著者
内田 良
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.12, pp.269-277, 2009-02

本研究の目的は,今日支持されている「虐待増加」の言説を批判的に検討し,その言説が支持される背景を明らかにすることである。虐待の「発生件数」を把握するためには,多くの困難がある。それにもかかわらず,多くの論者が容易に虐待の増加を支持している。そこで本稿では,まず今日主流となっている虐待の増加説の議論を概観し,次に,社会問題の構築主義をはじめとする減少説の見解を参照する。この作業をとおして,虐待を現代的・都市的に語る「『虐待』の現代化・都市化」と,虐待が最小限にまで抑制される時代にこそ虐待がかえって目立ってしまう「安全と危険のパラドクス」の視点を提起し,「虐待増加」の解釈が生み出される背景を説明する。
著者
内田 良
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.203-210, 2010-02
被引用文献数
1

本稿の目的は,学校管理下の体育的部活動時に発生した重大事故(死亡や重度の負傷)の件数に関して,既存の統計資料を二次分析にかけることで,どの種の部活動が重大事故につながりやすいのかを明らかにすることである。今日,学校安全が不審者対策と同一視されることがある。本稿は,学校安全を不審者対策に特化しない。学校管理下の多種多様な災害の集計データを幅広く見渡し,「エビデンス・ベイスト」の視点から体育的部活動に焦点を合わせ,どの部活動で事故が高い確率で起きているのかを明らかにする。これまで学校事故のデータの「集計」はなされてきたが,そこに一歩踏み込んで「分析」をくわえようという試みはおこなわれてこなかったのである。分析の結果,中高の部活動のなかでもっとも重大事故に遭う確率が高いのは柔道部とラグビー部であることがわかった。確率が高い部活動においては,早急な安全対策が求められる。
著者
戸田 和幸 野崎 浩成
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.12, pp.125-130, 2009-02

ネット社会のトラブルを分析すると,『他者意識(倫理)』と『自己防衛(安全)』の欠如が浮き彫りになった。社会の対応要請に応え,学校においては,チャット・メール・掲示板等の体験を情報教育に取り入れてきている。これらの体験時には,『匿名(ハンドル)』やコンピュータ名を使用している場合が多い。本研究では,『本名』と『匿名』の立場に潜む学習者の認知に働きかける違いと,『他者意識』と『自己防衛』の間に関係があるとした研究1,2)を整理し,その結果を基に小学6年生を対象に経過観察を含めて再検証を試みた。また,学校教育という特別な環境で行う,『本名』と『匿名』の二つの立場のチャット体験が学習者の認知に影響を与え,ネット社会を「生きる力」につながる可能性を示唆していることも再確認した。
著者
西村 敬子 西村 友希 丸山 浩徳
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.169-177, 2010-02

今,日本は急速にキャラ化しているといわれ,私たちの周りには様々なキャラクターグッズがあふれている。子どもたちにとってキャラクターは欠かすことのできないものとなっている。この子どもたちを取りまく生活の中で,肥満や偏食など,食に関する問題が多く発生している。そこで,子どもが自ら健康で自分の体に合わせた食生活について学ぶ手助けをするために食育キャラクター「食まるファイブ」を誕生させた。本研究ではこの「キャラクター」及び「キャラ」という言葉の定義を調べた。さらに子どもたちが楽しく食について学ぶことができるように食育キャラクター「食まるファイブ」のキャラを立て「食まるファイブ」グッズ作製を行った。
著者
生島 博之
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.7, pp.329-336, 2004-02

本論文は、盗みなどを圭訴としてプレイセラピーを受けることになった小学校3年生男児Nの治療経過を箱庭を中心として報告したものである。Nは、世の中のすべてが面白くないといったブスッとした表情で箱庭をつくり、猛獣に食い殺されるキリンや乳牛、そして、怪獣にやられるウルトラマンをロボワル兄弟と一緒になって応援する孫悟空、等を置きながら、「正義あらへん」と苦笑した。その後、Nは治療がすすむにつれて、「怪獣に奪われた母親」や「人質になった妻子のために身代わりになって悪人に撃ち殺される父親(銀行強盗)」「父母の住む動く家(タクシー)の火事」等の象徴的な遊びをおこなった。そこで、これらの象徴的な遊びの意味を掘りさげ、盗みの心理的メカニズム等について考察した。
著者
廣澤 愛子
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.7, pp.319-327, 2004-02

