著者
阿部 博 敷田 幹文 篠田 陽一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.1006-1015, 2018-03-15

大規模なイベントネットワークではネットワーク管理手法の1つとしてsyslogを用いた運用監視が行われる.syslogメッセージに含まれるキーワード検知や閾値による異常検知などネットワークの異常が運用者に通知される.マルチベンダ機器によって構築される特殊なイベントネットワークでは,ログの意味解析やキーワードによる異常検知が行えない環境下であることが多い.本論文ではイベントネットワークで収集されるsyslogの総量による分析を行い異常を検知する手法を提案する.株式取引で用いられるボリンジャーバンドアルゴリズムを利用し,Interop Tokyo 2016で構築されたShowNetで収集されたsyslogの実データを用いて統計学的手法において軽量な計算による異常検出を行い,ボリンジャーバンドアルゴリズムの有効性を評価する.
著者
佐藤 円 佐藤理史 篠田 陽一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.2371-2379, 1995-10-15
参考文献数
6
被引用文献数
40

現在、電子ニュースを通じて多くの情報が流通し、多くの人々がその情報を利用している。この電子ニュースは、新しいマスメデイアであり、従来のテキスト情報マスメデイアにはない、優れた特徴を持っている。しかしながら、現在のニュースリーダは、その特徴や利用者の要求に合致した、適切な機能を提供しておらず、読者にとっては、必ずしも利用しやすい情報メディアとはなっていない。我々は、電子ニュースを利用しやすい情報メデイアにするためには、そのダイジェストを提供することが不可欠であると考える。ダイジェストとは、元になる情報をコンパクトにまとめ編集したものであり、情報全体の俯瞰やエッセンスの把握、情報の取捨選択の際に、優秀なナビゲータとして機能する。本研究では、電子ニュースに対して、このようなダイジェストを自動生成することを提案し、その一つのプロトタイプとして、会告記事用ニュースグループfj.meetingsダイジェストを自動生成する方法を示す。ダイジェストの自動生成を実現する中心的な技術は、サマリーの自動摘出技術であり、会告記事にみられるスタイル上の特徴、言語表現バターンを利用することにより、実用に十分な精度でサマリーを抽出できることを示す。本方武で自動生成されたダイジェストは、WWWのクライアントプログラムで読むことができる。
著者
栗林 健太郎 三宅 悠介 力武 健次 篠田 陽一
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.48-55, 2021-11-18

物理空間上のセンサーやアクチュエーター等のデバイスとサイバー空間上の計算処理とを架橋する IoT システムにおいては,物理空間とサイバー空間との間における双方向のデータフローの構成が重要な課題となる.デバイス層,エッジ層,クラウド層の 3 層からなる IoT システムのアーキテクチャーモデルにおいては,設計・実装における構造的な複雑さが課題となる.その要因として(1)プログラミング言語や通信プロトコルの選択肢が多様であること,(2)データの取得方式が多様かつデータフローが双方向性を持つ,(3)IoT システムの全体を通じたデータフローの見通しが悪くなることの 3 つがある.本研究は,課題のそれぞれに対して(1)3 層を同一のプログラミング言語と通信プロトコルを用いて統合的に設計・実装できる手法,(2)push,pull,demand 方式のいずれにも対応し使い分けられる基盤,(3)3 層からなるデータフローを一望のもとに把握できる記法を提案する.提案のそれぞれに対して(1)提案手法を用いて 3 層からなる IoT システムを実際に統合的に設計・実装できること,(2)提案手法を用いるとデータの取得方式のいずれにも容易に対応できること,(3)提案する記法がデータフロー全体を十分に表現できることを評価することで,提案手法の有効性を示す.
著者
真壁 徹 篠田 陽一
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.17-24, 2020-11-26

IT 基盤の複雑化が,専門性を持つ技術者への依存を高めている.そこで手続きを逐一指示せずとも,あるべき姿を定義すれば基盤をその通りに設定,維持できる宣言的構成管理が注目されている.Kubernetes は宣言的構成管理が従来抱えていた課題を解決し,実用化した.STPA (System-Theoretic Accident Model and Processes) によりその構造を分析し,宣言的構成管理が広く分散コンピューティング基盤に適用できるコンセプトとなるか,その論点を導く.
著者
高野 祐輝 井上 朋哉 知念 賢一 篠田 陽一
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.4_58-4_76, 2010-10-26 (Released:2010-12-26)

分散ハッシュテーブル(DHT)はPeer-to-Peer(P2P)ネットワークを構築する手法の1つであり,スケーラビリティの高いKey-Value型の検索を可能とする.しかしながら,既存のDHTアルゴリズムはNATの問題を考慮しておらず,現実世界で用いるには不十分である.NAT問題は非常に深刻であり,P2Pネットワークアプリケーションを設計・実装する際に最も考慮しなければならない点の1つであるが,既存DHTアルゴリズム・実装のほとんどは,NAT問題について十分に考慮しているとは言い難い.そこで我々は,NATが介在する環境においても安定して利用することの出来るDHTの設計と,実証ライブラリであるlibcageの実装を行った.本論文では,その設計と実装について述べ,評価を行う.なお,libcageのソースコードはインターネット上にBSDライセンスで公開しているため,誰でも自由に利用・改変が可能である.
著者
栗林 健太郎 三宅 悠介 力武 健次 篠田 陽一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.635-649, 2023-03-15

