著者
中西 一郎
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3/4, pp.301-310, 2000-03-30

It is mentioned in several earthquake catalogues of historical earthquakes that two earthquakes occurred in May, 1685 and on October 3, 1686 in the Toyohashi region, central Japan. We have recently found historical documents recording the latter earthquake in the Toyohashi region where previous studies located the epicenter of the 1686 earthquake without documents. Our analysis of the documents suggests that the 1685 earthquake did not occur. The damage recorded in the historical documents on the 1686 earthquake was large in villages on the Pacific side of the Toyohashi region. According to this evidence we consider that the epicenter of the 1686 earthquake may be located near the Pacific coast to the south of the town of Toyohashi. This large earthquake, the magnitude of which is estimated to be about 7, occurred 21 years before the great Hoei earthquake of October 28, 1707 (M=8.4). In the eastern part of Aichi prefecture, including the Toyohashi region and the offshore region of the Atsumi peninsula, moderate earthquakes have recently occurred. It is possible that the 1686 earthquake was a seismic precursor to the great 1707 earthquake. The eastern part of Aichi prefecture and the offshore region of the Atsumi peninsula in Aichi prefecture may be regions where we should carefully observe seismic activity, and other geophysical and geochemical phenomena.
著者
加納 靖之 橋本 雄太 中西 一郎 大邑 潤三 天野 たま 久葉 智代 酒井 春乃 伊藤 和行 小田木 洋子 西川 真樹子 堀川 晴央 水島 和哉 安国 良一 山本 宗尚
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

京都大学古地震研究会では,2017年1月に「みんなで翻刻【地震史料】」を公開した(https://honkoku.org/).「みんなで翻刻」は,Web上で歴史史料を翻刻するためのアプリケーションであり,これを利用した翻刻プロジェクトである.ここで,「みんなで」は,Webでつながる人々(研究者だけでなく一般の方をふくむ)をさしており,「翻刻」は,くずし字等で書かれている史料(古文書等)を,一字ずつ活字(テキスト)に起こしていく作業のことである.古地震(歴史地震)の研究においては,伝来している史料を翻刻し,地震学的な情報(地震発生の日時や場所,規模など)を抽出するための基礎データとする.これまでに地震や地震に関わる諸現象についての記録が多数収集され,その翻刻をまとめた地震史料集(たとえば,『大日本地震史料』,『新収日本地震史料』など)が刊行され,活用されてきた.いっぽうで,過去の人々が残した膨大な文字記録のうち,活字(テキスト)になってデータとして活用しやすい状態になっている史料は,割合としてはそれほど大きくはない.未翻刻の史料に重要な情報が含まれている可能性もあるが,研究者だけですべてを翻刻するのは現実的ではない.このような状況のなか,「みんなで翻刻【地震史料】」では,翻刻の対象とする史料を,地震に関する史料とし,東京大学地震研究所図書室が所蔵する石本コレクションから,114冊を選んだ.このコレクションを利用したのは,既に画像が公開されており権利関係がはっきりしていること,部分的には翻刻され公刊されているが,全部ではないこと,システム開発にあたって手頃なボリュームであること,過去の地震や災害に関係する史料なので興味をもってもらえる可能性があること,が主な理由である.「みんなで翻刻【地震史料】」で翻刻できる史料のうち一部は,既刊の地震史料集にも翻刻が収録されている.しかし,ページ数の都合などにより省略されている部分も多い.「みんなで翻刻【地震史料】」によって,114冊の史料の全文の翻刻がそろうことにより,これまで見過ごされてきた情報を抽出できるようになる可能性がある.石本文庫には,内容の類似した史料が含まれていることが知られているが,全文の翻刻により,史料間の異同の検討などにより,これまでより正確に記載内容を理解できるようになるだろう.「みんなで翻刻」では,ブラウザ上で動作する縦書きエディタを開発・採用して,オンラインでの翻刻をスムーズにおこなう環境を構築したほか,翻刻した文字数がランキング形式で表示されるなど,楽しみながら翻刻できるような工夫をしている.また.利用者どうしが,編集履歴や掲示板機能によって,翻刻内容について議論することができる.さらに,くずし字学習支援アプリKuLAと連携している.正式公開後3週間の時点で,全史料114点中29点の翻刻がひととおり完了している.画像単位では3193枚中867枚(全体の27.2%)の翻刻がひととり完了している.総入力文字数は約70万字である.未翻刻の文書を翻刻することがプロジェクトの主たる目的である.これに加えて,Web上で活動することにより,ふだん古文書や地域の歴史,災害史などに興味をもっていない層の方々が,古地震や古災害,地域の歴史に関する情報を届けるきっかけになると考えている.謝辞:「みんなで翻刻【地震史料】」では,東京大学地震研究所所蔵の石本文庫の画像データを利用した.
著者
尾池 和夫 JO 華龍 金 性均 慶 在福 全 明純 大倉 敬宏 久家 慶子 中西 一郎 入月 俊明 秋元 和実 山路 敦 鈴木 康弘 渡辺 満久 岡田 篤正 KIM Sung-kyun JUN Myang-soon JO Wha-ryong KYUNG Jai-bok
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

