著者
オメル アイダン 川本 眺万 大塚 悟 久野 覚 片木 篤 西 順次 YUZER Erdoga
出版者
東海大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

本研究ではトルコ・カッパドキア地方にあるデリンクユ古代地下都市を対象として、その住環境および安定性についてまとめたものであり、次の順次で研究成果をまとめている。1) カッパドキア地方の地理、地質、気候、火山活動、地震活動等についてまとめ、地下都市成立要因を昼夜の温度差、建材となる樹木が少ない、地質的には掘削しやすい凝灰岩、地震からの避難等の理由と考える事ができることを明らかにした。2) この地方の歴史背景についてまとめた。歴史背景においては、敵からの迫害や周辺国からの侵略から身を守る為に地下に住んだ事の可能性が高いことを示した。3) カッパドキア地方の地下都市に存在する凝灰岩について既存の実験結果と今回行った実験についてまとめ、さらに凝灰岩の長期、短期特性について収集および整理した。また、地下都市の存在する岩盤の評価も行った。4) 考古学的見解から、カッパドキア地方を中心にこの地域の鉱山活動についてまとめ、カッパドキア地方周辺の遺跡の出土品と鉱山活動から、この地方において地下空間利用は少なくとも紀元前3000年頃までさかのぼることと結論づけた。5) カッパドキア地域の地下空間利用は1500年前よりも以前であることを紹介し、現代における地下空間利用事例として貯蔵施設,(果物、野菜、ワイン)、地下工場、半地下ホテルやレストラン、半地下住居、地下野菜栽培施設を紹介し、そのメリット・デメリットを論じた。6) デリンクユ地下都市に関して空間形態の分析を行い、実験データをもとに、換気シャフトおよび地下7階ホールの短期、長期安定性についてまとめ、なぜ今日まで地下都市が残っていたのかを力学的に明らかにした。7) 住環境に対して本研究で行った計測結果にもとづいて地下都市の換気シュミレーションを実施し、地下都市内部の発熱要素は換気に影響を与える事がなく、外気温が換気に大きく影響を与えており16℃以下という条件で換気が行われていたことを示した。特にこの地方は、年間を通して夜には16℃以下となり換気を損なうことはないことが明らかになった。これらの調査・分析・解析結果からデリンクユの空間形態および1万人以上の人々が生活する事のできる地下都市の換気構造を明らかにし、また、有限要素法解析から、地下都市が安定している事を明確にした。
著者
金子 知世 三輪 南海 齋藤 輝幸 久野 覚
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成30年度大会(名古屋)学術講演論文集 第6巻 温熱環境評価 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.161-164, 2018 (Released:2019-10-30)

本研究では、全館空調システムを実際に導入した住宅複数戸にて調査を行い、居住者の意識および全館空調システムの年間を通じた運転モードや設定温度などの運転状況について明らかにすることを目的としている。結論として、多くの居住者は全館空調システムに満足しており、省エネルギーよりも快適性を重視した運転を行い、24時間連続で冷暖房を運転していた。
著者
原田 昌幸 久野 覚 阿部 慎一 田中 秀夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.61, no.484, pp.89-95, 1996-06-30 (Released:2017-02-02)
被引用文献数
4 3

The purpose of this paper is to clarify the residents' consciousness to new subway service and its effects on residential environment. One residential area in Nagoya, which had new subway service, was selected, and two sampling surveys were conducted on it before and after its construction. The findings were as follows: More than 60% residents wanted new subway service and evaluated that the effects were desirable. However the further from the station there were subjects' houses, the less they wanted the new subway service and the lower they evaluated the effects, the effects on residential environment seemed to be small, but the degree of dissatisfaction for two items concerning car, 'parking on the road' and 'lack of parking lot', diminished.
著者
久野 覚 齋藤 輝幸 飯塚 悟 岩田 利枝 望月 悦子 加藤 信介 佐古井 智紀
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、一日および年間を通じた実験により、外界の変化とそれに伴う住宅内環境の変化および人間の行動・心理の変化を捉え、地球環境保全の時代にふさわしい住宅のあり方について検討することである。温熱環境については環境計測と被験者実験による生理・心理反応の把握、数値流体力学を用いた夏季通風時における室内温熱・気流環境と人体温熱生理状態の予測、換気方式の違いによる室内環境への影響評価、光環境については居住者の光環境調整行動による照明用電力削減効果とLED照明によるメラトニン抑制効果等、新しい評価法の提案を行った。夏期通風時における人体熱収支については従来の定説を覆す成果を上げた。
著者
高 娟淑 久野 覚 原田 昌幸 中山 和美 飯村 龍
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.74, no.638, pp.427-433, 2009-04-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

