著者
中村 祥吾 村井 源
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1P1GS1005, 2022 (Released:2022-07-11)

物語の自動生成では計量的な構造分析に基づく手法などが試みられてきた.しかし従来の対象は短い物語パターンのみであり,複数の起承転結のパターンを複合した複合的構造の分析とその応用は,ロールプレイングゲーム(RPG)のジャンルを除きほとんど行われておらず,また複合的構造の多様性や時系列的変化は明らかになっていない. 本研究では,高評価のRPGシリーズを対象として,物語構造分析と並行して物語中の複数の起承転結のパターンの連続・入れ子・並列関係のデータ化を行った.シリーズ間を比較した結果,ドラゴンクエストは、人物変化、世界設定開示など冒険型の展開が多く,ポケットモンスターは能力向上、障害撤去、戦いなど戦闘型の展開が多かった。一方でファイナルファンタジーは能力低下、逃亡、災難などネガティブイベントが多く対象年齢の高さがうかがわれた。 複合的構造の時系列的変化はシリーズ共通で序盤・中盤・終盤に3構造に分かれ,中盤では多段の入れ子や並列構造によって複雑かつ自由度の高い物語を提示する特徴が明らかになった.本研究の成果はユーザー層に合わせた長編作品の自動生成などの基盤として活用可能と考えられる.
著者
大賀 圭子 杉田 誉子 関 顕洋 本多 輝行 川口 源太
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
pp.26.e6, (Released:2021-07-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

医薬品の安全性監視活動は,すべての医薬品に対して実施する通常の医薬品安全性監視活動と,製品特異的な安全性検討事項に対して実施する追加の医薬品安全性監視活動からなる.通常の医薬品安全性監視活動の中においてシグナル管理は重要な部分であり,欧米では当局から規制およびガイダンス文書が発行されている.医薬品リスク管理計画の充実のため 2018年より活動を開始した日本医療研究開発機構(AMED)医薬品リスク管理計画(Risk Management Plan:RMP)研究班は,欧米のガイドラインおよび関連文献をレビューし,その考え方をまとめた.欧米のガイドラインにはシグナル管理の原則と手順に加えて,シグナル検出・評価の方法や実施において考慮すべき点,責任分担,当局内での活動結果の公表手順も記載されており,製薬企業を含めた公共に対する透明性が図られている.研究班では考え方をまとめるにあたって,まずは日本語のシグナル関連用語の定義一覧を作成した.また,これを基にシグナル検出からリスク特定に至る一連の活動を概念レベルで取りまとめるとともに,今後の日本のシグナル管理の在り方について考察した.
著者
高瀬 英希 祐源 英俊
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB) (ISSN:2188868X)
巻号頁・発行日
vol.2022-EMB-59, no.37, pp.1-8, 2022-03-03

分散型のロボットシステムにおけるエッジデバイスの応答性やリアルタイム性の向上および消費電力の削減などへの期待から,ROS 2 への組込み技術の導入に注目が集まっている.本研究の目的は,組込みデバイス向けの高効率な ROS 2 通信方式およびメモリ軽量な実行環境を確立することである.提案する実行環境である mROS 2 は,主に組込み向けの軽量プロトコルスタックおよびリアルタイム OS から構成される.最大の利点は,ホストデバイス上の ROS 2 ノードとの通信において,既存の環境では必須であった仲介の役割を担う Agent ノードを不要にできることである.本研究では,目的の実現に求められる設計要件を整理し,効率的な通信処理を実現するためのソフトウェア構成および動作フローを設計する.また,mROS 2 通信ライブラリとして提供する API は,汎用 OS 向けの ROS 2 のクライアントライブラリと互換性を保つようにする.提案手法を STM32 NUCLEO-F767ZI ボード上に実装し,本研究成果が通信性能に優れた分散ロボットシステムの実現に貢献することを示す.
著者
源実朝
出版者
北村四郎兵衛
巻号頁・発行日
1687
著者
源 邦彦
出版者
カルチュラル・スタディーズ学会
雑誌
年報カルチュラル・スタディーズ (ISSN:21879222)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.127-150, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
80

支配集団である白人による黒人(米国アフリカ系奴隷子孫)の母語(黒人言語)に対する科学的ディスコースの構築という観点から、黒人言語に関する研究の歴史は四つの時期―第一期:異常英語論、第二期:誤謬英語論、第三期:欠陥英語論、逸脱英語論、第四期:民族英語論、固有言語論―に分けて考えることができる。各時代は特定の社会変動と社会構造に一致し、黒人言語についての研究は、諸権利獲得と人種間平等への機運が黒人のあいだで高まり、白人の既得権益が脅かされるとパラダイムシフトする傾向にあったといえる。 本研究で扱う第三期の欠陥英語論は、東西冷戦、1954 年の公教育施設での人種隔離政策に違憲判決を下したブラウン裁判、1964 年以降の各種公民権法制定など大きな社会変動のなか、黒人による権利要求の高まり、白人による既得権益の死守などが相互作用した結果、基本的には白人側が一方的に構築した科学的パラダイムであると考える。この時代は、アフリカやアメリカの黒人社会など非白人地域に関する研究、すなわち欧米中心主義的な知識の構築に向けて、米政府や同国慈善財団が社会科学に莫大な投資を行う時期で、黒人言語の言語的病理性を説く欠陥英語論、その言語的正当性を説く逸脱英語論という、黒人言語の解釈を巡り一見相対立する立場をとる両分野に対して投資が行われていた。本稿では、利害一致論(Bell 1980, 2004)の観点から、既存社会構造の維持に貢献し、その一部は時代横断的にも見られる、欠陥英語論の五つの特徴―カラーブラインド・ディスコース、誤謬としての黒人言語、疾患としての黒人言語、排除されるべき黒人言語、逃避的相関分析―を分析する。第二次世界大戦までの生物学的決定論に立脚した近代的人種主義とはある部分では決別した欠陥英語論が、どのようなディスコースを構築し、どのように人種主義を合理化し、どのように既存の社会体制を維持しようとしていたのか、利害一致論の視座か ら論究する。