韓国南東部の梁山断層は,ほぼ北北東-南南西方向に約200kmにわたって走り,顕著な破砕帯を伴っている.この断層系において活断層変位地形を野外調査し,その主断層についてトレンチ掘削を実施した.この断層は河成段丘面群とその構成層を変位させ,東側の相対的隆起を伴う右横ずれの活断層であることを確認した(岡田ほか,1994).蔚山郡彦陽南方では,大規模な宅地開発が進められているので,その用地を利用して,主断層に伴われる地殻運動やそれ並行すると推定した副断層について多くのトレンチ調査を行った。こうした調査から,次のような事柄が判明した.彦陽南方の台地(高位面)は北東流していたかつての酌川川が形成した扇状地であり,初生的には北東へ傾いていたはずであるが,トレンチ地点付近では西方へ逆傾斜している.掘削調査の結果,高位面を構成する礫層が撓曲変形を受けていることが判明した.この高位面の撓曲による上下変位量は約5mである.いくつかの断層は認められたが,地表面まで切断するものは見当たらなかった.梁山断層の平均変位速度や高位段丘の形成時期を解明する必要があるので,梁山断層が通過する彦陽地域から太和江沿いに河成段丘面を追跡し,海成段丘面との関係を調べ,段丘面編年に関する資料を得るように努めた.それらの結果は,次のように要約される.河成段丘面はfH面群(fH1面・fH2面)・fH面群(fH1面・fM2面)・fL面群(fL1面〜fL3面)に,海成段丘面はm1面〜m3面に区分できる.海成段丘の旧汀線高度は,それぞれ53.3m・18.7m・3.4mである.fH面群やfM面群には赤色風化殻が形成されており,とくにfH面群で顕著である.fL面群の構成層は新鮮でほとんど風化していない.各河成段丘面は滑らかに蔚山湾周辺まで連続する.蔚山湾周辺では,fH2面は+10mの位置へ,fH1面は数mの位置へと連続してゆく.fL1面は下流部で沖積面下に埋没し,蔚山湾周辺での推定高度は-10mである.こうした資料からみて,fM1面が最終間氷期直前の氷期に,m2面が最終間氷期に形成された可能性が高い.fH面群はそれ以前の海面低下期に,m1面は最終間氷期以前の高海面期に形成されたと推定できる.南北〜北北西-南南東走向の蔚山断層系(延長約40km)は慶州市付近で梁山断層系に会合するが,この中央部に沿っても活断層変位地形の存在と,段丘堆積物を変位させる断層露頭が確認された.この特徴や関連現象について調べ,次のような事柄が判明した.蔚山断層系の断層線は著しく弯曲している.断層露頭表現や地形面の変形状態とから考えると,この断層の活動様式は典型的な逆断層である.第四紀後期に形成された地形面や堆積物が明瞭に変位を受けているので,蔚山断層は明らかに活断層である.この断層は高位段丘面を15m,中位段丘面を5m,上下方向へ変位させており,累積的な変位が認められる.断層崖や段丘面の変位方向からみて,東側の山地域が少なくとも第四紀の中ごろから継続的に隆起している.蔚山断層に沿って,明瞭な断層露頭が2ヶ所で観察された.末方里集落東方にある寺谷池北岸では,破砕した花崗岩が地形面を構成する礫層に,走向:ほぼ南北で,傾斜:25-30°Eの衝上面をもって接している.露頭上部では,上盤の花崗岩を被覆する礫層と砂礫層・腐植質層が急斜・逆転している.数本の断層が伴われ,幅数10cmの断層帯となっている.開谷里集落北東方の淵安川河床でも,やや風化した礫層の上に花崗岩が衝上している.末方里集落東方では,中位面を構成するシルト質層が液状化作用を受けて変形し,堆積直後の大地震発生を示唆する.その再来時間については,堆積物や地形面の年代解明を現在行っており,それらの結果を待って評価したい.こうした南北方向の逆断層性活断層の存在は,当域もほぼ東西方向の広域応力場に置かれていることを示唆する.これは北北東-南南西方向の梁山断層系が右ずれを示すこととも符号し,同じ応力場にあることを意味する.また,浦項市付近には,海成中新統が分布していることから,中新世以降の梁山断層の運動像を解明するために,地質調査を実施した.
著者
上垣 拓郎 池上 裕 中西 一郎 小久保 一哉 露木 貴裕 中村 浩二 原田 智史
出版者
北海道大学大学院理学研究院自然史科学部門(地球物理学) = Department of Natural History Sciences (Geophysics), Graduate School of Science, Hokkaido University
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.379-382, 2009-03-15

