著者
齋藤 秀司
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

ホッジ予想はクレイ研究所が提出したミレニアム問題のひとつである.変動的ホッジ予想は,ホッジ予想よりは弱い予想であるが,アーベル多様体にたいしては同値である.最近の進展によりこの問題は,形式的スキームの代数的K群にたいする代数化の問題に帰着された.これはGrothendieckの偉業である形式的存在定理を大きく一般化する難題でこれまで一般的アプローチは知られていなかった.本研究は,リジッド解析空間のK理論を新たに構築することにより, リジッド解析的手法を上記の問題に適用する新たな道筋を開いた.
著者
寺杣 友秀 松本 圭司 志甫 淳 ガイサ トーマス 齋藤 秀司 木村 健一郎 花村 昌樹
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

超幾何関数に代表される特殊関数論を幾何学的な視点から見直し、それによってこれまで具体的に与えられていなかった対象の表示をあたえ理解を深める。とくに代数多様体の周期に関係したものを扱い、超幾何関数だけではなく、多重対数関数、多重ゼータ値、楕円曲線と関連する特殊関数の関係を明らかにする。その手法としてホモトピー修正の理論や曲線の対称積などがありこれらを用いて代数的サイクルを構成することが考えられる。また、多重ゼータ値の重さフィルトレーションに関するより詳しい解析を行った。また混合テイト・モチーフに関しては基礎理論の整備がまだまだ不完全なところもあるので、厳密な構成法などを確立する。
著者
上野 健爾 山田 泰彦 齋藤 政彦 加藤 文元 神保 道夫 齋藤 秀司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

上野はJ.Andersenとの共同研究で,曲線が退化する際のアーベル的共形場理論(bc系の理論)を構成した.この結果は,非アーベル的共形場理論からモジュラー函手を構成する際に,アーベル的共形場理論の分数ベキとのテンソル積を取ることが必要となり,点付き代数曲線のモジュライ空間の境界でのテンソル積の挙動を調べるために使われた.さらに,このモジュラー函手から構成される3次元多様体の不変量は,リー代数がsl(2,C)の時はReshetikhin-Turaevが構成した不変量と一致することがほぼ明らかになった.証明の詳細な詰めは次年度の研究で行う予定である.また,上野はアーベル的共形場理論を代数曲面の場合に拡張するための予備的な考察を行った.齋藤政彦はパンルヴェ方程式の初期値空間の研究を行い,初期値空間として登場する岡本・パンルヴェ対が逆にパンルヴェ方程式を決定することを,岡本・パンルヴェ対に変形理論を適用することによって示した.山田は多変数のパンルヴェ方程式を対称性の観点から研究した.また,神保は量子場の相関関数とq直交多項式との関連を考察した.また,齋藤秀司は非特異代数多様体のChow群に関するBloch-Beilinsonフィルター付けについて考察した.加藤はMumford曲線に関する研究を行い,Mumford曲線を被覆として持つ非アルキメデス的オービフォールドの特徴付けを与え,またモジュライ空間でのMumford曲線のなす軌跡の性質について新しい知見を得た.またMumfordによる擬射影平面の志村多様体としての具体的な構成を与えた.
著者
臼井 三平 加藤 和也 中山 能力 今野 一宏 森 重文 齋藤 秀司 並河 良典 藤木 明 大野 浩司 佐竹 郁夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

混合版多変数SL (2)軌道定理を証明した。混合版ボレル・セールコンパクト化、混合版SL (2)-軌道の空間、混合対数的ホッジ構造の分類空間を構成し、これらの成す基本図式を得た。これにより混合版の対数的ホッジ構造の基礎理論がほぼできあがった。以上の結果とホッジ予想や鏡対称性などとの関連も注目されるようになってきた。
著者
齋藤 秀司 小林 亮一 松本 耕二 藤原 一宏 金銅 誠之 佐藤 周友 斎藤 博 向井 茂 石井 志保子 黒川 信重 藤田 隆夫 中山 能力 辻 元
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

当該研究は(I)高次元類体論および(II)代数的サイクルの研究のふたつの大きな流れからなる。(I)高次元類体論は高木-Artinにより確立された古典的類体論の高次元化とその応用を目指している。この理論の目指すところは数論的多様体のアーベル被覆を代数的K理論を用いて統制することで、幾何学的類体論とも言える。整数環上有限型スキームにたいする高次元類体論は当該研究以前に加藤和也氏との一連の共同研究により完全な形で完成することに成功した。高次元類体論はその後もρ進Hodge理論などの数論幾何学の様々な理論を取り入れつつ展開し、世界的なレベルで研究が続けられている。当該研究の高次元類体論における成果として、整数論においてよく知られた基本的定理であるAlbert-Brauer-Hasse-Noetherの定理の高次元化に関する結果がある。(II)主要な目標は"代数的サイクルを周期積分により統制する"という問題に取り組むことである。この問題の起源は19世紀の一変数複素関数論の金字塔ともいえるAbelの定理である。当該研究の目指すところはAbelの定理の高次元化である。これは"高次元多様体X上の余次元γの代数的サイクルたちのなす群を有理同値で割った群、Chow群CH^γ(X)の構造をHodge理論的に解明する"問題であると言える。この問題への第一歩として、Griffithsは1960年代後半Abel-Jacobi写像を周期積分を用いて定義し、CH^γ(X)を複素トーラスにより統制しようと試みた。しかし1968年MumfordがCH^γ(X)はγ【greater than or equal】2の場合に一般には複素トーラスといった既知の幾何学的構造により統制不可能なほど巨大な構造をもっており、とくにAbel-Jacobi写像の核は自明でないことを示した。このような状況にたいし当該研究はBloch-Beilinsonによる混合モチーフの哲学的指導原理に従い、GriffithsのAbel-Jacobi写像を一般化する高次Abel-Jacobi写像の理論を構成し、GriffithsのAbel-Jacobi写像では捉えきれない様々な代数的サイクルをこれを使って捉えることに成功した。この結果により高次Abel-Jacobi写像がAbelの定理の高次元化の問題にたいする重要なステップであることが示された。当該研究はさらに発展しつつあり、Blochの高次Chow群、Beilinson予想、対数的トレリ問題、などの様様な問題への応用を得ることにも成功している。