著者
遠藤 邦彦 千葉 達朗 杉中 佑輔 須貝 俊彦 鈴木 毅彦 上杉 陽 石綿 しげ子 中山 俊雄 舟津 太郎 大里 重人 鈴木 正章 野口 真利江 佐藤 明夫 近藤 玲介 堀 伸三郎
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.353-375, 2019-12-01 (Released:2019-12-24)
参考文献数
77
被引用文献数
2

国土地理院の5m数値標高モデルを用いて作成された武蔵野台地の各種地形図により,武蔵野台地の地形区分を1m等高線の精度で行った.同時にデジタル化された多数のボーリングデータから各地形面を構成する地下構造を検討した.その結果得られた地形面は11面で,従来の区分とは異なるものとなった.既知のテフラ情報に基づいて地形発達を編むと,従来の酸素同位体比編年による枠組み(町田,2008など)と矛盾がない.すなわち古い方からMIS 7のK面(金子台・所沢台等),MIS 5.5のS面,MIS 5.3のNs面,MIS 5.2-5.1のM1a面,M1b面,MIS 5.1からMIS 4の間にM2a面,M2b面,M2c面,M2d面,MIS 4にM3面,MIS 3-2にTc面の11面が形成された.武蔵野台地は古期武蔵野扇状地(K面)の時代,S面,Ns面の海成~河成デルタの時代を挟み,M1~M3面の新期武蔵野扇状地の時代,およびTc面の立川扇状地の時代に大区分される.M1~M3面の新期武蔵野扇状地が7面に細分されるのは,M1面形成後の海水準の段階的低下に応答した多摩川の下刻の波及による.
著者
杉中 佑輔 石綿 しげ子 鈴木 正章 堀 伸三郎 中山 俊雄 遠藤 邦彦
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

武蔵野台地の地形については,貝塚(1964)をはじめ多くの研究があり,淀橋台に代表される下末吉面(S面),M1面,M2面,中台面に代表されるM3面に大きく区分されてきた.最近,遠藤ほか(2018)はこの区分を再検討し,もともとの扇状地面を小平面(M1a;植木・酒井,2007)とし,さらにM2面として仙川面,石神井面等を分け,さらにM3面として中台面以外に十条面等を設定した.この武蔵野台地は多摩川の作った扇状地であることが知られているが,武蔵野台地北東端に位置する赤羽台及び本郷台の一部は扇状地の先端部にしては極めて平坦で特異である.貝塚(1964)はこの特異性について,赤羽台及び本郷台は入間川か荒川のような南東に流れた河川の氾濫原ないし三角州ではないかと述べている.杉原ほか(1972)では赤羽台北西端崖周辺での露頭調査及びボーリング柱状図により,東京層の上面に起伏を持ち,関東ローム層と東京層の間に認められる礫を含む砂よりなる赤羽砂層の層厚に変化があることが報告されている.赤羽台及び本郷台を含む武蔵野台地北東部はM2面とされてきたが,国土地理院の5mDEMに基づき作成したRCMap(杉中ほか,本大会),さらに陰影起伏図等を用いた地形解析を行ったところ,従来の考え方とは異なる地形発達が想定されることが分かった.明らかになった地形面としては,本郷台の中にとり残された淀橋台相当の残丘(S面),神田川沿いに西から東に延びる扇状地面を発達させるM1面,石神井川沿いに西から東に延びるM2面(a,bに細分),赤羽台から上野につながるM2面,本郷台と赤羽~上野の狭い台地に挟まれたM3面,石神井川が谷田川に沿って流れていた時代の沖積面などである.平坦な地形で特徴づけられてきた赤羽台をRCMap等で微地形判読を行ったところ,蛇行する流路と微高地に分けられる(流路の面を十条面と呼ぶ).また,王子から不忍池の間では谷田川の低地の両岸に十条面を追跡することができ,根津や東大病院の建つ面と対比することができる.東大構内については阪口(1990)で検討がなされており,病院面はM2面とされていた本郷台よりも低い面で,M3面に相当するものと示唆されている.この十条面を横断するように赤羽台の地質断面図を多数作成し、検討を行ったところ,十条面を挟む微高地を成すM2面構成層とは不連続な谷地形であることがわかった.この十条面は比較的薄いローム層で覆われ,礫層・礫混じり砂層を主体に構成される.さらに王子から不忍池にかけても同様に検討を行ったところ,同様に谷地形が確認された.このように赤羽~王子~根津を結ぶ谷はMIS4と考えられてきたM3面の化石谷であるといえる.この谷を秋葉原方面へ沖積低地地下に追うと,総武線付近で-5m前後に谷地形と礫層が確認される.この谷地形は東京層を穿つもので薄い礫層を伴い,その上部は縄文海進時の波食の効果で削られている.この化石谷は幅300m程度と狭く,荒川が流下したというより入間川規模の河川の流下が考えやすい.しかしながら、上流部は縄文海進時などにおいて侵食されてしまっている.参考文献遠藤邦彦・石綿しげ子・堀伸三郎・中山俊雄・須貝俊彦・鈴木毅彦・上杉陽・ 杉中佑輔・大里重人・野口真利江・近藤玲介・竹村貴人(2018本大会)東京台地部の東京層と,関連する地形:ボーリング資料に基づく再検討.貝塚爽平(1964)東京の自然史.紀伊国屋書店阪口豊(1990)東京大学の土台―本郷キャンパスの地形と地質.東京大学史紀要,第8号,1-34杉原重夫・高原勇夫・細野衛(1972)武蔵野台地における関東ローム層と地形面区分についての諸問 題.第四紀研究,11,29-39杉中佑輔・堀伸三郎・野口真利江・石綿しげ子・遠藤邦彦(2018本大会)レインボーコンターマップ (RCMap)による地形解析とその応用.植木岳雪・酒井 彰(2007)青梅地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅),産総研地質調 査総合センター
著者
藤根 久 遠藤 邦彦 鈴木 正章 吉本 充宏 鈴木 茂 中村 賢太郎 伊藤 茂 山形 秀樹 Lomtatidze Zaur 横田 彰宏 千葉 達朗 小杉 康
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.253-270, 2016-12-01 (Released:2017-01-12)
参考文献数
46
被引用文献数
3

