著者
川西 諭 田村 輝之 功刀 祐之
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.152-156, 2012 (Released:2013-05-29)
参考文献数
2

2011年と2012年の2月に行った個人投資家を対象とするインターネットアンケート調査から,個人投資家の投資スタイルによる投資行動とパフォーマンスの違いを多面的に分析した.その結果,(1) 明確な投資スタイルを持つ投資家は大きく2つのグループ(「長期パッシブ分散派」と「短期アクティブ集中派」)に分かれること,(2) 2つのグループを比較すると,長期パッシブ分散派の方が相対的に,投資家間で運用パフォーマンスの差が小さく,投資満足度,幸福感が高く,ストレスや不安が少なく,資産の形成に成功していることが確かめられた.
著者
川西 諭 田村 輝之
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.87-104, 2019-04-16 (Released:2019-04-15)
参考文献数
51

本稿では,グリット(Grit)とマインドセット(Mindset)という2つの心理学概念に関する研究を紹介し,労働生産性向上をめぐる議論への含意,および行動経済学研究への応用の可能性について議論する.グリットとは,長期的な目標達成に向かって「やり抜く力」であり,本稿で紹介するマインドセット研究は「固定思考」と「成長思考」という2つの対極をなす思考を問題とする.既存のグリット研究とマインドセット研究はいずれも私たちの能力のうち,努力によって後天的に獲得される資質が常識的に考えられているよりも重要であること,そして資質の獲得が私たちの心理や思考によって強く影響を受けることを指摘している.これらの研究に照らすと,労働生産性を低水準にしている原因として,人々の考え方が,先天的資質を重視する固定思考に偏ってしまっている認知バイアスが浮かび上がる.
著者
川西 諭 田村 輝之 孫 明超
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.10, no.Special_issue, pp.S29-S32, 2017 (Released:2018-04-12)
参考文献数
9

本研究は,信頼関係やネットワークを包含する「ソーシャル・キャピタル」の概念を用いながら,小さい組織や団体におけるコミュニティの状態を測定する方法の開発を試みる.日本国内の1600以上のNPO団体に所属するメンバーを対象に,社会心理学における質問紙調査法によって,所属団体に対する意識を調査した.回答結果を因子分析した結果,コミュニティの状態を測るうえで重要な意識として3つの因子,「理念共感と貢献意欲」,「自己有用感」,「居心地の良さ」が抽出された.これら3つの因子を説明変数とした回帰分析によって,これらの因子は「コミュニティへの愛着」,「主観的幸福感」,「主観的健康感」に,統計学的に有意なプラスの影響を与えることが確認された.この研究を応用することで,目には見えないNPO団体内の課題を可視化することが可能になり,より効果的なNPO団体のマネジメントが可能になるものと期待される.
著者
赤林 英夫 妹尾 渉 敷島 千鶴 星野 崇宏 野崎 華世 湯川 志保 中村 亮介 直井 道生 佐野 晋平 山下 絢 田村 輝之 繁桝 算男 小林 雅之 大垣 昌夫 稲葉 昭英 竹ノ下 弘久 藤澤 啓子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本研究では、経済格差と教育格差の因果関係に関するエビデンスを発見するために、親子を対象とした質の高い長期データ基盤を構築し、実証研究と実験研究を実施した。さらに、経済格差と教育格差に関する国際比較研究を実施した。具体的には、テスト理論により等化された学力データを活用し、学力格差と経済格差の相関の国際比較、親の価値観が子どもの非認知能力に与える影響の日米比較の実験研究、子ども手当が親の教育支出や子どもの学力に与える影響に関する因果分析等を実施した。
著者
亀坂 安紀子 田村 輝之
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.54-56, 2011 (Released:2012-03-29)
参考文献数
8

東日本大震災発生以前には,景気回復の期待から上昇基調にあった株価は,震災後一旦急落し,その後数日のうちにある程度回復した.近年,日本の株式市場で大きな取引シェアを占めているのは海外の投資家であるが,震災直後も,海外の投資家は市場で活発に取引を行っていた.震災前後に日本の株式をネットで購入していたのは,海外の投資家だけであったが,この間主要な売り手となっていたのは,東証1部では証券会社(証券自己売買)であり,東証2部および東証マザーズでは,個人投資家であった.海外の投資家の内訳をみると,震災が発生した3月には,北米,アジアの投資家がネットの買い手となっていた一方,欧州の投資家はネットの売り手となっていた.震災前後における市場別(3市場1・2部等の合計,東証1部,東証2部,東証マザーズ)のVAR分析においても,3市場1・2部等,東証1部のデータを使用した場合は,証券会社や海外の投資家の売買が市場に相対的に大きな影響を与えており,東証2部,東証マザーズの場合は,個人投資家や海外の投資家の売買が大きな影響を与えていた.
著者
田村 輝之 江口 尚孝
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.97-100, 2011 (Released:2012-03-29)
参考文献数
9

本稿では,日本の労働市場におけるオイルショック以前,オイルショック期,バブル期,就職氷河期における職務満足度に対する特有の効果(コーホート効果)が存在しているか否かについて統計的に検証を行う.学卒時点における労働市場の需給状況が,その後の賃金や離職に長期的な影響を及ぼすことは,「世代効果」として多くの研究の蓄積が行われている.本稿では,これらの先行研究を踏まえた上で,初職の参入時期が調査時点における職務満足度にどのような影響を及ぼすかについて検討する.
著者
赤林 英夫 敷島 千鶴 島田 夏美 竹ノ下 弘久 加藤 承彦 井深 陽子 稲葉 昭英 野崎 華世 川本 哲也 中村 亮介 直井 道生 佐野 晋平 田村 輝之 栗野 盛光
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2021-07-05

新型コロナパンデミックは、子供の教育格差研究に対し、取り組むべき課題と研究手法との双方に、変革の必要性を迫っている。社会のオンライン化に伴い、家庭環境が子供に与える影響が強まることが懸念されている。また、教育格差拡大を防ぐために、世界各国で、新たな政策的対応の必要性が議論されている。そこで、本研究では、全国の子供を対象とし、オンラインにより、ポストコロナの新たな課題に対応した調査や実験による研究手法を考案する。それらを通じ、コロナ禍が子供の学力や日常生活に及ぼした影響を厳密に分析し、国際比較も行うことで、コロナ後の研究と政策のあり方を提示する。