スケープゴートとは、ある集団に属する人がその集団の正当性と力を維持するために、特定の人を悪者に仕立てあげて攻撃する現象を指す。少数民族の迫害(ホロコーストなど)はこの一例であるし、より卑近な例を挙げると、学級におけるいじめや家庭における虐待も同様であろう。従来、虐待やいじめについては「トラウマ」という視点から論じられることが多いが、本論では、「スケープゴート」という視点から論じた。そして、虐待やいじめの被害者(児)の心理療法を通して筆者が感じたことを中心にして、スケープゴートにされるという経験が当人にどのような影響を及ぼし、その中で彼らがどのように自らのアイデンティティを築いていくのかについて考察した。具体的には、スケープゴートにされるという経験が及ぼす影響について、①スケープゴートとの同一化、②実存的な孤独、③「集合的な影」を見続けること、の3点から論じた。そして、彼らが自ら築いていくアイデンティティについて、①辺縁を主体的に生きること~スケープゴートからトリックスターヘ~、②基盤のなさを受け入れること、③「影」との新しい関係、の3点から論述した。
著者
中田 敏夫 村松 基成
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.10, pp.69-78, 2007-02

本稿ではまず,外国人労働者に関する内閣府調査に準拠した項目により,教員養成大学の学生の考え方を一般世論との相違を中心に明らかにしようとした。次に外国人児童生徒教育への理解・態度をみるための項目により,教員養成大学に学ぶ学生の考え方を明らかにした。結果を概括すれば,特に外国人児童生徒理解については「共就学」経験がプラスの評価を生み,「共就学」を行うことの重要性・可能性がはっきりしてきたと考える。
著者
富山 祥瑞
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.147-153, 2010-02

平面の正則分割(図形をお互いに隣接させながら,隙間が出ないように平面を埋め尽くす繰り返し模様(タイリング))について,数学的な造形思考で制作を進めた授業内容の一端を紹介します。
著者
加藤 祥子
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.8, pp.207-211, 2005-02

生活に役立つものを短時間で仕上げ,使いやすく作りやすい事も目的として,「腕カバー」「手提げかばん」に続いて「巾着」を取り上げる。先行研究の「リバーシブル巾着」を改良してペットボトルホルダーにした。素材,サイズ,製作方法を見直し,小学校の家庭科被服教材とするために製作プリント,アイロン工程と保温性の検討を行い,簡単に製作できる実用的なリバーシブル巾着となった。
著者
生島 博之
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.9, pp.259-267, 2006-03

本論文は,最近5年間あまりにおける少年犯罪を教育臨床心理学の観点から研究したものである。神戸小学生殺傷事件から始まり,黒磯女教師殺害事件,豊川主婦刺殺事件,西鉄高速バス乗っ取り事件,岡山県金属バット殴打・母親殺人事件,等を取り上げ,これらの少年が,犯罪に至るまでにどのような家庭教育や学校教育を受けてきたのか,規範意識が育たなかった,あるいは,規範意識が弱過ぎたのは何故なのか等について考察した。その結果,学校が少年犯罪の『舞台』とならないようにするためには,『怨み』を聞く回路づくりができる教師の実践的指導力が不可欠であり,研修やスーパービジョン制度やスクールカウンセラー(臨床心理上)や関係機関との連携が重要であることが判明した。
著者
寺田 安孝 山本 太郎 川上 昭吾
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.10, pp.85-90, 2007-02

子ども達の理科に関する興味関心や学習意欲の向上が求められるなか,地域のボランティアや博物館によって行われる科学イベントなどのインフォーマル・エデュケーションによる科学技術理解増進活動が重視されている。理科教育の振興におけるインフォーマル・エデュケーションの効果と課題について,地域・学校・博物館との連携による理科実験教室の実践を通じて検討した。その結果,インフォーマル・エデュケーションとしての理科実験教室は子ども達の理科に関する興味関心を高める効果があり,発展的な学習活動の場として有効であることが示された。また社会教育機関としての博物館の価値を啓発する機会にもなった。一方,実施体制の改善及び学校と博物館の負担に見合うメリットの在り方について課題があった。
著者
瀬田 祐輔 牧 恵子
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.91-100, 2010-02

