著者
中村 俊夫 齋藤 努 山田 哲也 南 雅代
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

石英管内で金属鉄を加熱、酸化して鉄中の炭素を回収する方法を検討した。石英管内に1gの鉄試料と4gの助燃剤(CuO)を封入して、1000℃で15時間加熱した場合、炭素収率は90%程度であり、外来炭素の汚染無しに14C年代測定に必要な炭素量が回収できる。この方法を用いて、日本刀から分取した金属鉄中の炭素を抽出し、年代測定を行い、日本刀の公式な鑑定年代と比較した。公式鑑定は、測定結果とほぼ一致した。出所が不明な日本刀では古すぎる14C年代が得られ、14C年代を基に出所来歴の詳細を検討する必要がある。サビ鉄でも、予想される14C年代が得られたことから、サビ鉄の14C年代測定の実用化が可能になる。
著者
齋藤 努
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.376-379, 2018-08-20 (Released:2019-08-01)
参考文献数
4

日本刀の刀身は,内側の軟らかい鉄(芯鉄)を外側の硬い鉄(皮鉄)で包み込むことで製作される。皮鉄の素材を作るための技法として,刀匠が継承している卸し鉄という工程がある。低炭素の鉄に浸炭させる場合も,高炭素の鉄から脱炭する場合も,行っている作業は同様にみえるが,刀匠は,炉の深さや送風の強さなど,それぞれの目的に応じて理にかなった条件を達成させていることがわかった。
著者
齋藤 努
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.824-832, 1997-11-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1
著者
齋藤 努 坂本 稔 高塚 秀治
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.127-178, 2012-11-30

宮城県に在住する刀匠・九代法華三郎信房氏とご子息の栄喜氏のご協力により,代々継承している作刀技術のうち,「卸し鉄」「折り返し鍛錬」「焼き入れ」の3つについて,自然科学的な観点から調査を行い,下記の諸点が明らかになった。卸し鉄では,同じ炉を使い,ほとんど同じような動作をしているのに,軟鉄への浸炭と銑鉄からの脱炭という正反対の反応を起こすことができる。両者において,炉内ではまったく異なるメカニズムが働いていると推測される。すなわち,軟鉄の浸炭では,炉の上部で固体の鉄に炭素が吸収され,融点が下がって半溶融状態となり,炉底に垂れ落ちていく。炉底ではできるだけ風があたらないようにして,脱炭が起こらないようにする。一方,銑鉄の脱炭では,炉の上部で鉄が溶解して液体状態になり,炉底に少しずつ流れ落ちていく。炉底では羽口からの風があたるようにして,鉄中の炭素を燃焼させ,炭素濃度を下げる。折り返し鍛錬において,折り返し回数が増えるにつれて,炭素濃度の均一化されていく様子が観察された。参考文献などにある「折り返し鍛錬によって介在物が減少していく」という現象は確認されず,鍛接面に生じるものもスラグに由来するものも,折り返し回数が増えるほど小さくなり均一に分散されていくことがわかった。鍛造開始時の加熱温度については,仮着けでも泥沸かしでも,鉄の炭素濃度に応じて異なる傾向がみられた。また仮着けと泥沸かしの工程では,加熱温度,作業を行う温度,作業継続時間に相違がみられた。これはそれぞれの工程での目的と刀匠の意識が反映されているものと考えられた。焼き入れにおいて,沸と匂を作りわける場合の加熱温度の違いを実験的に確認できた。これは刀匠の感覚とも整合的であった。また焼刃土の下の鉄の温度の測定により,焼刃土が地部の徐冷に役立っていることが確認された。
著者
二宮 和彦 新倉 潤 佐藤 朗 寺田 健太郎 齋藤 岳志 松崎 禎一郎 友野 大 川島 祥孝 篠原 厚 久保 謙哉 齋藤 努
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.13-17, 2020-01-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1

