著者
鈴木 富士夫 麻生 久 小林 弘行 大西 勉 石田 名香雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.488-494, 1986-06-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
30

Carboxyethylgemanium sesquioxide (Ge-132) のウイルス感染症に対する影響をマウスのインフルエンザ感染モデルを用いて検討した。10LD50量のインフルエンザを感染させたマウスに100mg/kg量のGe-132を経口的に頻回投与すると, 生理食塩水投与の対照群に比べ, 1) 生存率の上昇, 2) 肺内ウイルスの増殖抑制, 3) 肺内コンソリデーションの出現抑制, 4) HAI抗体価の上昇抑制などが認められ, 本化合物の感染防御効果が明らかとなった。この有効性は予防的投与では発現されず, ウイルス感染前後および直後からの予防・治療的あるいは治療的投与で顕著であった。また100mg/kgのip, sc, およびimなどの投与で, あるいは33~300mg/kgの経口投与でGe-132の抗ウイルス効果が確認されたが, 経口的に100mg/kg量を頻回投与するのが最も有効であった。Ge-132はin vitroでウイルス粒子やその感染細胞に直接的な影響を及ぼさないので, in vivoにおけるこのような効果は, 宿主の防御機能を介して発現されるものと思われる。因みにGe-132がinterferon-γを誘起したり, natural killer細胞の活性を亢進させることはすでに確かめられている。
著者
尾家 重治 神谷 晃
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.743-746, 1992-06-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
19

経腸栄養剤の投与バッグ内壁の赤色化から, 本剤の高濃度細菌汚染が判明した事例を経験した。使用残液の検討よりバッグ内壁の着色は, Serratia marcescensが産生した赤色色素によるものであることが判明した。この汚染原因としては, 16時間という長時間をかけて投与していたことと, 調製用具や投与バッグを水洗のみで繰り返し使用していたことが考えられた。
著者
吉田 俊昭 山本 真志 大石 和徳 田口 幹雄 井手 政利 渡辺 貴和雄 松本 慶蔵
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.332-343, 1986

本邦で合成開発された新アミノ配糖体系抗生物質HBKの蓬礎的・臨床的研究を, 他のアミノ配糖体系抗生物質を対照として行なった.呼吸器感染症由来の病原性の明礪な臨床分離株に対する本剤の抗菌力は, 他のデミノ配糖体系抗生物質と比較し, <I>S.aureus, E.coli, K.pneuronia, Entrbcter</I>, sp.に対1し他剤より優れ, <I>P.aeruginosa</I>に対し, ては中等度の成緩であった.<I>P. aeruginosa</I>に対し本剤と<I>Cefsulodin</I>との<I>in vitro</I>相乗作用が認められた.<BR>本剤75mg筋注時および100mg 1時間点滴静注時の血中濃度はピーク値で8.09μg/ml.半減期は109分, 108分であった.点滴静注時の局所疾中濃度の最高値は1.38μg/mlで, 喀痰中濃度は1. 15μg/mlであり, 喀痰中移行率ほ10.1%でありた.本剤気管内注入後の家兎血中濃度は30/分にピークを示し, 濃度依存性であった.<BR>呼吸器感染症10例に対し本剤75mg (または100mgないし50mg) を1日2回 (または1回) 筋注投与し, 著効1例, 有効9例, やや有効1例, 無効1例であった.2症例に本剤の吸入療法を行い有効性が認められた. 9症例に本剤100mg (または75mg) を1日2回点滴静注し, 有効6例, やや有効3例であった.有効以上の有効率は筋注, 吸入, 点滴静注でそれぞれ83%, 100%, 67%であった. 1例に耳閉感の副作用が認められた.<BR>以上より, 本剤は呼吸器感染症に対して臨床的有用性の高いアミノ配糖体系抗生物質であると結論される.
著者
椎木 一雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.604-609, 1989-05-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
11