学校図書館司書教諭講習科目「読書と豊かな人間性」は,司書教諭が,読書指導の直接の担い手となることばかりではなく,全校の読書指導の推進者としての役割を果たすことをも見据えた内容となっている。しかしながら,子どもを読書に誘うための個々の手法を実習または演習として組み込むのみでは,それらを駆使した計画・実践ができる力,いわば応用のきく力として身につけさせることは困難である。そこで本稿においては,この問題を解決しうる授業方法を探るべく,プロジェクト型の学習形態(「第2回科学・ものづくりフェスタ@愛教大」に参加し,科学読み物を中心とした読書材の読み聞かせ企画を受講生に運営させるという形)を組み込んだ授業を構想し,実施を試みた。その結果,「読書と豊かな人間性」において,プロジェクト型の学習形態を採用することには,読書指導に関する知識や技能を応用のきく力として身につけさせるという点で,一定の効果を見出すことができた。
著者
水田 重幸 都築 繁幸
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.11, pp.95-100, 2008-02
被引用文献数
2

人工内耳を装用している子どもの学校生活の実態について検討した。その結果,人工内耳を装用している子どもとの面接場面では人工内耳を使ってよくやりとりできるので学校生活でも問題はないと考えていたが,学校生活では聞こえない場面や聞こえにくい場面が多く,よく理解できない場面として,全校朝会や児童集会など多くの児童が集まる活動や体育や運動会など広い場所で行われる活動があり,放課や校内放送など騒がしい場面では聞きとりにくいことが示された。周りにいる先生や児童の配慮が必要になる。人工内耳を使っている子どもの学校生活や学習場面での配慮として教室環境や座席の位置,先生の話し方や授業での視覚的教材の活用など,人工内耳を使用した子どもの理解を助ける工夫が必要である。先生が板書したり,わかりやすくゆっくりと話しかけたり,わかったかどうかを確認しながら進めていくなどの配慮が必要である。今後は,特別支援教育でどのような支援をうけることができるかが課題である。
著者
松本 昭彦
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.9, pp.53-60, 2006-03

本年7月,キミ子方式のペン画の描き方を岡崎市立常磐南小学校の9名の教諭たちに体験してもらった。その後の教諭たちに指導された児童らの作品や感想文から判断すると,描き方について具体的な指示のあるキミ子方式は,観察力と描写力の向上だけでなく,人間性の成長にも効果があったと思われる。教師が変われば子どもらも変わると言えよう。それゆえ教える側の教師が学ぶことは,教育を改善していくための原動力になるものと考える。
著者
戸田 和幸 野崎 浩成
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.45-49, 2010-02

ネット社会のトラブルは,『他者意識(倫理)』と『自己防衛(安全)』の欠如が引き金になっている場合がほとんどである。近年,学校は情報安全教育にチャット・メール・掲示板等の体験を取り入れ,効果をあげている。本研究では,『本名』と『匿名』の立場に潜む学習者の認知に働きかける違いと,『他者意識』と『自己防衛』の間に関係があるとした研究 123 )に沿って,チャットを体験した学級と体験しなかった学級との情報安全に関する対処能力の違いを探った。併せて,学校教育という特別な環境で行う,『本名』と『匿名』の二つの立場のチャット体験が学習者の認知に影響を与え,「情報化社会を生きる力」につながる可能性を示唆していることを確認した。
著者
平野 みどり 小川 正光
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.7, pp.35-43, 2004-02

授業方法の変化にともない,近年,供給が増加しているオープンプラン・スクールを対象とし,愛知県内27校について,オープンスペースの類型と活用実態を調査をもとに検討した。①オープンスペースの構成は,学校規模との関係が深いこと,②オープンスペースは,多様な授業の形態に対応可能なことが評価され,音の問題などの問題指摘は少ない,などの成果が得られた。
著者
新山王 政和 寺島 真澄
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.195-202, 2010-02