The long-period strain seismograms from the Sumatra-Andaman earthquake of December 26, 2004 and the Nias earthquake of March 28, 2005 are analyzed by comparing the observed seismograms with synthetic seismograms calculated by normal mode theory. The multiple CMT source (Tsai et al., 2005) and Harvard CMT solution explain the seismograms recorded by both extensometers and volumetric strainmeters from the 2004 and 2005 earthquakes, respectively. The long-period strain seismograms observed in Japan are consistent with about 9 min source duration and 1200 km fault length proposed by Tsai et al. (2005) and Velasco et al. (2006).
著者
池上 裕 岡本 大志 中西 一郎 小久保 一哉
出版者
北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻(地球物理学)
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.221-231, 2006-03-15

The great Sumatra-Andaman earthquake of December 26, 2004 is studied by using extensometer (strain-meter) as very-broard-band seismograph. We analyze the strain seismograms obtained by 100 m extensometers installed at Matsushiro Seismological Observatory. Japan Meteorological Agency. We compare the observed strain seismograms with thouse calculated by normal mode theory and obtain fairly good agreement between the observed and calculated seismograms for a five-sourcse model with a moment magnitude of 9.3 and a source duration of about 600 sec. We find a peculiar strain change right after the passage of Rayleigh wave in the NS component of the strain seismograms. This strain change cannot be explained by the summation of normal modes and double-couple type sources.
著者
都司 嘉宣 中西 一郎 佐藤 孝之 草野 顕之 纐纈 一起 西山 昭仁 行谷 佑一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

およそ100年ごとの間隔で発生していることが、歴史記録から判明している東海地震・.海地震、三陸沖の巨大地震、およびそれらに誘発されたと考えられる内陸直下の地震について、歴史記録の収集、現地調査、および理工学的考察を経て、発生機構にいたる研究を推進した。海溝型巨大地震として1707年宝永地震、1854年安政東海・.海地震、および古代に発生した869年貞観三陸地震などを検討した。内陸直下の地震としては1596年文禄豊後地震、1828年文政越後三条地震、1812年文化神奈川地震、1855年安政江戸地震などを研究した。
著者
中西 一郎
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3-4, pp.301-310, 2000-03-30

It is mentioned in several earthquake catalogues of historical earthquakes that two earthquakes occurred in May, 1685 and on October 3, 1686 in the Toyohashi region, central Japan. We have recently found historical documents recording the latter earthquake in the Toyohashi region where previous studies located the epicenter of the 1686 earthquake without documents. Our analysis of the documents suggests that the 1685 earthquake did not occur. The damage recorded in the historical documents on the 1686 earthquake was large in villages on the Pacific side of the Toyohashi region. According to this evidence we consider that the epicenter of the 1686 earthquake may be located near the Pacific coast to the south of the town of Toyohashi. This large earthquake, the magnitude of which is estimated to be about 7, occurred 21 years before the great Hoei earthquake of October 28, 1707 (M=8.4). In the eastern part of Aichi prefecture, including the Toyohashi region and the offshore region of the Atsumi peninsula, moderate earthquakes have recently occurred. It is possible that the 1686 earthquake was a seismic precursor to the great 1707 earthquake. The eastern part of Aichi prefecture and the offshore region of the Atsumi peninsula in Aichi prefecture may be regions where we should carefully observe seismic activity, and other geophysical and geochemical phenomena.
著者
宮川 康平 中西 一郎 三浦 勝美 田中 聡
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.113-121, 1998-07-03 (Released:2010-03-11)
参考文献数
18