New quinolone系抗菌剤, 4剤 (OFLX, ENX, NY-198, T-3262) の唾液中濃度を測定し, 口腔領域の感染症治療における有用性ならびにTDMへの応用について検討した。New quinolone系抗菌剤は各薬剤間に差はあるものの, 唾液中に測定可能な高い濃度力; 得られ, 血中濃度とパラレルな濃度推移を示した。この結果は今までの抗菌剤とは異なる本剤の特徴であり, chemoprophylaxisとしての有用性を評価し得るものであった。また, 唾液中濃度と血中濃度間には強い相関関係が得られ, 本剤は唾液中濃度から血中濃度を推測することの可能な薬剤であると考えられた。
著者
四辻 彰 伊東 優子 保田 隆 才川 勇 大角 誠治 矢野 三郎 上田 泰
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.294-303, 1988

Compromised host の対象として高齢者を取り上げ, その血清中での β-lactam 系抗生剤の sub-minimum inhibitory concentration (sub-MIC) シこおける抗菌作用を調べた。各血清60μl に薬液10μl を加え, それに菌懸濁液10μl を接種し 37℃ 4時間培養後, 生菌数の増減を測定した。高齢者の血清殺菌力は健常者に比べ <I>Escherichia coli</I> および <I>Klebsiella pneumoniae</I> に対しては弱まっている例が多かった。<I>Proteus</I> <I>mirabilis</I> T-277 株に対しては約半数例で高齢者の血清殺菌力は強まっていたが, T-250株 に対しては強まっている例はなかった。また<I>Proteus vulgaris</I>。<I>Pseudomonasaeruginosa</I> および<I>Staphylococcus aureus</I> に対しては健常者と同等の殺菌力であった。この殺菌因子として非働化で弱められる易熱性物質やペントナイト処理で除かれるリゾチームの関与が推定された。次に高齢者血清中での beta-lactam 系抗生剤の sub-MIC での殺菌作用をみると, pipera-cillin, cefoperazone および cefbuperazone は nutrient bmth (NB) 中でも高齢者血清中でも殺菌的または静菌的に作用した。一方 carbenicillin, cefazolin および cefmetazole は NB 中では菌の増殖を阻止したが高齢者血清中ではほとんど抗菌作用を示さなかった。
著者
中沢 昭三 小野 尚子 大槻 雅子 井沢 武年
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.512-521, 1970-09-25 (Released:2011-03-08)
参考文献数
5

Cefazolin is a new synthetic cephalosporin derivative developed at Central Research Laboratories of Fujisawa Pharmaceutical Co. in 1969.Presented in this report are the results of our study where this new antibiotic was compared with two known antibiotics of the cephalosporin family, Cephalothin and Cephaloridine, as to in vitro antimicrobial activity including antimicrobial spectrum, sensitivity of clinically isolated strains of Staphylococci, E. coli, etc., the effect of culture pH on the antimicrobial activity, stability against beta-lactamase, bactericidal activity, and development of resistance and in vivo therapeutical effect in experimentally induced infections in mice with Staphylococcus aureus, Diplococcus pneumoniae, E. coli and Klebsiella pneumoniae.Results : 1. Cefazolin is virtually the same antimicrobial spectrum as that of Cephalothin and Cephaloridine. In the antimicrobial activity, Cephaloridine was found superior to the other two, these latter two being virtually equal, when tested with Gram-positive organisms, while the three were comparable to each other when tested with Gram-negative ones.2. Clinically isolated staphylococcal strains were sensitive in the range of 6.25-0.05mcg/ml to Cephaloridine, in the range of 6.25-0.2mcg/ml to Cefazolin, and in the range of 0.78-4.2 mcg/ml to Cephalothin. Clinically isolated E. coli strains, on the other hand, were sensitive in the range of 50-3.12mcg/ml to Cephaloridine, in the range of 25-0.78mcg/ml to Cefazolin, and in the range of 100-0.78mcg/ml to Cephalothin.3. The antimicrobial activity tended to increase when the pH of culture increased in relative acidity.4. As was the case with Cephalothin and Cephaloridine, Cefazolin was found stable against betalactamase produced by Staphylococci.5. In therapeutical effect on infections in mice induced by Gram-positive organisms such as Staphylococci and Diplococcus pneumoniae, Cephaloridine was found best, followed by Cefazolin, then by Cephalothin. The same order of effectiveness resulted when cephalosporins were tested on the infections induced by Gram-negative organisms including E. coli and Klebsiella pneumoniae.
著者
高橋 昌巳 一幡 良利 吉田 英一 佐々木 千鶴子 与那覇 朝英
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.779-786, 1988

