著者
宍倉 正展 越後 智雄 行谷 佑一
出版者
一般社団法人 日本活断層学会
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.53, pp.33-49, 2020-12-25 (Released:2021-07-11)
参考文献数
25

Marine terraces (probably Holocene terraces) divided into three levels of L1 to L3, representing the activity of off-shore active faults, have been developed along the northern coast of the Noto Peninsula, central Japan. To evaluate the mean vertical displacement rate and recurrence interval of off-shore active faults, this study tries to estimate the emergence age of terraces using an idea of time predictable model with the rate of relative sea-level fall. In the Saruyama-oki segment off the northwestern coast, assuming the ages of the L1 terrace to be 6,000 or 3,500 years ago based on previously reported peak age of post-glacial transgression, it is inferred that the mean vertical displacement rate is 0.87 mm/year or 1.49 mm/year, and recurrence interval is 2,000 or 1,200 years. However, the emerged sessile assemblages indicate the shortest interval of 300 years because the height and age suggest that two uplift events of 0.7 m and 0.8 m occurred in the 9th century and 12th to 13th centuries, respectively. In the Wajima-oki and Suzu-oki segments off the north-central to northeastern coast, the height distribution of the lower terraces indicates undulating deformation with two peaks, which is consistent with the height distribution of the late Pleistocene terrace. This suggests the characteristic displacement and its accumulation due to the fault activity of these segments. Under the same assumptions for estimating the age of terraces, the mean vertical displacement rate and recurrence intervals are 0.67-0.72 mm/year or 1.14-1.23 mm/year and 900-1,400 years or 500-800 years respectively. The age of emerged sessile assemblage indicates that the latest event of the Wajima-oki segment can be correlated to the historical earthquake of AD 1729.
著者
前杢 英明 越後 智雄 宍倉 正展 宍倉 正展 行谷 佑一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,海溝型巨大地震の発生モデルに関して,陸上の地形・地質学的データから新たな検討を加えることを目的としたものである。紀伊半島南部を中心に、隆起地形や津波漂礫の分布調査を行い、津波のモデリングや^<14>C年代測定などの分析を通して、南海トラフ・メガスラストの各セグメント間の連動型地震ではなく、海溝陸側斜面に発達する海底活断層と海溝型巨大地震との連動型が発生した可能性を指摘することができた。
著者
行谷 佑一 安藤 亮輔 宍倉 正展 野村 成宏
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

富士川河口域西岸部である静岡県旧富士川町(現富士市)や旧蒲原町(現静岡市清水区)は、1854年安政東海地震の前後で富士川流路が変遷したこと[行谷・他(2015)]や「蒲原地震山」[例えば、羽田野(1977)]に代表される地変により、同地震によって広域的に隆起した可能性が高い。この隆起は、南海トラフ・駿河トラフの破壊に伴い入山瀬断層またはそれに関連した断層が破壊した可能性を示唆するものであり、本地域の地下構造を解明することは今後の地震活動を検討する上でも重要である。そこで本調査ではこの富士川河口域西岸部において、地表近くの地層に断層の伴うずれや変形が存在するか知るために、2016年1月4日~8日かけて地中レーダー探査(Ground Penetrating Radar, GPR)を行った。調査地域を通るとされる入山瀬断層は南北方向の走向を持つと考えられているので[例えば、地震調査研究推進本部(2010)]、ほとんどの測線についてそれに横切るように東西方向に設定した。総測線長は13 km程度に及ぶ。GPR探査において使用した電波の中心周波数は100 MHzであり、地下の不均質な電磁波伝播構造による反射波を解析することで地下5 m内程度の地質構造を知ることが期待される。この結果、海岸から2 km程度内陸までの測線で少なくとも4カ所において反射面に断層のずれと解釈される層序の不連続が存在することがわかった。不連続は盛土と思われる層の直下まで存在し、比較的新しい地層まで切っている可能性がある。これらの不連続の位置は地震調査研究推進本部が設定した入山瀬断層の位置とさほど離れていない。また、最も海側の測線および地震山の北端付近の測線における不連続の位置付近は、反射法地震探査により数十m~数百mの深度で伊藤・他(2014)が推定した断層位置に近い。一方、蒲原中学校の北側や旧庵原高校の東側といった、地震調査研究推進本部による入山瀬断層の断層線から離れた位置においてもこのような不連続が存在することがわかった。これは伊藤・他(2014)が指摘する「陸域における入山瀬断層が1本の明瞭な断層ではなく、複数の断層に分岐していることを示している」ことを支持する内容である。すなわち、この富士川河口域西岸では複数の分岐断層が地表面近くにまで達している可能性がある。 【文献】羽田野誠一, 1977, 地図, 40-41.伊藤忍・山口和雄・入谷良平, 2014, 平成25年度沿岸域の地質・活断層調査研究報告, 59-64.地震調査研究推進本部, 2010, http://jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/43_fujikawa_2.pdf行谷佑一・安藤亮輔・宍倉正展, 2015, 日本地震学会講演予稿集2015年度秋季大会, S10-11. 【謝辞】 本調査を実施するにあたり便宜をはかって下さった関係諸機関のみなさまに御礼申し上げます。本調査の一部は「南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト」の予算で実施しました。
著者
都司 嘉宣 中西 一郎 佐藤 孝之 草野 顕之 纐纈 一起 西山 昭仁 行谷 佑一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

