著者
藤尾 圭志
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

申請者らは、IL-10産生性CD4陽性CD25陰性LAG3陽性Egr2陽性制御性T細胞(LAG3 Treg)がTGF-β3産生を介してB細胞機能を抑制することを報告している。本課題では、B細胞に対するTGF-β3の作用機構を解明し、マウスでLAG3 Treg及びTGF-β3を欠損した際に生ずる病態を解析することで、新たな自己免疫疾患治療戦略の確立を目指す。平成28年度は以下の検討を行った。1.TGF-β3による抗体産生抑制メカニズムの解析TLRを介したシグナルは、自己免疫疾患の病態形成に深く関与している。申請者らはこれまでに、TLR刺激下でTGF-β3およびIL-10は単独では抗体産生促進に働くが、共存することで強力な抑制効果を発揮することを同定している。近年オートファジーが形質細胞分化、維持において中心的な役割を果たしていることが報告されており、申請者らは、TGF-β3およびIL-10のLPS刺激B細胞への作用とオートファジーの関連につき、LC-3 GFPマウスB細胞に発現するLC-3IIを指標として評価した。その結果、TGF-β3は単独投与においてオートファジーを強力に促進するが、IL-10が共存することにより抑制され、オートファジー促進剤である3-メチルアデニンが加わることで、TGF-β3による抗体産生促進は有意に抑制されるという結果を得た。2. LAG3 TregによるTGF-β3産生の意義の解明申請者らが作製したEgr2プロモーター下にジフテリアトキシン(DTX)レセプター(DTR)とGFPの融合蛋白を発現するEgr2-GFP-DTRマウスのDTX処理の有無における、OVA免疫に対する免疫応答につき検討を行った。その結果、DTX処理によりOVA IgG産生は著明に亢進したが、免疫と同時期に野生型のLAG3 Tregを移入することで液性免疫応答亢進は解除された。
著者
藤尾 圭志
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.23-29, 2016 (Released:2016-05-14)
参考文献数
28

遺伝子発現はエピゲノム修飾による転写因子の結合性の調節により制御されており,この調節機構は染色体を構成するDNAおよびヒストンの,メチル化やアセチル化による修飾から成り立っている.近年,自己免疫疾患の感受性遺伝子多型の多くがエンハンサー領域に存在することが明らかとなり,この事実はエンハンサーの機能を制御しているエピゲノムの重要性を示唆している.DNAメチル化に関しては,全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチ(RA)の患者検体におけるエピゲノムワイドの解析が行われ,疾患発症に関わる重要な遺伝子のDNAメチル化が低下していることが明らかとなりつつある.ヒストン修飾については,解析に必要な細胞数の多さからこれまであまり進んでいなかったが,最近の技術の進歩により少数細胞からの解析が可能となってきている.エピゲノム修飾は遺伝素因と環境要因双方の影響が統合されるレベルであり,ヒト疾患におけるエピゲノム修飾を遺伝素因と環境要因と関連付けつつ詳細に解析することで,ヒト疾患のメカニズムが明らかになることが期待される.
著者
藤尾 圭志
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001 (Released:2001-04-01)

特別研究員はまず腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞モデルを作製した。用いた腫瘍細胞はマウス線維肉種p815にマウスアロ抗原H-2Kbを発現させたp815 Kbである。H-2Kb特異的T細胞レセプター(TCR) aKbのα鎖及びβ鎖をレトロウイルスベクターを用いてDBA2マウスCD8陽性細胞に感染させた。発現の確認出来るb鎖はCD8陽性細胞の50%で発現を認めた。aKb TCR感染CD8陽性細胞はp815Kbに対し強い細胞傷害活性を示し、同時にIFN-gを産生した。p815 Kb接種時にaKb TCR感染CD8陽性細胞を同時に接種することにより腫瘍の拒絶を認め、レトロウイルスベクター系によるTCR遺伝子導入で、生体内でも機能的な抗腫瘍細胞傷害性T細胞を作製できることが確認された。次にマウス皮下に形成されたp815腫瘍に浸潤したT細胞のTCRの回収を試みた。p815腫瘍に浸潤しているCD8陽性細胞ではVβ10陽性細胞が優位に増加しており、腫瘍浸潤T細胞からCD8陽性Vβ10陽性細胞をシングルセルソーティングを行いcDNAを合成し、PCRを用いてTCRα鎖及びβ鎖を回収した。回収したTCRプールから、SSCP法で腫瘍内への集積を確認出来たクローンと同一の配列のTCRb鎖を使用するTCRを選択した。選択したTCRをDBA2マウスCD8陽性細胞に感染させると、感染細胞はp815腫瘍に対し優位な細胞傷害活性を示した.感染細胞は腫瘍保持マウスへの移入により腫瘍への集積を確認した。よって腫瘍浸潤Tリンパ球からSSCP法を用いてTCRを回収し、レトロウイルスベクター系を用いてCD8陽性細胞に導入することにより生体内でも腫瘍特異性を示す、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を作製できることが確認された。
著者
瀬理 祐 庄田 宏文 松本 功 住田 孝之 藤尾 圭志 山本 一彦
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.154-159, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
39
被引用文献数
1

関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA)は全身の慢性,破壊性の多関節炎を主症状とする代表的な自己免疫疾患である.病態形成において様々な遺伝,環境因子の関与が示唆されているが,依然として詳細な機序は不明である.最近,RAの疾患感受性遺伝子として約100種類が報告されたが,Peptidylarginine deiminase type4(PADI4)はRAのgenome-wide association studyによってnon-MHC遺伝子のRA感受性遺伝子として本邦より初めて報告され,様々な疾患の遺伝学的解析と併せてRAとの特異的な関連が示唆されている.現在,PADI4はアジア人や欧米人の一部でもRAとの関連が示され,アジア人ではanti citrullinated peptide antibody(ACPA)の有無に関わらず骨破壊の危険因子となることも報告された.PADI4遺伝子はシトルリン化による翻訳後修飾能を有するPAD4蛋白をコードする.PADI4は骨髄球,顆粒球といった血球系細胞で特異的に発現している.PADI4のRA感受性ハプロタイプではmRNAの安定性が増すことでPAD4蛋白が増加することが示唆されている.従来,RAにおけるACPAの特異性から,PAD4蛋白の増加に伴うシトルリン化蛋白の過剰産生とACPAの誘導といった仮説が注目されてきた.しかし,PADI4は核内移行シグナルを有することで様々な遺伝子発現の制御やneutrophil extracellular trapsの形成に関与し,RAの病態形成において多彩な役割を担う可能性が示唆される.本項ではPADI4の機能とRAにおける役割のまとめ,考察を行う.