HeLa細胞の形成したmonolayerに肺炎桿菌を含む培養液を重層し, 菌の細胞吸着条件を求めた。その結果, 106CFU/ml以下の菌を含む培養液では3時間後の細胞吸着菌数が10<SUP>4</SUP>~10<SUP>6</SUP>CFU/mlに達した。肺炎桿菌を10<SUP>6</SUP>CFU/ml含むこの条件下で, AMKの<I>in vitro</I>のMIC濃度の10倍から100倍濃度を作用させ, 菌のHI寒天培地に発育できなくなる作用時間は10MICで18時間, 100MICで6時間後であった。しかしながら, L-プロス中では100MIC18時間作用後もなお48時間後に菌の発育が認められた。5種類の抗生物質の<I>in vitro</I>でのMICの100倍濃度を6時間作用させた結果では, DOXYがAMKと同様の結果を示したが, β-lactam系抗生物質ではHI寒天培地で10<SUP>2</SUP>~10<SUP>3</SUP>CFU/ml発育し, L-プロス中では10<SUP>-4</SUP>~10<SUP>-6</SUP>希釈管まで菌の発育が認められた。形態像はAMK100MIC作用後の光学顕微鏡的変化は認められなかったが, 走査電子顕微鏡的にはHeLa細胞と菌の両方が障害を受け, AMK除去後では細胞と菌の両方の回復してきた像が認められた。β-lactam系抗生物質では菌の伸長と内容物の吐出が光学顕微鏡下で認られた。
著者
小田切 繁樹 池田 大忠 鈴木 周雄 室橋 光宇 金子 保 中平 和男 中沢 久
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.248-285, 1986

BRL 28500は, β-lactamase阻害剤であるclavulanic acid (CVA) とticarcillin (TIPC) を1:15 (力価比) に配合した注射用抗生剤である。<BR>本剤を16人の健康成人男子志願者に点滴静注によって投与し, 臨床第一相試験として, 安全性ならびに血中濃度・尿中排泄に関する検討を行い, 次の成績を得た。<BR>1.BRL 285001回, 1.6g, 3.2gまたは6.49を点滴静注して, Dose responseを検討したところ, 最高血中濃度, AUC, 尿中回収量においてTIPC, CVAともにDose responseが確認された。<BR>2.BRL 285001回, 3.29点滴静注 (1時間) による6日間連続投与において, 1日目と6日目のTIPC, CVAの各血清中濃度, 各尿中排泄量とにほとんど差は認められなかった。また, TIPC, CVAともに連続投与による蓄積傾向は認められなかった。<BR>3.安全性については, Dose responseの検討の中で, 初回1.6g点滴静注後1例に発熱・発疹がみられたが, 特に処置することなく漸次消失した。その他, 臨床症状・臨床検査値に異常は認められなかった。
著者
保田 隆 渡辺 泰雄 四辻 彰 林 敏雄 南 新三郎 岡本 世紀 山城 芳子 荒木 春美 伊東 優子 本村 桂子
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement9-Base, pp.95-109, 1988-12-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
12