In this study we examined ventilation in summer and solar insolation in winter as elements of the indoor environment, with the objective of analyzing the seasonal characteristics of thermal environment evaluation as well as identifying how particular characteristics of space affect the evaluation of the thermal environment. The results were as follows. We found that in summer, feelings of discomfort disappeared even at the high indoor temperature of 33°C when a breeze of at least 0.6 m/s was present. In winter, some subjects expressed a desire for the temperature to be raised while others desired it to be lowered, with a neutral temperature of 23-25°C. We found that subjects' degree of satisfaction to exposure to sunlight was “just right” at temperatures over 25°C, with dissatisfaction at the amount of sunshine being eliminated. During winter, by moving into and out of sunlit areas, subjects created a transient thermal environment in which they actively enjoyed temporary pleasant sensations even in high temperatures.
著者
岩田 香織 松原 祐子 齋藤 輝幸 久野 覚
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.185, pp.1-9, 2012-08-05
参考文献数
14

オフィスでは夏期の冷房設定温度28℃及びCOOL BIZが推奨されているが、28℃はやや暑く、屋外から入室した者は不満を生じやすい。そこでKunoは採涼空間の利用を提案した。採涼空間利用時の効果と適切な利用条件を検証するために3段階の被験者実験を行った。被験者は屋外空間に椅座安静状態で30分滞在した後、28℃の執務空間に10分(実験IIIは5分)滞在した。その後、24℃または26℃の採涼空間に所定の時間滞在し、再び28℃の執務空間に30分(実験IIIは60分)滞在した。本報では採涼空間利用時の発汗抑制効果等を示し、外気温33℃以上で24℃20分以上、外気温33℃以下で24℃5分の採涼空間滞在が適切であることを明らかにした。
著者
久野 覚 高橋 晋也 古賀 一男 辻 敬一郎 原田 昌幸 齋藤 輝幸 岩田 利枝
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

快適性には、不快がないという消極的(negative)な快適性と、面白い・楽しい・気持ちいいという積極的(positive)な快適性の2種類がある。後者の快適性はプレザントネス(pleasantness)とも呼ばれている。現在の技術の下で、建築環境工学的諸問題の多くが解決され、ほぼ不快のない空間の達成がなされていると言っていい。しかし、このような状態では、暖かいとか涼しいといったプレザントネスはない。本研究の目的は、オフィス環境における温熱環境と照明視環境を中心にプレザントネス理論を応用した新たな環境調整法を検討し、その評価手法を確立することである。得られた成果は以下の通りである。1)温熱環境:被験者実験により、低湿度空調のプレザントネス効果および屋外から室内への移動(環境変化)に伴う生理心理反応とプレザントネス性の関係について明らかにした。さらに、パーソナルコントロールが可能な天井吹き出しユニットを用いた空調方式のプレザントネス効果について研究を行った。他の研究者によって行われている研究との違いは、アンビエントつまり周囲気温を中立温度ではなく不快側に設定する点である。2)視環境:・高輝度窓面をシミュレートする調光可能な光源装置を作成し、オフィス環境実験室でアクセプタブル・グレアの実験を行った。高輝度面に対する被験者の向き、机上面照度、高輝度面の立体角のの影響などについて明らかにした。また、視覚刺激生成器(VSG)を用いた色知覚の研究、光とヒトの生体リズムの研究を行った。3)以上の結果をもとに、オフィス環境におけるプレザントネスについて総括した。