著者
野崎 浩成 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.121-132, 2000-09-20
被引用文献数
2

近年,新聞を活用した教育(NIE)が注目されており,新聞記事を学習教材として利用する機会が多くなった.しかし,新聞は成人読者を主な対象としており,日本人小中学生や外国人留学生にとっては,新聞に掲載されているすべての漢字を理解できるとは言い難い.そこで,本研究では,新聞記事1ヶ年分を対象に漢字の頻度特性を分析し,新聞を読むためには,どのような漢字を学習すべきなのかを検討した.その結果,(1)新聞紙面上での漢字の占める割合は,41.46%であり,平仮名で34.06%,片仮名で6.34%など,他の文字種と比べて,漢字の使用率が著しく高かったこと,(2)基本漢字500字および学年別漢字配当表を習得すれば,それぞれ70.41%, 89.84%の割合で,新聞に出現する漢字をカバーできること,(3)新聞での使用頻度が高い漢字であっても,学年別漢字配当表には掲載されていない漢字が数多く存在すること,などが示された.以上の結果から,本研究では,NIEのための漢字学習表を開発し,新聞を教材として利用する際に,学習者に教授すべき漢字は何かを明らかにした.
著者
戸田 和幸 野崎 浩成
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.12, pp.125-130, 2009-02

ネット社会のトラブルを分析すると,『他者意識(倫理)』と『自己防衛(安全)』の欠如が浮き彫りになった。社会の対応要請に応え,学校においては,チャット・メール・掲示板等の体験を情報教育に取り入れてきている。これらの体験時には,『匿名(ハンドル)』やコンピュータ名を使用している場合が多い。本研究では,『本名』と『匿名』の立場に潜む学習者の認知に働きかける違いと,『他者意識』と『自己防衛』の間に関係があるとした研究1,2)を整理し,その結果を基に小学6年生を対象に経過観察を含めて再検証を試みた。また,学校教育という特別な環境で行う,『本名』と『匿名』の二つの立場のチャット体験が学習者の認知に影響を与え,ネット社会を「生きる力」につながる可能性を示唆していることも再確認した。
著者
梅田 恭子 内藤 祐美子 野崎 浩成 江島 徹郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.69-72, 2008
参考文献数
4
被引用文献数
3

先行研究によりWeb日記を書き続ける理由が自己表現よりもコミュニケーションにあることが明らかになっている.我々は読者を限定しない一般的なWeb日記とSNSのように読者が限定されるWeb日記によるコミュニケーションの形態には違いがあると仮説を立てた.まず本稿では,大学生を対象にSNSと先行研究のWeb日記の結果を比較し,大学生のSNS利用にはどのようなコミュニケーション形態があるのかを検討した.その結果,SNSでは実際の友人との交流を目的としたWeb日記によるコミュニケーションがあることが示唆された.
著者
野崎 浩成 横山 詔一 磯本 征雄 米田 純子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.141-149, 1996-12-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3

日本語教育で教材に使用される漢字の選定および提示順序は漢字頻度調査に基づいて決定されることが多い.そこで,本研究では効率的な漢字頻度調査を行う手法を確立するために,新聞記事フルテキストデータベース中に含まれる漢字の使用頻度を調査するシステムを開発した.このシステムを用いて,新聞朝夕刊1ヶ年分の約11万件の記事を対象に大規模な調査を実施し,漢字4,476字および平仮名83字,片仮名86字についての文字使用頻度表を作成した.その結果,1)漢字使用頻度上位1,000字が全使用率のおよそ95%を占めること,2)上位1,600字で全体のほぼ99%に達し,残りの約3,000字は1%程度を占めるに過ぎないこと,3)時代的変化に着目すると,漢字使用頻度は,'66年と'93年の新聞間で相関が著しく高いこと,が示された.以上の結果は新聞における漢字の使用実態を的確に反映するものであり,日本語教育のみならず,漢字教育や言語情報処理一般に役立つ有用な知見が得られた.
著者
野崎 浩成 横山 詔一 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.59-62, 2001-08-20