The Geiyo earthquake occurred on June 2 in 1905 in the western Seto Inland Sea between the Honshu and Shikoku Islands, Japan. The seismograms of the earthquake obtained at the stations of Central Meteorological Observatory were newly found at Earthquake Research Institute of the University of Tokyo. They are recorded by the Omori seismometers and tromometers, which are superior to former seismometers with respect to continuous recording. For the estimation of the magnitude and source mechanism from the seismograms, we digitize 3 records, which are Hongo EW component, Hitotsubashi EW component and Tokyo tromometer. We have to know the response of the Omori seismometer to estimate the ground motion during the earthquake. In order to know the frequency characteristics of the seismometers, we calculate their Fourier amplitude spectra. The spectra of the Hongo EW component and Hitotsubashi EW component show clear peaks which may be considered as the natural periods of the seismometers. The natural periods of Hongo EW component and Hitotsubashi EW component are about 60s and 25s, respectively. The damping constant estimated from the free oscillation record of Omori seismometer at Ishinomaki observatory is less than 0.01, and the friction is 1.7mm.
著者
岩田 貴樹 中西 一郎
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.51-59, 1998-07-03 (Released:2010-03-11)
参考文献数
29
被引用文献数
1

We investigate the correlation between the occurrence of earthquake and the earth tide by analyzing the tail of the Matsushiro earthquake swarm that is recorded by the Matsushiro Seismic Array System during the period of November 1984 to December 1994. The seismic activity of the tail exhibits many bursts of earthquakes. We remove the bursts, because they affect our aim to investigate whether the correlation exists or not. We use the tidal strain data recorded by EW- and NS-component extensometers located in Matsushiro Seismological Observatory, Japan Meteorological Agency. We apply Schuster's test to the Matsushiro earthquake swarm. The hypothesis that the earthquakes in the swarm take place randomly is tested and is rejected for the EW-component. The earthquakes tend to occur when the tidal strain of the EW-component is in a compressional state. This state is consistent with the stress field at Matsushiro obtained by using focal mechanisms or in situ stress measurements.We also investigate the spatial variation of the correlation. A significant correlation is seen in the northwestern part of Matsushiro. The largest earthquake with magnitude of 5.2 occurred on 30 December 1986 near the region. We further investigate the temporal variation of the correlation in this region. The correlation becomes high right after the occurrence of the largest earthquake, whereas the correlation is low before the occurrence of it. This suggests that the strain changes caused by the largest earthquake make the correlation high in this region.
著者
花籠 靖 中西 一郎 森谷 武男 笠原 稔
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.213-225, 1990-06-24 (Released:2010-03-11)
参考文献数
19

The rapid determination of seismic moment and source mechanism for near earthquakes is attempted by a moment tensor inversion of long-period seismic waves. The inversion method is based on a normal mode theory. The data for the inversion are recorded at three stations in Hokkaido, Japan. Each station is equipped with a three-components very-broad-band seismograph. Source parameters of six earthquakes (mb_??_5.5) in and around the Japan region (epicentral distances of 200 to 1500km) for the period from January to April 1989 are determind by applying the moment tensor inversion to the long-period waveform data. Changing the components (UD, NS, EW) and record length used in the inversion the stability in the moment tensor solution is examined. A good S/N ratio is required to obtain a stable solution in the inversion of three-components data from a single station. Data length of 4-8min after the earthquake origin time is enough to attain stable source mechanism determination by using the three-stations data.
著者
中西 一郎
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.237-238, 2007-03-15 (Released:2013-08-05)
参考文献数
21
著者
中西 一郎
出版者
北海道大学大学院理学研究院自然史科学部門(地球物理学) = Department of Natural History Sciences (Geophysics), Graduate School of Science, Hokkaido University
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.383-386, 2009-03-15

A record is found in the historical document of the Toudou family in relation to the 1596 Bungo-Iyo earthquake. The document was written about 180 years after the occurrence of the earthquake. The record shows that the castle Uwajima was damaged by the 1596 earthquake and provides us with an important constraint on the location of the earthquake.