- 著者
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高橋 晋也
羽成 隆司
- 出版者
- 一般社団法人日本色彩学会
- 雑誌
- 日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.1, pp.14-23, 2005-03-01
- 被引用文献数
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色嗜好を心理学的に位置付け、明らかにするためには、「何色が好まれるか」といった色視点の研究だけでなく、「どのように色を捉えるか」といった人視点の研究が必要である。本研究では、色嗜好における人(主体)要因の重要性を示すことを目的として、認知的操作の有無による個人内の色嗜好の変動性を分析した。260名の被験者に対し、4週間を挟み2度の色嗜好調査を実施した。色嗜好の測定は、色名で呈示される12色に対し、visual analog scale (VAS)上でそれぞれの好嫌度を答えさせる方法で行った。2度目の調査時に被験者は2群に分けられ、統制群は1度目と同じ色嗜好調査を繰り返したが、実験群の被験者に対しては色嗜好調査の前に、特定の色の好嫌を強く意識させるという認知課題が与えられた。2度の調査間における色嗜好の個人内変動を群間で比較したところ、12色に対するVAS評定平均値の変化量や、評定結果の順位相関には差がなかったが、好嫌のばらつきの指標となる標準偏差変化量において有意な群間差が認められ、実験群の方が統制群よりも好嫌のばらつきが増大することが示された。この結果は、認知課題を行った実験群の被験者が、"好き/嫌い"という対立的な認知図式を活性化した状態で12色の評定を行ったためと考えられ、色嗜好表出過程における認知処理の影響の大きさが明らかにされた。また、このような実験群のデータ変動(好嫌のばらつきの増大)は、12色に対する最高評定値の上昇より、むしろ最低評定値の低下として顕著にあらわれており、個々人の"色嗜好スキーマ"における「嫌いな色」の位置付けの重要性が示唆された。これらの実験結果に基づき、色嗜好における主体要因(トップダウン要因)の重要性が議論され、さらに、人視点で色嗜好にアプローチする際の具体的測定手続きとして、従来型の色選択法にはないVAS測定の有効性が主張された。