本研究では, 2字熟語に使用される漢字の頻度特性を分析した.その結果, 「牲」は, 漢字2字熟語の第2文字目でのみ使用されること, その用例はすべて「犠牲」であったこと, 同様な特性を持つ漢字は, 「娠」, 「剖」, 「騨」, 「惧」, 「綻」であったこと, が示された.すなわち, ある特定の熟語にしか使用されない特別な漢字が存在することが明らかになった.このような結果を考慮して教材作成を行えば, 有用な日本語教材が得られると考える.
著者
野崎 浩成
出版者
愛知教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,電子化された新聞記事フルテキストデータベースを対象に,カタカナ語の使用実態調査を実施した。本研究での調査により,海外在住の日本語学習者や成人の外国人留学生を対象とした語彙習得支援環境を構築するために必要な基礎的データを得ることができた。具体的には,国民への定着度や使用頻度の低いカタカナ語を明らかにした上で,それらのカタカナ語の特徴を分析した。そして,それらのカタカナ語について,定着率や頻度が低い理由を考察し,語彙習得を促すための適切な学習方略を提案することを試みた。次に,国立国語研究所(2003)が定めた『第1回「外来語」言い換え案』に示された「カタカナ語62語」を対象に,その使用実態を調査した。その結果の概要は,次の通りである。「カタカナ語62語」のうち1993年と1996年の新聞で使用されていなかった語(オンデマンド,フィルタリング,プロトタイプなどの6語)は定着度が低いこと,「アクセス」や「コンセンサス」のように新聞での使用頻度が高いにもかかわらず,国民各層への定着度が低い語が存在すること,などが示された。さらに,「カタカナ語62語」について電子辞書『大辞林』(第二版)での辞書掲載状況を分析した。その結果,1.複数の見出し語として大辞林に掲載されているカタカナ語であっても,使用頻度や定着度が著しく低い語(モチベーション,アジェンダ,モラトリアムなど)が存在すること,2.大辞林には掲載されていないカタカナ語は16語(オンデマンド,フィルタリング,インターンシップなど)が存在すること,3.2で述べた16語の多くは使用頻度や国民への定着度が低く,複合語(セカンドオピニオンなど)もいくつか含まれていること,などが明らかになった。こうして得られた結果は,日本語教材に掲載するカタカナ語を選定する際の基礎的資料となり,語彙習得支援環境を構築するために役立つ有用な知見となり得る。
著者
戸田 和幸 野崎 浩成
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.45-49, 2010-02

ネット社会のトラブルは,『他者意識(倫理)』と『自己防衛(安全)』の欠如が引き金になっている場合がほとんどである。近年,学校は情報安全教育にチャット・メール・掲示板等の体験を取り入れ,効果をあげている。本研究では,『本名』と『匿名』の立場に潜む学習者の認知に働きかける違いと,『他者意識』と『自己防衛』の間に関係があるとした研究 123 )に沿って,チャットを体験した学級と体験しなかった学級との情報安全に関する対処能力の違いを探った。併せて,学校教育という特別な環境で行う,『本名』と『匿名』の二つの立場のチャット体験が学習者の認知に影響を与え,「情報化社会を生きる力」につながる可能性を示唆していることを確認した。
著者
磯本 征雄 野崎 浩成 吉根 勝美 長谷川 聖美 石井 直宏
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.54-64, 1996-08-15
被引用文献数
12

本論文では, 感性情報を伴う情報検索に印象語のキーワードが有用であることに注目して, シソーラス中での印象語の類義語関係の強さを定量的に決める手法を議論する。一般に, 美術作品の批評や鑑賞は情緒的・主観的・感覚的であり, この領域の情報検索では, キーワードとして印象語が多用される。ところが, 印象語には複雑で曖昧な多数の類義語があり, 情報検索にはファジィ・シソーラスによる統制が不可欠である。本論文では, 印象語を一群の刺激事象が持つ属性のファジィ集合とみなし, 曖昧な類義語関係をメンバーシップ関数や類義語係数として実験的に定量化する手法を提案する。この手法の特徴は, 複数被験者に一連の刺激事象を提示して印象語に関連した反応データを収集し, これらの解析を通して印象語のファジィ類義語関係を算出することにある。この結果は, 感性情報検索の印象語シソーラスとして, ファジィ・データベースの機能に組み入れて活用できる。