物理空間上のセンサやアクチュエータ等のデバイスとサイバー空間上の計算処理とを架橋するIoTシステムにおいては,双方向のデータフローの構成が重要な課題となる.本研究は,階層的なアーキテクチャからなるIoTシステム全体を,単一のプログラミング言語で統合的に構築することを可能とするデータフロー基盤を提案する.その実現のために解決すべき課題として,(1)IoTシステム全体を構築可能なプログラミング言語としてどの言語を選択するか,(2)選択したプログラミング言語によって多様かつ双方向性を持つデータ取得方式に対応できるか,(3)IoTシステムの階層的なアーキテクチャにおけるデータフローを見通し良く扱えるか,の3点を示した.各課題に対して,(1)各層の実装に用いるプログラミング言語としてElixirを選択する,(2)Elixirを用いて多様かつ双方向性を持つデータ取得方式に対応できる基盤としてPratipadを提案する,(3)Pratipadにおいて階層的なアーキテクチャにおけるデータフローを一望のもとに把握できる記法を提供する,という3点の提案手法により解決を図った.提案手法について,有効性および適用可能性について評価した.その結果,提案手法が本研究の目的を実現するとともに,実用的な機能および規模を持つIoTシステムの構築に適用可能であることを示した.
著者
恒岡 弥生 富田 幸一朗 高橋 勉 篠田 陽 藤原 泰之
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】メタロチオネイン(MT)はカドミウム(Cd)や亜鉛などの重金属の曝露により肝臓をはじめとする様々な組織で誘導合成されることが知られているが、血管周囲脂肪組織(PVAT)におけるMT誘導合成に関する知見はない。そこで今回、PVATのMT発現誘導に対するCdの影響を検討し、PVATのMT発現誘導における基礎的知見を得ることを目的とした。【方法】8週齢雄性C57BL/6JマウスにCd(1 mg/kg)を腹腔内投与し、3時間後に肝臓およびPVAT付き胸部大動脈を摘出した。さらに胸部大動脈は内膜画分、中膜と外膜画分、PVAT画分の3つの画分に分けた後、それぞれの組織からトータルRNAを抽出し、各遺伝子のmRNA量をリアルタイムRT-PCR法により測定した。【結果・考察】Cd投与3時間後の肝臓におけるMt1 および Mt2 mRNA量は、対照群に比べて約10倍と5倍にそれぞれ有意に増加した。このとき、胸部大動脈から分画した内膜画分ではMt1および Mt2 mRNA量が対照群と比較してそれぞれ約15倍と8倍、中膜と外膜画分ではMt1 mRNA量が約5倍、さらにPVAT画分ではMt1および Mt2 mRNA量がそれぞれ約5倍と4倍に有意に増加していた。以上の結果から、Cdは肝臓と同様に胸部大動脈の内膜組織並びに中膜と外膜組織、加えてPVATにおいても曝露後速やかにMTの発現を誘導することが明らかとなった。MTは有害金属の解毒作用や活性酸素種の消去作用などを示す生体防御因子の一つであることから、PVATをはじめとする血管組織でのMT合成誘導は、Cdによる血管毒性発現の防御に寄与している可能性が考えられる。
著者
馬場 始三 宇夫陽次朗 山口 英 篠田 陽一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.63, pp.79-84, 1996-07-12
参考文献数
3

本稿では、ネットワーク中を移動するユーザの利便性や電子メールの到達性を向上させることを目的としてユービキタスな電子メールサービスを提案する。ネットワークを通じてメールサービス自体を移動する技術及び電子メールに限定したネットワークへのアクセス手段の導入によって、移動ユーザに適応した電子メールサービスを提供可能である。そのための要素技術として、メールリダイレクション機構とWWMB (orld Wide Mail Bo)を提案する。メールリダイレクション機構は、電子メールの経路の動的変更により効率的な配送を目的とする。WWMBは、ネットワーク分散型の仮想メールボックスで、ネットワークをリージョンという管理領域に分け、その内部のメールストレージ同士の協調と、リージョン同士の協調でユーザの移動に対応する。This paper describes the concept of new ubiquitous E-mail service and the technologies for realizing it. Ubiquitous E-mail service can support users to read their E-mail through any acccss point on Internet, and improvement reachability of E-mail service. This service is realized by introducing two technologies. One make it possible to transfer E-mail service its own somewhere through the network. Another technology present the special access method restricted to make use of E-mail service. The former is called "Mail redirection mechanism", which dynamically translate a distribution path of a E-mail. The latter is called "World Wide Mail Box". This consists of pseudo mail boxes distributed to the network. We introduce the concept of regions to manage the distributed mail boxes. There are some mail strages in one region. The mail storages exchange information with each other, and regions too. By doing so, WWMB provide the functions mentioned above.
著者
篠田 陽理子 矢ヶ部 仁之 曲谷 一成 簗島 謙次 佐藤 令介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.95, no.291, pp.15-22, 1995-10-13
参考文献数
8
被引用文献数
7

