- 著者
-
鈴木 豪
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.2, pp.138-150, 2015-06-30 (Released:2015-08-22)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
-
2
1
本研究では, 鈴木(2014)の手続きを改め(グラフの提示と共通点・相違点の発見順序の固定), 多様な考え方の比較検討方法の違いが課題解決に及ぼす影響を検証した。平均を既習である小学5年生(N=44)を, 代表値(平均, 最頻値, 最大値, 最小値)をもとにした四つの考え方について, (a) 共通点・相違点を考える比較検討方法(共通相違群), (b) 最も良い考え方を選びその理由を考える比較検討方法(最良選択群), のいずれかを経験する群に割り当てた。児童は比較検討を行った後, 事後課題2問に回答した。その結果, 外れ値が存在するときに, 次に得られる値を予測する事後課題では, 共通相違群の方が, 外れ値を除いた平均や最頻値をもとに回答できた割合が大きかった。また, 外れ値を含んだ平均をもとに回答した児童のうち, 外れ値の存在に言及した児童の割合も共通相違群の方が大きかった。次に, 2種のデータの大小を比較する事後課題では, 共通相違群の方がより多くの比較方法を示すことができていた。共通点・相違点を考える比較検討方法が, 最も良い考え方を選ぶ比較検討方法よりも, 代表値を用いた課題解決により良い影響を及ぼすことが示された。