- 著者
-
野崎 浩成
- 出版者
- 愛知教育大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2003
本研究では,電子化された新聞記事フルテキストデータベースを対象に,カタカナ語の使用実態調査を実施した。本研究での調査により,海外在住の日本語学習者や成人の外国人留学生を対象とした語彙習得支援環境を構築するために必要な基礎的データを得ることができた。具体的には,国民への定着度や使用頻度の低いカタカナ語を明らかにした上で,それらのカタカナ語の特徴を分析した。そして,それらのカタカナ語について,定着率や頻度が低い理由を考察し,語彙習得を促すための適切な学習方略を提案することを試みた。次に,国立国語研究所(2003)が定めた『第1回「外来語」言い換え案』に示された「カタカナ語62語」を対象に,その使用実態を調査した。その結果の概要は,次の通りである。「カタカナ語62語」のうち1993年と1996年の新聞で使用されていなかった語(オンデマンド,フィルタリング,プロトタイプなどの6語)は定着度が低いこと,「アクセス」や「コンセンサス」のように新聞での使用頻度が高いにもかかわらず,国民各層への定着度が低い語が存在すること,などが示された。さらに,「カタカナ語62語」について電子辞書『大辞林』(第二版)での辞書掲載状況を分析した。その結果,1.複数の見出し語として大辞林に掲載されているカタカナ語であっても,使用頻度や定着度が著しく低い語(モチベーション,アジェンダ,モラトリアムなど)が存在すること,2.大辞林には掲載されていないカタカナ語は16語(オンデマンド,フィルタリング,インターンシップなど)が存在すること,3.2で述べた16語の多くは使用頻度や国民への定着度が低く,複合語(セカンドオピニオンなど)もいくつか含まれていること,などが明らかになった。こうして得られた結果は,日本語教材に掲載するカタカナ語を選定する際の基礎的資料となり,語彙習得支援環境を構築するために役立つ有用な知見となり得る。