルの仕様等について述べるとともに,ASSIST2の環境下で混合モ-ド回路シミュレ-タSPLIT2.2を構築する.