新ピリドンカルボン酸系合成抗菌剤T-3262のin vitroおよびin vivo抗菌活性をnorfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) を対照薬剤として比較した結果, 以下の成績を得た。1) T-3262はグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して広い抗菌スペクトラムを有していた。グラム陽性菌に対しては, すべての対照薬剤より強い抗菌力を示し, またグラム陰性菌に対しては CPFXとほぼ同程度, NFLX, OFLXより優れた抗菌力を示した。2) T-3262はPseudomonas aeruginosaを含むブドウ糖非醗酵菌, Bacteroides fragilisを含む嫌気性菌に対しても強い抗菌力を示した。3) T-3262はmethicillin耐性ブドウ球菌およびnalidixic acid耐性グラム陰性菌に対しても強い抗菌力を示した。4) T-3262の抗菌力に及ぼす諸因子の影響では培地の種類, ヒト血清添加の影響はほとんど受けず, 培地pHがアルカリ性側のとき抗菌力が強まった。5) T-3262の作用は殺菌的であった。6) グラム陽性菌およびグラム陰性菌を用いたマウス実験的全身感染症でT-3262は優れた治療効果を示した。特にグラム陽性菌においてすべての対照薬剤より優れた治療効果を示した。
著者
川原 富美男 大家 毅 永津 芳雄 内田 広
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Supplement2, pp.122-134, 1990-11-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
11

Fleroxacinの代謝物をイヌ及びウサギの尿から単離, 同定した. また, 第1相臨床試験で得られた血清及び尿を用いてfleroxacinの代謝を検討し, 以下の知見を得た.1.イヌ及びウサギの尿からは未変化体, デメチル体, N-オキシド体が, ウサギの尿からはこれら以外にもデメチルオキソ体, ホルミル体の合計5個が単離, 同定された.2.ヒトの血清中では大部分が未変化体として存在し, 代謝物として検出されたデメチル体及びN-オキシド体濃度はピーク時でいずれも未変化体の約1%であった.3.ヒトの尿中には72hまでに服用量の83%が回収され, 未変化体が約90%を占めていた. 4つの代謝物, デメチル体, N-オキシド体, デメチルオキソ体及びホルミル体が尿中から検出され, それぞれ服用量の5%, 5%, 0.3%, 0.2%であった.4.Fleroxacinはウサギを除いて生体内では代謝を受けにくく, 大部分が未変化体として挙動するものと思われた. また, fleroxacinは各種実験動物と比較するとヒトにおいて最も代謝的に安定であることが示唆された.5.Fleroxacin服用後の抗菌活性のほとんどは未変化体によるものと考えられた.
著者
平井 敬二 青山 博 庭田 寧 安江 徳太郎 福田 秀行 鈴江 清吾 入倉 勉
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Supplement2, pp.1-10, 1990-11-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
7

新キノロン系抗菌剤であるfleroxacinのin vitro抗菌力について検討した. FleroxacinはEnterobacterimeae, Neisseria spp.及びHaemophilus influenzaeに対し強い抗菌力を示し, また, staphylococci, Pseudomonas aeruginosa及びBranhamella catarrhalisに対しても良好な抗菌活性が認められた. 臨床分離株に対するfleroxacinの抗菌力はnornoxacin及びofloxacinと同程度であったが, ciprofloxacinよりは幾分劣っていた. なお, fleroxacinはmethicillin耐性Staphylococcus aureus及びgentamicin耐性P.aeruginosaに対しても優れた抗菌活性を示した. Fieroxacinの抗菌力は, 培地の種類, 培地のpH, 接種菌量, 金属イオンの添加及びヒト血清の添加による影響をほとんど受けなかった. MICとMBCはほぼ一致していた. Fleroxacinは他のキノロン剤同様Escherichia coli及びP. aeruginosaから分離したDNA gyraseのスーパーコイリング活性を強く阻害した. Fleroxacinは大腸菌, 緑膿菌, ブドウ球菌に対し良好なpost antibiotic effect (PAE) を有していた.
著者
竹尾 剛 渋谷 統寿 本村 政勝 金沢 一 宍戸 春美
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.1154-1159, 1989-09-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
8