筆者が理想として思い描く音楽科授業の姿とは,表面的でその場限りの楽しさを負いかける「一過性の単なる遊びの場」から脱却し,ストレス・フリーに音楽の知識や知覚力を身に付け,それを使いこなして『共働・共創・共感・共有』を楽しむ場が実現されたものである。また現在筆者が最も懸念していることは,クラス担任による音楽科授業の多くでは,子ども達に「思いや意図」を持たせても,それを音や音楽によって伝える演奏表現の技術(伝える技や方法)の指導が充分に行われていないことである。 集会活動の一つとして「全校音楽集会」を定期的に開いている小学校は少なくない。しかし中には単に学芸会の予備的な位置づけで行っているものや,鑑賞教室の一つとして開催される「劇場型」のもの,単なる発表の場などに止まっているものも少なくない。そのような中,愛知県岡崎市立矢作南小学校では全校音楽集会へ音楽専門の教師(研究会や研修等で音楽部会に所属する教師)が積極的かつ戦略的に関与することで,単なる一行事から「クラスの音楽科授業では体験しにくいレベルの高い音楽活動に触れられる場」へ発展させるとともに,「音楽専門の教師による指導を見聞きしたクラス担任教師がそのノウハウをクラスへ持ち帰られるスキルアップの場」へ脱却させていた。このように全校音楽集会を学校内教育活動のコアと位置づけたことにより,音楽専門の教師による音楽レベルの質的保証と技能向上が図られただけでなく,教師のスキルアップや授業改善の場としても活用され,その効果は教師と児童の垣根を越え,さらに授業の枠も越えて広く学校内音楽活動全体へと波及していた。本報告では,この「子ども⇔子ども,子ども⇔教師,教師⇔教師」で取り組んだ「共働,共創,共感,共有」をめざした活動へ特に着目し,その概要をリポートする。
著者
上原 三十三
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.161-168, 2010-02

なわとび運動における「二人連鎖交互回しとび」は学校体育のための運動教材として新しい可能性をもつ技である。しかし,この技を実践し伝播するために前提となる指導法は未開発の状況にある。そこで本研究では,「二人連鎖交互回しとび」のこれまでの指導実践で用いられてきた,動感形態の発生を促す教材を運動モルフォロギーの視点から検討し,それらの問題点を明らかにしようとした。その結果,この技を一緒に行うペアーのなわ操作と自己のなわ操作の両者の努力操作が志向され,さらに同時に,自己のなわ操作においてもなわを回すことによって感じられる抵抗感があるなかで,左手と右手の努力操作が志向されるような運動課題が,教材として適当であると考えられた。
著者
佐藤 洋一 伊藤 清英
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.7, pp.135-143, 2004-02

国語科におけるコミュニケーション能力育成の課題の一つは、身につけさせるべき「国語学力」の明確化(系統的な学力保障)と、それと結びついた人間性・社会性の育成を図る「学習システム=授業・評価システム」の開発と提案である。「確かな学力」の定着は、基礎・基本の繰り返しやスキルの一覧表の提案のみでは、真に子どもたちの「生きる力」の育成とはなりにくい。授業提案と評価研究レベルで、「確かな学力」の育成が「豊かな人間性・社会性の育成」にリンクするような、到達目標(評価基準)の明確化・系統的で段階的な授業・評価システム」が緊急に求められている。本稿は、到達目標(評価基準)を明確にしたコミュニケーション学習と評価研究の一環として、文学教材(ここでは物語教材)を<情報理解から発信の一モデル>としてとらえなおし、「話す・聞く/関わり学び合う」というスピーチの交流と評価学習へと結びつけた実践的な提案である。
著者
五十嵐 哲也
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.211-216, 2010-02

本研究は,小学生における不登校傾向を測定する尺度を開発し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。289名の小学生に対する調査の結果,小学生の不登校傾向は「休養を望む不登校傾向」「遊びを望む不登校傾向」の2因子構造であることが明らかとなった。また,信頼性,妥当性はともに満足できるものであり,本尺度の有用性が実証された。さらに性差を検討した結果,「休養を望む不登校傾向」で女子の得点が高いことが認められた。本研究の結果を見ると,小学生の段階では中学生よりも「学校に行きたくない」と感じる気持ちが複雑化しておらず,より単純化した構造であることが示されたと言える。このことは,中学生において急激に増大する不登校の予防のために,その心的状況がより複雑化する前の小学生の段階から援助を実施することの必要性を示唆していると考えられる。