著者
田中 博美
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

良質な界面を有する強磁性体/高温超伝導体の接合作製についての基礎技術開発を行った。具体的にはLa_<0.85>Ba_<0.15>MnO_3/YBa_2Cu_3O_y接合をパルスレーザー堆積法により作製し、得られた接合の界面ナノ領域における化学結合・電子状態を明らかにする為、硬X線励起光電子分光を用いたdepthプロファイルを行った。その結果、YBa_2Cu_3O_yにおいて観測されるCu-2p内殻光電子スペクトルのサテライト強度が接合界面近傍において著しく減少していることが分かった。又、一方でLa_<0.良質な界面を有する強磁性体/高温超伝導体の接合作製についての基礎技術開発を行った。具体的にはLa_<0.85>Ba_<0.15>MnO_3の構成元素であるMn及びBaの内殻光電子スペクトルも接合界面近傍においてケミカルシフトを起こし、それに伴いブロードニングが生じていることが分かった。これは接合界面近傍において異なる価数状態が混在し、キャリア状態が変化していることを示唆する。詳細な解析の結果、La_<0.85>Ba_<0.15>MnO_3/YBa_2Cu_3O_yの接合界面にはCuの価数が大きく低下した非超伝導層、及びスピン偏極率が低下している強磁性体層が存在していることが明らかとなった。この結果から、非超伝導層や低スピン偏極率層が接合界面に存在しない良質な接合を作製する為には、成膜時の作製条件等を工夫する必要があることが分かった。
著者
松本 凌 西澤 侑吾 片岡 範行 田中 博美 吉川 英樹 田沼 繁夫 吉原 一紘
出版者
一般社団法人 表面分析研究会
雑誌
Journal of Surface Analysis (ISSN:13411756)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.155-167, 2016 (Released:2016-05-31)
参考文献数
15
被引用文献数
9 9

XPSスペクトルのバックグラウンド推定の方法は任意性が高く,バックグラウンドの形状によってピークの強度が変わるため定量分析の結果に大きく影響する.特に,最も多用されているiterative Shirley法では,指定されたXPSスペクトルの始点と終点でのデータ点の強度に大きく依存してバックグラウンド形状が変わる.本研究では,この依存性を低減する為,バックグラウンド推定をピークフィッティング中で行う動的Shirley法に着目し,これをCOMPROに組み込んで銅酸化物超伝導体のCu 2pスペクトルやSiO2薄膜のSi 2pスペクトルに対して適用した.その結果,バックグラウンドの端点位置やピークの関数型を変化させてもバックグラウンドの形状やピーク面積について変動の少ない安定した解が得られることが明らかとなった.
著者
保立 道久 林 譲 山家 浩樹 原田 正俊 田中 博美 末柄 豊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

古文書学的な調査が相対的に遅れていた禅宗寺院文書について、寺院の歴史という観点からの古文書学研究と、古文書料紙の自然科学的研究の二つの要素をもって研究をすすめた。報告書は、第一部を大徳寺・鹿王院等の禅院の歴史、第二部を大徳寺文書を中心とした古文書学的研究、第三部を古文書料紙の物理的研究としてまとめた。また、本年開催の国際シンポジウム「禅宗史研究の諸課題と古文書」では、欧米の代表的な禅宗史研究者2名を交えた有益な議論を組織することができた。これらを通じ、当初の目的であった室町期国家の禅宗国家というべき様相の解明について、充実した研究を実現しえた。また、大徳寺の開山宗法妙超・一世徹翁義亨についても必要な研究をおさめることができた。かかるプランを構想できたのは、京都大徳寺の御理解によって文書原本を史料編纂所に借用し、詳細な調査が可能となったためである。大徳寺文書は、中世の禅宗寺院文書の中でも量質ともに一級のものであり、本調査をも条件として、本年3月に重要文化財に指定されたことも報告しておきたい。その調査の成果が、同文書の全詳細目録(報告書付録、590頁)であり、紙質調査を含む詳細な原本調査カードである。また、調査に際し、東京大学農学部磯貝明教授・江前敏晴助教授の協力をえて、200枚をこえる透過光画像を素材としてフーリエ変換画像解析による簀目本数計算を行ったこと、繊維顕微鏡画像を採取し澱粉など不純物の定量分析の方法を検討できたこと、それらにもとづく料紙分類論を展開できたことなども特筆したい。詳細は報告書を参照願いたいが、上記目録不掲載の情報についてもデータベースの形式で記録を残したので、可及的速やかに学界に提供するようにしたいと考えている(なお、当初の予定通り、『鹿王院文書』、『蔭涼軒日録』(2冊分)のフルテキストデータベースを作成したことも附言する)。
著者
黒田 日出男 林 譲 久留島 典子 田中 博美 宮崎 勝美 保立 道久 鈴木 圭吾 加藤 秀幸
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1992

本研究は,日本史の主要な画像史料の一つである肖像画に関する基礎的な調査と研究を行ってきた。その成果は、以下の通りである。第一点。東京大学史料編纂所は、明治時代以来、肖像画を模本の作成という手段によって蒐集してきた。現在までの蒐集点数は約900点に及んでおり,それらの紹介は急務であった。本研究では,全点を4×5判白黒フィルムで撮影し,四切りの大きさに引き伸したうえで、それらについての基礎的調査を行い、新たな目録を作成した。これによって,史料編纂所の所蔵する肖像画模本は多くの研究者の関心を集めよう。第二点。この引伸写真を光ファイリング・システムに取り込んで,簡単なデータベースとし,身分・職業・性別・老若・時代によって検索できるようにした。これによって,史料編纂所々蔵の肖像画模本から,日本の肖像画の特徴の幾つかを把握できるであろう。第三点。本研究では,各種の日本史叙述や自治体史叙述を悉皆的に点検し、肖像画情報に関する調査カードを合計約27000枚作成することができた。予算の制約によって、そのデータベース化までは実現できなかったが、このカードを検索することによって、日本史叙述における肖像画情報の全体を把握することができる。そして第四点。肖像画の個別研究によって、幾つかの新説を提出することができた。たとえば,文化庁保管の「守屋家本騎馬武者像」の像主名についてであり,高師直像とする通説に対し,新たに師直の子息師詮像であるとの新説を提出した。肖像画研究の方法論についても,幾つかのシンポジウムや研究会において発表し,今後の研究の発展のための基本的な論点を提出することができた。また,1996年3月には,史料編纂所主催で「肖像画と歴史学」と題するシンポジウムを開催し,当日は257名もの出席者と討論を行うことができた。