著者
西脇 仁 奥平 敬元
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.141-155, 2005 (Released:2005-07-01)
参考文献数
62
被引用文献数
3 2 5

領家変成帯中の近畿中央部飛鳥地域に分布する苦鉄質岩は,領家古期 花崗岩類に対して層状に産している.苦鉄質岩のほとんどは,コアもリムもほぼ均一な化学組成を示す半自形~他形の斜長石と角閃石からなる.また,斜長石-角閃石温度計を用いて平衡温度を計算するとおよそ500-600℃となることから,これらの苦鉄質岩は角閃岩相の変成作用を被った変成岩であると考えられる.一部の苦鉄質岩に認められる面構造とマグマ期-亜マグマ期に形成された花崗岩類の片麻状構造が斜交関係にあることから,両者は同じ変形作用を被っておらず,苦鉄質岩の面構造は,少なくとも花崗岩類との接触以前に形成されたと判断される.これらのことから,苦鉄質岩は花崗岩質マグマの定置以前に角閃岩相の変成作用を被った後,花崗岩質マグマに捕獲されたと結論づけられる.
著者
西脇 仁 奥平 敬元
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.6, pp.249-265, 2007 (Released:2008-02-01)
参考文献数
62
被引用文献数
7 8

近畿中央部の初瀬深成複合岩体は,主に片麻状黒雲母花崗閃緑岩とそれと同時形成の苦鉄質岩類から構成されており,E-W方向とNW-SE方向の2つのシンフォームによって特徴づけられるベースン構造を形成している.花崗閃緑岩の片麻状構造は,主に黒雲母クロットの形態定向配列によって定義され,マグマ流~亜マグマ流によって形成されている.花崗閃緑岩中の角閃石の化学組成から,花崗閃緑岩マグマの定置深度は,およそ20 kmと見積もられる.花崗閃緑岩中には,高温の塑性変形組織が見出されている.マグマ流~亜マグマ流による変形と高温塑性変形の最大伸長方向が一致しており,これらの変形作用は花崗閃緑岩の定置に関連して,マグマの固結後に温度の低下とともに連続して生じたと推測される.E-W方向のシンフォーム構造は,領家変成帯中に広く認められるD3期鉛直褶曲構造と平行であることから,片麻状黒雲母花崗閃緑岩は,領家変成帯の鉛直褶曲時の広域応力場において定置したと考えられる.
著者
岡井 治 多気 昌生 望月 篤子 西脇 仁一 森 卓二 藤尾 昇
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.271-278, 1979-10-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
21
被引用文献数
5 1

低周波音 (8~50Hz; 105dB) における人体の反応を評価した. 低周波音は, 直接外気に接する聴覚器, 前庭器, 呼吸器に作用するものと思われる. そこで, 低周波音に全身曝露して人体反応を調べ, 次の結果をえた.i) 低周波音に敏感な人は, 閾値が低くかった. もっとも, 多くの人では, 他の報告と同じ閾値をもっていた.ii) 閾値付近で脳波の振幅が減少した.iii) 心拍数, 呼吸数は減少傾向を示した. 肺循環脈波は振幅が増した.iv) 血圧および身体の動揺は一定の傾向を示さなかった.
著者
西脇 仁一 川口 恒夫
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所彙報
巻号頁・発行日
vol.192, pp.265-309, 1940-08

この頃の様に發動機の性能が向上したり,又飛行機の速度が増したりすると,油冷却器の抵抗も却々大きなものとなつて來る.本實驗は現在各種飛行機に實用されてゐる各種滑油冷却器の抵抗並びに放熱試驗等を行ひ,航空機用としての性能を比較した.實驗に使用した冷却器は平行板型(ヴィカース,ランブラン),蜂の巣型2種,空冷發動機用環状型(圓管型,偏平管型)の6種類である.實驗の結果,蜂の巣型冷却器が航空機用としては性能が勝れてゐる.供試冷却器が少いので詳しくは分らぬが,蜂の巣型冷却器で管長の長い方が性能としてはよい様である.(これは水冷却器と同様の性質である,この點に關する詳細は續報に譲りたい).本實驗では冷却液として水及び油を使用して比較した,一般に油を使用すると,水の場合に比べ油の粘性の影響で放熱量が低下する,この低下の度合は流量や油の温度にもよるが,油の通路が狹くて曲つてゐると低下の度合が少くて濟む様である.本文中には滑油冷却器設計の資料として實驗データを記載して置いた.