有珠火山の南麓には善光寺岩屑なだれ堆積物(Zd)が多数の流れ山をなして分布する.Zdは従来,9kaから6kaに発生した有珠山外輪山の崩壊によるとされてきた.海岸の近くの岩屑なだれの流れ山に囲まれた標高約4.5mの低地においてボーリングコアを2本採取し,その層序,年代,堆積環境,植生変遷を検討した.両コアはほぼ岩相が同様で,標高+2~-6mにわたり連続的に泥炭層および有機質シルト・粘土層が見られた.AMS法による14C年代測定の結果,最下部の有機質シルト・粘土層から20calkaBP頃の年代が得られた.泥炭層下部には15calkaBP頃に濁川カルデラから飛来した濁川テフラ(Ng)が,泥炭層中部には駒ヶ岳から6.6calkaBPに飛来した駒ヶ岳gテフラ(Ko-g)が,同上部には白頭山苫小牧火山灰(B-Tm)などのテフラが認められた.コアの基底には洞爺火砕流堆積物(Toya(pfl))と同質の軽石に富む軽石質火山灰層が捉えられた.珪藻化石は,20~10calkaBPに湖沼~沼沢湿地が継続し,10calkaBP頃に沼沢湿地に移行し,以後0.4calkaBPまで継続したことを示し,先行研究で明らかにされている最終氷期から完新世にかけての北海道の植生変遷と矛盾しない.花粉化石は,20~15calkaBPに亜寒帯性針葉樹林が卓越し,15calkaBP頃からカバノキ属が増大する移行期を挟み,10calkaBP頃に温帯落葉広葉樹林へと推移したことを示した.以上から,2本のコアの泥炭層および有機質シルト・粘土層は,Zdの岩屑なだれで閉塞された凹地に形成された湖沼~沼沢湿地の堆積物で,岩屑なだれの発生は20calkaBPのLGM(最終氷期最寒冷期)の頃である可能性が極めて強い.また,有珠外輪山の活動は20calkaBPより以前に始まって山体を形成していたことになる.
著者
大野 希一 国方 まり 鈴木 正章 西村 裕一 長井 大輔 遠藤 邦彦 千葉 達朗 諸星 真帆
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.619-643, 2002-11-29
被引用文献数
4

The volcanic activities of the Usu 2000 eruption were monitored and reported by many scientists and the mass media. Summarizing these observation results, most of relatively large explosion events occurred during March 31 to April 7, 2000. Around the Nishiyama and Kompira crater groups, the pyroclastic deposits with multi units can be divided into 19 layers on the basis of their visible color, grain size and sedimentary structure; from Layer A to Layer S in ascending order. The eruptive dates of each layer inferred from the wind directions, the eruptive sequence, and the distribution of deposits are summarized as follows; the Layer A, characterized as the light gray color ash fall deposit including in some pumice layers, was generated by March 31 phreatomagmatic explosions occurred at Nishiyama crater group. The Layer B, composed poorly sorted breccia and ash layer with gray color, was generated on March 31 p.m. at Nishiyama craters. The Layer C to the Layer G, dark brown-gray aggregate ash, were derived from the volcanic eruptions occurred on April 1 to 2 in Nishiyama and Kompira crater group. The Layer H to Layer M and Layer O, mainly consist with gray and reddish brown aggregate ash including in lithic fragments, were generated during April 3 and 4 in Kompira crater group. The Layer N, which distributes around N19 crater, generated on April 4. The Layer P, massive ash with gray color, was generated on April 6 in Kompira crater group. After April 7, the Layer S, characterized as light brown aggregate ash, has been generated from the recent minor activities around limited craters. The amount of Layer A fallen in the range from the source to Toyako Onsencho Town is estimated at 1.2×10^8 kg, and total amount of Layer A including in the distal area is 2.4×10^8 kg. On the other hand, amount of other deposits generated during April 1 to 6 (e.g. Layer B, N, and Q) is an order of 10^6-10^7 kg. Total amount of the pyroclastic deposits erupted from the Usu 2000 eruption is more than 6.4×10^8 kg.
著者
小杉 康 佐々木 亨 橋本 雄一 鈴木 正章 瀧川 渉 山崎 京美 富岡 直人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

「噴火湾北岸縄文エコ・ミュージアム」の基本計画を作成し、小幌洞窟遺跡、有珠6遺跡の発掘調査による学術成果に基づいて、それぞれの遺跡をサテライトとして整備して、コア・ミュージアムを開設した。