ニューキノロン系抗菌剤と消炎鎮痛剤の併用により痙攣と高CK血症を来した症例を経験した。症例は64歳女性。膀胱炎のためエノキサシン (ENX) 300mg/日とフェンブフェン (FBF) 1,200mg/日を4日間服用中に突然意識消失し, 痙攣を来した。強直性痙攣と不穏状態が間歇的に3回繰り返し起こったが, 約4時間後には意識清明となった。入院時の心電図, 頭部CTスキャンは正常範囲であった。入院後著明な高CK血症 (第5病日に最高17,712IU/1と最高値) を認めたが第13病日には正常化した。CKアイソザイムはすべてMM型であったが, 針電極筋電図, 筋生検に異常はなかった。次に, マウスを用いてニューキノロン系抗菌剤による痙攣の発症に関する基礎実験を行なった。その結果ENXのみならず, シプロフロキサシンもFBFとの併用により痙攣を発症することがわかったが, オフロキサシンとFBFの併用では痙攣は発症しなかった。痙攣の予防に抗菌剤とFBFの投与前にあらかじめバルプロ酸ナトリウム, γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸, プロスタグランディンE2, ジアゼパム, およびフェノパルピタールを投与したがいずれも痙攣の発症を抑えることはできなかった。ENXとFBFの併用による痙攣は現在まで7例が報告され, その主因はENXであろうと推定されているが, その機序は不詳である。
著者
長手 尊俊 杉田 和彦 宮地 純子 宮崎 真奈美 竹市 千恵 小野 武夫 大竹 盾夫 大村 貞文
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement3, pp.170-191, 1988-07-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
11

新規マクロライド系抗生物質TE-031の体液内濃度測定法について検討した。検定菌としてMicrococcus lutescs ATCC 9341, 検定培地としてHeart infusion agar (栄研; pH8.0) を用いたペーパーディスク法が最適であった。血中濃度測定には, その標準液としてヒトプール血清 (Consera) を, 尿中濃度測定には, メタノール・リン酸塩緩衝液 (メタノール: 0.02Mリン酸塩緩衝液, pH7.4=4:1) と一部には1/15Mリン酸塩緩衝液を, 組織内濃度測定にはメタノール・リン酸塩緩衝液を用いTE-031の定量が可能であった。各サンプルの調製は各々のサンプルに応じた希釈液を用いて行った。また, TE-031ヒト主要代謝物で最も強い抗菌力を有するM-5も上記と同様の方法にてその定量が可能であり, TE-031とほぼ同様の検量線が得られた。TE-031の測定範囲は0.025~100μg/ml (但し1/15Mリン酸塩緩衝液; 0.2~100μg/ml) であった。また, これらbioassay法は高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いるchemical assay法と良好な相関性を示した。
著者
長手 尊俊 杉田 和彦 沼田 和生 小野 武夫 宮地 純子 森川 悦子 大村 貞文
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement3, pp.129-155, 1988-07-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
12

TE-031のin vitroおよびin vivo抗菌力をErythromycin (EM), Josamycin (JM) および他の抗生剤と比較検討し, 次の結果を得た。1. TE-031は, EMと同様の抗菌スペクトルを有し, 好気性グラム陽性菌, 好気性グラム陰性菌の一部 (B. catarrhalis, N. gonorrhoeu, H. influenzae), 嫌気性菌, L型菌およびマイコプラズマに対して優れた抗菌活性を示した。2. TE-031は臨床分離株388株に対して, EMと同等ないしやや強く, JMより強い抗菌力を示した。3. TE-031はEMと同様H.influenzaeに対して殺菌的に作用した。4. TE-031はマウス実験的全身感染症, 皮下感染症および呼吸器感染症に対してEM, JMよりも優れたin vivo抗菌力を示した。
著者
大石 明 勝 正孝 坂内 通宏 仲村 秀俊 石井 昌俊 井上 亨 福井 俊夫 青崎 登 吉松 博 奥井 津二
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.327-332, 1992

ME 1207の基礎的および臨床的検討を行い以下の知見を得た。基礎的検討での本剤の抗菌力はグラム陽性菌 (<I>Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae</I>等6菌種) およびグラム陰性菌 (<I>Escherichia coli, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens</I>等11菌種) に対してcefteramと同等またはそれ以上の抗菌力を示した。臨床的検討では急性咽頭炎6例, 急性気管支炎5例 (男4人, 女7人, 年齢24~82歳) に対し本剤を1日600mg分3で2~13日間投与し, 著効3例, 有効6例, 無効1例, 不明1例であった。副作用として嘔吐が1例, 臨床検査値の異常変動としてGOT・GPTの上昇が1例で認められた。
著者
椎尾 剛
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.500-504, 1988-07-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
9

