著者
田崎 耕市 猪俣 道也 田崎 和江
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.413-416, 1980
被引用文献数
3 9

金沢大学大学院自然科学研究科
著者
田崎 和江 赤坂 正秀 石田 秀樹 三瓶 良和 石賀 裕明
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

汚染された環境を浄化する方法として,物理学的に取り除く方法,化学反応により無害化する方法,そしてバクテリアなどの生物機能を活用して回復する方法がある.特に,生物機能を利用して浄化するバイオレメデイエーションは,浄化に長期間を要する汚染に対して二次汚染のない有効な方法である.単純な組織構造を有しているバクテリアは,汚染環境から有害物質を細胞内に取り込み,固定して,各種の生体鉱物を細胞内外に生成する働きがある.この生体鉱物化作用のメカニズムを解明し,汚染された環境の浄化に役立てることが本研究の目的であった.本研究補助金で購入した位相差偏光顕微鏡や低真空走査型電子顕微鏡を用いて,地球上の様々な環境(鉱山,鉱床,温泉,間欠泉,汚染土壌,湖沼堆積物,風化花崗岩,活性汚泥など)からFe,Mn,Zn,Cu,U,Cdなどの元素を持つバクテリアが細胞内に生体鉱物を生成している例を数多く発見した.特に,室内実験からMnやFe,イオンがバクテリアの細胞に取り込まれ,マンガンノジュールを形成する過程を透過型電子顕微鏡観察により明らかにすることができた.また,XRD,XRF,EDX,FT‐IR,ESCAなどの方法も用い,この生体鉱物化作用を総合的にとらえそのメカニズムを明かにした.3年間の研究成果は,国内および国際学会で発表し,論文も学術誌に多数公表した.
著者
田崎 和江 長谷川 香織 松本 和也
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.87-104, 2002-03-25

かつての鉱山活動は重金属を外界に排出し,今日でも水質や土壌汚染の原因となっている.岐阜県神岡町にある大規模なZn-Pb鉱山の一つである神岡鉱山は,神通川の重金属汚染源となってきた.Cd,Pb,ZnそしてFeなどの重金属が高原川-神通川水系に未処理のまま廃棄され,下流域の住民の健康に影響を与えた.重金属の中でも特にCdは,イタイイタイ病の病原物質と見なされた.Cd汚染問題は未だに解決されていない.消石灰を投入し,中和凝集処理された廃滓の沈殿池が神岡鉱山にいくつか存在する.廃滓や廃棄場から排出された汚染水は,神通川の上流の高原川に流れ込んでいる.本研究では,重金属を含む堆積物の特性を明らかにするため,高原川-神通川水系にある五つのダムの堆積物を採取した.ダム堆積物の鉱物的・化学的組成を明らかにするため,それぞれの試料についてXRD,ED-XRFによる分析を行った.その結果,神岡鉱山の上流域に位置する浅井田ダムの堆積物はCd,粘土鉱物そして有機物が少なく,神岡鉱山の下流域に位置する新猪谷ダム,神通川第一,第二,第三ダムにおいては,汚泥,スメクタイトそしてZn,Cdのような重金属が多く含まれていることが明らかになった.また,本研究では,水中の重金属の浄化能力を見積もるための実験を行った.その結果,バクテリアを使ったバイオレメディエーションは重金属の固定に効果的であることを示した.室内実験系においてバイオフロック中の糸状菌は,一週間で細胞壁の表面にPb,Zn,Cdを選択的に濃集した.バイオレメディエーションの能力を持つバクテリアは,鉱山地域における下流のダム堆積物中でも重金属を固定する重要な役割を演じている.
著者
田崎 和江 沢田 順弘 鈴木 徳行 飯泉 滋 高須 晃 石賀 裕明
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