およそ100年ごとの間隔で発生していることが、歴史記録から判明している東海地震・.海地震、三陸沖の巨大地震、およびそれらに誘発されたと考えられる内陸直下の地震について、歴史記録の収集、現地調査、および理工学的考察を経て、発生機構にいたる研究を推進した。海溝型巨大地震として1707年宝永地震、1854年安政東海・.海地震、および古代に発生した869年貞観三陸地震などを検討した。内陸直下の地震としては1596年文禄豊後地震、1828年文政越後三条地震、1812年文化神奈川地震、1855年安政江戸地震などを研究した。
著者
行谷 佑一 矢田 俊文
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.73-81, 2014-03-25 (Released:2014-05-20)
参考文献数
56
被引用文献数
11 14

To find tsunamis that affected the Pacific coast of eastern Japan during period between A.D. 869 and the 1600s, we searched a historical earthquake and tsunami database for tsunami descriptions. We examined reliability of the descriptions considering the written dates and independence of documents. As a result, at least two events were found. One is the Oei tsunami which occurred on September 1st, 1420 on the Julian calendar (the 7th month 23rd day, 27th year of Oei era on the Japanese calendar). The tsunami affected Kawarago and Aiga villages in Hitachi city, Ibaraki prefecture. Sea receded 9 times during 4 hours, exposing the coastal seafloor, and many fish were carried to the land. No description of earthquake ground shaking was found. The other is the Kyotoku earthquake tsunami which occurred on December 12th, 1454 (11th month 23rd day, 3rd year of Kyotoku era). An earthquake occurred in night and the tsunami widely inundated the coastal area of “Oshu” (the old name of province from Aomori to Fukushima prefectures). Many people were killed in the tsunami. Another entry in the database on December 31st, 1455 (11th month 23rd day, first year of Kosho era) is likely to be a fake event.
著者
越村 俊一 行谷 佑一 柳澤 英明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.320-331, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
55
被引用文献数
1 4

津波数値解析技術の高度化およびリモートセンシング技術・地理情報システム(GIS)の普及を背景に,新しい津波被害想定指標としての津波被害関数の概念とその構築手法を提案した.津波被害関数とは,津波による家屋被害や人的被害の程度を被害率(または死亡率)として確率的に表現し,津波浸水深,流速,波力といった津波の流体力学的な諸量の関数として記述するものである.本稿では,被災地の衛星画像,数値解析,現地調査結果および歴史資料の分析を通じて被害関数を構築し,津波外力と被害程度の関係についての考察を行うとともに,被害関数の適用性や工学的利用にあたっての留意点について論じた.
著者
行谷 佑一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

地震時に大きな断層すべり量を発生させる領域の位置が地震によらず固有であるかどうかを知るためには、少なくとも2例の地震を解析する必要がある。将来の発生が予測されており社会的にも深く関心が持たれているプレート境界型の南海地震では、観測器による時系列データが1946年昭和南海地震にしか存在しないため、それよりも前に起きた1854年安政南海地震などに対して従来のインヴァージョン解析手法が適用できず、歴代の南海地震のアスペリティ領域が一致するかどうかは不明であった。ところで、1854年安政南海地震に関しては、時系列データは存在しないが、おもに古文書記録といった歴史史料から地震の被害震度、津波の高さ、および地殻変動量の3種類のデータを推定することができる。そこで、本研究では歴史記録から得られた津波の高さデータおよび地殻変動量を入力データとして、アスペリティ領域すなわち断層すべり量分布を推定する同時非線形インヴァージョン手法を提案・確立し、それを安政南海地震に適用した。具体的には、南海地震発生領域を小断層群に分け、その小断層群から発生する津波高の時系列データの時間方向最大値を計算し、それと史料による津波高さとの残差自乗和が最小になるような断層すべり量分布を、Powell(1970)によるHybrid法を用いて求めた。その結果、安政南海地震の断層すべり量分布は、津波時系列データをインヴァージョン解析した1946年昭和南海地震と同様に、高知県須崎市南方沖、徳島県宍喰町南方沖、および和歌山県紀伊半島南方沖に大きなすべり量があったことがわかった。すなわち、両者の地震のアスペリティ領域の位置はおおむね一致するという結果を得た。また、この断層すべり量分布を用いて経験的グリーン関数法により地震動を推定すると、計算震度分布と史料から得られる震度分布がおおむねよい一致をすることがわかった。