レンチナンとサイクロホスファマイドをsarcoma-180担癌マウスの初期に併用した場合には, 例外なく, 両薬剤を単独投与した場合よりも強く腫瘍を阻害した。しかしながら, 定着癌系ではレンチナンとサイクロボスファマイドの効果は薬剤の併用タイミングに依存した。定着したsarcoma-180固型癌担癌マウスにサイクロボスファマイドをレンチナン投与に先立って投与した場合には併用効果が認められなかった。定着固型癌系においてレンチナンとサイクロホスファマイドを同時併用した場合には両薬剤の単独投与群に比べより強い腫瘍阻害が認められた。併用した場合にはサイクロホスファマイド投与による遅延型皮膚反応や白血球数の抑制をレンチナンが有意に防止した。レンチナンはシスブラチン, アドリアマイシン, カルポコン, UFT, テガフールおよびブレナマイシンとの間においても併用効果を示した。
著者
原田 喜男 豊島 久美子
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement7, pp.1202-1225, 1980-11-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
17

6059-Sの静脈内投与による腎耐生を, 家兎を用いた単回投与および7日間連続投与試験によって, 他のCephalosporin系抗生剤投与により惹起される陣害と比較した。単回投与試験の結果, 6059-S投与群および対照楽として用いたCephalothin (CET) とCefmetazole (CMZ) 投与群には2,000mg/kg/日の投与量において腎障害を認めなかった。これに対しCefazolin (CEZ), efotiam (CTM) およびCefotaxime (CTX) 投与群にはBUNやクレアチニンの上昇, 尿中への顆粒円柱・上皮円柱等の出現, 蛋白・糖の出現, 形態学的に腎皮質近位尿細管上皮細胞の変性・壊死・石灰沈着, 遠位尿細管腔内に硝子様円柱の存在等の所見が認められた。7日間連続投与試験においても, 6059-SおよびCET投与群には腎障害を認めなかったが, CEZ 400mg/kg/日群では尿中への顆粒円柱・上皮円柱の出現が軽度に認められた。以上の成績より腎障害作用を各薬剤間で比較すると, 雄においてはCTM>CEZ>CTX>CMZ≒CET≒6059-Sであり, 雌においてはCEZ≧CTM>CMZ≒CET≒6059-Sであった。
著者
村岡 義博 矢原 功 吉崎 敏夫 原田 喜男
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement7, pp.1072-1088, 1980-11-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
11

1.6059-Sの亜急性毒性試験を, 赤毛ザルを用いて実施するに先立って, 6059-Sの静脈内投与によるpilot studyを, 雌雄各1頭の赤毛ザルを用いて実施した。6059-Sの500mg/kgまたは1,000mg/kgの4日口髄続投与では特紀すぺき変化は認められなかったが, 5,000mg/kgの1回大量投与では。注入量2, 500mg/kgに連したときに, 雌に嘔吐がみられ, 投与終了後から約30分間にわたって2頭ともに鎮静状態がみられた。また, 本投与量での解剖時の病理検査において, 1頭に肝細胞と腎尿細管上皮の軽度の腫脹が認められた。2.上記pilot studyの結果を参考にして, 赤毛ザルにおける6059-Sの亜急性毒性試験を100, 300および500mg/kgの30日間静脈内投与により実施した。100, 300および500mg/kgの30日間投与によっても途中死亡例は認められず, 耐薬性は良好であった。軽度な変化として, 投与初期から軟便あるいは下痢が観察されたが, 投与継続中にそれらの症状の悪化は認められなかった。100mg/kg投与群の1例において, 下痢, 体重減少, 血液生化学的所見の変化等の多彩な変化がみられたが, 特異な個体であると考えられた。本例を除けば, 6059-S投与に起因すると考えられる明らかな変化は観察されなかった。なお本実験の赤毛ザルでの最大無作用量は500mg/kg/日であると結論された。