ODPの伊豆・小笠原弧の深海底掘削が行なわれた後,昨年度は,船上での成果を“Proceedings of the Ocean Drilling Program(Vol.126)"にまとめ公表した。それに次いで,今年度は,各研究者が専門的な立場で,より詳細な陸上での成果を“Scientific Volume"にまとめた。さらに,日本人の研究成果は,地学雑誌,月刊「海洋」,月刊「地球」に特集号を組み,日本語でも成果を発表した。研究代表者の田崎は,これらの報告書,雑誌にすべて論文を投稿し,当補助金により購入した電子顕微鏡をフルに活用し,3年間で40編の成果を得ることができた。伊豆・小笠原弧の深海底堆積物のうち,特に,火山砂,軽石に注目しXRD,SEM,TEM,FTーIR,マイクロESCA等の機器類により,鉱物組成を検討した。その結果,火山性堆積物の中に,有機物の存在を認めた。スメクタイト,沸石などの熱水変質鉱物の中に,グロ-コナイトやセラドナイトが共存し,その化学組成は,CH,CO,CーCCooHの化学結合を持つことが明らかとなった。今まで,グロ-コナイトの生因の一つに有機物が関与するという説があったが,今回の研究結果で,それが証明された。さらに特筆することは,この火山性堆積物の中に,多量のバクテリア化石を,電子顕微鏡で明らかにしたことである。200℃前後の熱水の循環があり,火山ガラスや造岩鉱物が変質する中にバクテリアが存在し,化石化して保存されていた事実は,深海底にブラックスモ-カ-が存在していたことを示唆している。さらに,グロ-コナイトの生成に,バクテリアが関与していることも暗示している。深海底における物質循環において,有機と無機の境界は不明りょうであり,両者の相互作用により有機炭素からグラファイトが生成される過程も,電子顕微鏡により追跡することができた。これらの研究成果は,国際誌chemical Greologyに投稿した。
著者
田崎 和江
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.395-412, 1994-07-25
被引用文献数
2

地球上に広く分布する微細な炭素粒子は,環境の変化に最も敏感に対応する物質の一つである.その炭素の起源,微細形態,結晶成長の過程,化学結合,分布などを明かにし,炭素物質を評価するうえで,電子線を用いた手法が有効である.ここには,様々な炭素物質について,その目的に応じた有効な分析方法の実例を示した.走査型(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)による観察は,炭素物質の微細形態,結晶成長過程,結晶度を知るのに適している.バクテリアなどを含む有機物が濃集した非晶質の炭素は,続成作用により,高結晶度のグラファイトヘと変化する.初期の炭素物質は,球粒,管,フレーク,薄膜,シート,リボン状などさまざまな形態をとり,最も成長した結晶であるグラファイトは,六角板状のバウムクーヘン状構造をとる.炭素の分布を知るには,エレクトロンマイクロプローブ(EPMA)やオージェ(Auger)による元素濃度分布図が有効である.オージェは,導電性物質の蒸着を必要としないので,岩石中のカーボンの存在を薄片の状態で検出することが可能である.高い導電性を持つことで知られているワイオミング産のSybille Monzosyeniteに,オージェ分析を適用し,鉱物境界に高濃度の炭素が存在することが,高導電性の要因の一つであることを明かにした.また,オージェは導電性物質の蒸着なしで,オングストロームのオーダの最表面分析が可能である.フーリエ赤外線分析(FT-IR)は,炭素の化学結合や水分子との結合状態を知ることができる.グラファイトは,その結晶度の違いによりOHやC-C結合の吸収の程度が異なる例として,片麻岩中の低結晶度の炭素から水分が抜け,次に酸素が抜けてグラファイトヘと変化するプロセスを示した.また,電子線走査化学分析器(ESCA)による炭素(1S)の高分解能分析は,様々な炭素結合の種類とその量比を知るのに有効である.この方法により,深海底堆積物中の海緑石に含まれる炭素が,COO,C-O,C-Cそしてグラファイトといった異なる炭素結合により構成されていることを明かにした.この結果は,海緑石が有機物起源であり,その後,無機化すること,有機炭素と無機炭素の境界は明瞭ではないことなどを示している.さらに,重イオン加速器(RILAC)は,炭素が表面吸着しているか,または結晶構造に組み込まれているかの判断に有効である.例えば都市ガスのすすの分析は,金属やSiO_2といった標準試料と比べ,炭素が結晶性の構造を待つことを示した.同時に,この方法は,酸素と水素の存在状態の差異も明瞭に表わすことができる.重イオン加速器は,大気からもたらされた汚染物質の炭素と物質本来の結晶構造中の炭素原子との区別に有効である.