大阪大学核物理研究センター(RCNP)ミューオン実験施設(MuSIC)から得られる,大強度の連続ミューオンビームを用いて,近年注目されている負ミューオンを用いた元素分析法の適用可能性を検討した。銅板で包まれた天保小判(19世紀,日本)について銅板を傷つけることなく,ミューオン特性X線の測定によって小判の金の含有率が53質量パーセントであることをわずか14分間の測定で同定した。本論文では,MuSICにおけるミューオン特性X線測定による元素分析の現状を概観する。
著者
齋藤 努 藤尾 慎一郎 土生田 純之 亀田 修一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題の目的は、古代の朝鮮半島と日本の青銅器を対象とし、鉛同位体比分析と元素組成分析によって原料産地を系統的に調べて、中国~朝鮮半島~日本における技術とモノの動き、製錬開始時期について考察を行うことである。日本側は古墳時代後期-古代初め頃までの古墳や遺跡の出土資料が、韓国側は国立中央博物館と釜山大學校博物館の所蔵資料が主な対象である。朝鮮半島出土資料は、韓国での発掘成果報告書刊行にあわせて分析を行い、データの蓄積を図った。
著者
齋藤 努
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.210, pp.153-169, 2018-03-30

神奈川県津久井郡(現在の相模原市)の津久井城御屋敷跡(16世紀後半)から出土した金粒付着かわらけに含まれている微細な金粒子を透過X線撮影によって検出し,そのうち表面に露出している5点を,マイクロフォーカス型蛍光X線分析装置で元素組成分析した。いずれからも,金粒に由来すると考えられる金,銀が見出された。銅も検出されているが,金粒が微細であることと,据置型蛍光X線分析装置によって周辺の付着熔融物にも銅が含まれていることがわかったので,金粒そのものに含まれているものか,付着熔融物に含まれているものか,あるいはその両者に由来するのか,判定できない。本分析資料の熔融物には,特徴的な元素として亜鉛が含まれていた。甲斐周辺の遺跡では,中山金山遺跡や甲府城下町遺跡の資料からも検出されており,化学組成とこれらの遺跡の年代のみで判断すると,甲斐から金がもたらされたとみることもできる。しかし,歴史的にみると,本分析資料は天正年間以降の,武田氏と後北条氏の関係が悪化していた時期のものと捉えられ,甲斐から金がもたらされたとは考えにくい。金・銀・銅・鉛・亜鉛などが一連の熱水鉱床で形成されていくことを勘案すると,駿河や伊豆の金山の可能性を考えておいた方がよい。特に,亜鉛が検出された中山金山と同じ鉱脈に属する富士金山には,注意を払っておく必要がある。神奈川県小田原市の小田原城跡御用米曲輪(16世紀後半)から出土した金箔かわらけ等を据置型蛍光X線分析装置で元素組成分析した。木の葉形金具と金箔片は,かわらけに付着している金箔とは異なる組成であり,異なる工程で作られたと考えられる。また,かわらけごとの金箔の組成の違いや,同一のかわらけ内でも金箔の分析部位による組成の違いなどが見出された。これらからみて,金箔はいずれも金,銀,銅を混合した合金として作られてはいるが,混合比率がわずかずつ異なる金箔が混在して使用されていることがわかった。
著者
齋藤 努
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.300-303, 2000-05-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

考古遺物の原料産地の推定は, その生産地とあわせて考えることによって原料の供給と生産, ものや人の移動や交流, 技術や文化の伝播などの状況を解析するのに役立つ。自然科学的な産地推定法の一つとして鉛同位体比法があり, 古代青銅器などの分析に適用されている。ここではその方法の原理とこれまでの成果, 古代銭貨である皇朝十二銭の分析結果について紹介する。
著者
山本 光正 宇田川 武久 齋藤 努 三宅 宏司 保谷 徹 山本 光正 坂本 稔 PAULJACK Verhoeven 前川 佳遠理 高塚 秀治 村上 藤次郎 法華 三郎信房 法華 三郎栄喜 伊達 元成 服部 晃央
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

国内・国外に所蔵される銃砲に関する文献史料(炮術秘伝書)および実物資料(銃砲)の調査を行い、16世紀なかば鉄炮伝来から19世紀末の明治初年までの日本銃砲史が5期に区分できることを示し、またその技術的変遷を明らかにした。鉄炮銃身に使用されている素材である軟鉄を作るための精錬方法である大鍛冶はすでに技術伝承が途絶えていたが、文献記録にある各工程の意味を明らかにし、その再現に成功した。
著者
小林 滋 齋藤 努 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, 1997-03-06

楽器音の自動採譜システムに関する研究で計算量が少ない方法として、同期加減算法[1] [2]があげられる。今回は、オーバーサンプリング法を用いた同期加減算法によりリアルタイムに音階判別ができる音階判別システムを構築したので報告する。