- 著者
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長田 庸平
坂井 誠
黄 国華
広渡 俊哉
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.1, pp.30-35, 2013-04-15
Robinson(1986)はアトモンヒロズコガMorophaga bucephalaとその近縁種であるM. vadonella,M. soror,M. cremnarchaの計4種をbucephala種群としてグルーピングした.その後,Ponomarenko & Park(1996)は韓国京畿道でアトモンヒロズコガに近縁なM. parabucephalaを新種として記載した.どの種も前翅の後方に茶色い大きな斑紋を有し,種によってその斑紋の形状がわずかであるが異なっている.交尾器の形状は上記の近縁種間で顕著に異なるが,成虫の斑紋が互いによく似ているため国内でも交尾器の形状に基づいた分類学的な情報が必要であると考えた.著者らは国内各地の「アトモンヒロズコガ」とされている標本を解剖し,交尾器を観察した.その結果,北海道から八重山までのほとんどの地域で得られた個体はM. bucephalaであることを確認したが,大分県日田市産の交尾器の形状がM. bucephalaとは顕著に異なり,朝鮮半島に分布するM. parabucephalaと同定できた.国内ではこの種を大分県日田市のみで確認したが,国外では朝鮮半島の他に中国広東省南嶺山脈でも確認した.なお,本種の雌交尾器を初めて図示した.1.Morophaga parabucephala Ponomarenko & Park,1996(新称) ニセアトモンヒロズコガ(Figs 1a, 2a, 3a-h) 前翅後縁の暗褐色斑の基部の幅が狭く,外縁が蛇行する.雄交尾器のバルバの後縁は直線状,サックスは細く,エデアグスは非常に細長い.雌交尾器の交尾口周辺の縁は中央で切れ込む.分布:九州(大分県);韓国(京畿道),中国(広東省)寄主:不明 2.Morophaga bucephala(Snellen,1884) アトモンヒロズコガ(Figs 1b, 2b, 4a-h) 前翅後縁の暗褐色斑の基部の幅が広く,基部が丸みを帯びる.雄交尾器のバルバの後縁は強く窪み,サックスはやや幅広く,エデアグスは細長い.雌交尾器の交尾口周辺の縁はより強く切れ込む.分布:北海道,本州,四国,九州;ロシア,中国,韓国,インド,ビルマ,マレーシア,スラウェシ島,ニューギニア島.寄主:カワラタケ(サルノコシカケ科)から得られた記録がある.