我々は視覚障害者が他者の介助を受けることなく、自律的に目的地に到達することを支援する自動ナビゲーションシステムの開発を目的としている。このシステムでは被験者のいる位置を正確に求める必要がある。本稿では、このために開発したDGPS(Differential Global Positioning System)、万歩計、地磁気センサ等よりなる位置推定手法についての報告を行う。
著者
阿部 博 篠田 陽一
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.73-80, 2017-11-30

ネットワークのトラブルシューティングやセキュリティインシデントに対応するため,ネットワーク管理者はトラブルの原因を特定するためにサーバやネットワーク,セキュリティ機器から出力されるログを蓄積し,検索をすることがある.大規模なネットワークでは,出力されるログの量も多く蓄積 ・ 検索システムの規模も巨大化する.大量に出力される機器のログを高速に蓄積し,高速に検索する先行研究としてHayabusa を実装した.本研究では,Hayabusa の検索性能をスケールアウト可能なシンプルな分散システムの設計を行い評価した.結果として,スタンドアロン環境で動作する Hayabusa の約 78 倍高速な分散処理システムを実装し,144 億レコードの syslog メッセージを約 6 秒でフルスキャンし全文検索可能なスケールアウトするシステムを実現した.
著者
三輪 信介 篠田 陽一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.286-295, 1999-01-15
参考文献数
22

本論文では、電子決済システムに対する新たな脅威を指摘し、この脅威に対応可能な電子決済システムを提案する。安全なクレジットカード決済システム、電子現金、電子小切手など様々な電子決済システムが存在しており、これらのシステムでは、正しい支払を行うためには、支払に関する情報を正しい相手に伝達しなければならない。しかし、オープンネットワークシステム上では正しい相手をいつも指名できるとは限らない。そのため、相手を指名するとき(すなわち双方向認証が行われる前)に、不正者は自分を正しい受取人として指名させるための嘘の情報を与えることができ、正しい支払を受けることができる。このような誤認は双方向認証を行う前に引き起こされるために、双方向認証によって正しい相手を認証する既存の電子決済システムでは防ぐことはできない。この電子決済システムに対する新たな脅威を「なりかわり」と呼ぶ。本論文では、なりかわりの特性を明らかにし、この脅威に対抗するための電子決済システムへの2つの改善を提案するとともに、この改善を実装する。This paper proposes a "Pretense Resistant" Electronic Settlement System. Various Electronic Settlement Systems such as secure credit card payment systems, electronic caches and electronic checks do exist, and in order for a payment to be done correctly, these systems must communicate correct information about the payment with correct peers. However, on open network systems, the correct peer may not always be designated. That is, when designating a peer, before two-way authentication can take place, a malicious entity can give false information that can designate the entity as a payee. Notice that because the misdesignation occurs even before the two-way authentication is to take place, the existing Electronic Settlement Systems can not prevent this situation. This new type of threat to Electronic Settlement Systems is named "pretense" in this paper. Characteristics of Pretense are explored, and two improvements for Electronic Settlement Systems to resist this threat are proposed and implemented.
著者
宮地 利幸 三輪 信介 長谷川 忍 丹 康雄 篠田 陽一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.235-248, 2010
被引用文献数
1

「技術」の習得には理論的な学習に加え,実践的な学習が必須である.特にネットワーク技術に関していえば,自律的に動作する要素の集合であるネットワークの挙動を理解し,その管理・運用技術を習得するためには,実環境で利用される機器を用いたネットワーク管理経験が重要である.しかし,実験的なネットワークであったインターネットが社会的インフラの一つとして認められるようになり,オペレーションのミスが許されない現状では,ネットワーク技術者がその技術を育むためのインフラが不足している.このような問題を解決するため,さまざまな体験演習環境が提案されている.その一方でネットワーク技術の検証の重要性が認識され,世界各地にネットワークテストベッドが設置されるようになってきている.本論文では,ネットワークテストベッドの一つであるStarBEDおよび実験支援ソフトウェアであるSpringOSを用いた体験演習環境構築についてまとめる.また,実際にStarBEDを利用して行われた体験演習例「SOI Asia 2008 Spring Global E-Workshop」,「インシデント体験演習」について紹介し,その有用性を示す.
著者
グェン ホアイソン 牧野 義樹 リム アズマン オスマン 丹 康雄 篠田 陽一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.4, pp.31-36, 2012-04-05

空調システムは快適な環境を作り出す一方、住宅エネルギー消費の大きな部分を占めている。住宅における省エネルギーを実現するために温熱環境を含んだ空調システムの挙動をサイバーフィジカルシステムとして総合的に理解することが重要である。我々は住宅における温熱環境のシミュレータの開発をすると共にシミュレーションの精度向上のためのパラメータ同定を行い、実験結果の妥当性を実環境の計測データを比較することで検証してきた。本稿では開発したシミュレータの詳細を述べた上でシミュレーション結果と実験結果との比較を行う。